最後の魔女

砂鳥 ケイ

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最後の魔女64 悪魔の試練

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次に意識が戻った時、私は全く別の場所にいた。

 今度は⋯⋯うん、身体はあるねって、私の身体小さっ!

 赤ちゃんだよねこれ、前世の記憶を持ったまま赤子なんて、何か変な感じ。
 声は⋯出ないか。身体もあんまし動かないし。大人しくしていた方がいいか。

 でも、これ一体何処なんだろ。
 首が回らないから、あまり見えないんだけど、何だか洞窟みたいな所かな。にしても、赤子の私以外辺りには何に見えないんだけど。

 親は? 食べ物は? おもちゃは?

 悪魔の育成事情は知らないけど、もしかして、自分1人で何とかしないといけないの?

 まじかぁ⋯

 堕天してから一体どれくらいの時間が経ったのか。
 相変わらず誰もこの洞窟に来る気配はない。一番心配していた食事の心配だけど、どういった訳か、この身体。全く食事を必要としない。お腹は空かないし、喉も乾かない。その代わりに今一番の悩みの種は⋯
 
 暇過ぎるってこと!

 ただ寝てるだけって言うのが、こんなにも辛いものだとは思わなかった。

 だから、私が余り余る時間を使って今していることと言えば、自分の身を護る為の特訓。
 だって、こんなか弱い存在、どんな魔物が来たってやられる自信があるよ?
 流石に十二星の時のように神力は使えないけど、悪魔にはまた別の力があるみたい。悪魔だから、魔力かな?
 絶賛、魔力を練って練って魔法を独学勉強中。

 自分で立って歩くより、魔法で身体を動かす方が早いだなんて、何だか変な感じ。でも、気を付けないと魔力を使い切っちゃうと凄まじい睡魔が襲って来る。


 幾ばくかの歳月が流れ、私も立って歩けるまでに成長した。

 最近励んでることと言えば、そう、ハンティング。狩りだ。

 逃げ惑う野生動物たちを追いかけ回し、取得した魔法でバッタバッタと薙ぎ倒していく。

 あっはははー、私の前からは何人たりとも逃げることは叶わないのだ!

 何だか、悪魔に転生してからと言うもの、その、性格が徐々に捻じ曲がってきてる気がする。
 最初は勘違いかもと思っていたけど、どうやらそうではないみたい。時々考えが野蛮な方向に進んじゃう時がある。なんでも力で解決すればいい的な?
 今はまだ、違和感を覚えるから後戻り出来てるけど、これって前世の十二星としての記憶がなくなっちゃえば、私という存在はどうなるのだろうか。
 そんなことを考えていると凄く怖い。
 記憶を失いたくない。
 現に、昔ほど十二星としての記憶を覚えていないのもまた事実。

 そして私は悩んで悩んで考え抜いて一つの答えに辿り着いた。
 それは、記憶を無くさない魔法を覚えればいいんだと。
 なんだっ、簡単じゃん! 流石私、天才!

 しかし、そもそもが原理を把握していない魔法を一から考えて取得するなど、不可能に近かった。
 だけど、私には膨大な時間がある。
 そのあまり余った時間を使って、ついに⋯ついに!
 出来ちゃったんだよ!

 名付けて、『記憶の定着メモリーロック

 我ながらネーミングセンスに惚れ惚れするね。
 実際の効果の程は時間を掛けないと分からないけど、たぶん成功してると思う。
 だって、新たな魔法が完成した時って、こう、頭の中にビビーっていう電気が流れるんだよね。

 それからも私は、魔法について独学で習得し、いつしか数年の歳月が過ぎ去っていった。

 そして、ある決断ををする。

「よおし、この住み慣れた洞窟から巣立つ時が来たのだ!」

 身体も10歳児程度には成長し、もはや自分の脚で動き回るにも支障はなくなったのが決め手だった。
 しかし、そう思った矢先、ある事件が起こった。

 コツコツと、規則正しい音が、洞窟の入り口の方から聞こえて来る。

 誰だろう、初の侵入者さんは?

 私は正直甘かった。

 幾多の魔法を取得し、最早この辺りには私に倒せない敵はいなかった。そんなことも相まって、天狗になっていた。

 曲がり角に差し掛かり、相手の姿が遠目で視認出来る距離まで近付いた。
 目が合った一瞬にして、恐怖が全身を駆け巡る。
 まるで金縛りにでもあったように、息も出来なくなり、堪えきれず、その場に膝をついて倒れ込む。

「コレハ驚イタナ」

 恐怖と威圧感から、顔を上げることが出来ない⋯
 その顔、姿を窺い知ることが出来ない⋯
 何やらボソボソ喋ってるけど、上手く聞き取れない⋯
 何だろう⋯意識が段々と遠退いて⋯

「⋯貴様ニハ⋯悪魔ニナル試練ヲ⋯与エル⋯」

 途切れ掛けた意識が凄まじい痛みで我へと帰る。
 ちょっと待って、何、なに⋯待って待って⋯ヤバい。

 あまりの痛みに、洞窟内を転げ回る。

 な、何かが入ってくる⋯はぁ⋯はぁ⋯

 いだああああああいい⋯
 痛い痛い痛い痛い⋯痛いよ⋯

 身体全身を何かが駆け巡る。
 その痛みは、全身を鋭利な刃で斬り刻まれているようだった。痛みを通り越すと、やがて今度は何も感じなくなった。

 そうして次に気が付いた時は、こことは全く別の場所だった。
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