最後の魔女

砂鳥 ケイ

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最後の魔女46 勝利

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 息が苦しくなってきた。
 まずはこの結界を解除しないと⋯。

 この中じゃ魔法が使えないみたい。
 さっきから使おうとしても一向に発動しない。
 完全な魔女封じだねこれ。

 まぁ、こういう時の対策を講じていない訳がないんだけど。

 地面から現れた植物に、刺さっていた短剣を引き抜かせる。

 途端に結界が消滅する。

 結界内では魔法は使えなくても既に発動させている魔法であれば問題なく発動できるってこと。
 そう、戦いとは常に2手3手先のことを考えておくべき。そうすれば不測の事態にも冷静に対処出来る。

 !?

 背後から殺気を感じ、咄嗟に屈む。

 短剣を手にした暗殺者のようだ。
 危く、十八番の首チョンパされるとこだった。

 仕留め損なった暗殺者はすぐに視界外へと消えた。
 デキル。

 今度は魔法の雨か。
 火の玉やら氷の刃やら酸の雨やら、、鬱陶しい。

 見れば私も10体程の魔族に囲まれていた。

 その時だった。
 私が通って来た転移門からうじゃうじゃと魔族が現れた。
 どうやら地界にいた魔族たちが思惑通りにこっちに戻って来たみたい。

 増援が全員出て来た所で、転移門に仕掛けていた破壊魔法を発動させる。

 凄まじい爆音を発した後、転移門は跡形もなく消え去った。

 作戦成功。さて、帰ろう。

 眷属たちは後で回収すれば⋯って、あれ?
 ベテルギウス、やられてる?

(すみません、リア様⋯)

 うーん、ヴァーミリオンもやられちゃったか。

 でもまぁ、数が流石に多すぎるよね。
 これ500体以上いるんじゃない?
 ていうか私囲まれてるし! 絶対絶命ピンチ!

 でも転移でさようなら! もう会いたくないけどまたね!

 転移を発動しようとするが、発動しない。何故! 誰か説明して。
 そんな私の行動に野次が飛ぶ。

「ハハハッ、まさかこの状況でお前逃げられると思っているのか? これだけのことをしでかしてか?」
「馬鹿か?」
「へっ、その仮面の下で絶望に恐怖してる顔を拝むのが楽しみだなぁ」

 うわぁ、私ってもしかして大ピンチ?
 そんなことよりも何で転移が使えないの?

「ねえ質問。転移が使えないんだけど、何で?」

 魔族たちに盛大に笑われてしまった。
 いやいや、笑わせて和ませるつもりはないんだけど。だって他に聞く相手いないし。

「転移まで使えるのかお前。だが、そいつは残念だったな。大体お前、地界と魔界とが転移で移動出来るはずがないだろう。そんな事が出来ればお前がさっき破壊した転移門を使う意味がねえ」

 あ、それは確かにそうだね。ご丁寧にどうも。
 あれ、でも昔は転移使えたはずなのだけど。

「そんなくだらん台詞が遺言でいいのか?」

 どうやらこの魔族たちは、こんなにもか弱い私のこと殺したいらしい。
 まぁ、これだけ暴れたんだもん。眷属がしたことは主の私も同罪。無理もない。

 全く音を立てずに身の丈程の刀を手にした長身の男が私の背後に立つ。
 その手は刀にのびていた。
 居合ってやつ?
 一瞬の内に斬るやつだよね。
 もしかしてこのまま殺されちゃうのかな。

 そんな私を憂いてではないのだろうけど静止する一声が入る。

「待て、まだ殺すな」

 魔族たちの中でも一際異彩を放っている人物だった。
 異彩と言っても別に光っている訳ではない。
 一言で言うなら強者の匂い。この感覚、見覚えがある。
 地界にいた時にもビシビシ感じていたものだ。
 恐らくミーアの報告にあった魔族の幹部。

「シリュウ様、ですがこちらは同胞を100人近くやられたんですぜ?」
「別に殺すなと言っている訳ではない。コイツが黒幕を喋るまでは殺すなと言うことだ。まさか魔界に単身で乗り込みバックが何もいないとは考えられまい? 他にも仲間が潜入している可能性もあるしな」

 えーと、バックなんて何もいないんだけど⋯
 単身で乗り込んだんだけど⋯

 ちなみに私は今、手足を荊の紐で拘束されている。
 俗に言う大の字の格好。
 魔力を帯びているせいか、決して力では切れない荊。
 もがけばもがく程に荊のトゲトゲが肉に食い込む。

「黒幕は誰だ? 素直に吐けば、苦しまずにすぐに殺してやる」

 黒幕と言われても、別にいないんだけど。
 素直にいないって言ってもきっと信じてくれないよね。

(お姉様! 無事ですか!)

 地界にいるリグからの念話だった。

(うん、問題ない。順調?)
(はい! こっち側の魔族の殲滅が終わりました!)
(分かった)

 リグたちも作戦が終了したようだ。
 ならいつまでもこんな茶番に付き合っている場合じゃないね。

「魔族に忠告。地界を攻めるなら今度は本気で魔界を攻めるから」

 私は転移で魔界を後にする。

 景色は、変わり皆の待つ場所へと戻って来た。

「お姉様! ご無事で!?」

 リグが私に抱き付く。

 同性だし抱き付くのは構わないけど、返り血で酷い事になってない?
 仮にも見た目幼女なんだからもう少し、らしい格好を心掛けて欲しいとお姉ちゃん思うわけだよ。

「そういえば、リアさんと入れ替わるように猫ちゃんがいなくなってしまいましたが?」
「気にしない気にしない」

 最後に使ったのが、ただの転移ではなく、眷属と場所を入れ替わるものだったというのは、黙っておく。
 だけど、転移が使えなかった時はちょっとだけ冷やっとした。

 取り敢えずダーブルまで帰還する。

 予想ではそろそろ魔族を討伐せんと各国から騎士たちが集まってくるはず。

「いい、ニーナ? 今から言う通りに説明して」

 今回の騒動の筋書きをニーナに説明する。
 いつもは駄猫の担当なのだけど、訳あって魔界に出張中だから、仕方がない。

 今回、地界を攻めようとしていた魔族は魔界側で原因不明の問題が起こり、大部分が帰って行った。
 それを好機と判断し、たまたま近くを通りがかった勇者一向が地界に残った魔族を一掃してしまった。
 その過程で転移門を破壊した。
 勇者は名も告げずにそのまま姿を消してしまった。
 めでたしめでたし。

「で、でもそれだとリアさんの功績を誰も⋯」
「そんなもの要らない」
「でも⋯」
「お姉様は名誉や功績ましてや褒章見返りなんてものに興味がないのよ。それより貴女。ちゃんと説明しなさいよ。説明出来るのは貴女しかいないんだからね」
「うん、それは王族である貴女の役目」
「私の役目⋯⋯はい、そうですね。分かりました。その任、ベラキール王国女王仮の私が承りました」
「王国は滅んでない。誤解が解ければきっと、国民たち戻って来る」

 その後、何度もニーナにお礼をされ、ニーナを無人となったベラキール王国へと送り届け、別れた。



 その後、ベラキール王国は数十年を掛けて徐々に復興していき、ニーナは再建後の初代女王として王国を統治した。
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