最後の魔女

砂鳥 ケイ

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最後の魔女90 錬金術師アルナ

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「よりによって最も製法が難解で困難な万能薬ですか」

 アルナが難しい顔をして、眉を押さえる。

「やっぱり難しい?」
「いえいえ、そんなことはありません。リア様の為ならば例え万能薬であろうが不老不死の薬であろうが若返り薬であろうが何でも作らせて頂きますよ」

 ん、不老不死? 若返り? なにそれちょっと欲しいかも。

「材料はありますか?」
「え、あ、うん」

 邪念を振り払い、マジックバックから万能薬製薬に必要な材料一式を取り出す。アルナはそれらを一頻り眺めると満足そうに頷いた。

「すぐに終わります」

 アルナは鋭い眼差しでそれらを見つめると、何やらブツブツと声にならない小声で呟いた後、何処からともなくガラスの大瓶を取り出した。
 私は魔女。錬金術師ではないから製法の原理などは知らない。だけど、普通の錬金術師はきっともっと別なやり方だと思う。

 材料が宙を舞い、それが見えない速さで光速回転し、混ざり合っていく。その度に赤や青、黄に緑と様々に光り輝き、やがて動きが止まる。
 見えないフラスコにでも入っているかのように虹色の液体が丸く象って宙を浮いていた。
 アルナが指をガラスの大瓶へ向けると虹色の液体が全て中に入ってしまった。

「リア様、ご依頼の品成功致しました。材料が多かったので約二十回分の用量完成しました。お納めください」

 アルナは正座したまま、腰を折り私に万能薬入りのガラス小瓶を差し出した。
 え、これ二十回分もあるの⋯。
 製薬に要した時間はおよそ一分。アルナは優秀なのだ。性格というか性壁にやや難ありだけど。

「ありがと」

 その後、戻って行くまでその何十倍もの時間を費やし、揉みくちゃにされてしまった。

「はぁぁ⋯⋯いい⋯。やっぱりお風呂こそ至宝」

 アルナから解放された私は、贅沢極楽気分を味わっていた。

 予想外に早く終わってしまい、リグたちが帰って来たのは陽が完全に沈みきった頃だった。自分だけ何だか楽をしているみたいで少しだけ罪悪感を感じてしまう。

「取り敢えず、2人ともお風呂入って来て」

 だって、全身泥だらけなんだもの。あんなんじゃ、せっかく綺麗なベッドが汚れちゃう。

「リリナもありがと。2人と一緒にお風呂入る?」
「妖精はクリーンの魔法が永続していますから汚れる心配はないんですよ」

 へぇ、そうなんだ。確かに光り輝いているけど。だけど、汚れてなくても浸かるだけで極楽が体感出来るんだけどなぁ。妖精さんにはまだ分からないか。
 苦労はしたけど何とか幻想花を二輪採取出来たらしい。シルフィはすぐにでも解呪薬を作り、一刻も早く母の元へと戻りたそうな顔をしていた。だけど、夜も遅く、何より不法に通行するならば賑やかな日中の方が都合がいいという事で製薬は明日行うこととなった。フカフカの高級なお布団へと転がり込む。魔女である私は特段睡眠は必要ないのだが、最近はこのフカフカモコモコの虜になっている。そのまま目を瞑ると朝になってたりする。睡眠も悪くないなぁと思った。
 目を瞑ってすぐに右側からすぐに何者かの侵入があった。
 振り向くと、リグが私のすぐ横で気持ち良さそうに目を眠っている。
 その一瞬で寝る特技羨ましい。あとさ、何でいっぱいベッドがあるのにわざわざ同じベッドを使うの⋯。解せない。

 次の日の朝一番にアルナに頼み解呪薬を作って貰った。
 当然のことながら、召喚の駄賃として揉みくちゃにされたのは言うまでもない。
 当然のことながら、皆がまだ寝ているうちに終わらせたことも言うまでもない。

 私たちは、シルフィと共にバラム王国を訪れることとなった。
 馬車を使い、元来た道を逆走である。だけど、今度は私のマイ馬車とバッカスに御者を依頼した。
 道中は不可視の魔法をかけており、タイミングを見計らい関所を通り過ぎるを繰り返す。

 バッカスは早かった。
 行きは4日掛かった行程が、半分以下の一日半でシュメルハイツへと到着し、更に一日を費やしバラム王国へと到着した。

「貴女たちは一体何者なのですか⋯」

 ここまでかなーり、普通じゃないことを魔法の力でやってきていたので、流石にシルフィに警戒されてしまったみたい。

「正義の味方」

 どやっ。
 最近は困ったときはいつもこう言ってる。信用出来ない人物は記憶の改竄を行うけど、そうでない人には何もしていない。もし仮にそれで正体がバレてしまった時は素直に諦めるだけ。私の見立てが甘かっただけ。

 そうしている内に巨大なお城の前を通り過ぎ、離れにある小さな古屋の更に裏口へと通された。

「お待ちしておりました。よくぞご無事で」

 迎え入れてくれたのは、メイドさんの姿をした若い女性だった。
 恐らく、話に聞いていた女王様付きの女中かな。
 私たちの姿を見て少しだけ驚いた表情をするもシルフィの無言の頷きでそれを理解したのか、招き入れてくれた。

 シルフィは周りを警戒するように確認し、中へと入る。私たちもシルフィに続き中に入った。

 中は薄暗く、長い廊下も所々に灯りが灯っている程度だった。
 廊下を進んだ先の突き当たりの部屋へと通され、中に入ると、一人の女性がベッドに寝ていた。
 頬は痩せこけ、顔も青白く、血の気がなかった。

「お母様、すぐに治します。もう大丈夫ですよ」

 シルフィは、解呪薬を飲ませる。
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