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黄昏る命
来訪者は珈琲の香りと共に 1
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駆け引きなんてするものじゃない。
ましてや、普段から平穏を望んでいるのなら。
あの時、僕には必ず成功するという自信があった。
改ざんされた魔法を行使して、ロビンの窮地を救う方法はこれしかないと確信していた。
結果、彼は意識を取り戻した。
ちゃんと息もしているし、食欲も旺盛だ。
唯一残念だったのは、丸飲みされた肉体が完全にグリズリーの身体に溶け込んでしまったことだ。
復元しようと試みたが、今の僕のレベルでは不可能だった。
「よぉ! 今日も晴天だな。こんな日は川で魚でも取るか」
人でありながら、熊のアバターになってしまったロビンアーム。
ショックのあまり寝込んでしまうかと思ったが、存外にも平然としている。
彼いわく、変化したのはアバターだけだから気にはならないそうだ。
熊の姿になったことは、傍からみれば恐怖でしかないが悪いことばかりではない。
ロビンはここ数日で狩りが上手くなった。
特に川魚を素手でつかみ取るのが得意だ。
これで当面は食料で悩むことはないと二人して喜んだ。
ロビンもお目当ての弓矢「グシスナウター」を手に入れることができた。
これで、この場所に留まる理由はないように思われたが一つだけ問題が残っていた。
METAL CLAYDである。
ヒーリングで一分、リザレクションで十分は稼動できるが、ここから動かすのは賢明ではないだろう。
ただでさえ、この図体だ。
野を駆ければ、たちまち人目につくし、大した距離を移動できるわけでもない。
ならば、いっそのこと城塞跡地を僕たちの拠点にしようという話になった。
幸いなことに、もう遺跡奥にはモンスターの群れは生息していない。
二人で内部を調査し宝という名の骨董品もたくさん見つけた。
残念ながら金銀財宝は発見に至らなかったが、城塞の一部設備は目を見張る物があった。
例えば、この巨大な溶鉱炉はCLAYDの武器や装甲を製造するには最適である。
今は使用できなくなってしまっているが修復できれば使えそうな設備が多い。
古代人が残した知識はあながち馬鹿にはできない。
城塞をリホームすれば、住まいとして建て直すことも可能だろう。
ただし、金銭と人員があればの話だが……。
夢みたいな話だが、当然ながら僕の手元は何もない。
だからこそ、他所とのつながりが必要となってくる。
要するに手っ取り早く金銭を稼ぐ方法を僕たちは探している。
同時に金が集まるところには人材も集まってくる。
参考までにmEqに質問してみたが、ギャンブル、もしくは魔物討伐、レイドクエストで活躍することで収入を増やすことができるらしい。
カジノは論外だった。
少しも建設的ではないし、イカサマされたらそれで終わりである。
素人である僕らには見抜くことなんてできやしない。
そうなると頼りになるのは、魔物を討伐することだ。
冒険者登録する必要があるものの、ギルドに加入すればレイドクエストにも参加する資格を得ることができる。
「ただよぉ。どこで冒険者登録すれば良いんだ?
近くに都や町がない以上、冒険者登録すらままならないんじゃないか?」
水で濡れた毛皮を振るわせながらロビンが痛いところを突いてきた。
「ま、まぁ何とかなるさ」
岸に上がった川魚を両手一杯に抱えながら、僕は答えた。
町の場所が分からないのなら、NPCを【追うか捕まえるか】して探るしかない。
昨日、ここにやってきたNPCを追い払ってしまったのは、失敗だったと言えよう。
捕まえていれば、近隣の情報も得られたかもしれない。
彼らは相変わらず僕らをガヤと呼び蔑む。
尋常ではないほどの憎しみを持っているようだが、僕の知るところではない。
分かり合えないのなら、無理にでも上下関係を構築するしかない。
今度こそは大丈夫だと意気込んではみたものの、昨日の今日だ。
ここにやってくる奴なんて滅多にいない。
僕らがオレガシーマにログオンしてからリアル時間で15時間が経った。
ここでは一日がリアル三時間で経過する。
不思議なもので感覚的には、ちゃんと一日24時間の現実と変わりない。
だから余計に落ち着かない。
次はいつ、訪問者が現れるのか? 見当もつかない。
「待っていても何も始まらないぞ、キッド」
「どうするつもりだ?」
「取りあえず、近場を通る馬車を襲う。
あとはソイツらを捕まえて、町まで案内させればオッケーだ」
シンプルに物騒なことを提案してくれる。
だが、考えが甘い。ソイツらが抵抗した場合はどうするつもりなのか?
それに騒ぎ自体が大きくなれば、僕たちが城塞跡地を根城にしていることがバレてしまう。
そうなれば、ここを立ち退かないといけなくなる。
いずれにせよ、ここからは慎重な判断が求められるだろう。
「おや、驚いた。本当に、こんな所に人と魔物が住んでいるとは」
「誰だ!? 何をしにここに来た?」
突然の来客に、ロビンが威嚇の声を上げた。
ソイツは怯えることもなく、杖を突きながら僕たちの方へと近づいてくる。
「初めまして、私はアンゾと申します。以後、お見知りおきを。
本日、ここにやって来たのはガヤである君たちをスカウトするためです」
ましてや、普段から平穏を望んでいるのなら。
あの時、僕には必ず成功するという自信があった。
改ざんされた魔法を行使して、ロビンの窮地を救う方法はこれしかないと確信していた。
結果、彼は意識を取り戻した。
ちゃんと息もしているし、食欲も旺盛だ。
唯一残念だったのは、丸飲みされた肉体が完全にグリズリーの身体に溶け込んでしまったことだ。
復元しようと試みたが、今の僕のレベルでは不可能だった。
「よぉ! 今日も晴天だな。こんな日は川で魚でも取るか」
人でありながら、熊のアバターになってしまったロビンアーム。
ショックのあまり寝込んでしまうかと思ったが、存外にも平然としている。
彼いわく、変化したのはアバターだけだから気にはならないそうだ。
熊の姿になったことは、傍からみれば恐怖でしかないが悪いことばかりではない。
ロビンはここ数日で狩りが上手くなった。
特に川魚を素手でつかみ取るのが得意だ。
これで当面は食料で悩むことはないと二人して喜んだ。
ロビンもお目当ての弓矢「グシスナウター」を手に入れることができた。
これで、この場所に留まる理由はないように思われたが一つだけ問題が残っていた。
METAL CLAYDである。
ヒーリングで一分、リザレクションで十分は稼動できるが、ここから動かすのは賢明ではないだろう。
ただでさえ、この図体だ。
野を駆ければ、たちまち人目につくし、大した距離を移動できるわけでもない。
ならば、いっそのこと城塞跡地を僕たちの拠点にしようという話になった。
幸いなことに、もう遺跡奥にはモンスターの群れは生息していない。
二人で内部を調査し宝という名の骨董品もたくさん見つけた。
残念ながら金銀財宝は発見に至らなかったが、城塞の一部設備は目を見張る物があった。
例えば、この巨大な溶鉱炉はCLAYDの武器や装甲を製造するには最適である。
今は使用できなくなってしまっているが修復できれば使えそうな設備が多い。
古代人が残した知識はあながち馬鹿にはできない。
城塞をリホームすれば、住まいとして建て直すことも可能だろう。
ただし、金銭と人員があればの話だが……。
夢みたいな話だが、当然ながら僕の手元は何もない。
だからこそ、他所とのつながりが必要となってくる。
要するに手っ取り早く金銭を稼ぐ方法を僕たちは探している。
同時に金が集まるところには人材も集まってくる。
参考までにmEqに質問してみたが、ギャンブル、もしくは魔物討伐、レイドクエストで活躍することで収入を増やすことができるらしい。
カジノは論外だった。
少しも建設的ではないし、イカサマされたらそれで終わりである。
素人である僕らには見抜くことなんてできやしない。
そうなると頼りになるのは、魔物を討伐することだ。
冒険者登録する必要があるものの、ギルドに加入すればレイドクエストにも参加する資格を得ることができる。
「ただよぉ。どこで冒険者登録すれば良いんだ?
近くに都や町がない以上、冒険者登録すらままならないんじゃないか?」
水で濡れた毛皮を振るわせながらロビンが痛いところを突いてきた。
「ま、まぁ何とかなるさ」
岸に上がった川魚を両手一杯に抱えながら、僕は答えた。
町の場所が分からないのなら、NPCを【追うか捕まえるか】して探るしかない。
昨日、ここにやってきたNPCを追い払ってしまったのは、失敗だったと言えよう。
捕まえていれば、近隣の情報も得られたかもしれない。
彼らは相変わらず僕らをガヤと呼び蔑む。
尋常ではないほどの憎しみを持っているようだが、僕の知るところではない。
分かり合えないのなら、無理にでも上下関係を構築するしかない。
今度こそは大丈夫だと意気込んではみたものの、昨日の今日だ。
ここにやってくる奴なんて滅多にいない。
僕らがオレガシーマにログオンしてからリアル時間で15時間が経った。
ここでは一日がリアル三時間で経過する。
不思議なもので感覚的には、ちゃんと一日24時間の現実と変わりない。
だから余計に落ち着かない。
次はいつ、訪問者が現れるのか? 見当もつかない。
「待っていても何も始まらないぞ、キッド」
「どうするつもりだ?」
「取りあえず、近場を通る馬車を襲う。
あとはソイツらを捕まえて、町まで案内させればオッケーだ」
シンプルに物騒なことを提案してくれる。
だが、考えが甘い。ソイツらが抵抗した場合はどうするつもりなのか?
それに騒ぎ自体が大きくなれば、僕たちが城塞跡地を根城にしていることがバレてしまう。
そうなれば、ここを立ち退かないといけなくなる。
いずれにせよ、ここからは慎重な判断が求められるだろう。
「おや、驚いた。本当に、こんな所に人と魔物が住んでいるとは」
「誰だ!? 何をしにここに来た?」
突然の来客に、ロビンが威嚇の声を上げた。
ソイツは怯えることもなく、杖を突きながら僕たちの方へと近づいてくる。
「初めまして、私はアンゾと申します。以後、お見知りおきを。
本日、ここにやって来たのはガヤである君たちをスカウトするためです」
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