最後の魔女

砂鳥 ケイ

文字の大きさ
23 / 110

最後の魔女22 調査開始

しおりを挟む
 軟禁状態から解放された私は、その足である場所へと向かった。

「やあ、キミがあの猫ちゃんの中にいた存在かな?」

 3代前の聖女であるシオン様が創り出した人形。教会の闇を暴く為に知り得た情報の保管の役割を果たしてくれている。

 名前はレイラン。

 シオン様の亡き弟さんと同じ名前。アンの記憶の中や駄猫を通して見たことはあったけど、こうして面と向かうのは初めて。
 雪のように白い肌。感情をまったく感じさせない部分は、何処となく私と似ているのかもしれない。

「ええそうよ」
「キミは魔女なのかい?」

 少しだけ動揺してしまったけれど、今までの行動、言動、駄猫を見られていることからしても容易にそれは推察出来る。
 なので、わざわざ隠す必要もないかな。

「そうだと言ったら?」
「昔ね、シオン様も魔女の知り合いがいたんだ」

 シオン様は確か、生きていれば私とそんなに変わらない歳になるのかな?
 だったらその話も頷ける。

「ボクの作り方もその魔女に教わったんだって。まぁ、こんな話ししても退屈だよね」
「ううん、続けて」

 他でもない魔女の話なら大歓迎。
 魔女の話なんて、恨み辛みはあってもそれ以外を聞くことは滅多にないのだから。
 それに、少なくとも人形の作り方なんて同じ魔女である私は知らない。
 駄猫のような眷属とは違うみたいだし、恐らくそれは単純に魔法だけではないと思う。
 魔法を全て会得した私が言うんだから間違いない。

 レイランは人形を作る手順を話し出した。

 まずは器作り。
 器は、死した術者の親しい存在の体の一部を媒介にして作るそうだ。

 何それ怖い。

 術者本人と親しければ親しいほど、人形の出来栄えや不自然さが変わってくるのだとか。
 続いて、器に魂を吹き込む作業。
 これについては私も知っている魔法だった。
 というか、割と初期の魔法。
 いまいち使い道がなかったからあまり多用した記憶すらないハズれ魔法⋯だと思っていた。

 ハズれ魔法とは、使い道が見出せない魔法のことを私が総称してそう呼んでいる。

 《魂の定着ソウルシンキング

 この魔法は、特定の物に魂を定着させる魔法で、物体に自我を付与することが出来る。
 例えば、コップに使用するとコップが勝手に喋り出す。あの時は正直驚いたのを今でも覚えてる。

 確か、私がやってみた時は⋯

「おい! いつも冷たい物ばかり入れやがって、たまには熱々の物でも飲んだらどうだ! 風邪引くじゃねえか! あとな、こないだ落としただろ! 縁の端の方が欠けたじゃねえか! あぁ!? 大切に使いやがれ全く!」

 と、たらふく文句を言うだけ言って術が解けた。

 一体これ何に使うのさ? って当時は思ったよ。
 いや、今でも思うけど⋯

「で、魂を定着させただけじゃまだ完成じゃないんだ」

 うん、それでそれで? 確かにそれだけだとただ喋るだけの人形。動くなんてことは出来ないはず。

「聖力をありったけ注ぎ込むんだよ」

 聖力って、アンやサーシャ、聖女様が司る大いなる力のことだよね。
 つまりあれかな? あの人形には魔女の魔力と聖女の聖力の両方が混ざりあってるってこと?
 もしそうだとしたら、私が知らないのも無理ないね。そもそも異なる2つの力を混ぜあわせようなんて、考えもしない。
 よく、そんなことをしようと思い付いたものだと素直に敬意を払いたい。

「だいぶ省略したけど、だいたい今のような感じかな」
「すごく勉強になった」

 機会があれば是非試してみたいな。
 それはそれとして、本来の話へと戻る。

 サーシャが何者かに襲われたこと、教会に敵対している勢力がいることを順を追って説明した。

「そうだね。いつの時代も大きな勢力が、理不尽な圧力の前には反発するレジスタンス的な因子は存在するよ」
「彼等の居場所知ってる?」
「ううん、分からないかな。少なくともそういう連中がいると言うのはシオン様も掴んでいたけど、場所までは⋯それにあれからかなりの年月が経っているしね」

 残念。楽しようと思ったのに、結局自分で探さないといけない。
 まぁ、それを見越して駄猫は捕まった捕虜の居場所を探す為に使いに出してるんだけどね。その捕虜と件のレジスタンスとが同じかどうかもまだ分からない。

 私はもう一度レイランに確認しておく必要がある。

 それは、シオン様が成し遂げたかったこと。
 アンが受け継いだこと。
 サーシャが今も頑張っていること。

「教会の闇について、言い逃れの出来ない決定的な証拠を掴んだその暁には、この国の王様に話せば解決するんだよね?」

 しかし、答えは意外と言うか、まぁやっぱりそうだよね的なものだった。

「分からない」

 ただそれだけ。口を閉ざしてしまったレイラン。
 一体この国の上層部のどこまでが共犯なのか現状掴めていない。
 少なくともシオン様は、国王は清廉潔白だと疑っていなかったみたいだけど。
 生憎、他人の情報だけを鵜呑みにする程私も落ちぶれてはいない。私自身の目で確かめる必要がある。

 あの子・・・を使うかな。

 レイランに、また来るとだけ伝えて、秘密の地下室を後にした。

 さて、駄猫の様子でも確認しようか。

(状況報告)
(にゃにゃ! 取り敢えず、囚われている場所は分かったにゃ)
(で?)
(にゃもが駆けつけた時には既に死んでたにゃ)
(は?)

 死んでた?
 確か、警備隊預かりになっていたはず。
 拷問の末に殺した?
 うーん。

(死体は何人?)
(えっとにゃ、ひーふーみー⋯4人にゃ」
(やった犯人を追って)
(無茶にゃ! もう犯人の姿は何処にもないにゃ!)
(方法は色々あるでしょ? 匂いを追うだとか、死人に聞くだとか、目撃者が他にいないかだとか。とにかく探して追って。どんな手を使っても必ず。失敗は許さない)

 さて、お次は⋯

 |眷属召喚(サモンミーア)

 私の呼び掛けに一人の妙齢な女性が魔法陣の中から現れた。黒を基調としたスーツを纏い、膝上のミニスカートを履き、インテリ眼鏡を装着している彼女の名前はミーア。
 潜入調査、情報収集に特化した魔法を持つスペシャリスト。

「久し振りねミーア」
「あらぁ、リアちゃんじゃない! もぅ、あんまし呼んでくれないからお姉さん拗ねちゃったぞっ」

 私に抱きつき、その豊満な胸をこれでもかと私の顔に押し付ける。
 喧嘩を売ってる? ねえ、売ってるよね?
 捥いでもいい? ねえ、捥いでもいいよね?
 あーもう! そんな事をする為に呼んだんじゃないんだけどね。

「ミーア、命令よ。この国の王の人となりを調べて」
「んーざっくりとした内容ねぇ、素性を調べればいいのかしら」
「徹底的にお願い。後、側近の素性もお願い」
「リアちゃんの頼みじゃ断れないわねぇ、分かったわぁ、何か分かればすぐに連絡するわねっ」

 もう一度私を強くハグすると、ミーアがその場から消えた。

 はぁ、何だか疲れた。
 でも、こう言うことに関しては彼女の右に出るものはいない。
 それだけに信頼している。
 スキンシップには少々問題ありだけど。

 さて、次は駄猫に頼むつもりだった反教会勢力の居場所を突き止めに行こうかな。

 この広い王都をただ宛もなく探し回るなんて野暮なことはしない。
 実は、既に目星はついている。

 そして私はある場所へと向かった。

「たのもー」

 私の声に反応して、中からゾロゾロと強面の男たちが出てきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

慈愛と復讐の間

レクフル
ファンタジー
 とある国に二人の赤子が生まれた。  一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。  慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。  これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。  だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。 大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。  そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。  そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。  慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。  想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...