最後の魔女

砂鳥 ケイ

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最後の魔女11 王都での生活

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 リアと別れてから数ヶ月後の話。
 アン視点。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 私は本格的に聖女の勉強をする為に聖地アグヌスを離れ、王都を訪れていた。
 既に王都へ来て二週間余りが経過していた。

「アン様、寝てはいけませんよ」
「⋯⋯ふぁぁ、むぅ、だってつまらないんだもん!」

 毎日毎日座学の勉強勉強、いい加減にして欲しいよまったく!
 朝6時に起床して、8時から17時まで勉強。夜は自由だけど、自室から一歩足りとも出ることが許されない。ていうか、部屋の中に監視がいるんだよ! ありえないよ! 大事な私の身を守る為のボディーガードって話だけど、そんなの私頼んでないし!

 はぁ、、、帰りたいよ。
 それにリアとも会いたいなぁ。でも流石に監視されてたら会えないよね。いや、でもリアだったら目撃者の記憶の改ざんとか出来そうかな?

 もう! こんなに勉強ばっかししてたら、頭の中がオーバーヒートしちゃうよ! 爆発しちゃうよ?

「アン様は立派な聖女様になるのでしょう?」

 私の心の中の葛藤が聞こえているかのような質問。口うるさく私の先生を担っているのは、ザークス先生。

「立派な聖女ってどんな聖女なのさ」

 失敗だった。私の質問に対して、ザークス先生は延々と1時間以上も聖女たるべき理想の人物像をしゃべり続けた。
 私は最初こそは、生真面目すぎるザークス先生のことが苦手だったけれど、接していくうちに、私の為にこんなにも時間を割いてくれてるんだって思うようになった。
 依然として勉強は嫌いだけど、ザークス先生が頑張ってくれているんだから私も頑張らないとって思えた。

 あれかな、私って単純なのかな?
 単細胞生物なのかな?

 そんなこんなであっという間に王都を訪れてから1年が経過した。
 座学の全過程が終了した私は、ある人物の元へと案内された。
 なんて綺麗な人なんだろう⋯。
 長身で、すらっと伸びた脚に聖職者と思わせる白を基調とした衣装で金髪碧眼の妙齢な女性だった。

「あなたがアンね?」
「えっと、はい、そうですけど」

 目の前のお姉さんは、私のことを品定めするように上から下へと目線を走らす。
 何か嫌な感じ。

「まだ全然子供じゃない。本当にこんなのが聖女見習いなの?」

 初対面に失礼だね、この人は!
 それに見習いじゃなくて、聖女です!
 しかし声に出して反論はしない。
 だってその言葉は私に発せられたものじゃないから。
 私をここへ連れて来たシュミルという教会の修道士にだった。
 私をそっちのけで2人は何やら話し込んでいたけど、私はイラッとしていた為に会話の内容を聞こうとすら思わなかった。
 暫くすると、会釈をして修道士のシュミルさんが何処かへ行ってしまった。
 あれ?
 え、もしかして私このお姉さんと2人きり?
 嫌だよそんなの!
 私は嫌だよアピールをする為に、お姉さんを睨みつけてやった。
 しかし、お姉さんはそんな私の視線など御構い無しに自己紹介をする。
 これが大人の余裕ってやつなの?
 キィー!! 悔しい⋯

「私の名前はシオン。この王都で聖女をやってるの。要はあなたの先輩ってこと。分かる?」

 喋り口調まで嫌な感じのこのお姉さんは、なんと私と同じ聖女だと言う。
 ウソぉ! 信じらんない!
 目の前のお姉さんが、とても神に仕えているようには見えない。だって聖女って確か、清い心の持ち主じゃないとなれないってザークス先生から習ったんだけど。
 今度は私の方が目の前のお姉さんの姿を下から上へと視線を転がした。

「なに? あんた喧嘩でも売ってるのかい?」

 うん、ないわー。
 見た目だけなら確かに聖女かもしれない。見た目だけならね。だけど口を開くと、何処かの盗賊の女ボスにしか見えない。ロングスカートの中に短剣とか隠してない?

「いい? あんたはこれから私の元で聖女になる為の試練を受けてもらう。とっても厳しいから覚悟しておくんだね。それと私のことはシオン様と呼ぶこと。聖女間の上下関係は絶対だからね!」

 喋らなければ綺麗なお姉さんなんだけどなぁ。
 いちいちカンに触る言動だけど大目に見てあげるだって、私の方が大人だしね。これくらいのことでいちいち腹を立てていたらこの先やっていけないと思うから。
 私は素直に頷いた。
 そして、次の日から始まるシオン様の試練とやらに私はまた苛立ちを覚えた。

「なんで私がそんな小間使いみたいなことをしないといけないんですか!」

 それもそのはず。だってシオン様は身の回りの世話から着替えまで私にさせようとするのだから。

「言ったはずよ! 聖女の世界は上下関係が厳しいの! 先輩の命令は絶対よ!」

 半ば命令されていると言っても過言ではない。私は素直にいうことを聞く以外なかった。
 日中はシオン様専用小間使いとして、夜は監視下におかれた生活。
 ここまで2年近く我慢してきたけど流石にもう限界。シオン様の私に対する扱いは一向に変わる気配はないし、いつまでこの生活が続くのか分からないこのもどかしさに私の精神が次第に音を立てて崩壊していく。

 はぁ⋯リアに会いたいよ⋯

 リアにもらったペンダントを使えば、すぐにでも私の所に来てくれると思う。だけど、監視の目があるし、絶対バレちゃう。だって、寝る時だって私が見える位置から監視してるし!
 あー腹が立つ。
 だからリアを呼ぶことが出来ないんだよね。会いたいのに!
 後、最近なんだかやけに自分でも気が付かない内にボケーッとしてることが多い。最初は、こんな生活を送っているんだから当たり前だと思っていたけれど、ほんとにそうなのかな?

 ある日の深夜に外の話し声でふと目が覚めてしまった。
 声を聞く限り、ボディーガードをしているリュミエールさんかな?
 もう一人は男の人の声。
 流石に会話の内容までは聞こえないけど、時折聞こえてくる言葉が、洗脳、儀式、あの方、そして、約束の日。
 私は言い知れぬ不安を感じて、その日はそれ以上寝れなかった。

 月日が経つのは早いものでシオン様と一緒にいるようになってから、1年が経過していた。
 段々とシオン様とも調和が取れるようになり、今では仲の悪い妹みたいな扱いにまで昇格していた。
 当初は小間使いのような扱いだったから、すごい進歩だよね、これ!
 今では悩みとかも言えるようになってきていた。

「アン、あんた気を付けなさいよね」
「何にですか?」
「教会の連中さ。あいつらは、私たち聖女のことをただの道具としか見ていないからさ。あんただって使えない道具は捨てるだろ?」
「う、うん⋯」

 つまりは聖女としての価値がなくなったら解任するってことだよね?
 最近2人でいる時、シオン様は教会の人の愚痴ばかり言うようになっていた。
 それから何日か過ぎたある日、見てはいけないものを見てしまった。
 シオン様の言い付けで買い出しに行っていた帰り道に、私は近道をするべく人通りの少ない路地裏を進んでいると、道を塞ぐ形で人が倒れていたのだ。
 しかし、私はすぐに駆け寄ることはしなかった。
 倒れている人の側に誰かが立っていたから。
 物陰から息を殺して見ていると、倒れている人に見覚えがあった。
 え、嘘⋯
 シオン⋯様?
 あり得ないよ。だって、シオン様は教会にいたはずじゃ⋯
 怖くなった私はすぐにその場から逃げた。すぐに教会のシオン様が居た場所へと戻った。
 きっと、見間違いに決まってる。他人の空似よ。この扉を開けたその先に、いつものように偉そうな顔して座ってるに決まってる。
 そして「遅いわよ!」って叱られるに決まってるわ。
 恐る恐るドアを開けた先にシオン様の姿は無かった。
 き、きっとトイレか何処かに行ってるのよ。
 うん、だって聖女様だもん、教会から出る時は絶対護衛の人がつくはずだし、外で襲われるなんてあるはずがないよ。
 暫く待っていると、修道士の2人が現れた。
 名前は確か⋯忘れたなぁ。見覚えはあるんだけど。

「シオン様知りませんか? お使いを頼まれて戻ってきたら、姿が見えなくって」
「聖女様は、先ほど遺体で発見されたよ」

 は? 何言ってるのこの人。
 私は頭の中が真っ白になった。

 どうして?
 さっきのは、私の見間違いじゃなかったの?

「賊が教会に侵入したんだよ。まぁ、その賊はすぐに自害したんだけどね」
「き、教会で襲われたのですか?」
「そうだよ」

 嘘⋯?
 どうして嘘をつくの?
 それとも、やっぱし私が見たのは見間違いで、シオン様は本当はこの教会で殺された?
 いや、そんなはずないよ。
 暗がりだったけど、私はシオン様がいつも耳につけていたルビーのイヤリングが真っ赤に輝いていたのを思い出した。あんなのは王都に来てからシオン様以外につけている人を見たことがない。それにこの世界に2つと無い特別な物って言ってたし。
 じゃあ、なんで教会側の修道士が嘘をつくの?
 犯人は賊じゃないの?
 私は頭の中が混乱して、うまく考えることが出来ないでいた。

「アン様はここに居てください。この中ならば安全ですので」

 教会の中で襲われたっていうのに、ここが安全だという保証が何処にあるのか疑問だった。
 私はソファーに腰掛けたまま気持ちの整理をしていた。
 やっと、やっと打ち解けて来たと思ったのに⋯シオン様⋯


(⋯アン)

 ん、何だろう?

(⋯アン)

 誰かが私を呼んでいる?
 って、ここ何処!
 真っ白い世界に宙に浮いている私。
 あ、そうか、この感覚私知ってるや。
 そう、これは夢の中だ。

 私いつの間にか寝ちゃってたんだ。ていうことは、さっきのは全部夢落ちだったんだ!
 なんだ、そっかー。

(アン!)

「はい!」

 思わず返事をしてしまった。幻聴かと思ったけど、今のはハッキリと聞こえた。しかも、シオン様の声だった。私が辺りをキョロキョロして声の行方を探していると、私の目の前にシオン様が現れた。

「シオン⋯様?」

 確かにシオン様なんだけど、何処か薄く半透明だった。夢なのだからいちいち疑問を持っていたら仕方ないのだけど、、

「いいかい、アンよく聞きなさい」
「はい」
「私は聖女のスキル、夢見を使って、あなたの夢に干渉しているの」

 すごい! 聖女すごい! そんなスキルがあるんだ。

「時間が限られているから詳しい説明をしている時間はないけど、この夢見は発動条件を予め決めることが出来るの」

 何だか良く分からないけど、これって私の夢なんだよね?

「その条件はーー」

 そ、そんな⋯
 この後のシオン様の話に私は絶望する。
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