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最後の魔女72 油断大敵
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あっ、暗殺者くんがやられちゃった。
さっきからちょこまかと持ち前の速さで翻弄していたみたいだけど、そんな程度じゃ私でも余裕で躱せるよ。
暗殺者ジェイクをサポートする為に近くまで来ていたユリアーナ。魔族は次なるターゲットをユリアーナに定めてしまった。ユリアーナは最早戦う気力がないのか、腰を抜かしその場に尻もちをついた。
魔族は何の躊躇いもなくジタバタともがくユリアーナに向かい、その鋭利な爪を振り下ろした。
「ちょっとアンタ。私の友人に何してんのよ」
悪魔の腕でその爪を掴む。そのまま握り潰してやるわ。
ググゥ⋯!
駄目ね、びくともしない。中々硬いわね。
仕方がないので神速の腹パンで魔族を弾き飛ばす。
恐怖のあまり目を閉じていたユリアーナが、徐にその目を開ける。
「リ、リグレッドなの?」
「説教は後。邪魔だからそいつら連れて下がってて」
転がっていた勇者と暗殺者くんを無造作に掴むとユリアーナの隣に放り投げる。
かなり遠くまで飛ばしたはずの魔族が一瞬で元の位置まで戻って来た。
え、何それ、転移か何か?
うんと、コイツやっぱり私より強くね?
「ナゼ悪魔ガ我ノ邪魔ヲスル」
「あ、アンタ喋れるのね。理由なんて一つよ。私の友人に先に手を出したのはアンタの方でしょ。だけど、このまま黙って引き下がるなら見逃して上げないでもないわ」
悪魔の敵は、別に人族だけではない。悪魔は他種族を認めない至上主義。それには当然のことながら魔族も含まれる。
しかし、人族よりも交戦的かつ強者である魔族には、基本的に関わらないという暗黙の了解があった。
「断ル。我ヲ邪魔シタ貴様モ纏メテ始末シテクレル」
あちゃあ、やっぱし駄目か。
「折角見逃してあげるって言ったのに」
《僕召喚:黒騎士カーバイン》
何処からともなく全身が漆黒の甲冑を身に纏った騎士が現れた。それは、最近使えるようになったとっておきの魔法。俗に言う、アンタ程度私が相手をするまでもないって言うやつね。
「主人は何を御所望で?」
「あの目障りな魔族を排除しちゃって」
「御意」
カーバインは一歩だけ踏み出すとその場から消えた。正確には常人には消えたように見える程の速さで魔族へと神速の一太刀を浴びせた。
魔族は避けるでもなく、受けるでもなかった。その一太刀を右手を犠牲にすることで受け止めたのだ。アレクシスの攻撃を受け流した硬度な皮膚はカーバインの一太刀ですら切断するには至らず、その強靭な皮膚で切先を受け止めた。
悪魔の姿が一変する。
人一人を丸ごと咥えられるサイズの大口を開けた魔族は動きを止められたカーバインをそのまま丸呑みしてしまった。
これには流石のリグも口をあんぐり開けて呆然としていた。
う、うそん。そんなのあり?
あまりにも呆気ない幕切れに完全に油断していた。
悪魔は姿を隠し、リグのすぐ背後へと迫っていた。
「ちょっと、何処行ったのよ!」
「リグレット! 背後よ」
ユリアーナの声に反応し、地面に寝そべる形で身を屈めた。そのすぐ上を鋭利な爪が通過する。そのまま悪魔の腕で魔族を掴み掛かるも、またしてもその場から消えてしまった。
魔族の名前は、ギルバトリア・ウェルズ。二つ名を連転のウェルズ。二つ名で呼ばれること自体が魔族として相当強者の部類に入る。更にウェルズには特異な能力を持っていた。
それは、主に魔族が扱うことの出来る移動魔法《転移》。本来ならば一日の回数制限のある転移をウェルズに至っては無条件で連続転移出来る固有能力を持っていた。
消えたように見えたのは、本当にその場から消え、瞬時に別の場所へと移動していたのだ。
得意の神速の悪魔の腕ストレートも不意打ちでもしない限りは空振りに終わってしまう。圧倒的に不利な状況に陥っていた。
不用意に近付いたら、あの爪で八つ裂きにされるかカーバインみたいに呑まれちゃう。生きたまま丸呑みにされるのだけは勘弁して欲しい。
リグが次の手段を決めかねていると先に動いたのはウェルズだった。
ウェルズの周囲に拳大程の紫色の球体が全部で3つ浮かんでいた。
《紫念操爆球》
えっと、その球ヤバくない? かんなり強い魔力を感じるんですけど。まさか⋯そのまさか?
ウェルズが高らかと挙げた右手を振り下ろす。
紫色の球がリグ目掛けて襲って来る。
やっぱりこっちに来るのかああ!
魔法の類は悪魔の腕では防げない。
故に避けるか耐えるしかない。
一発目をジャンプで躱す。
着弾箇所が凄まじい爆音と共に爆ぜる。衝撃と共に辺りに土煙が舞った。
この視界の悪さなら私を追えないでしょ。背後に周って反撃してやるわ。
しかし、リグの予想とは裏腹にウェルズの放った紫念操爆球は、指定した相手の魔力に反応し追従するものだった。
気が付いた時には、もはや避けることは間に合わず、直撃を貰ってしまった。
「リグレットっ!!」
ユリアーナの叫び声が虚しく響き渡る。
さっきからちょこまかと持ち前の速さで翻弄していたみたいだけど、そんな程度じゃ私でも余裕で躱せるよ。
暗殺者ジェイクをサポートする為に近くまで来ていたユリアーナ。魔族は次なるターゲットをユリアーナに定めてしまった。ユリアーナは最早戦う気力がないのか、腰を抜かしその場に尻もちをついた。
魔族は何の躊躇いもなくジタバタともがくユリアーナに向かい、その鋭利な爪を振り下ろした。
「ちょっとアンタ。私の友人に何してんのよ」
悪魔の腕でその爪を掴む。そのまま握り潰してやるわ。
ググゥ⋯!
駄目ね、びくともしない。中々硬いわね。
仕方がないので神速の腹パンで魔族を弾き飛ばす。
恐怖のあまり目を閉じていたユリアーナが、徐にその目を開ける。
「リ、リグレッドなの?」
「説教は後。邪魔だからそいつら連れて下がってて」
転がっていた勇者と暗殺者くんを無造作に掴むとユリアーナの隣に放り投げる。
かなり遠くまで飛ばしたはずの魔族が一瞬で元の位置まで戻って来た。
え、何それ、転移か何か?
うんと、コイツやっぱり私より強くね?
「ナゼ悪魔ガ我ノ邪魔ヲスル」
「あ、アンタ喋れるのね。理由なんて一つよ。私の友人に先に手を出したのはアンタの方でしょ。だけど、このまま黙って引き下がるなら見逃して上げないでもないわ」
悪魔の敵は、別に人族だけではない。悪魔は他種族を認めない至上主義。それには当然のことながら魔族も含まれる。
しかし、人族よりも交戦的かつ強者である魔族には、基本的に関わらないという暗黙の了解があった。
「断ル。我ヲ邪魔シタ貴様モ纏メテ始末シテクレル」
あちゃあ、やっぱし駄目か。
「折角見逃してあげるって言ったのに」
《僕召喚:黒騎士カーバイン》
何処からともなく全身が漆黒の甲冑を身に纏った騎士が現れた。それは、最近使えるようになったとっておきの魔法。俗に言う、アンタ程度私が相手をするまでもないって言うやつね。
「主人は何を御所望で?」
「あの目障りな魔族を排除しちゃって」
「御意」
カーバインは一歩だけ踏み出すとその場から消えた。正確には常人には消えたように見える程の速さで魔族へと神速の一太刀を浴びせた。
魔族は避けるでもなく、受けるでもなかった。その一太刀を右手を犠牲にすることで受け止めたのだ。アレクシスの攻撃を受け流した硬度な皮膚はカーバインの一太刀ですら切断するには至らず、その強靭な皮膚で切先を受け止めた。
悪魔の姿が一変する。
人一人を丸ごと咥えられるサイズの大口を開けた魔族は動きを止められたカーバインをそのまま丸呑みしてしまった。
これには流石のリグも口をあんぐり開けて呆然としていた。
う、うそん。そんなのあり?
あまりにも呆気ない幕切れに完全に油断していた。
悪魔は姿を隠し、リグのすぐ背後へと迫っていた。
「ちょっと、何処行ったのよ!」
「リグレット! 背後よ」
ユリアーナの声に反応し、地面に寝そべる形で身を屈めた。そのすぐ上を鋭利な爪が通過する。そのまま悪魔の腕で魔族を掴み掛かるも、またしてもその場から消えてしまった。
魔族の名前は、ギルバトリア・ウェルズ。二つ名を連転のウェルズ。二つ名で呼ばれること自体が魔族として相当強者の部類に入る。更にウェルズには特異な能力を持っていた。
それは、主に魔族が扱うことの出来る移動魔法《転移》。本来ならば一日の回数制限のある転移をウェルズに至っては無条件で連続転移出来る固有能力を持っていた。
消えたように見えたのは、本当にその場から消え、瞬時に別の場所へと移動していたのだ。
得意の神速の悪魔の腕ストレートも不意打ちでもしない限りは空振りに終わってしまう。圧倒的に不利な状況に陥っていた。
不用意に近付いたら、あの爪で八つ裂きにされるかカーバインみたいに呑まれちゃう。生きたまま丸呑みにされるのだけは勘弁して欲しい。
リグが次の手段を決めかねていると先に動いたのはウェルズだった。
ウェルズの周囲に拳大程の紫色の球体が全部で3つ浮かんでいた。
《紫念操爆球》
えっと、その球ヤバくない? かんなり強い魔力を感じるんですけど。まさか⋯そのまさか?
ウェルズが高らかと挙げた右手を振り下ろす。
紫色の球がリグ目掛けて襲って来る。
やっぱりこっちに来るのかああ!
魔法の類は悪魔の腕では防げない。
故に避けるか耐えるしかない。
一発目をジャンプで躱す。
着弾箇所が凄まじい爆音と共に爆ぜる。衝撃と共に辺りに土煙が舞った。
この視界の悪さなら私を追えないでしょ。背後に周って反撃してやるわ。
しかし、リグの予想とは裏腹にウェルズの放った紫念操爆球は、指定した相手の魔力に反応し追従するものだった。
気が付いた時には、もはや避けることは間に合わず、直撃を貰ってしまった。
「リグレットっ!!」
ユリアーナの叫び声が虚しく響き渡る。
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