76 / 110
最後の魔女75 未来を変える
しおりを挟む
恐る恐る目を開ける。
あぁ、私の身体⋯ちゃんとあるね。無事に戻ってこれたみたい。だけど、え、この夥しい量の血。私のだよね。ヤバくね。サンドバックってこゆこと?
⋯ヤバい。今戻った意識がまた遠退きそう。
私はウェルズの度重なる魔法を受け、既に瀕死の状態だった。ユリアーナは、うん大丈夫だね。まだ生きてる。
ボロボロだけど私は倒れなかった。『アンタのそんなチンケな魔法如きいくら喰らっても平気なんだからね!』って言う精一杯の強がりのつもりだった。
でも、そんな私の無駄な努力が功を奏したようだ。痺れを切らした魔族がユリアーナをその場へ放り投げ、私目掛けてその鋭利な爪を振るう。
こんな状態だからもう動けないと思ったのだろう。直接その首を狙いにきた。
アンタの考えは概ね正しい。だけど分かってないことがあるよ。
それはね、私が悪魔一の負けず嫌いってことだよ。
引き付けて引き付けて、私の首に触れるその瞬間。悪魔の腕で爪を掴み上げる。
「痛ったいっつってんでしょうがぁぁ!」
転移の隙を与えずただひたすらに殴り続ける。腹や足や手、そして顔を入念に。
ひとしきり殴り終えると、魔族はピクリとも動かなくなり、絶命した。それを確認した私もその場に死ぬように崩れ落ちる。
薄れゆく意識の中で誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえる。あぁ、もう一歩も動けないや⋯まぶたが重い。でも、これであの最悪な未来は回避出来たよね。ざまぁみなさいよ。
あぁ⋯これ⋯で⋯悔いは⋯ない⋯。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
フカフカな感触。何処からともなく匂ってくる良い香り。
もしかしてここが噂に聞いた天国かしら。期待に胸膨らませ目を開ける。
見慣れない白い天井。木漏れ日がさして少しだけ眩しい。
隣で可愛らしく『スースー』と寝息を立てているのは、ユリアーナだった。
私、生きてたんだ。何も覚えていないけど、ユリアーナに助けられて看病されてたのだろうか。看病中に疲れて寝ちゃったのかな。そんなユリアーナの顔をジーッと眺める。
暫く眺めていると私の視線に気付いたのか、小さく伸びをした後に薄らと目を見開いた。
「おはよう」
「おはようリグレ⋯⋯って目が覚めたの!」
ユリアーナは驚いた表情を見せたかと思えば今度は目に涙を浮かべていた。
「うーん、どうやら生きてたみたいって、わわっ」
私に抱き付き、そのまま大泣きしてしまった。
何というかこんな経験がない為、こういう場合にどのような対応を取っていいものか分からない。一人ワタワタと慌てつつも、頭をワシャワシャと撫でる。結局はユリアーナが泣き止むまで付き合うこととなった。
その後、ベッドから降りた私の姿を見て、ユリアーナが赤面すると、すぐさまベッドの中へと戻される。
「そ、そういえばリグレッドの服、血で汚れちゃってたから全部脱がしていたのを忘れてた。ちょっと今から買ってくるからこの部屋から絶対に出ないでね」
ドタドタとユリアーナが部屋を出る。
改めて自分の姿を見ると、確かに一糸纏わぬ姿だった。
悪魔は他種族と違い、ある程度成長しきると姿形はそのままで止まってしまうという特性を有している。そんな中でリグレットの場合は珍しく、幼女の姿のまま見た目の成長はストップしていた。
「変なの。こんなチビ助の姿で、すっぽっぽんでも別に誰も気にしないでしょうに」
私は目が覚めてからあることをずっと考えていた。
それは、あの思念だけの状態でいた時に怪しげな人物⋯⋯いいえ、アプロディーテ様に頂いた褒美についてだった。
私はあの時、前世の記憶の断片を善行の褒美と言う形で授かった。
私はどうやら前世は十二星なる神様みたいな存在だったらしい。詳しい経緯は分からないけど、大昔に大罪を冒して悪魔に転生とか冗談みたいな本当の話。
でもこれで今まで感じていた疑問とか違和感とかの正体が一本の線に繋がった。悪魔なのに命を奪う争いに抵抗があったのはそう言うことなのね。前世の私の意思が拒絶していたってことだよね。
まぁでも前世の記憶を多少思い出したって程度で、私としての人格とか性格だとかは変わっていない⋯と思う。時間差でこれから変わっていけば分からないけどね。
そんなこんな自問自答していると袋をたくさん手に携えたユリアーナが入って来た。
「リグレット。さぁ、お着替えの時間よ」
なんで、顔がニヤニヤしてるんだろうと思いつつ、その後私は丸一日中、抵抗の甲斐も虚しくユリアーナの着せ替え人形と化すのであった。
あぁ、私の身体⋯ちゃんとあるね。無事に戻ってこれたみたい。だけど、え、この夥しい量の血。私のだよね。ヤバくね。サンドバックってこゆこと?
⋯ヤバい。今戻った意識がまた遠退きそう。
私はウェルズの度重なる魔法を受け、既に瀕死の状態だった。ユリアーナは、うん大丈夫だね。まだ生きてる。
ボロボロだけど私は倒れなかった。『アンタのそんなチンケな魔法如きいくら喰らっても平気なんだからね!』って言う精一杯の強がりのつもりだった。
でも、そんな私の無駄な努力が功を奏したようだ。痺れを切らした魔族がユリアーナをその場へ放り投げ、私目掛けてその鋭利な爪を振るう。
こんな状態だからもう動けないと思ったのだろう。直接その首を狙いにきた。
アンタの考えは概ね正しい。だけど分かってないことがあるよ。
それはね、私が悪魔一の負けず嫌いってことだよ。
引き付けて引き付けて、私の首に触れるその瞬間。悪魔の腕で爪を掴み上げる。
「痛ったいっつってんでしょうがぁぁ!」
転移の隙を与えずただひたすらに殴り続ける。腹や足や手、そして顔を入念に。
ひとしきり殴り終えると、魔族はピクリとも動かなくなり、絶命した。それを確認した私もその場に死ぬように崩れ落ちる。
薄れゆく意識の中で誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえる。あぁ、もう一歩も動けないや⋯まぶたが重い。でも、これであの最悪な未来は回避出来たよね。ざまぁみなさいよ。
あぁ⋯これ⋯で⋯悔いは⋯ない⋯。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
フカフカな感触。何処からともなく匂ってくる良い香り。
もしかしてここが噂に聞いた天国かしら。期待に胸膨らませ目を開ける。
見慣れない白い天井。木漏れ日がさして少しだけ眩しい。
隣で可愛らしく『スースー』と寝息を立てているのは、ユリアーナだった。
私、生きてたんだ。何も覚えていないけど、ユリアーナに助けられて看病されてたのだろうか。看病中に疲れて寝ちゃったのかな。そんなユリアーナの顔をジーッと眺める。
暫く眺めていると私の視線に気付いたのか、小さく伸びをした後に薄らと目を見開いた。
「おはよう」
「おはようリグレ⋯⋯って目が覚めたの!」
ユリアーナは驚いた表情を見せたかと思えば今度は目に涙を浮かべていた。
「うーん、どうやら生きてたみたいって、わわっ」
私に抱き付き、そのまま大泣きしてしまった。
何というかこんな経験がない為、こういう場合にどのような対応を取っていいものか分からない。一人ワタワタと慌てつつも、頭をワシャワシャと撫でる。結局はユリアーナが泣き止むまで付き合うこととなった。
その後、ベッドから降りた私の姿を見て、ユリアーナが赤面すると、すぐさまベッドの中へと戻される。
「そ、そういえばリグレッドの服、血で汚れちゃってたから全部脱がしていたのを忘れてた。ちょっと今から買ってくるからこの部屋から絶対に出ないでね」
ドタドタとユリアーナが部屋を出る。
改めて自分の姿を見ると、確かに一糸纏わぬ姿だった。
悪魔は他種族と違い、ある程度成長しきると姿形はそのままで止まってしまうという特性を有している。そんな中でリグレットの場合は珍しく、幼女の姿のまま見た目の成長はストップしていた。
「変なの。こんなチビ助の姿で、すっぽっぽんでも別に誰も気にしないでしょうに」
私は目が覚めてからあることをずっと考えていた。
それは、あの思念だけの状態でいた時に怪しげな人物⋯⋯いいえ、アプロディーテ様に頂いた褒美についてだった。
私はあの時、前世の記憶の断片を善行の褒美と言う形で授かった。
私はどうやら前世は十二星なる神様みたいな存在だったらしい。詳しい経緯は分からないけど、大昔に大罪を冒して悪魔に転生とか冗談みたいな本当の話。
でもこれで今まで感じていた疑問とか違和感とかの正体が一本の線に繋がった。悪魔なのに命を奪う争いに抵抗があったのはそう言うことなのね。前世の私の意思が拒絶していたってことだよね。
まぁでも前世の記憶を多少思い出したって程度で、私としての人格とか性格だとかは変わっていない⋯と思う。時間差でこれから変わっていけば分からないけどね。
そんなこんな自問自答していると袋をたくさん手に携えたユリアーナが入って来た。
「リグレット。さぁ、お着替えの時間よ」
なんで、顔がニヤニヤしてるんだろうと思いつつ、その後私は丸一日中、抵抗の甲斐も虚しくユリアーナの着せ替え人形と化すのであった。
0
あなたにおすすめの小説
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です
流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。
父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。
無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。
純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
三年目の離婚から始まる二度目の人生
あい
恋愛
三年子ができなければ、無条件で離婚できる――王国の制度。
三年目の夜、オーレリアは自らその条文を使い、公爵ルートヴィッヒに離婚を告げた。
理由はただ一つ。
“飾り”として生きるのをやめ、自分の手で商いをしたいから。
女性が公の場で立てる服を作るため、彼女は屋敷を去り、仕立て屋〈オーレリア・テイラーズ〉を開く。
店は順調に軌道に乗り、ついに王女の式典衣装を任されることに。
だが、その夜――激しい雨の中、彼女は馬車事故に遭い命を落とす。
(あと少し早く始めていたら、もっと夢を叶えられたのに……)
そう思った瞬間、目を覚ますと――三年前、ルートヴィッヒと結婚する前の世界に戻っていた。
これは、“三年目の離婚”から始まる、二度目の人生。
今度こそ、自分の人生を選び取るために。
ーーー
不定期更新になります。
全45話前後で完結予定です、よろしくお願いします🙇
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる