世界の理

医白影(いしかげ)

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1章

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「おかえりなさいませ。」
 2人がこそこそと部屋に帰ると、そこには綺麗な笑みを顔全体に浮かべ、頭をさげるメイド長がおりました。その笑顔といったら、猛獣でさえも怯えてしまうような殺気をゆらりと纏っています。他のメイドいわく、「メイド長様だけは敵にまわしたらいけない。この状態の彼女には、謝るしかない」だそうです。
「「ごめんなさい!」」
 こっそり部屋に入ると同時に彼女を見たサーシャ、ミーシャの行動は、素早いものでした。メイド長の前に正座をし、華麗なる土下座を決めたのです。沈黙の1分ほどが経って2人が恐る恐る顔を上げると、まだ同じ状態のメイド長がいたので、双子はもう一度深々と頭を下げました。

 しばらくたって。
 誰もがここは、抜け出したらだめでしょ的な、そんなお怒りを双子が受けるのかと思うでしょう。しかしメイド長は一味違いました。
「見つからないように行って帰ってきてくださいといつも言ってますよね。詰めが甘いのです!だいたい、衣服を焦がして帰ってくるとは、どういうことですか!姫様方はご自分たちをなんだと思ってらっしゃるのですか!

ー割愛ー
(惜しいと思いながら、思い切って捨てること)

・・・それにですね。姫様方はいまだに理解しておられないのですか!

おおっと。まだ続いておりました。お叱りを受ける双子の姿はだんだん小さくなっていきます。

「またなにかやらかしたのですか。懲りないのね。」
「メイド長よ。いつもすまぬな。ここはわしらが変わろうではないか。」
「「お母様!お父様!」」
「陛下と猊下ではありませんか。では私はこれで失礼いたします。」
 突然声をかけてきたのは、なんと皇帝と皇后です。メイド長の怒りは、偶然通りかかった皇帝と皇后の耳にも届いていたのでした。しばらく面白がって見ていた2人はさすがに子供たちを気の毒に思ったのか、助け舟をだしたのです。
「私たちはもっとうまくやっていたわよ。」
「そうだなー。詰めが甘い。もっと計画性をもってやれ。」
 メイド長が下がった後、叱っているのかよくわからない言葉を両親にかけられ、
「はあい。」「わかりました。」
 双子はしょんぼりと返事をしました。

 双子の両親、ベルトムルト皇国の28代皇帝ロイ・レイ・ディアンと皇后であり28代神殿長テスラ・ケイト・ディアンは、皇帝はその政治的手腕、皇后はその優しさが国内外で知られておりました。また、当時では珍しく子宝にも恵まれておりました。(当時、王族に2人以上の子がいることが珍しく、さらに双子が産まれたことも非常に珍しかったのです。)
 皇帝の力によって、国内は非常に平和でした。このころは、嵐の前の静けさと言っても良いくらい平和だったのです。嵐はやってきます。それはもう少し先のお話。もう少しは、日常のお話が続きます。
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