最後の魔女

砂鳥 ケイ

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最後の魔女59 剣王ドレイク2

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「さて、儂が名乗ったんじゃ。お主らも名乗るが礼儀と言うもの」

 私が名乗ろうとした瞬間、リグが首を振った。

「私は、第9位階悪魔リグレッド・アーネストよ。その子は洗脳し、私に従順な従者をさせているのよ」

 どうやらリグは私を隠す気らしい。

 私が魔女かどうかなど、見破る術は恐らくない。魔法を使っている所を見られない限りは。でも、今の時代なら魔技使いと言い張れなくもない。

「第9位階か。確かに大物じゃな。50年程前に第10位の確かアバドンだったかのぉ、あれ以来じゃて」

 このお爺さん、悪魔討伐の前科持ちらしい。人族の最高戦力の1人なのも頷ける。でも50年前で今もまだ現役なのね。本当に人族なのかどうかも怪しい。
 話の最中にリグは自身に身体強化一式を施し、斬り飛ばされた腕を再生させていた。

「さて、互いに名乗ったことじゃし、わざわざ全快するまで待ってやったんじゃ。本気でその首取らせてもらうかの」

 またしても、ドレイクの姿が消える。それと同時にリグの姿も消えた。

 《視覚超強化》

 これで見える。
 2人は目にも止まらぬスピードで斬り合っていた。
 うん、リグが押されてる。ていうか、防戦一方に見えるけど⋯
 あのお爺さんの速さが尋常じゃないから、魔法を使う隙すらないみたい。悪魔の腕で掴んでしまえば終わるのだろうけど、そんなことさせてくれるはずもない。これはリグが圧倒的に不利ね。リグには悪いけど、このままやられてしまうようなら、助けに入るからね。

 悪魔の腕を硬質化させているのだろうけど、執拗に同じ箇所を斬られ、ついには2本ともが斬り落とされてしまった。リグは喉元に剣を突きつけられ、今にも殺されそうになっている。

 我慢出来ずに私が飛び出そうとした瞬間だった。

 2人の頭上に何かが落下した。
 そのまま大地へと激突し、衝撃波と土煙が辺りに立ち込める。

「帰りが遅いと思えば、一体こんな場所で何をしているのですか」

 宿屋で待機していたはずのシェリだった。

「あ、アンタには関係ない⋯」

 いつもの調子で揶揄っていたシェリだったが、リグのボロボロのその姿を見て、次に私の場所を確認した。

「主を無傷で守り通したのです。誇りなさい」

シェリは、リグに手を差し伸べる。

「なんじゃ、新手の悪魔かのぉ、面倒じゃて」

 ドレイクは先程の神速の抜刀を放つ。
 しかし、それはシェリの右腕を変形させた三又の槍によって阻まれた。

 それをキッカケに今度はシェリとドレイクが高速で斬り合う。
 側から見るに、2人のスピードは互角に見える。そのまま拮抗した斬り合いが暫く続くと、ドレイクが大きく後ろへと跳躍し、シェリとの距離を置く。

「この歳になると体力の消耗が激しくていかんの」

 ドレイクはニヤリと口元に笑みを浮かべる。

 手にしていたのは2本の剣だった。あれは予備の剣じゃなくて、あの剣王もしかして2刀流なの?

 先程よりも明らかにスピードが上がった。
 拮抗していたシェリが段々とその身を斬り付けられ、片腕と片足が斬り落とされてしまう。

「まさか生物ですらないとはな。お前さんの正体に非常に興味をそそられるが、今は任務を優先せねばならん。悪く思うな」

 シェリは、一瞬こちらに視線をくべるとニコッとだけ微笑んだ。

「あっ⋯だめ⋯」

 シェリが何を考えているのか私には瞬時に分かった。
 でも、もう止められない。

 シェリ自身が起爆剤となりその場で爆発してしまった。

 それは、ここら一帯を巻き込む程の大きなものだった。
 シェリが自らを犠牲にし、道連れを図ったのだ。

 私はその思いを組むべく、リグを探した。それは、見つけて転移で逃げる為だった。

 しかし、私の思惑は阻まれてしまう。

「逃げられると思っておるのか?」

 私の前に立ち塞がったドレイクは、左腕から出血していた。致命傷とまでは行かないまでも、それなりにダメージは入っている。このまま血を流し続ければそれこそ命の危険だってあるだろう。
 出来ることならこのまま引いて欲しい。

「誰だね、お前さんは」

 ドレイクの向こう側に立っていたのは、私の知らない姿をした|リグ(・・)だった。
 何故分かったのかは私にも分からない。ただ、何となくそんな気がするだけ。
 リグのその姿は、子供と大人くらいの体格差があった。
 今までのリグが大きくなったらきっとこんな感じなんだと思う。

「見逃してあげるから去りなさい」

 冷徹な眼差しで透き通るような声色で発せられた言葉⋯⋯声も以前とは全然違う。

「世迷言を──」

 一瞬だけ、私の身体がビクリと震えた。

 これは⋯⋯リグの威圧?
 今まで見て来たものとは比べものにならない程に強力な威圧。

 間近で感じたドレイクは、たまらず離れて距離を置いた。
 その額からは滝のような汗を流していた。

「どうやら退いた方が良さそうじゃな。じゃが、覚悟しておくんじゃな。お前さんが今後安眠出来る日は二度と来ないとな」

 気が付いたらお爺さんの姿は何処にもなかった。
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