リンの萬屋奮闘記

砂鳥 ケイ

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07:雷の精霊ラム

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リンは、アリスの依頼であるドラゴンの鱗を採取するべく、ドラゴンが棲むとされる洞窟を訪れていた。

今、リンとアリスの目の前では、巨大なドラゴンが鋭い眼孔で二人を睨みつけていた。

「何やら人の気配がすると思えば、下等生物が二匹も我が寝ぐらに迷い込んでいようとは」

なんという威圧だ・・、貫禄のある声もさる事ながら
一番驚いたのは、ドラゴンが喋った事だった。
ドラゴン等級10段階の内、会話の出来るドラゴンは、必然的に等級6以上に分類される。
一般的に言われているのは、等級5以上のドラゴン一体で国一つを滅ぼす力を有しているらしい。

さてと、驚いてばかりもいられないか。

「名のある長命のドラゴンとお見受けする。此度は、折り入ってお願いがあり、参りました」

いつも以上にリンの態度が丁寧になっている。
というのも当たり前のことなのだ。
長命のドラゴンは、この世界では生ける伝説となっており、最長寿のドラゴンに至っては、この世界が誕生した時から現存しているとさえ言われていた。
そんな伝説級の生物に我々のようなチッポケな存在が対等に喋っていい訳がない。

というのは、リンが勝手に思っている事なのだが。

「ほぉ、弱者にしては、礼儀を弁えているようだな」

リンの後ろにいるアリスは、流石にこの状況にブルブル震えていた。

「聞いてやろう、試しに言ってみろ」
そう来なくてはね、話が分かるドラゴンで助かる。

「僕達は、万能に効く薬の材料であるドラゴンの鱗の収集に、ここまで来ました。もし宜しければ、あなたの鱗を譲って頂けませんか?」

「ハハハハハッ    何を言い出すかと思えば、笑わせてくれる。お主、勿論死を覚悟して言っているんだろうな」

「まさか、まだやり残した事がありますからね、まだ死ねませんよ」

「グオオオォォォォ!!今度は、笑えぬぞ!!貴様を殺す事など造作もない、この牙を少し動かせば、喋らぬ肉塊と成り果てるだろう」

やはり、欲しいと言ってもタダではくれないか。
少し面倒だけど、こうなってしまったら仕方がないね。
リンはドラゴンに取引を持ちかけた。
「では、一撃。一撃あなたに攻撃を当てる事が出来たら、鱗を頂けないでしょうか」



リンは、知っていた。
ドラゴンは、プライドが高い事を。
人族など下等生物扱いしている存在から一撃を貰うなどありえないと考えている。
だからこそ、この条件を無下にしないはずだと。

「下等生物ごときが本当におかしな事を言う。だが良かろう。そのまま殺されても文句を言うでないぞ!!」

「アリスさんは、危ないので後ろに下がっていて下さい」

アリスは、リンに言われた通り、洞窟の入り口方面に向かって下がった。リンがギリギリ見える位置まで。
それを横目でチラリと見たリンは、此方の準備が整った事を告げた。

「ならば、行くぞ!あの世で後悔するがいい!」

ドラゴンは、凄まじい初速度でリンを噛み殺そうと、リンを丸呑みにする。
呆気なく一瞬で勝負が決まってしまった。

「あっ!!」
その光景を見たアリスが思わず声を上げてしまった。

その直後、ドラゴンの背後からリンが現れたのだ。
「鎌鼬!」
シルフの技だった。
無数の風の刃がドラゴンを襲う。
しかし、ドラゴンは顔色一つ変えていない。
ドラゴンの強靭な皮膚は、シルフの鎌鼬では、傷一つつかなかった。
「あちゃ〜、不意打ちしたけどやっぱしダメかぁー」

リンは、新たな精霊を呼び出していた。
リンが扱う事が出来る精霊の中でも特に攻撃に特化した精霊だった。

「僕を呼んだって事は、あ、そういう事ね。絶体絶命じゃん」
リンが呼び出した精霊は、雷の精霊ラムだった。

ラムは、一瞬で状況を判断し、リンに憑依した。
それと同時にドラゴンが動いた。
口を大きく見開き、火炎をリンに向かって吐き出したのだ。
硬い岩盤にも関わらず火炎が触れた箇所が、ドロドロに溶け出している。

しかし、リンには当たらなかった。
「危なかったね、僕の迅雷が無ければ、黒焦げだったよ」
「うん、頼りにしてるよ。さて、反撃開始といこうか」

リンは、右手を前に突き出した。
「迫雷(はくらい)!」
直後、リンによって制御された何本もの雷(いかづち)が、ドラゴンを襲う。

効き目があったのか、凄まじいドラゴンの咆哮が洞窟内に響き渡った。

「本気でやったけど、最強種だし、大丈夫だよね」
「うん、この程度では、少し痺れる程度だろう。でも助かったよ」
リンは、憑依を解いていた。

ドラゴンの凄みが更に増しているようだ。
目が血走っていた。
ドラゴンは、動きの止まったリンをもう一度喰らってやろうと、リンの目の前までその大きな口を近付けた。
両者の距離は、1mもないだろう。
しかし、ドラゴンの動きもまた、止まったのだ。
少しの間沈黙が続く。

「何故、動かないのだ」
「あなたが攻撃を止めた理由と同じですよ」

「喰えぬ人族だ。だが、約束は約束だ」

つまりは、こういう事だ。
リンは、当初の約束通り、ドラゴンに有効打を一撃入れた時点で、この勝負は、リンの勝ちなのだ。
誇り高いドラゴンは、決して約束は破らない。

「僕が一撃与えれたのも、薄暗い洞窟内だった為です。これが、外の広い空間だったならば、一撃入れる事など叶いませんでした」

「ふん、そういう事にしておこう。お主、名は何と言うか」

「はい、人族のリンと言います」
「そうか、精霊使いのリンか、覚えておこう。我が名は、グラント。お前達の言うところの等級は8だ」

等級8だったのか、簡単に国が滅ぶレベルだ。

グラントは、この洞窟の奥に行けと指示した。
丁度、住処を変えようとしてしたらしく、このままこの洞窟を離れるのだそうだ。
奥にある物は自由にしていいとの事だ。

リンは、アリスと合流し、洞窟の奥へと進んでいく。

「リンさん、凄すぎです・・。ドラゴンと対話した人なんて聞いた事ないです。ましてや、一撃与えてしまうなんて」

「だから、凄いのは、僕じゃなくて、精霊達さ」

洞窟の奥へ進むと、そこにあったのは、ドラゴンが何処かから集めてきたと思われる金銀財宝の山々だった。
更には、目的だったドラゴンの鱗が山になっている。

「なんて量なんだ」
「こ、こんなに貰っていいのでしょうか・・」

好意は甘んじて受けようと思う。
「リンさん、どうやって持ち帰るのですか?」
「そうだね、ステラを呼ぼう」

リンが新たな精霊を呼び出した。
しかし、いつもと雰囲気が違う。
今までは、召喚されるのは精霊だけだったのだが、今回召喚された精霊は、少女と巨大な宝箱のセットだった。
少女の見た目は、アリスと同い年くらいだった。

「今度はどんなゴミを入れるんじゃ」
「まだあの時の事を怒っているのかい?何度も謝ったでしょ」
「冗談じゃ。で、何を入れるんじゃ?」

彼女の名前は、ステラ。
今までの精霊と違い、特殊精霊と呼ばれる存在だ。
ステラには、リンの倉庫の管理をして貰っているのだ。
普段管理しているのは、精霊世界と呼ばれる場所なので、出し入れの際には、ステラを呼ぶ必要があるが、ほぼ無限大に貯蔵出来る事と、絶対に誰にも盗まれないという利点があるのだ。
リンが呼んだ時だけ、此方の世界に来てくれる。

「これを全部頼むよ」
「了解じゃ」
ステラは、金銀財宝の山に手をかざすと、なんと今までそこにあった金銀財宝の山がキレイさっぱり消えてしまったのだ。
隣のアリスが、口を開けて驚いている。

「さてと、アリスさん目的も達成しましたので、戻りましょうか」

再びシルフを召喚し、スメラークにある萬屋に戻った。
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