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二百三十九話
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オーソライズキャリバーとは、人の魂の奥に眠る悪意を、デビルシードを介して増長させ実体化させる能力である。
主に顕現するのは、武器形状に変化する魔物であり、所有者の経験、思考、感情などを色濃く引き継いだカタチで生まれてくる種も定められる。
神威の下位互換にあたる人工覚醒はデビルシードによって引き起こされてきた。
ギデオンがこの異能について持っている知識のはせいぜい、この程度だ。
けれど……これは何の冗談のつもりなのか? あり得ないことに人と魔物が完全に融合していた。
スーシオンを名乗りでたナンダと、シオン賢者の合間には一体、どのような関わり合いがあるのか?
疑問と疑問がぶつかり合い、意識を傾けるだけで頭の中がバグりそうだ。
勇士学校の寮で入手したキンバリーの手帳を解析すれば、さらなる事実が判明するかもしれない……が。
確率的には望み薄だろう。
天才の暗号を解読できるほどの頭脳の持ち主者はそうそう見つからない。
「者共、手出しするなよ……小僧はワシの獲物だ」北の君主が配下に命を下す。
まさか、こちら側の策に乗るカタチで真っ向勝負をしかけてくるとは、ギデオンからしても驚くことだった。
最悪、不意打ちを食らわせ、怯んだ隙に極天を叩き込む計画だったが……こうも潔い良いと障りが出る。
「意外と武人なんだな、アンタ。策を練ればいくらでも優位に進められるだろうに」
「武人だと!? ハッ、カン違いもはなはだしいわ! お前のような若造程度、ワシ一人で充分よ。ここでむざむざと兵力を減らすバカがどこにいる?」
敵でありながらも、志は立派だと思えたのも束の間。
無駄な戦い方を毛嫌うナンダは、良く言えば倹約家、悪く言えば単なるのドケチだった。
「その言葉、後悔させてやろうじゃないか!」
「なるほど、そこそこ修羅場をくぐっているようだが、戦略に関しては……ずぶの素人といった具合か。よく、ここまで無事でいられたものよ」
「言ってくれる……相手のことを甘く見ていられるのも、今のうちだ」
「いつまで、お喋りしているつもりだ。まぁ、いい……レプラゼーラ!」
これ以上、敵と会話しても時間の浪費だ。
そう言わんばかりにギデオンを無視し、ナンダは部下を呼びつけた。
主の唐突な呼び出しにも関わらず、スキンヘッドの男が龍の背から降りて、ナンダの元へと走ってくる。
「ナンダ様、何か用入りで?」
「大元が兵を率いてこちらに押し寄せてくる、お前は軍の半分を連れて西方の護りを固めろ。残りは霊幻たちをひっ捕らえろ!」
「失礼ですが……その者の相手をナンダ様がじきにする必要はないのではないかと存じます。命じて下されば、俺がコイツを―――――」
「いいんや、お前にコイツは止められんよ。血に飢えた獣のように、戦いで乾きを満たそうとしているコイツは、狂暴性そのものだ。そのような相手を、お前は抑え込む自信があるのか?」
「そ、それほどなのですか……かしこまりました。ただちに西側に兵を送ります」
さすがに知略に長けていると言われるだけはある。
ナンダには、これから起こる戦の展望が見えていた。
各自に的確な指示を出し、卒なく動いてゆく。
ギデオンにとって、彼の戦い方は不安定で危なっかしくも思えた。
それゆえ、つけ入る隙もある。
そう見越して、相対するも何処から、攻め崩していいのか? 考えあぐねてしまった。
「遅い! 聖白十字紋」
先手を取ったのはナンダの方だった。
両腕を胸元で交差させたまま、練功で加速移動し相手の喉元に強烈な体当たりをかます。
パーミッショントランスとは異なる近距離での、瞬間移動。
強靭な足腰をバネにし流れるようなすり足歩行で標的の懐へと飛び込む。
その速度と衝撃に直撃をうけたギデオンの上半身が激しく前後に揺れた。
硬壁で防御をしていても、それを無視してダメージが通ってきている。
「ガハッ……ゴホッ!!」
「咳込んでいる場合か!」
チオンチの飛び蹴りがコメカミに入った。
丸太のような獣の足で、頭部を蹴られたら致命傷を負うのは確定だ。
「ぬっ……ガードしたのか!?」
「だから言っただろう。甘くみていられるのも、今だけだと」
コメカミを庇うようにし両腕を重ねギデオンは、ナンダの蹴りを受け止めていた。
そくざに片足首を脇に挟み、前進してゆく。
アンバランスとなり、チオンチの翼を羽ばたかせ体勢を保とうするが、その勢いは止められない。
ギデオンによって背中から地面に押し倒された。
仰向けのままの状態で重量ある拳がナンダに振り下ろされた。
主に顕現するのは、武器形状に変化する魔物であり、所有者の経験、思考、感情などを色濃く引き継いだカタチで生まれてくる種も定められる。
神威の下位互換にあたる人工覚醒はデビルシードによって引き起こされてきた。
ギデオンがこの異能について持っている知識のはせいぜい、この程度だ。
けれど……これは何の冗談のつもりなのか? あり得ないことに人と魔物が完全に融合していた。
スーシオンを名乗りでたナンダと、シオン賢者の合間には一体、どのような関わり合いがあるのか?
疑問と疑問がぶつかり合い、意識を傾けるだけで頭の中がバグりそうだ。
勇士学校の寮で入手したキンバリーの手帳を解析すれば、さらなる事実が判明するかもしれない……が。
確率的には望み薄だろう。
天才の暗号を解読できるほどの頭脳の持ち主者はそうそう見つからない。
「者共、手出しするなよ……小僧はワシの獲物だ」北の君主が配下に命を下す。
まさか、こちら側の策に乗るカタチで真っ向勝負をしかけてくるとは、ギデオンからしても驚くことだった。
最悪、不意打ちを食らわせ、怯んだ隙に極天を叩き込む計画だったが……こうも潔い良いと障りが出る。
「意外と武人なんだな、アンタ。策を練ればいくらでも優位に進められるだろうに」
「武人だと!? ハッ、カン違いもはなはだしいわ! お前のような若造程度、ワシ一人で充分よ。ここでむざむざと兵力を減らすバカがどこにいる?」
敵でありながらも、志は立派だと思えたのも束の間。
無駄な戦い方を毛嫌うナンダは、良く言えば倹約家、悪く言えば単なるのドケチだった。
「その言葉、後悔させてやろうじゃないか!」
「なるほど、そこそこ修羅場をくぐっているようだが、戦略に関しては……ずぶの素人といった具合か。よく、ここまで無事でいられたものよ」
「言ってくれる……相手のことを甘く見ていられるのも、今のうちだ」
「いつまで、お喋りしているつもりだ。まぁ、いい……レプラゼーラ!」
これ以上、敵と会話しても時間の浪費だ。
そう言わんばかりにギデオンを無視し、ナンダは部下を呼びつけた。
主の唐突な呼び出しにも関わらず、スキンヘッドの男が龍の背から降りて、ナンダの元へと走ってくる。
「ナンダ様、何か用入りで?」
「大元が兵を率いてこちらに押し寄せてくる、お前は軍の半分を連れて西方の護りを固めろ。残りは霊幻たちをひっ捕らえろ!」
「失礼ですが……その者の相手をナンダ様がじきにする必要はないのではないかと存じます。命じて下されば、俺がコイツを―――――」
「いいんや、お前にコイツは止められんよ。血に飢えた獣のように、戦いで乾きを満たそうとしているコイツは、狂暴性そのものだ。そのような相手を、お前は抑え込む自信があるのか?」
「そ、それほどなのですか……かしこまりました。ただちに西側に兵を送ります」
さすがに知略に長けていると言われるだけはある。
ナンダには、これから起こる戦の展望が見えていた。
各自に的確な指示を出し、卒なく動いてゆく。
ギデオンにとって、彼の戦い方は不安定で危なっかしくも思えた。
それゆえ、つけ入る隙もある。
そう見越して、相対するも何処から、攻め崩していいのか? 考えあぐねてしまった。
「遅い! 聖白十字紋」
先手を取ったのはナンダの方だった。
両腕を胸元で交差させたまま、練功で加速移動し相手の喉元に強烈な体当たりをかます。
パーミッショントランスとは異なる近距離での、瞬間移動。
強靭な足腰をバネにし流れるようなすり足歩行で標的の懐へと飛び込む。
その速度と衝撃に直撃をうけたギデオンの上半身が激しく前後に揺れた。
硬壁で防御をしていても、それを無視してダメージが通ってきている。
「ガハッ……ゴホッ!!」
「咳込んでいる場合か!」
チオンチの飛び蹴りがコメカミに入った。
丸太のような獣の足で、頭部を蹴られたら致命傷を負うのは確定だ。
「ぬっ……ガードしたのか!?」
「だから言っただろう。甘くみていられるのも、今だけだと」
コメカミを庇うようにし両腕を重ねギデオンは、ナンダの蹴りを受け止めていた。
そくざに片足首を脇に挟み、前進してゆく。
アンバランスとなり、チオンチの翼を羽ばたかせ体勢を保とうするが、その勢いは止められない。
ギデオンによって背中から地面に押し倒された。
仰向けのままの状態で重量ある拳がナンダに振り下ろされた。
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