4 / 596
四話
「何ぃ! もう釈放すると言うのか?」
今だ、意識は覚醒しきらないのか? まどろみながら、天井を眺めるギデオン。
そんな折、外から何やら騒がしい声が響いてきた。
宥める部下をその腕で振り払い、カツカツと荒々しい足音を鳴らして懲罰房へやってきたのは、ギデオンと近しい年齢の長髪の美男子だった。
「おい! 起きているな、ギデオン・グラッセ。だったら、さっさとここから出ろ。私としては不本意だが、貴様を釈放せよと、クロイツ監査官からのお達しが出た……おい! 聞いているのか!?」
マブタを閉じてはいるも、ギデオンはあからさまに狸寝入りをきめこんでいた。
まったくもって反省の態度を示さない、彼の態度が気に食わないのか? 長髪の青年は独房の施錠を解くと彼の横腹を蹴り飛ばした。
「がはっ……」
咳込みながら、脇腹を庇う。
ギデオンは気怠そうに上半身を起こし、重くなったマブタを開く。
「どうだ? 家畜のように蹴り起こされた気分は?」
「はぁ? 腹を蚊に刺された気がするな。で……何か御用でしょうか? どうして自分は、懲房に入れられているのでしょう?」
「はっ! 何たる事だ。あまりにもショックが大きすぎて、記憶が飛んでしまったようだな。私は、哨戒の任にあたっていた為、あの場に居合わせなかったが監査官から事の顛末は聞き及んでいるぞ」
「顛末? そうだ! 天啓の儀はどうなったのです!?」
「可哀そうに、貴様はパラディンに選ばれなかったよ。所詮、貴様はグラッセ子爵の気まぐれで拾われた平民の子だったというわけだ」
「嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ―――――司教様は、お前なら絶対にパラディンになれると仰っていた。司教様の言葉が間違っていた事なんて一度たりともないんだ。だから僕はその言葉を信じて――――」
両目を見開いたまま、頭を抱え苦悶するギデオンを見下しながら青年は卑しく微笑む。
「だったら、自身のステータスを開くが良い。得意だったろ、異世界人しか使えない固有能力を自分にも使えると、周囲に散々ひけらかしていたんだ。きっと、パラディンの|パの字も記されていないだろうがな」
「そ、そうだ! ステータスオープン!」
目の前に浮かぶ、真四角の手鏡。
その中には、ギデオン・グラッセという男の情報がすべて詰まっている。
彼だけが閲覧を許される魔法の鏡。
ステータス画面を見る彼の顔に暗い影がこもる。
「よ、読めない……文字化けしてしまっている! 何故!? こんな事今まで無かったのに……」
「くははっ、女神様を侮辱した罰だろうな。貴様の行いは問答無用、万死に値するが……喜べ! 宰相様がお偉方に掛け合って下さったおかげで貴様は懲罰だけで済む」
「僕は女神様を敬い慕っている。毎朝毎晩の祈りだって、ここ十年欠かした事はない。これは何かの間違いだ! 信じてくれ!!」
「知っているさ。檻に閉じ込められた者は皆、似通った台詞を口にする。どの口がほざく!? あれほどの醜態をさらした挙句、司教様を失脚させようとした極悪人のお前が女神様を語るなぁ!!」
「貴方は一体、何なんだ……僕を目の敵にしているようだが。すまない、貴方の事は知らない」
その言葉に青年は小さく舌打ちする。
「覚えていないのも無理はないか……まあ、いい。罪人に名乗る名など持ち合わせていない。さっさと外に出ろ、私も貴様を相手してやるほど暇ではないのだよ」
有無を言わさず、懲罰房から叩き出される。
外に出たギデオンは、そこが罪人収容施設ではなく私邸の一角にある施設だったことを知る。
広大な面積を誇る宮殿規模の豪邸。
目を見張る外観に圧倒され誰しも言葉を失うという富の結晶、権力の象徴。
そこの主は一度も姿をみせる事もなく、何を目的として自分を閉じ込めていたのか?
ギデオンにはサッパリだった。
「取り敢えず、屋敷に戻るか……父上も心配しておられるはずだ」
身に着けたままの法衣、その袖を嗅いで顔を曇らせる。
歩き出して間もなく、その場で崩れ落ちた。
「帰るって……どこにだ? ハハッ……自分の家すら忘れてしまったというのか? 僕は」
行き場を見失い、トボトボと街中をうろつくギデオン。
「僕の家を探しているのですが知りませんか?」と誰かに聞くのもはばかられるのだろう。
あてもなく道を進むだけだ。
心なしか彼に向けられる周囲の視線は異様に冷たい。
その事に気づいたのか、法衣のフードを頭に被せようとした。
「み、見つけた! ギデオン」
路地脇から、か細い声が聞こえてくる。
トタトタと駆けながら、彼の元にやってきたのは小柄で華奢な肉づきをした少女だった。
彼女を見るなり、ギデオンを瞳に光が宿った。
「シルクエッタ! シルクエッタじゃないか!? 確か、今は共和国に留学していたはずだ」
その娘の事については記憶していた。
シルクエッタ・クリーン。
彼と同じく貴族家柄でギデオンより一つ年上の娘だ。
昨年、天啓の儀で治癒師としての力を授かった彼女は、そのまますぐに東大陸、北方にある共和国へ行ってしまった。
留学というていで共和国内に滞在している彼女だが、これも治癒師としての役割。
内戦が絶えず常時、治癒師不足に悩まされる共和国民を救う為に教会が派遣した結果だ。
今だ、意識は覚醒しきらないのか? まどろみながら、天井を眺めるギデオン。
そんな折、外から何やら騒がしい声が響いてきた。
宥める部下をその腕で振り払い、カツカツと荒々しい足音を鳴らして懲罰房へやってきたのは、ギデオンと近しい年齢の長髪の美男子だった。
「おい! 起きているな、ギデオン・グラッセ。だったら、さっさとここから出ろ。私としては不本意だが、貴様を釈放せよと、クロイツ監査官からのお達しが出た……おい! 聞いているのか!?」
マブタを閉じてはいるも、ギデオンはあからさまに狸寝入りをきめこんでいた。
まったくもって反省の態度を示さない、彼の態度が気に食わないのか? 長髪の青年は独房の施錠を解くと彼の横腹を蹴り飛ばした。
「がはっ……」
咳込みながら、脇腹を庇う。
ギデオンは気怠そうに上半身を起こし、重くなったマブタを開く。
「どうだ? 家畜のように蹴り起こされた気分は?」
「はぁ? 腹を蚊に刺された気がするな。で……何か御用でしょうか? どうして自分は、懲房に入れられているのでしょう?」
「はっ! 何たる事だ。あまりにもショックが大きすぎて、記憶が飛んでしまったようだな。私は、哨戒の任にあたっていた為、あの場に居合わせなかったが監査官から事の顛末は聞き及んでいるぞ」
「顛末? そうだ! 天啓の儀はどうなったのです!?」
「可哀そうに、貴様はパラディンに選ばれなかったよ。所詮、貴様はグラッセ子爵の気まぐれで拾われた平民の子だったというわけだ」
「嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ―――――司教様は、お前なら絶対にパラディンになれると仰っていた。司教様の言葉が間違っていた事なんて一度たりともないんだ。だから僕はその言葉を信じて――――」
両目を見開いたまま、頭を抱え苦悶するギデオンを見下しながら青年は卑しく微笑む。
「だったら、自身のステータスを開くが良い。得意だったろ、異世界人しか使えない固有能力を自分にも使えると、周囲に散々ひけらかしていたんだ。きっと、パラディンの|パの字も記されていないだろうがな」
「そ、そうだ! ステータスオープン!」
目の前に浮かぶ、真四角の手鏡。
その中には、ギデオン・グラッセという男の情報がすべて詰まっている。
彼だけが閲覧を許される魔法の鏡。
ステータス画面を見る彼の顔に暗い影がこもる。
「よ、読めない……文字化けしてしまっている! 何故!? こんな事今まで無かったのに……」
「くははっ、女神様を侮辱した罰だろうな。貴様の行いは問答無用、万死に値するが……喜べ! 宰相様がお偉方に掛け合って下さったおかげで貴様は懲罰だけで済む」
「僕は女神様を敬い慕っている。毎朝毎晩の祈りだって、ここ十年欠かした事はない。これは何かの間違いだ! 信じてくれ!!」
「知っているさ。檻に閉じ込められた者は皆、似通った台詞を口にする。どの口がほざく!? あれほどの醜態をさらした挙句、司教様を失脚させようとした極悪人のお前が女神様を語るなぁ!!」
「貴方は一体、何なんだ……僕を目の敵にしているようだが。すまない、貴方の事は知らない」
その言葉に青年は小さく舌打ちする。
「覚えていないのも無理はないか……まあ、いい。罪人に名乗る名など持ち合わせていない。さっさと外に出ろ、私も貴様を相手してやるほど暇ではないのだよ」
有無を言わさず、懲罰房から叩き出される。
外に出たギデオンは、そこが罪人収容施設ではなく私邸の一角にある施設だったことを知る。
広大な面積を誇る宮殿規模の豪邸。
目を見張る外観に圧倒され誰しも言葉を失うという富の結晶、権力の象徴。
そこの主は一度も姿をみせる事もなく、何を目的として自分を閉じ込めていたのか?
ギデオンにはサッパリだった。
「取り敢えず、屋敷に戻るか……父上も心配しておられるはずだ」
身に着けたままの法衣、その袖を嗅いで顔を曇らせる。
歩き出して間もなく、その場で崩れ落ちた。
「帰るって……どこにだ? ハハッ……自分の家すら忘れてしまったというのか? 僕は」
行き場を見失い、トボトボと街中をうろつくギデオン。
「僕の家を探しているのですが知りませんか?」と誰かに聞くのもはばかられるのだろう。
あてもなく道を進むだけだ。
心なしか彼に向けられる周囲の視線は異様に冷たい。
その事に気づいたのか、法衣のフードを頭に被せようとした。
「み、見つけた! ギデオン」
路地脇から、か細い声が聞こえてくる。
トタトタと駆けながら、彼の元にやってきたのは小柄で華奢な肉づきをした少女だった。
彼女を見るなり、ギデオンを瞳に光が宿った。
「シルクエッタ! シルクエッタじゃないか!? 確か、今は共和国に留学していたはずだ」
その娘の事については記憶していた。
シルクエッタ・クリーン。
彼と同じく貴族家柄でギデオンより一つ年上の娘だ。
昨年、天啓の儀で治癒師としての力を授かった彼女は、そのまますぐに東大陸、北方にある共和国へ行ってしまった。
留学というていで共和国内に滞在している彼女だが、これも治癒師としての役割。
内戦が絶えず常時、治癒師不足に悩まされる共和国民を救う為に教会が派遣した結果だ。
あなたにおすすめの小説
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
戦えない魔法で追放された俺、家電の知識で異世界の生存率を塗り替える
遊鷹太
ファンタジー
安全を無視したコスト削減に反対した結果、
家電メーカーの開発エンジニア・三浦恒一は「価値がない」と切り捨てられた。
降格先の倉庫で事故に巻き込まれ、彼が辿り着いたのは――魔法がすべてを決める異世界だった。
この世界では、魔法は一人一つが常識。
そんな中で恒一が与えられたのは、
元の世界の“家電”しか召喚できない外れ魔法〈異界家電召喚〉。
戦えない。派手じゃない。評価もされない。
だが、召喚した家電に応じて発現する魔法は、
戦闘ではなく「生き延びるための正しい使い方」に特化していた。
保存、浄化、環境制御――
誰も見向きもしなかった力は、やがて人々の生活と命を静かに支え始める。
理解されず、切り捨てられてきた男が選ぶのは、
英雄になることではない。
事故を起こさず、仲間を死なせず、
“必要とされる仕事”を積み上げること。
これは、
才能ではなく使い方で世界を変える男の、
静かな成り上がりの物語。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。