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神器争奪編
四百四十二話
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ラスキュイが仕掛けた引き戻しの能力。
これにより、六発の銃弾はすべて逆方向へと移動しヴィーの身体を撃ち抜いた。
流血が白いタイル貼りの地を真っ赤に染めてゆく。
ブラックバカラの幹部クラスとはいえ、所詮は生身の人間である。
無防備な肉体に風穴を開けられれば生きてはいられない。
当たり前の光景……なのにギデオンは腑に落ちずにいた。
彼女の末路を素っ気なく眺めながら、動かなくなったザフキエルの方へと急ぐ。
また、稼動するのではないかと疑ってかかっていた。
「君がギデ君の友人かね?」ジャスベンダーがラスキュイに話かけた。
「ギデ? ええっ……そうです。ラスキュイ・ノアと申します。
失礼ですが貴方は?」
「おっと、こちらこそ不作法だったね。
ジャスベンダー・ステラだ。見ての通り魔術師をやっている。
ギデ君とは旅先で知り合ってね、聖王国の観光がてら同行させて貰っているよ」
「そういうわけですか……」ラスキュイが指先をクィクィと動かす。
その先には鋼鉄の機体を手で叩くギデオンがいた。
「おおっ……うおぉぉい! いくら、引き寄せられるからって無断で能力を使うのはやめろよ」
身体を引っ張られ、思わず倒れそうになったギデオンは眉間にシワを寄せていた。
友人同士のじゃれ合いかと取れるワンシーンだが、そうでもないらしい。
ギデオンのコメカミに銃口を押し当てられた。
思わずジャスベンダーが険しい表情を見せる。
不意打ちを食らった当の本人はまったく動じず、そのまま素手で銃身を掴み頭からゆっくりと退けた。
「相変わらずの堅物だな」そう一言呟くとラスキュイも「フッ」と鼻で笑いながら拳銃をホルダーに差し込んだ。
「分かっていると思うがギデオン。
お前は、エゼックト司教殺しの犯人として国内で指名手配されている。
司教様との間に何があったのか知らないが、私は最初から信じていなかったよ。
聖歌隊の人間が司教様を殺すなんてあり得ない話だ」
「ああ、僕じゃない。
僕は事件の黒幕を負って諸外国を転々としていたが、司教様を殺害した奴は未だに特定できてはいない。
ブラックバカラの連中も黒幕の計画に一枚かんでいるようだ。
奴らを探れば司教様殺しの犯人に辿りつけるかもしれない」
「そいつは期待しない方がいい」
息巻くギデオンの様子を見ながら、ラスキュイは深く吐息をついた。
諦めろと言わんばかりの態度がなんとも不可解だ。
「どういう意味だ? 犯人が見つからないとでもいうのか、ラス?」
「そうではない。
私が言いたいのは、二人ともすでにブラックバカラの術中にハマっているということだ。この際だから、ハッキリというが我々に勝機は万に一つもない」
「そこまで手強い組織だと……? だとしても、僕たちならば奴らの目論見だって阻止できるはずだ」
「それだ。現にお前は、ブラックバカラを格下とみている……。
それが最初の間違いだ。
連中の強い連携力と寸分たぐわぬ計算によって、我々は行動を制限されている。
言っていることが分かるか? 教団のボスは聖王国全体を盤上に見立てて信徒という駒を動かしているんだ。
お前が聖王国に戻ってきたのも偶然ではない。
そうするように仕向けて、この国に来させた。そう考えた方が良い」
審問官の言葉に嘘偽りなどない。
聖職者であるため真実のみしか語ることを許されない。
ギデオンたちは返す言葉すら出て来なかった。
誰かの意図により、自分たちが支配されていたことを受け入れるのには、あまりも現実味が薄い。
仮にそうだとしても、どうして勝算がないことに結びつくのか想像し難い。
「とりあえず、これ以上の話は後回しだ。
まずは牢に閉じこめれていた村人を解放する」
「ほほうぉぉ―――!
小生が留守にしている間に水洞窟が敵の手に落ちているではないか!
かくなる上は―――――」
「騒がしい奴だな」
オートマタとの死闘に決着をつけたカナタがタイミング悪く乱入してきた。
途端、ラスキュイの容赦ない蹴りがケツへと飛ぶ。
ガコンと音を立てカナタは牢獄へと激突した。
そのまま身動きがとれずに、短い手足をバタバタとさせている。
見ると柵の間に顔を挟んで引き抜くことができず悪戦苦闘している。
「へ、ヘルプミ―――!!」
「心配するな、そのうち細くなって柵から顔を引き抜くこともできるだろう」
「ププッ……そんなの待てませんわ」
尻越しに会話するカナタが不敵な笑みを浮かべていたが誰一人として気づかない。
その道化っぷりにまんまと騙されていた。
「カナタ、連れのオートマタはどうした?」
疑うべきだったのだ。
いるはずの相手がいないことに……水洞窟の外へと真っ先に駆けてゆく村人たちの前に細身の殺戮兵器が姿を見せた。
これにより、六発の銃弾はすべて逆方向へと移動しヴィーの身体を撃ち抜いた。
流血が白いタイル貼りの地を真っ赤に染めてゆく。
ブラックバカラの幹部クラスとはいえ、所詮は生身の人間である。
無防備な肉体に風穴を開けられれば生きてはいられない。
当たり前の光景……なのにギデオンは腑に落ちずにいた。
彼女の末路を素っ気なく眺めながら、動かなくなったザフキエルの方へと急ぐ。
また、稼動するのではないかと疑ってかかっていた。
「君がギデ君の友人かね?」ジャスベンダーがラスキュイに話かけた。
「ギデ? ええっ……そうです。ラスキュイ・ノアと申します。
失礼ですが貴方は?」
「おっと、こちらこそ不作法だったね。
ジャスベンダー・ステラだ。見ての通り魔術師をやっている。
ギデ君とは旅先で知り合ってね、聖王国の観光がてら同行させて貰っているよ」
「そういうわけですか……」ラスキュイが指先をクィクィと動かす。
その先には鋼鉄の機体を手で叩くギデオンがいた。
「おおっ……うおぉぉい! いくら、引き寄せられるからって無断で能力を使うのはやめろよ」
身体を引っ張られ、思わず倒れそうになったギデオンは眉間にシワを寄せていた。
友人同士のじゃれ合いかと取れるワンシーンだが、そうでもないらしい。
ギデオンのコメカミに銃口を押し当てられた。
思わずジャスベンダーが険しい表情を見せる。
不意打ちを食らった当の本人はまったく動じず、そのまま素手で銃身を掴み頭からゆっくりと退けた。
「相変わらずの堅物だな」そう一言呟くとラスキュイも「フッ」と鼻で笑いながら拳銃をホルダーに差し込んだ。
「分かっていると思うがギデオン。
お前は、エゼックト司教殺しの犯人として国内で指名手配されている。
司教様との間に何があったのか知らないが、私は最初から信じていなかったよ。
聖歌隊の人間が司教様を殺すなんてあり得ない話だ」
「ああ、僕じゃない。
僕は事件の黒幕を負って諸外国を転々としていたが、司教様を殺害した奴は未だに特定できてはいない。
ブラックバカラの連中も黒幕の計画に一枚かんでいるようだ。
奴らを探れば司教様殺しの犯人に辿りつけるかもしれない」
「そいつは期待しない方がいい」
息巻くギデオンの様子を見ながら、ラスキュイは深く吐息をついた。
諦めろと言わんばかりの態度がなんとも不可解だ。
「どういう意味だ? 犯人が見つからないとでもいうのか、ラス?」
「そうではない。
私が言いたいのは、二人ともすでにブラックバカラの術中にハマっているということだ。この際だから、ハッキリというが我々に勝機は万に一つもない」
「そこまで手強い組織だと……? だとしても、僕たちならば奴らの目論見だって阻止できるはずだ」
「それだ。現にお前は、ブラックバカラを格下とみている……。
それが最初の間違いだ。
連中の強い連携力と寸分たぐわぬ計算によって、我々は行動を制限されている。
言っていることが分かるか? 教団のボスは聖王国全体を盤上に見立てて信徒という駒を動かしているんだ。
お前が聖王国に戻ってきたのも偶然ではない。
そうするように仕向けて、この国に来させた。そう考えた方が良い」
審問官の言葉に嘘偽りなどない。
聖職者であるため真実のみしか語ることを許されない。
ギデオンたちは返す言葉すら出て来なかった。
誰かの意図により、自分たちが支配されていたことを受け入れるのには、あまりも現実味が薄い。
仮にそうだとしても、どうして勝算がないことに結びつくのか想像し難い。
「とりあえず、これ以上の話は後回しだ。
まずは牢に閉じこめれていた村人を解放する」
「ほほうぉぉ―――!
小生が留守にしている間に水洞窟が敵の手に落ちているではないか!
かくなる上は―――――」
「騒がしい奴だな」
オートマタとの死闘に決着をつけたカナタがタイミング悪く乱入してきた。
途端、ラスキュイの容赦ない蹴りがケツへと飛ぶ。
ガコンと音を立てカナタは牢獄へと激突した。
そのまま身動きがとれずに、短い手足をバタバタとさせている。
見ると柵の間に顔を挟んで引き抜くことができず悪戦苦闘している。
「へ、ヘルプミ―――!!」
「心配するな、そのうち細くなって柵から顔を引き抜くこともできるだろう」
「ププッ……そんなの待てませんわ」
尻越しに会話するカナタが不敵な笑みを浮かべていたが誰一人として気づかない。
その道化っぷりにまんまと騙されていた。
「カナタ、連れのオートマタはどうした?」
疑うべきだったのだ。
いるはずの相手がいないことに……水洞窟の外へと真っ先に駆けてゆく村人たちの前に細身の殺戮兵器が姿を見せた。
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