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第百三十六話:歴史の探究者
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(ユユ視点)
「シャル!あまり急ぐと怪我するぞ」
シャルと呼ばれた少女は、草木の生い茂る野原を、かなりのスピードで駆けていた。
まるで五感すべてで感じているように木々を草花を華麗に交わしながら前へ進んでいる。
その少し先に、シャルの背丈の5倍はありそうな大型の生物が同じく猛スピードで駆けている。
いや、逃げている。
「あんたは今日の晩御飯なんだから、逃がさないよー」
やっとの思いで大型の生物に追いついたシャルは、腰にぶら下げている短剣を取り出し、大きく跳躍した。
そのまま空中で綺麗に1回転し、大型生物の頭上目掛けて短剣を勢い良く突き刺した。
「ちぇすとぉーー!」
大型の生物が断末魔の咆哮をあげると、やがて動かなくなった。
「ふぅ、これで当面は食事に困らなくて済むね~」
倒した獲物の上で座り込みVサインを送ってくる。
「また一段と腕を上げたなシャル」
「へへーん、毎日特訓しているからね!」
私の名前はユユ。
一応魔術師をして、シャルと共に旅をしている。
元々は一人でこの世界の真実を追究する旅をしていた。
シャルはそんな旅先で出会った少女だった。
シャルは小柄な狼人族だった。
シャルの村が魔族に襲撃されている所に偶然立ち寄った私は、成り行きで狼人族側の味方をし、何とか魔族に打ち勝つ事が出来た。
いや、私たちは負けたのだ・・・。
後ろを振り返ると、その場に立っているものは誰もいなかったのだから。
私以外は全員やられてしまっていた。
これでは助太刀した意味がない。
しかし、何処からか子供の泣き声が聞こえてきた。
私はその声が、「生きたい!助けて!」と叫んでいるように聞こえてならなかった。
声を頼りに戦闘により崩壊した家々の瓦礫を取り除くと、そこに一人の少女がいた。
私が少女を見つけると、何故だか少女は泣くのをやめた。
そして、私の目をジッと睨んで逸らそうとしない。
何か運命めいた物を感じ取った私は、少女を連れて行くと決意した。
それが今から5年もの前の話だ。
今では少女だったシャルも立派に成長し12歳となっている。
12歳ならまだ少女と呼べるかもしれないが。
元々、狼人族(ルーヴ)は、身体能力が他の獣人族たちと比較しても頭一つ抜き出ていて、こと戦闘においては、シャルも上級冒険者にも引けを取らない実力にまで成長していた。
私は職業柄、前に出ての戦闘は苦手だった為、その役をシャルにこなしてもらい、後から魔術に専念する事が出来た。
「なぁ、シャルよ」
今日仕留めた熊狼の肉を豪快に頬張りながら口をモゴモゴさせているシャル。
返事にならない返答をしていた。
「お前は、自分の村を滅ぼした魔族を恨んでいるか?」
シャルは急いで口の中の物を呑み込んだ。
「うーん。その頃の記憶って、あんましないんだよね~。そういう面においては、特に恨んだりはしていないかな。それにね、今食べてるクマちゃんだって、結局は親、子供、家族が居たかもしれないよ。それを私は一方的に狩っちゃったんだから、文句を言う筋合いはないと思うんだ」
「そうか・・」
そう言うと、シャルはまた豪快に熊狼の肉を美味しそうに頬張っていた。
シャルは見た目は子供だけど時折大人びた発言をする。
まあ、ならばひとまずは大丈夫だろうか。
私が気に掛けていたのは、昨日立ち寄った街で聞いた、人族と魔族との停戦協定の件だ。
獣人族は関係ないのかと思っていたのだが、なんと今後の動向次第では獣人族も対象になるかもしれないらしい。
正式な合意に向けては、それぞれの王や族長たちとの会談を経てからということらしいので、まだ先のことだとは思うけど。
もしそうなってしまったら、シャルにとっては親や仲間たちの敵討ちが出来なくなってしまう。
私はそこが気掛かりだった。
だけど、シャルは超が付くほどの能天気でマイペースでいて、そして優しいんだ。
食事が済み、就寝タイムだ。
探知結界を張り、私達は眠りに就いた。
翌朝、私達はある遺跡の入り口の前に立っていた。
私は、魔術師の他にもう一つの顔を持っている。
それは歴史の探究者。別名、考古学者とも呼ばれている。
この世界の歴史を知るために私は長く旅をしている。
私は知りたいのだ。
貪欲までにこの世界の行く末が。
歴史とは面白いもので、過去を知れば自然と未来を知る事が出来る。過去と未来は繋がっているのだ。
世界を周り、その地の書庫をあさり、遺跡を巡る。
「待っていろ!探究者のユユがお前の保有している知識をすべて喰らい尽くしてくれる!」
「ユユって、遺跡に入る時って、決まっていつも似たようなセリフを言ってるよね?何か意味があるの?」
「いや、特にないな。ただの意気込みなだけさ」
遺跡の調査は、大半が収穫なしで終わる。
この世界に存在している遺跡は、その殆どが既に調べ尽くされた場所だからだ。
それ故、後からノコノコと脚を踏み入れても何も得られることはない。
普通の人ならば・・
だけど私は違う。
先人が残したどんな些細な痕跡だろうが、私は逃さず見つける事が出来る。
誰も気が付かない隠し通路や隠し扉など、遺跡は奥が深い。
時には今の世では到底なし得ない技術を用いた遺跡も数多く見てきた。
その先こそに価値のある情報や財宝が眠っている事がある。
私は自分自身の見抜く力、才能を天から授かったものだと思っている。
神からの任だと。使命だと。
「何も見当たらないね。今回もハズレかな?」
ピラミッド型の遺跡の内部をぐるぐると何周もした結果、シャルから漏れた言葉だった。
「シャル。油断するなよ。何か嫌な気配がする。この間の湖底遺跡の時のように、防衛トラップが仕掛けてあるかも知れない」
何も遺跡探索は良い事ばかりではない。
私は探索中に何度も死に瀕する思いをしてきた。
より重要な手掛かりや物が眠っている場所には、それ相応の罠が仕掛けてある。
だがしかし、そんな物で私の探究欲を止める事は叶わない。
何処からでもかかってくるがいいさ。私がまとめて相手をしてやる!
私は、壁の一部分が不自然になっているのを発見した。
細心の注意をはかり、その場所を押してみる。
すると、それがスイッチになっていたのか、押された部分がカチッという音を立てて引っ込んだ。
同時に何か重たいものが動き出す音が遠くの方から聞こえてきた。
音の聞こえた方向へと慎重に進んでいく。
すると、先程まで壁だった場所から人一人が通れる程の隙間が出来ていた。
どうやら隠し通路へと誘うスイッチだったようだ。
何の迷いもなく、その中に入ろうとするシャル。
彼女は疑うという事を知らない。
年相応な所もあるが、危なっかしくて見てられない。
「待て!先に中の状態を確かめてからだ」
私は、マジックバックからネズミの人形を取り出す。
このネズミ、勿論ただのネズミではない。
遺跡調査の過程で獲得した魔導具と言われる物だ。
この何でも入るマジックバックも同様に。
ネズミは、持ち主である私と視界を共有する事が出来る。
「と言うわけで頼んだぞネズミ君」
私はネズミ君を通して、この通路の先の情報を得る。
ふむふむ。
特にトラップのような物は見受けられないようだ。
「ユユ、中どう?」
シャルが指をくわえて私からの返事を待っている。
「大丈夫そうだ。よし、入ろうか。向かって右の部屋に向かうぞ」
「待ってました!」
シャルが勢い良く中に飛び入る。
後ろから私も続く。
それから数時間程、中をくまなく探し、一際異彩を放っていた石碑に妙に心を奪われた。
石碑には何かの文字が刻まれている。
「あの文字は・・・過去に何処かで見た事がある。あれは、確か・・・東の黒海に浮かぶ島。そうだ、そこの遺跡で見た物と同じ系統だ。となると、年代が近いのか、もしくは・・」
私は、今まで訪れた遺跡のデータは全て頭の中に入れている。
というのも、一度見たものは二度と忘れない能力を持っている。瞬間記憶能力というやつだ。
古代の言語も解読途中のものまで含めると現在までで
28種類翻訳する事が出来る。
それを踏まえると・・・
「コノバショハ、オウノネムルバショ。ソノネムリヲサマタゲルナラバ、ワザワイトナリテ、コノセカイヲホロボスデアロウ」
「うんと、どゆ意味?」
「簡単に言うと、ここに来るな!さもなくば、怖い人が復活して、この世界を壊しちゃうぞ!って事だろうな」
今のを聞いて、シャルが急に変な顔をし出した。
目が泳いでいる。
明らかに挙動がおかしい。
「一体、何をしたんだシャル。怒らないから言ってみろ」
「うぅ・・、、えっとね、あっちの部屋に何かスイッチ見たいのがあったから、押しちゃった!でも何も起こらなかったけどね!」
「いつも言ってるだろ!不用意に遺跡の中の物には触るなって!」
「ウワーン!!ユユの嘘つきぃ!怒らないって言ったのに・・」
でもまぁスイッチか。いくらなんでもそんなベタな罠で眠ってる王が復活なんて事はないだろう。
それにこの文面も本当かどうか定かではない。
直後、この場所が揺れ出した。
遺跡がミシミシと音を立てて、今にも崩れそうな程に。
まさかなんて事は、、、
「すぐに遺跡から退避するぞ!」
崩れて来る瓦礫を避けながら、元来た道を戻り、何とか外に出る事が出来た。
遺跡は何処もかしこも同じような作りで、普通ならば迷子になっていただろう。
たが迷子にならなかったのは、私の記憶力の為せる技なんだけどな。
「いやー危なかったね、ギリギリだった!」
「シャルよ、自分のせいだと言うのは分かっているか?」
「ごめんなさい・・反省してます・・」
シャルの狼の耳がシュンと垂れている。
こうなっている時は、本当に反省している時だ。
さて、問題はこれからだな。あの古代文字が間違っていることに賭けるしかない。
念の為、遺跡が見渡せるギリギリの距離まで退避し、後方の物陰へと身を隠す。
「いいか、絶対に顔を出すなよ」
ん?
なんだ?
崩れたピラミッド型の遺跡から何やら声が聞こえる。
声というか唸り声にも聞こえる。
これはもしかすると、本当に、本当なのか?
嫌な予感がする。
「シャル、逃げるよ。恐らく私達の手には追えない」
この場から離れようとシャルの手を掴んだ時だった。
凄まじい爆音と衝撃波が襲って来た。
そして背後から誰かに突き飛ばされた。
・・・・・・・
何が起きたのだ・・・
顔を上げると、ピラミッドが跡形もなく吹き飛んでいる。
どうやら私は爆発の衝撃で吹き飛ばされたようだ。
さっきまで私達が居た所も大きな穴が空いている。
あれ、シャルはどこ?
さっきまで隣にいたシャルがいない。
吹き飛ばされた時に何処かに頭を打ったのか、頭がボンヤリしていて思考が定まらない。
突如ピラミッドの残骸の方から凄まじい威圧感を感じた。
しかし、今はそんな事はどうでもいい。
私は一心不乱にシャルを探した。そして、見つけた。
変わり果てた姿になっているシャルを・・
「シャル!あまり急ぐと怪我するぞ」
シャルと呼ばれた少女は、草木の生い茂る野原を、かなりのスピードで駆けていた。
まるで五感すべてで感じているように木々を草花を華麗に交わしながら前へ進んでいる。
その少し先に、シャルの背丈の5倍はありそうな大型の生物が同じく猛スピードで駆けている。
いや、逃げている。
「あんたは今日の晩御飯なんだから、逃がさないよー」
やっとの思いで大型の生物に追いついたシャルは、腰にぶら下げている短剣を取り出し、大きく跳躍した。
そのまま空中で綺麗に1回転し、大型生物の頭上目掛けて短剣を勢い良く突き刺した。
「ちぇすとぉーー!」
大型の生物が断末魔の咆哮をあげると、やがて動かなくなった。
「ふぅ、これで当面は食事に困らなくて済むね~」
倒した獲物の上で座り込みVサインを送ってくる。
「また一段と腕を上げたなシャル」
「へへーん、毎日特訓しているからね!」
私の名前はユユ。
一応魔術師をして、シャルと共に旅をしている。
元々は一人でこの世界の真実を追究する旅をしていた。
シャルはそんな旅先で出会った少女だった。
シャルは小柄な狼人族だった。
シャルの村が魔族に襲撃されている所に偶然立ち寄った私は、成り行きで狼人族側の味方をし、何とか魔族に打ち勝つ事が出来た。
いや、私たちは負けたのだ・・・。
後ろを振り返ると、その場に立っているものは誰もいなかったのだから。
私以外は全員やられてしまっていた。
これでは助太刀した意味がない。
しかし、何処からか子供の泣き声が聞こえてきた。
私はその声が、「生きたい!助けて!」と叫んでいるように聞こえてならなかった。
声を頼りに戦闘により崩壊した家々の瓦礫を取り除くと、そこに一人の少女がいた。
私が少女を見つけると、何故だか少女は泣くのをやめた。
そして、私の目をジッと睨んで逸らそうとしない。
何か運命めいた物を感じ取った私は、少女を連れて行くと決意した。
それが今から5年もの前の話だ。
今では少女だったシャルも立派に成長し12歳となっている。
12歳ならまだ少女と呼べるかもしれないが。
元々、狼人族(ルーヴ)は、身体能力が他の獣人族たちと比較しても頭一つ抜き出ていて、こと戦闘においては、シャルも上級冒険者にも引けを取らない実力にまで成長していた。
私は職業柄、前に出ての戦闘は苦手だった為、その役をシャルにこなしてもらい、後から魔術に専念する事が出来た。
「なぁ、シャルよ」
今日仕留めた熊狼の肉を豪快に頬張りながら口をモゴモゴさせているシャル。
返事にならない返答をしていた。
「お前は、自分の村を滅ぼした魔族を恨んでいるか?」
シャルは急いで口の中の物を呑み込んだ。
「うーん。その頃の記憶って、あんましないんだよね~。そういう面においては、特に恨んだりはしていないかな。それにね、今食べてるクマちゃんだって、結局は親、子供、家族が居たかもしれないよ。それを私は一方的に狩っちゃったんだから、文句を言う筋合いはないと思うんだ」
「そうか・・」
そう言うと、シャルはまた豪快に熊狼の肉を美味しそうに頬張っていた。
シャルは見た目は子供だけど時折大人びた発言をする。
まあ、ならばひとまずは大丈夫だろうか。
私が気に掛けていたのは、昨日立ち寄った街で聞いた、人族と魔族との停戦協定の件だ。
獣人族は関係ないのかと思っていたのだが、なんと今後の動向次第では獣人族も対象になるかもしれないらしい。
正式な合意に向けては、それぞれの王や族長たちとの会談を経てからということらしいので、まだ先のことだとは思うけど。
もしそうなってしまったら、シャルにとっては親や仲間たちの敵討ちが出来なくなってしまう。
私はそこが気掛かりだった。
だけど、シャルは超が付くほどの能天気でマイペースでいて、そして優しいんだ。
食事が済み、就寝タイムだ。
探知結界を張り、私達は眠りに就いた。
翌朝、私達はある遺跡の入り口の前に立っていた。
私は、魔術師の他にもう一つの顔を持っている。
それは歴史の探究者。別名、考古学者とも呼ばれている。
この世界の歴史を知るために私は長く旅をしている。
私は知りたいのだ。
貪欲までにこの世界の行く末が。
歴史とは面白いもので、過去を知れば自然と未来を知る事が出来る。過去と未来は繋がっているのだ。
世界を周り、その地の書庫をあさり、遺跡を巡る。
「待っていろ!探究者のユユがお前の保有している知識をすべて喰らい尽くしてくれる!」
「ユユって、遺跡に入る時って、決まっていつも似たようなセリフを言ってるよね?何か意味があるの?」
「いや、特にないな。ただの意気込みなだけさ」
遺跡の調査は、大半が収穫なしで終わる。
この世界に存在している遺跡は、その殆どが既に調べ尽くされた場所だからだ。
それ故、後からノコノコと脚を踏み入れても何も得られることはない。
普通の人ならば・・
だけど私は違う。
先人が残したどんな些細な痕跡だろうが、私は逃さず見つける事が出来る。
誰も気が付かない隠し通路や隠し扉など、遺跡は奥が深い。
時には今の世では到底なし得ない技術を用いた遺跡も数多く見てきた。
その先こそに価値のある情報や財宝が眠っている事がある。
私は自分自身の見抜く力、才能を天から授かったものだと思っている。
神からの任だと。使命だと。
「何も見当たらないね。今回もハズレかな?」
ピラミッド型の遺跡の内部をぐるぐると何周もした結果、シャルから漏れた言葉だった。
「シャル。油断するなよ。何か嫌な気配がする。この間の湖底遺跡の時のように、防衛トラップが仕掛けてあるかも知れない」
何も遺跡探索は良い事ばかりではない。
私は探索中に何度も死に瀕する思いをしてきた。
より重要な手掛かりや物が眠っている場所には、それ相応の罠が仕掛けてある。
だがしかし、そんな物で私の探究欲を止める事は叶わない。
何処からでもかかってくるがいいさ。私がまとめて相手をしてやる!
私は、壁の一部分が不自然になっているのを発見した。
細心の注意をはかり、その場所を押してみる。
すると、それがスイッチになっていたのか、押された部分がカチッという音を立てて引っ込んだ。
同時に何か重たいものが動き出す音が遠くの方から聞こえてきた。
音の聞こえた方向へと慎重に進んでいく。
すると、先程まで壁だった場所から人一人が通れる程の隙間が出来ていた。
どうやら隠し通路へと誘うスイッチだったようだ。
何の迷いもなく、その中に入ろうとするシャル。
彼女は疑うという事を知らない。
年相応な所もあるが、危なっかしくて見てられない。
「待て!先に中の状態を確かめてからだ」
私は、マジックバックからネズミの人形を取り出す。
このネズミ、勿論ただのネズミではない。
遺跡調査の過程で獲得した魔導具と言われる物だ。
この何でも入るマジックバックも同様に。
ネズミは、持ち主である私と視界を共有する事が出来る。
「と言うわけで頼んだぞネズミ君」
私はネズミ君を通して、この通路の先の情報を得る。
ふむふむ。
特にトラップのような物は見受けられないようだ。
「ユユ、中どう?」
シャルが指をくわえて私からの返事を待っている。
「大丈夫そうだ。よし、入ろうか。向かって右の部屋に向かうぞ」
「待ってました!」
シャルが勢い良く中に飛び入る。
後ろから私も続く。
それから数時間程、中をくまなく探し、一際異彩を放っていた石碑に妙に心を奪われた。
石碑には何かの文字が刻まれている。
「あの文字は・・・過去に何処かで見た事がある。あれは、確か・・・東の黒海に浮かぶ島。そうだ、そこの遺跡で見た物と同じ系統だ。となると、年代が近いのか、もしくは・・」
私は、今まで訪れた遺跡のデータは全て頭の中に入れている。
というのも、一度見たものは二度と忘れない能力を持っている。瞬間記憶能力というやつだ。
古代の言語も解読途中のものまで含めると現在までで
28種類翻訳する事が出来る。
それを踏まえると・・・
「コノバショハ、オウノネムルバショ。ソノネムリヲサマタゲルナラバ、ワザワイトナリテ、コノセカイヲホロボスデアロウ」
「うんと、どゆ意味?」
「簡単に言うと、ここに来るな!さもなくば、怖い人が復活して、この世界を壊しちゃうぞ!って事だろうな」
今のを聞いて、シャルが急に変な顔をし出した。
目が泳いでいる。
明らかに挙動がおかしい。
「一体、何をしたんだシャル。怒らないから言ってみろ」
「うぅ・・、、えっとね、あっちの部屋に何かスイッチ見たいのがあったから、押しちゃった!でも何も起こらなかったけどね!」
「いつも言ってるだろ!不用意に遺跡の中の物には触るなって!」
「ウワーン!!ユユの嘘つきぃ!怒らないって言ったのに・・」
でもまぁスイッチか。いくらなんでもそんなベタな罠で眠ってる王が復活なんて事はないだろう。
それにこの文面も本当かどうか定かではない。
直後、この場所が揺れ出した。
遺跡がミシミシと音を立てて、今にも崩れそうな程に。
まさかなんて事は、、、
「すぐに遺跡から退避するぞ!」
崩れて来る瓦礫を避けながら、元来た道を戻り、何とか外に出る事が出来た。
遺跡は何処もかしこも同じような作りで、普通ならば迷子になっていただろう。
たが迷子にならなかったのは、私の記憶力の為せる技なんだけどな。
「いやー危なかったね、ギリギリだった!」
「シャルよ、自分のせいだと言うのは分かっているか?」
「ごめんなさい・・反省してます・・」
シャルの狼の耳がシュンと垂れている。
こうなっている時は、本当に反省している時だ。
さて、問題はこれからだな。あの古代文字が間違っていることに賭けるしかない。
念の為、遺跡が見渡せるギリギリの距離まで退避し、後方の物陰へと身を隠す。
「いいか、絶対に顔を出すなよ」
ん?
なんだ?
崩れたピラミッド型の遺跡から何やら声が聞こえる。
声というか唸り声にも聞こえる。
これはもしかすると、本当に、本当なのか?
嫌な予感がする。
「シャル、逃げるよ。恐らく私達の手には追えない」
この場から離れようとシャルの手を掴んだ時だった。
凄まじい爆音と衝撃波が襲って来た。
そして背後から誰かに突き飛ばされた。
・・・・・・・
何が起きたのだ・・・
顔を上げると、ピラミッドが跡形もなく吹き飛んでいる。
どうやら私は爆発の衝撃で吹き飛ばされたようだ。
さっきまで私達が居た所も大きな穴が空いている。
あれ、シャルはどこ?
さっきまで隣にいたシャルがいない。
吹き飛ばされた時に何処かに頭を打ったのか、頭がボンヤリしていて思考が定まらない。
突如ピラミッドの残骸の方から凄まじい威圧感を感じた。
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