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011:萬屋家業再スタート
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シンクが亡くなってから、1週間が経過していた。
リン自体もこの1週間は、萬屋は臨時休業としてある事に精を出していた。
まずは、シンクのお墓を街一番の見晴らしの良い丘の上に拵えていた。
この丘は、生前シンクが好んでよく足を運んでいた場所でもあった。
お墓は、石を積み上げただけの簡素なものだったが、リンとマリーとで一生懸命作り上げた物だった。
墓前にはシンクの好きだったカルの実といつも肌身離さず身に付けていた、初めてリンと出逢った時にプレゼントした真鍮の星をデザインした首飾りを供えしている。
1週間経った今日から萬屋稼業の開店なのだが、それを「待ってました」と言わんばかりに、小さく狭い萬屋の入り口から所狭しと並ぶ長蛇の列が出来ていた。
専らの理由は、今回の事件を踏まえ、有能すぎるリンの噂を聞きつけて、この街の住人が殺到したのだ。
中には隣町から駆けつけてくる者までおり、誰が見てもとても捌ける量とは思わなかった。
しかし、リンはその一人一人に話を聞き、真摯な対応をしていた。
日程的にどうしても無理なものは「ごめんなさい」と切り捨てるしかないが、基本的に可能ならば全て対応するつもりでいた。
「す、凄い人の数でしたね・・」
マリーは、ため息を吐きながら困惑そうな表情をしていた。
その表情の先には、依頼者からの情報を書き記したメモの束を鋭い眼光で凝視していたリンに向けられていた。
1枚1枚その書き終わったメモを確認すると、何組かのパターンに分けている。
「件数はたくさんあったけど、わりと内容が偏ってましたね。だけど、この3件だけは少し厄介ですね」
その言葉とは裏腹に口元には若干の笑みを浮かべていた。
その僅かな違和感をマリーは勘付いていた。
「リンさん、大変なのに何だか楽しそうですね」
「楽しいと言うか嬉しいのかな。いかにしてこの難敵を裁くのかを考えていたら色々な案が浮かんでね。ついニヤニヤしてしまったみたいだ」
リンはユックリと立ち上がると、1体の霊を召喚する為、詠唱を唱え始めた。
リンが詠唱を唱え終わると、手の平大の蜂の精霊が出現する。以前も召喚した蜂の精霊ビーだ。
「おっす!また召喚してくれて嬉しいっす!今度こそ暗殺っすか?」
蜂の精霊ビーは、その性格と使える魔法から暗殺向きの精霊だった。
しかし、彼女の持つ魔法の一つである分身が有用すぎるので、人探しや物探しの時にリンは重宝していた。
「やあ、ビー。いや、ごめんね暗殺じゃないんだ。今回も探しものを頼みたくてね」
「人?それとも物っすか?」
リンは大量のメモ用紙を掴みあげる。
「え、まさか、それ全部じゃないっすよね・・」
「うん、全部だよ」
蜂の精霊ビーは、両手両足をダラーンとさせ、飛行を維持するための背中の虹色の羽根だけを忙しなく動かしていた。が、次の瞬間両手でガッツポーズを取り、「よっしゃ!久し振りに本気出すっすよ!」と声を荒げた。
「ビーも任務が困難な方が燃えるタイプだったね」
「ふふふ、100件だろうが1000件だろうが、うちの分身ちゃんを総動員させてやってやるっす!」
「流石にそんなにはないけど・・いつも通り期待してるよ」
ビーが何かを唱えた直後、その姿を無数に分裂させた。
ビーが使用した魔法は分身と呼ばれるものだ。
分身は、自分と同じ存在を無数に創り出すことが出来る。
その数は術者によって左右されるが、ビーに至っては最大1万にも及ぶ。
分身体たちは、メモ用紙や依頼の写真を見るとすぐに飛び出して行った、
改めて今回の仕事の依頼の内訳はこうだ。
1.生物捜索12件
2.物探し 17件
3.モンスター退治 5件
4.その他
リンは、このうち1と2の捜索系は全て蜂の精霊であるビーに依頼していた。
モンスター討伐に関しては、リンが直接手を下す予定だ。
次に問題となってくるのが、その他である計3件の案件だ。
一つ目は、とある商人からの依頼で、ここから山を二つ超えた先の街までの護衛を頼みたいというもの。
内容的には大した事はないのだが、距離的なものを考えた時に時間だけは無駄に掛かってしまう。
リンの見立てでは、片道1週間。
帰りは飛んで帰ったとしても追加で1日は必要だろう。
まず、ここで問題となってくるのが、この萬屋をそんなに長期間不在にする事が出来ない。
どちらにしても、こちらの日程に合わせてくれるという事なので、後で確認に行くつもりだ。
二つ目は、幼子のお守りの依頼だ。
歳の頃は8歳の女の子。その子の面倒を見て欲しいというものだった。
期間は明日から3日間。
こちらに関しては日取りが決まっているので、ズラす事は出来ない。
三つ目は、なんというか意味不明だ。
依頼者と一緒にある組織を壊滅して欲しいと言う。
要相談だね。
流石にちょっと受け過ぎたのかもしれないな。
「リンさん、一ついいですか?」
「はい、なんですか?」
「えっと、別に全ての依頼を受ける必要はないですよね。量から考えても、変な依頼内容もあるかもしれませんし」
「うん、そうなんだけどね・・・」
そう答えて何か思う所があるのか、虚ろな目で窓の外をぼんやりと眺めていた。
「勿論、依頼を受ける時にある程度の間引きはしてるつもりだよ。物理的にどうしても無理な依頼だとか、あからさまにおかしな内容のものは受けなかったしね。それに・・・僕はなるべく一つでも多く、一人でも多くの困ってる人を助けたいんだ」
「それでもリンさんは頑張りすぎだと思います!いつでも全力で取り組み、少しでも早く依頼をこなせるように最善を尽くしてます。それはとても良い事だと思います!でも、いいんですよ、少しくらい手を抜いても。私も・・・たいして役に立たないと思いますけど、精一杯頑張りますので私を頼って下さい!一人で頑張ろうと思わないで下さい!リンさんは一人じゃないですから」
思いもよらなかったマリーの訴えに、リンが少しだけたじろぐ。
それを見ていたマリーが少し慌てている。
「あ、わ、私生意気な事を・・ごめんなさい・・私・・」
「ありがとうございます」
「え?」
「マリーさんの言う通りです。私、少し思い上がっていたみたいです。自分の力ならいくつでも、どんな依頼でもこなす事が出来ると・・。また・・・あの時と同じ過ちを繰り返す所でした」
リンはマリーの両手を握る。
その突然のリンの行動にマリーはテンパってしまった。
「ありがとうございます」
「あわわ、え、と、わ、私はそんな・・・少しでも、リンさんのお役に・・立てたらなって・・」
「マリーさんは何か勘違いしていますよ」
優しく諭すようにマリーへ話し掛けた。
「少しでもどころか、マリーさんは既に僕にとって、なくてはならない存在ですよ」
マリーは、その頬を紅色に染めリンと目を合わす事が出来ないのか、下を向いていた。
しかし、耳だけはしっかりと傾けている。
「マリーさんが来てからというもの、料理は美味しいですし、いつも部屋中は掃除が行き届いていてピカピカしていますし、何より仕事を終えてここに帰って来た時に待っていてくれる存在。すごく和みます。マリーさんは僕にとって、大きな存在になっているんですよ。だからどうか自分は何の役にも立っていないなんて思わないで下さい」
終始モジモジしながら上目遣いでリンの事を見るマリー。その表情は、依然として紅色に染まっていた。
「ほ、本当に私はリンさんのお役に立っていますか?」
「はい、十分な程に」
その後、今回の依頼をこなす為にリンは自分の考えをマリーに告げる。
「明日からになりますけどマリーさんには、子供のお守りお願いしたいのですが、大丈夫ですか?」
「はい!私頑張りますよ!子供をあやすのは得意なんです。昔孤児院にいた時に小さな子の面倒を見ていたんです」
「それなら、寧ろ僕なんかよりもずっと安心出来ますね」
「リンさんは子供の面倒は苦手なんですか?」
「昔ちょっとね、色々あって苦手意識があったりするんですよね・・・はははっ」
「リンさんにも苦手な事があるんですね、ちょっと嬉しいですエヘヘ」
リンは何故マリーが嬉しいのか理解が出来なかったが、敢えてそれを問うことは無かった。
「それでは、今日はモンスター退治の仕事をやってきます。マリーさんは、ビーが帰って来たら、任務達成の報告を僕の代わりに聞いておいて下さい」
「はい、分かりました。でも、気を付けて下さいね。怪我なんてしたら私怒りますからね」
その言葉に一瞬ビクリとリンは反応するが、優しく微笑み一言。
「それは尚の事、無傷で帰って来ないと駄目ですね。と言う事で頼むよシルフ」
いつの間にやらリンによって召喚された風の精霊シルフが宙に浮いて二人を眺めていた。
リン自体もこの1週間は、萬屋は臨時休業としてある事に精を出していた。
まずは、シンクのお墓を街一番の見晴らしの良い丘の上に拵えていた。
この丘は、生前シンクが好んでよく足を運んでいた場所でもあった。
お墓は、石を積み上げただけの簡素なものだったが、リンとマリーとで一生懸命作り上げた物だった。
墓前にはシンクの好きだったカルの実といつも肌身離さず身に付けていた、初めてリンと出逢った時にプレゼントした真鍮の星をデザインした首飾りを供えしている。
1週間経った今日から萬屋稼業の開店なのだが、それを「待ってました」と言わんばかりに、小さく狭い萬屋の入り口から所狭しと並ぶ長蛇の列が出来ていた。
専らの理由は、今回の事件を踏まえ、有能すぎるリンの噂を聞きつけて、この街の住人が殺到したのだ。
中には隣町から駆けつけてくる者までおり、誰が見てもとても捌ける量とは思わなかった。
しかし、リンはその一人一人に話を聞き、真摯な対応をしていた。
日程的にどうしても無理なものは「ごめんなさい」と切り捨てるしかないが、基本的に可能ならば全て対応するつもりでいた。
「す、凄い人の数でしたね・・」
マリーは、ため息を吐きながら困惑そうな表情をしていた。
その表情の先には、依頼者からの情報を書き記したメモの束を鋭い眼光で凝視していたリンに向けられていた。
1枚1枚その書き終わったメモを確認すると、何組かのパターンに分けている。
「件数はたくさんあったけど、わりと内容が偏ってましたね。だけど、この3件だけは少し厄介ですね」
その言葉とは裏腹に口元には若干の笑みを浮かべていた。
その僅かな違和感をマリーは勘付いていた。
「リンさん、大変なのに何だか楽しそうですね」
「楽しいと言うか嬉しいのかな。いかにしてこの難敵を裁くのかを考えていたら色々な案が浮かんでね。ついニヤニヤしてしまったみたいだ」
リンはユックリと立ち上がると、1体の霊を召喚する為、詠唱を唱え始めた。
リンが詠唱を唱え終わると、手の平大の蜂の精霊が出現する。以前も召喚した蜂の精霊ビーだ。
「おっす!また召喚してくれて嬉しいっす!今度こそ暗殺っすか?」
蜂の精霊ビーは、その性格と使える魔法から暗殺向きの精霊だった。
しかし、彼女の持つ魔法の一つである分身が有用すぎるので、人探しや物探しの時にリンは重宝していた。
「やあ、ビー。いや、ごめんね暗殺じゃないんだ。今回も探しものを頼みたくてね」
「人?それとも物っすか?」
リンは大量のメモ用紙を掴みあげる。
「え、まさか、それ全部じゃないっすよね・・」
「うん、全部だよ」
蜂の精霊ビーは、両手両足をダラーンとさせ、飛行を維持するための背中の虹色の羽根だけを忙しなく動かしていた。が、次の瞬間両手でガッツポーズを取り、「よっしゃ!久し振りに本気出すっすよ!」と声を荒げた。
「ビーも任務が困難な方が燃えるタイプだったね」
「ふふふ、100件だろうが1000件だろうが、うちの分身ちゃんを総動員させてやってやるっす!」
「流石にそんなにはないけど・・いつも通り期待してるよ」
ビーが何かを唱えた直後、その姿を無数に分裂させた。
ビーが使用した魔法は分身と呼ばれるものだ。
分身は、自分と同じ存在を無数に創り出すことが出来る。
その数は術者によって左右されるが、ビーに至っては最大1万にも及ぶ。
分身体たちは、メモ用紙や依頼の写真を見るとすぐに飛び出して行った、
改めて今回の仕事の依頼の内訳はこうだ。
1.生物捜索12件
2.物探し 17件
3.モンスター退治 5件
4.その他
リンは、このうち1と2の捜索系は全て蜂の精霊であるビーに依頼していた。
モンスター討伐に関しては、リンが直接手を下す予定だ。
次に問題となってくるのが、その他である計3件の案件だ。
一つ目は、とある商人からの依頼で、ここから山を二つ超えた先の街までの護衛を頼みたいというもの。
内容的には大した事はないのだが、距離的なものを考えた時に時間だけは無駄に掛かってしまう。
リンの見立てでは、片道1週間。
帰りは飛んで帰ったとしても追加で1日は必要だろう。
まず、ここで問題となってくるのが、この萬屋をそんなに長期間不在にする事が出来ない。
どちらにしても、こちらの日程に合わせてくれるという事なので、後で確認に行くつもりだ。
二つ目は、幼子のお守りの依頼だ。
歳の頃は8歳の女の子。その子の面倒を見て欲しいというものだった。
期間は明日から3日間。
こちらに関しては日取りが決まっているので、ズラす事は出来ない。
三つ目は、なんというか意味不明だ。
依頼者と一緒にある組織を壊滅して欲しいと言う。
要相談だね。
流石にちょっと受け過ぎたのかもしれないな。
「リンさん、一ついいですか?」
「はい、なんですか?」
「えっと、別に全ての依頼を受ける必要はないですよね。量から考えても、変な依頼内容もあるかもしれませんし」
「うん、そうなんだけどね・・・」
そう答えて何か思う所があるのか、虚ろな目で窓の外をぼんやりと眺めていた。
「勿論、依頼を受ける時にある程度の間引きはしてるつもりだよ。物理的にどうしても無理な依頼だとか、あからさまにおかしな内容のものは受けなかったしね。それに・・・僕はなるべく一つでも多く、一人でも多くの困ってる人を助けたいんだ」
「それでもリンさんは頑張りすぎだと思います!いつでも全力で取り組み、少しでも早く依頼をこなせるように最善を尽くしてます。それはとても良い事だと思います!でも、いいんですよ、少しくらい手を抜いても。私も・・・たいして役に立たないと思いますけど、精一杯頑張りますので私を頼って下さい!一人で頑張ろうと思わないで下さい!リンさんは一人じゃないですから」
思いもよらなかったマリーの訴えに、リンが少しだけたじろぐ。
それを見ていたマリーが少し慌てている。
「あ、わ、私生意気な事を・・ごめんなさい・・私・・」
「ありがとうございます」
「え?」
「マリーさんの言う通りです。私、少し思い上がっていたみたいです。自分の力ならいくつでも、どんな依頼でもこなす事が出来ると・・。また・・・あの時と同じ過ちを繰り返す所でした」
リンはマリーの両手を握る。
その突然のリンの行動にマリーはテンパってしまった。
「ありがとうございます」
「あわわ、え、と、わ、私はそんな・・・少しでも、リンさんのお役に・・立てたらなって・・」
「マリーさんは何か勘違いしていますよ」
優しく諭すようにマリーへ話し掛けた。
「少しでもどころか、マリーさんは既に僕にとって、なくてはならない存在ですよ」
マリーは、その頬を紅色に染めリンと目を合わす事が出来ないのか、下を向いていた。
しかし、耳だけはしっかりと傾けている。
「マリーさんが来てからというもの、料理は美味しいですし、いつも部屋中は掃除が行き届いていてピカピカしていますし、何より仕事を終えてここに帰って来た時に待っていてくれる存在。すごく和みます。マリーさんは僕にとって、大きな存在になっているんですよ。だからどうか自分は何の役にも立っていないなんて思わないで下さい」
終始モジモジしながら上目遣いでリンの事を見るマリー。その表情は、依然として紅色に染まっていた。
「ほ、本当に私はリンさんのお役に立っていますか?」
「はい、十分な程に」
その後、今回の依頼をこなす為にリンは自分の考えをマリーに告げる。
「明日からになりますけどマリーさんには、子供のお守りお願いしたいのですが、大丈夫ですか?」
「はい!私頑張りますよ!子供をあやすのは得意なんです。昔孤児院にいた時に小さな子の面倒を見ていたんです」
「それなら、寧ろ僕なんかよりもずっと安心出来ますね」
「リンさんは子供の面倒は苦手なんですか?」
「昔ちょっとね、色々あって苦手意識があったりするんですよね・・・はははっ」
「リンさんにも苦手な事があるんですね、ちょっと嬉しいですエヘヘ」
リンは何故マリーが嬉しいのか理解が出来なかったが、敢えてそれを問うことは無かった。
「それでは、今日はモンスター退治の仕事をやってきます。マリーさんは、ビーが帰って来たら、任務達成の報告を僕の代わりに聞いておいて下さい」
「はい、分かりました。でも、気を付けて下さいね。怪我なんてしたら私怒りますからね」
その言葉に一瞬ビクリとリンは反応するが、優しく微笑み一言。
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