暗殺ギルドのリザレクター

心絵マシテ

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黄昏る命

靴屋と戯言 3

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 一仕事終え、ナコビのウエストゲートにある【銀亭角】で食事を摂ることにした。
 この場所は、アルムハザードで活動する冒険者が集う場所だ。
 まぁ、平たく言えばショッピングモールに近い感覚があるが少し異なる。
 少し複雑だが、客が買い物先を選ぶのではなく、店側が客を選ぶ仕組みになっている。

 こうして敷居を設けることで、なるべく冒険者同士のイザコザが起きないようにしているらしい。
 特に上級者は、新米冒険者を見下す傾向が強い。
 上級者が悪いというわけではないが、オンラインゲームで勝手が分からない相手に、マンウントを取ろうとするプレイヤーは少なからずいる。

 そのような輩のせいで上級者の印象を悪くしたくないというのが、運営側の本音なのだろう。

 銀亭角はオレガシーマでも有名な飲食チェーン店だそうだ。
 チェーン店と聞くと剣と魔法の世界では極めて異質だが、内装はもっと驚きだ。
 馴染みある現代風になっていて、僕らにとっても抵抗なく通える場所となっている。

 もちろん、ファンタジーの世界を堪能したいというプレイヤーのニーズに答えてくれる店も存在する。
 僕としても是非、一度は足を運びたいものだが、下位冒険者では門前払いを食らってしまう。

 その点、銀亭角は懐が広い。冒険者ランクが低くても笑顔で迎い入れてくれる。
 僕も腹が空けば大抵ここを訪れる。
 特に昼間は人が少なく落ち着いて食事をすることができる。
 庶民的な料理が多く値段も安いので財布の中身を心配する必要もないし、味も上手い。

「いらっしゃい! キッド君」

 いつものように調理場から店長がやってきた。
 小麦色の肌をした二十代前半の女性。
 彼女が銀亭角ナコビ支店の店長【モッヂ】だ。
 頭に巻いた桃色のバンダナとTシャツ姿が彼女トレードマークとも言える。

 知り合って間もないが、彼女はコミュニケーションモンスターである。
 絶えない笑顔と細やかな気配りで、客から好評を博している。
 向いに座って、メニュー表を凝視している連れを除いては……。

「スプリングロールセットを二つ」

「はぁーい、いつものやつね。新作のシーフードロールもオススメだよ。
良かったら注文してねん!」

「まぁ、気が向いたらね」

 モッヂは、とても働き者だ。
 店長だから当然といえばそうだが、愛想のない僕にすら気さくに声をかけてくれる。
 暗殺ギルドに所属している手前、なるべく他者とは関わりを持ちたくない。
 そんなコチラの心情など彼女には関係ない。
 通い始めて間もないのに、すっかり顔を覚えられてしまっているようだ。

 料理が出来るまでの空き時間、俺はパラボードを展開した。
 このシステムにも大分、慣れてきた。

 マッピングを選択し地図を広げてみる。
 思考宝珠の在り方を知っていると思われる者は残り二人。
 バンゴットが外れだった分、捜査の継続は気乗りしない。
 だとしても見つけなれば、依頼者である国営博物館が口やかましく言ってくるだろう。

「次の指令が来ていた」

 テーブルの裏に、貼りつけられた伝票を手に取りヤイナが僕に手渡してきた。
 アンゾが前もって仕込んでおいてくれたのだろう。

 紙をポーションで濡らすと隠された文字が浮きがってくる仕組みだ。
 裏側には、さきほどの街道方面の地図が印字されていた。
 街道から、さらに北へと進んだところでバツ印が刻まれている。

 どうやら、そこには治療院あるようだ。
 次のターゲットとして、医師のレイズ・スタカートの名が指定されていた。
 今回、僕に与えられた任務はヤイナと共に、この医師を見つけ出しチンターマニを回収することだ。

 運ばれてきた食事を口に運んでいると店のドアが開いた。
 店内に入ってきたのは、フルアーマーで身を固めた男とミニスカ制服姿の女だった。
 一瞬、コスプレ大会でも始まったのかと目を疑った。

 パラボードを通し確認してみると彼らの正体が判明した。

 男の名は【バッカモン!】、職業は機関士。
 セクシー系、女優のような相方は車掌の【マンゴープリン】だ。

 なんともふざけた職業だが、二人ともβプレイヤーの識別コードを持っている。
 同胞を前に僕は、思わず立ち上がって手を振ろうとした。

「止めておけ!」

 空かさず、ヤイナが僕の腕をつかんで睨みつけていた。
 その形相には鬼気迫るものを感じる。

「アイツらには見覚えがある……このウエストゲートでも悪名高いことで有名なホーデン兄妹だ。
スリ、恫喝、暴行、殺人未、ありとあらゆる犯罪に手を染め尽くしている。
最近では、盗品を売りさばいて金を荒稼ぎしていると聞く」

 ヤイナの言葉に嘘はない。
 その眼をみれば僕にでもハッキリと分かる。
 しかしながら、その話には大きな矛盾点が含まれているようだ。
 僕は彼女に尋ねた。

「彼らは、いつごろからエルンストに滞在しているんだ?
その口ぶりだと、結構前から知っているようだが?」

「そうだな、かれこれ三ヶ月は経つかな」

「さっ、三ヶ月ぅ――――!!」

 驚き過ぎて思わず叫んでしまった。
 慌てて口を塞いでも、もう遅い。

 βプレイヤーの二人が僕のことに気づき近づいてくる。
 先に声をかけて来たのは、フルアーマーを装着した男の方だ。

「シュッシュッシュ、こんな所にお仲間ちゃんがいるとはねぇー。
悪いことは言わないよ、ここはポクたちの縄張りだから、とっと失せな」

「……プハッ! くっそ、声たけぇ―――――! ダハッアハハハハッ――、雑魚くさっ!」

 牽制のつもりなのかは知らないが、まったくの逆効果だ。
 夢と魔法と金の国を想起されるバッカモン!の声に、ヤイナが抱腹絶倒していた。
 手でテーブルを叩く、あまりの爆笑度合いに周りの客も、こらえ切れず肩を震わせていた。
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