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第11話 到着

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「……そういえばさ、」

 電車に揺られながら、俺は少し前から疑問に思っていたことを質問するために話を切り出す。

「んー?」

 咲茉《えま》はまだ電車に興奮しているのか、ワクワクしたような表情でこちらを向いてきた。
 見るからに幸せそう。

「……いや、やっぱり何もない」

 今質問をして気分を悪くしたら、彼女に申し訳ない。
 それに連れて来ているのは俺だし、どうせ一緒に帰るのだから、別に今じゃなくても質問ぐらいできる。

 そう考えて、口にしようとしていた言葉を飲み込んで、視線を窓の外に移す。
 
 その瞬間、突然目の前に咲茉《えま》の顔が現れて、視界が封じられた。

「言って。そこまで言ったなら気になるじゃん」

 むっとしながら、彼女はこちらを睨んで言う。

「……何を言いたかったか忘れたからまた後でな」
「嘘だぁ」
「……嘘じゃないし」
「まぁ、別に無理に言えとは言わないけども。思い出したらちゃんと話してね」

 そう呟くように言ってから、咲茉《えま》は体を元の体制に戻し、再び電車内を見渡し始めた。

 無理に聞こうとしない。
 絶対嫌われなさそうな子なのに。

「……なんでかな」

 彼女と過ごせば過ごすほど、ますますイジメられている理由が分からなくなってくる。

 いじめなんて、早くなくなればいいのに。




◇ ◇ ◇




「映画始まるまで時間あるけど、どこか行きたいところある?」

 目的地だったショッピングモールに着いて、映画の上映時間を確認してみたが始まるのはまだまだ先のようだった。
 なので、俺は特に行きたいところなどはないので咲茉《えま》に判断を任せることにしたのだ。

「うーん……。特に行きたいところは無いけど……」

 と言いかけて、慌てて彼女は前言撤回する。

「あ、ごめん。やっぱり嘘。ゲームセンター行きたい」
「……俺は行きたくない」
「どこでも行っていいよっていう感じの流れだったじゃん」
「そうだけどさぁー……」

 ゲームセンターだけは良い思い出が一つも無い。
 クレーンゲームに挑戦すれば、全然取れないのにムキになってやり続け、最終的にはお金が底を突くという最悪な終わり方をするし、メダルゲームをすれば下手くそすぎて10分もしないうちにほとんど無くなるのだ。

 友達と行けば楽しいし、最終的には笑い話で終わるから行くんだけども。

「じゃあ行こー!」

 電車の時と同じくゲームセンターに行くのが久しぶりなのか、ノリノリの咲茉《えま》は俺の腕を引っ張って足を進め始めた。

 元気でいいね。
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