最後の魔女

砂鳥 ケイ

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最後の魔女87 鉱山都市トレランス2

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ゴツゴツした荒地を抜けると一転して今度は細い洞窟の中を走り出した。
 同程度の馬車がすれ違えるかどうかの広さしかない道をかれこれ3時間くらい走っている。
 ここはドワーフたちが一から開拓した場所だと聞いている。
 いくら穴を掘るのが得意と言っても一体何人のドワーフたちとどれだけの時間を費やせばこれ程巨大な穴が掘れるのだろう。
 洞窟を抜けた先に待っていたのは、一際広い大孔洞に見事なまでの建造物が建っている。いや、建っているのではなくこれも洞窟を掘って作ったのだろう。全貌の程は知れないけど。噂によれば複数の山の中を削り作った都市と言われていることから相当な広さがあるのだろう。
 それに、洞窟の中なのに地上のように明るいのは何故だろう。

「お姉様、あれを見て」

 リグが指差す先には、何もない岩肌が光っている光景だった。

「コケが自ら発光しているんです。昔、書庫にある本で読みました。ここトレランス内の岩肌は光ゴケが自生しています。特殊な場所を除き、この世界広しと言えど、ここトレランスだけです」
「あら詳しいじゃない」
「本を読むのは好きなので⋯」

 そうしてまたフードを深々と被ってしまった。
 うん、怯えてる顔じゃなくて、笑ってる顔は凄く可愛らしいと思うよ。

「ねぇ、貴女はそうまでしてこの場所に何をしに来たの?」
「それは⋯」

 すごく言い難いことなのだろうか。
 無言の時間が続いていると、馬車がパタリと止まる。

「おーい、到着だぞ。ここが鉱山都市トレランスの中央区だ」

 馬車から降りる。
 新天地での第一歩は何というか、大事にしたい。周りの環境と一緒に踏み締めるように降り立つ。

「まずは、宿屋探しですか、お姉様」

 そうだね。あれ、あの子がいない。
 周りの景色に見惚れているといつの間にやら居なくなっていた。

 余計なお世話かも知れないけど、1人で大丈夫なのだろうか。こっちに知り合いでもいるのならいいのだけど。少しだけ心配ね。

 《眷属召喚サモンミウ

「ミウ。一緒に乗ってたあの子を陰ながら護衛してあげて」
「了解だよリアちゃん」

 可愛らしく『テヘッ』とポーズを取ると、そのまま姿を消した。
 ミウは、隠密に長けた妖精さん。

「またお姉様の心配性ですか」

リグはやれやれと両手を広げる。

「気になるだけ」

 ひとまず当面お世話になるであろう宿探しを開始する。どうせ長く滞在ことになるからと宿はいつもケチって安宿を選定していた。

「これはやり過ぎじゃ⋯」

 宿探しをリグに一任した結果、何だか凄いとこに泊まることになった。
 えっと、眺めもいいし、広さも軽く10人くらい入れそうだしって、これかなり高いんじゃないの?

「盗賊共から頂いた資金が山程ありますからね。軽く一ヶ月は滞在出来ますよ」

 キラキラした目で見つめないで欲しい。否定し難いじゃない。それに、え、ちょっと待って。あれだけの資金を宿代だけでたったの一ヶ月で使い切るつもりなの⋯。

 改めて金額を確認すると、一泊銀貨30枚ってシュメルハイツの宿の20倍だよ。金銭感覚おかしくなりそう。

 ダメだよこんな高いとこ。すぐに別の部屋に──

「でもお姉様、ここなら部屋に露天風呂がついてますよ」

 え、露天風呂? 
 しかも部屋付き?

 冷静さを装い、広い部屋内を散策すると、階段があり、昇っていくと屋上らしき場所へと通じていた。
 なんと、その先に広がっていたのは屋上一面が大展望露天風呂になっていたのだ。
 ま、まぁ、今更仕方がないよね。可愛い妹が選んでくれたのだから。ここにしようそうしよう。

 早速長旅の疲れを癒すべく露天風呂に浸かろうとした矢先、緊急の連絡が入る。

(リアちゃん! 大変大変だよ!)

 馬車で乗り合わせた女の子の警護を頼んでいたミウからの連絡だった。

(あの子、1人でモンスターのいる炭鉱の中に入っちゃって、戦えるのかと思ったら逃げ回るだけで、とにかく隠れて援護するにも限界があるよ!)

 ぐぬぬ⋯。目の前に至宝のお風呂があるのに。
 むぅ。許すまじ。

 その後私とリグは、ミウの居る場所へと急行した。
 ミウの周りには炭鉱に生息しているモンスターの死骸が散らばっていた。

「ありがとうね、ミウ。彼女はどこ?」

 ミウが指差した先で気を失って座り込んでいた女の子の姿があった。
 ミウを撫でて労う。ミウは嬉しそうに小さな身体をクネクネさせていた。

 こんな場所に放置も出来ないし、意識を取り戻してまた逃げられてもかなわないから、リグに彼女を宿屋まで運んで貰った。
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