最後の魔女

砂鳥 ケイ

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最後の魔女106 古ぼけた古屋

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次の日の朝、私はアリエラから聞いた話を2人に説明する。

「私といると危険。だからこれからは別行動を取りましょう」

 本格的に魔族に狙われるということは、一緒にいる二人にも当然のことながら危険が及ぶ。仲間になったばかりのリリベルには本当に悪いと思う。安住の地を見つけてあげるまでは一緒に旅をしたかった。だけど、こうなってしまっては仕方がない。命には変えられないのだから。

「何を言っているのですか? お姉様を危険からお守りするのは妹である私の役目ですよ」
「今の私があるのはリアさんのおかげなんです。そのリアさんが危険だと言うのなら、私はこの命を賭しでもお役に立ちたいです。私に出来ることは少ないかもしれませんが⋯」

 リグはリリベルの背中をバシバシ叩く。

「良く言ったわ。それでこそ私の妹分ね!」
「い、痛いです、リグさん⋯」

 魔族という強大な相手に目を付けられてるのに、2人は巻き込まれるのを覚悟で私から離れない。

 お人好しね⋯まったくもう⋯。

「大丈夫ですよ、魔族なんて私とお姉様がいれば相手にならないです」
「微力ながら私も頑張ります」

 こんな時になんと言えばいいのか分からず、2人を両手でそっと抱き寄せて頭を撫でる。

「ありがと」

 私を敵とみなした以上、今後魔族に対しては容赦しない。慈悲を見せればやられるのは、こちらなのだから。


 鉱山都市トレランスを離れ3日が経過していた。
 私たちはある場所を目指して進んでいる。マイ馬車を引くのは、眷属のバッカス。その荷台には、大人の姿のリグ、リリベルに眷属である魔導兵器のシェリちゃん。

 国境の検問が煩わしいから敢えて遠回りで過酷な道を進んでいた。
 目指すは精霊の森と呼ばれる神聖なる場所。
 以前に一度だけ訪れたことがあるのだけど、その際、仲良くなった精霊王様より「困った時はなんでも相談すると良いぞ」と言われていたので、今がまさにその時なのだ。

「リア様。上空にモンスターの反応です。数は2匹。退治しますか?」
「お願い」

 普段誰も通らないのはモンスターが出る為でもあるのだけど、流石にここらは多く生息しているようだ。
 先程から、ひっきりなしにモンスターと遭遇する。私は見ているだけで主にリグが動いてくれているんだけどね。

 ゴツゴツとした荒野地帯を抜け、舗装されてない草ボーボーの道を新規開拓しながら進んでいく。
 私の記憶が正しければもうそろそろ目印である鳥居が見えて来るはず。

 鳥居とは昔から神聖な物とされ、神の住まう場所との比喩にもされていた。そんな鳥居が精霊の森の入り口になっていた。

「お姉様、もしかしてあれがそうじゃないですか?」

 リグの指差す先には、確かに鳥居の形らしき物が見える。
 以前見た時は、神々しいまでに赤く光り輝いていた記憶があったんだけど⋯。どうみても朽ちてるよねあれ。
 何があったんだろう。もしかして、入口の場所が変わっちゃったのかな?

 馬車から降りて辺りを散策する。
 鳥居からは神聖な気を感じることが出来ないので、やはりここはもう精霊の森の入口ではないのだろう。
 私がここに立ち寄ったのは、かれこれ半世紀以上前だからね。

 手っ取り早いのは、精霊さんに聞いてみることだけど、周りにはその姿は見えない。
 こんなことなら、鉱山都市トレランスに居た精霊に話を聞いておけば良かったよ。

「どうやらここはもう入口じゃないみたい」

 途方に暮れていると、辺りを散策していたリリベルが戻って来る。

「それらしいものは発見出来ませんでしたけど、古ぼけた古屋を見つけましたよ」

 その場所へと皆で足を運ぶ。
 確かに廃屋みたいな外見をした古屋だった。それを見た瞬間、何故だか懐かしいと言う感情が湧いてくる。自分でも何故そんな感情が芽生えたのか理解出来ない。
 警戒することなくリグがズケズケと中へと入って行くので、その後を追う。
 外とは違い中は意外と綺麗に整えられており、最近まで誰かが生活していたのか至る所にその痕跡が垣間見える。

「最近まで誰かが住んでいたんですかね」

 整理整頓が行き届いている室内に、埃の溜まっていない家具や床。何かが腐ったような変な匂いもしないのだから、リリベルがそう捉えるのも無理はない。だけど、私は決定的な違和感を覚えていた。
 それは、この小屋の中は魔法の力が働いていたのだ。部屋が綺麗なのは、汚れない魔法が掛けられているからだった。
 一体、どれ程前に施された魔法なのかは分からないけど、決定的なのは、魔法は術者が死ねばその効果は消えてしまうということ。
 つまりは、この小屋の住人かは分からないけど、魔法を施した人物はまだ生きている。

 私以外にも魔女が生きてるってこと?
 はぁ、、でもぬか喜びはしたくない。もしかしたら、またあの魔技使いって呼ばれている人かもしれないのだから。

「お姉様、ボーッとされてますけど、大丈夫ですか?」

 自分で言うのも何だけど、私は大抵いつもボーッとしてると自覚してるんだけど、リグは相変わらず鋭い。
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