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黄昏る命
靴屋と戯言 4
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バカにされ過ぎたバッカモン!が、奇声をあげながら地団駄を踏んでいた。
鎧兜で素顔に見えないのが残念だ。
きっと茹蛸のように真っ赤な顔になっていることだろう。
兄が侮辱にされたことに、マンゴープリンも怒りを露にすると思われたが、そんなことはなかった。
自分のネイルの状態が気になるのか、スパチュラでラメをすくうのに没頭している。
「妹よ。トゥギャザーしようず! ポクらはいつでも共にやってきたじゃないか。
二人で力を合わせれば、コイツなんて瞬殺だよ、瞬殺」
「はぁ? 誰と戦ってんのよ。この鉄オタは……今まで、協力してきたのは金の為よ! 金!
アンタのために、どうして私までバトルしないといけないのよ、カス」
「反抗期でシュッ―――! 反抗期でシュッ―――!
これまでプリンの夜間外出が両親にバレなかったのは、ポクが身代わりになって工作していたからなのに……」
「ちょっ! 嘘でしょ? おまっ……人が居ない時に勝手に私の部屋に入ったのかよ!
うわっ…………最悪」
過酷な家庭環境の有り様を垣間見てしまった気がする。
辛辣すぎる妹と変態すぎる兄のやり取りは見ている方が辛い。
自業自得ではあるももの若干、バッカモン!に同情する声が上がっていた。
「失礼します。お客様、当店では飲食目的以外の来店は承っておりません。
他のお客様の迷惑にもなりますし、トラブルを起こすのはお控え願えますか?」
見兼ねたモッヂが軽く注意をうながした。
それでもバッカモン!は態度をあらためず、ぶつくさと文句を垂れていた。
「飲食店の店員ごときが偉そうに!」
「うわっ、カスハラかよ。エグイことすんなよ」
「はぁん! 別に良いだろう? ここはゲームの世界なんだからさ。
ポクたちが何をしようと大して問題にはならないって」
「それも、そっかぁ。この世界の奴らは、私らが嫌いなようだし好き勝手してもバチは当たらないか」
王様気分でソファー席に横たわるバッカモン!とカウンター席でネイル塗るマンゴープリン。
相手がNPCだから迷惑をかけていないと二人は主張する。
確かに僕らはガヤで、アルムハザードの住人たちからは毛嫌いされている。
悪事に走り、NPCたちを恐怖で支配するのも、分からないことはない。
だが、やはり線引きは必要だ。
相手が間違ったことするから自分も間違えていいなんて、自己保身の言い訳でしかない。
それこそ、ただのエゴだ。
種族差別が禁止されている、このエルンストの街ではなおのことだ。
街のルールを守れない奴が、街の一員として扱えなどと訴えるのは、厚顔無恥でしかない。
「あ―――、ホント、メンドクセェな。
キン〇マが腐っている奴のせいで、せっかくの飯が不味くなっちまったよ」
テーブルにバンとフォークを叩きつけるとヤイナは立ち上がった。
あれだけ、面倒事には関わるなとアンゾにも注意されていたのに、堪え性のない性格が災いして感情が昂ると突発的に動いてしまう。
暗殺者としては致命的な欠点だ。
それを未然に防ぐのが僕の仕事なのだが一度、火がついてしまうと彼女を止める術がない。
「ここじゃなんだ、表出ろよ。鎧ダルマ」
「アハッ! 本気で言っているのかポ―――――!
お前のような小娘がポクらに勝てると思っているのかい?」
「ちょい兄貴、待っ――――」
先に気づいたのは、マンゴープリンの方だが、わずかに遅かった。
ヤイナの細い片腕がバッカモン!の甲冑をつかむと、腕力だけで奴を店の外へと投げ飛ばしていた。
粉々に砕け散ったガラス戸に、店内が騒然となった。
「ゴメン、モッヂ。弁償代は、あとでアンゾに請求してくれ」
「ちょいと、キッド君、お釣り!」
お代を払うとすぐにヤイナの後を追った。
僕に続いて背後からマンゴープリンが急接近してきた。
「あのガキなんなのよ? レベル46ってNPCじゃヤバイ類でしょ!」
「そういう個体も一定数はいるんだろう。アイツよりもヤバイ人物を僕は知っているぞ」
「うげっ……マジかんべん」
舌を出しながらマンゴープリンは露骨に嫌そうな顔をしていた。
大人しく黙っていれば、結構な美人であろうに損している。
人は見かけによらないとは、彼女の様な人間を指す言葉なのだろう。
「いた! あの土手のところ」
マンゴープリンが指差す方向に対峙する二人の姿があった。
レベル46のヤイナに挑むのはレベル8しかないバッカモン!だ。
このまま素直に戦えば無駄な死体が増える。
とはいえ、アイツはプレイヤーだからリスタートするだけだ。
「ねぇ、アンタ。あのガキの知り合いなんでしょう?
責任とって止めなさいよ。
でないと……アイツ、もうゲームには復帰できないのよ」
「どういう意味だ?」
頭に疑問符を浮かべている内に、戦闘が始まった。
全身にまとった鎧の隙間から蒸気を放出しバッカモン!が加速してゆく。
頑強な鎧で相手にタックルをかまし、ダメージを与える。
それが彼の戦法らしい。
シンプルだからこそ、一撃は重みある強烈なものとなる。
ヤイナが回避し、猪突猛進がごとく先にある橋脚に体当たりしていた。
バッカモン!の身体が物の見事に金属の脚に埋まっていた。
いかに破壊力があろうとも、身動きが取れない時点でアホと言わざるを得ない。
少女の痛烈な跳び蹴りがバッカモン!の背中を打ち抜いた。
鎧兜で素顔に見えないのが残念だ。
きっと茹蛸のように真っ赤な顔になっていることだろう。
兄が侮辱にされたことに、マンゴープリンも怒りを露にすると思われたが、そんなことはなかった。
自分のネイルの状態が気になるのか、スパチュラでラメをすくうのに没頭している。
「妹よ。トゥギャザーしようず! ポクらはいつでも共にやってきたじゃないか。
二人で力を合わせれば、コイツなんて瞬殺だよ、瞬殺」
「はぁ? 誰と戦ってんのよ。この鉄オタは……今まで、協力してきたのは金の為よ! 金!
アンタのために、どうして私までバトルしないといけないのよ、カス」
「反抗期でシュッ―――! 反抗期でシュッ―――!
これまでプリンの夜間外出が両親にバレなかったのは、ポクが身代わりになって工作していたからなのに……」
「ちょっ! 嘘でしょ? おまっ……人が居ない時に勝手に私の部屋に入ったのかよ!
うわっ…………最悪」
過酷な家庭環境の有り様を垣間見てしまった気がする。
辛辣すぎる妹と変態すぎる兄のやり取りは見ている方が辛い。
自業自得ではあるももの若干、バッカモン!に同情する声が上がっていた。
「失礼します。お客様、当店では飲食目的以外の来店は承っておりません。
他のお客様の迷惑にもなりますし、トラブルを起こすのはお控え願えますか?」
見兼ねたモッヂが軽く注意をうながした。
それでもバッカモン!は態度をあらためず、ぶつくさと文句を垂れていた。
「飲食店の店員ごときが偉そうに!」
「うわっ、カスハラかよ。エグイことすんなよ」
「はぁん! 別に良いだろう? ここはゲームの世界なんだからさ。
ポクたちが何をしようと大して問題にはならないって」
「それも、そっかぁ。この世界の奴らは、私らが嫌いなようだし好き勝手してもバチは当たらないか」
王様気分でソファー席に横たわるバッカモン!とカウンター席でネイル塗るマンゴープリン。
相手がNPCだから迷惑をかけていないと二人は主張する。
確かに僕らはガヤで、アルムハザードの住人たちからは毛嫌いされている。
悪事に走り、NPCたちを恐怖で支配するのも、分からないことはない。
だが、やはり線引きは必要だ。
相手が間違ったことするから自分も間違えていいなんて、自己保身の言い訳でしかない。
それこそ、ただのエゴだ。
種族差別が禁止されている、このエルンストの街ではなおのことだ。
街のルールを守れない奴が、街の一員として扱えなどと訴えるのは、厚顔無恥でしかない。
「あ―――、ホント、メンドクセェな。
キン〇マが腐っている奴のせいで、せっかくの飯が不味くなっちまったよ」
テーブルにバンとフォークを叩きつけるとヤイナは立ち上がった。
あれだけ、面倒事には関わるなとアンゾにも注意されていたのに、堪え性のない性格が災いして感情が昂ると突発的に動いてしまう。
暗殺者としては致命的な欠点だ。
それを未然に防ぐのが僕の仕事なのだが一度、火がついてしまうと彼女を止める術がない。
「ここじゃなんだ、表出ろよ。鎧ダルマ」
「アハッ! 本気で言っているのかポ―――――!
お前のような小娘がポクらに勝てると思っているのかい?」
「ちょい兄貴、待っ――――」
先に気づいたのは、マンゴープリンの方だが、わずかに遅かった。
ヤイナの細い片腕がバッカモン!の甲冑をつかむと、腕力だけで奴を店の外へと投げ飛ばしていた。
粉々に砕け散ったガラス戸に、店内が騒然となった。
「ゴメン、モッヂ。弁償代は、あとでアンゾに請求してくれ」
「ちょいと、キッド君、お釣り!」
お代を払うとすぐにヤイナの後を追った。
僕に続いて背後からマンゴープリンが急接近してきた。
「あのガキなんなのよ? レベル46ってNPCじゃヤバイ類でしょ!」
「そういう個体も一定数はいるんだろう。アイツよりもヤバイ人物を僕は知っているぞ」
「うげっ……マジかんべん」
舌を出しながらマンゴープリンは露骨に嫌そうな顔をしていた。
大人しく黙っていれば、結構な美人であろうに損している。
人は見かけによらないとは、彼女の様な人間を指す言葉なのだろう。
「いた! あの土手のところ」
マンゴープリンが指差す方向に対峙する二人の姿があった。
レベル46のヤイナに挑むのはレベル8しかないバッカモン!だ。
このまま素直に戦えば無駄な死体が増える。
とはいえ、アイツはプレイヤーだからリスタートするだけだ。
「ねぇ、アンタ。あのガキの知り合いなんでしょう?
責任とって止めなさいよ。
でないと……アイツ、もうゲームには復帰できないのよ」
「どういう意味だ?」
頭に疑問符を浮かべている内に、戦闘が始まった。
全身にまとった鎧の隙間から蒸気を放出しバッカモン!が加速してゆく。
頑強な鎧で相手にタックルをかまし、ダメージを与える。
それが彼の戦法らしい。
シンプルだからこそ、一撃は重みある強烈なものとなる。
ヤイナが回避し、猪突猛進がごとく先にある橋脚に体当たりしていた。
バッカモン!の身体が物の見事に金属の脚に埋まっていた。
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