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黄昏る命
レイズデッド 2
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大通りの一画を曲がったところで先行していたはずのバッカモン!が力尽きていた。
むろん死亡という意ではなく、体力が底をついたという馬鹿の所業でしかなかった。
情けないことに、鎧の重さにより奴は身動きが取れなくなっていた。
まるで夏の暑さにバテて倒れた犬のように息を切らしながら横たわっていた。
「ホント、バカだなぁー。脱げよ! んな、暑苦しいもん」
「マイボディソウルは決して外さんぞ!」
「じゃあ、死ね。今すぐ逝けよ」
マンゴープリンが兄の背中をガシガシと蹴り続けている。
問答無用の死体蹴りに周囲から痛々しい視線が注がれていた。
いい加減、公然の場で兄妹喧嘩しないで欲しい。
近くにいる僕たちまでも、好奇の目で見られてしまう。
「お前ら遊んでんなよ。つぅーか、その鎧ボロボロじゃん。変形して着れてないし捨てろよ」
「ガッ! 誰のせいでこうなったと思うのかぁぁあ―――。
オーダーメイドだぞ、オーダーメイド!
本来なら弁償ものだが、そこのオーキッドに免じて許してやっているのに調子に乗るなよ、猿がぁああ――――」
「あん? もう一遍、死んでみるか?」
「いえ、結構で御座いますです……」
虚勢ばかり張っているが、身体は正直だ。
一度、ボコボコにされた相手には逆らえないと自然と鎧を脱ぎ捨てていた。
兜だけはつけたまま、他の装備一式を道端に置いたバッカモン!は木札を取り出す。
「拾って下さい」とペンで書いて鎧の傍に札を立てかけていたが、迷惑でしかない。
捨て猫じゃないんだから、拾う奴がいたら顔を拝んでみたいものだ。
「うはっやあ! 軽い、軽い」
軽量化に成功したバッカモン!はクワガタを取りに行く小学生のように全力ダッシュで人混みに消えてゆく。
何が、彼をあそこまで可笑しくしたのか?
僕らには理解できない。
妹のプリンに聞いてもいいが、聞くだけ嫌な予感しかしない。
三分後、血だらけになった馬鹿が道のど真ん中で突っ立っていた。
僕たちの到着を待っているみたいだが、皆で顔を伏せるしかない。
何があったのかだなんて愚問だ。何をやらかしたのか聞くのが正解だ。
「もうすぐ着くから」
バッカモン!の前を素通りしながら、マンゴープリンは駅を指差した。
そういえば、この二人の職業は、機関士に車掌と鉄道に関係している。
RPGらしからぬ職だが、僕の記憶ではキャラメイクの時点でそのようなクラスは実装されていなかったはずだ。
これも、またデータ改ざんの余波ということか……。
「馬車、馬車だよ! 馬に踏みつけられたぁぁあシュ―――」
背後から耳障りな声が聞こえる。
どうせなら、足蹴にされたショックで真人間になってくれないかと願うが望みは薄い。
チケットを購入し改札口を通る。
ここまでは日常とはさして変わりないが、ここはアルムハザードの世界だ。
ホームとホームの間、線路が敷かれているはずの部分がプールのように注水されていても別段、異常ではない。
「……いや、あり得ないだろうよ。水の上を何が走るんだよ」
「こんなで驚いてもらったら困るよ。そっちは一般用、私たちはこっちだからさ」
案内されるままに、ついてゆくと別のホームが見えてきた。
ホームというよりは車庫に近い。
そこに納まるようにして一台の列車が停車していた。
黒鉄でおおわれている車両は、蒸気機関を彷彿させるが酷似しているだけで厳密には異なる。
煙りを吐き出す煙突はないし連動して回転する車輪もついていない。
何より動力機関が違う。
コイツは蒸気ではなく魔力で動かせる。
METAL CLAYDの一種だ。
この車両は国の物ではなく、特定の所有者がいる。
パラボードで詳細を確認すると、僕はマンゴープリンの方に目をやった。
僕と同様、改ざんの影響を受けた支給装備なのだろう。
「どう、スゲェしょっ?」
「まぁな。コイツを使えば、遠方まで楽々と移動できるな。
例えば、荷を大量に運んだりしたい時なんか便利そうだ」
「それな!
私たちはさ、今まで業者から依頼された荷物を入出荷して金を稼いでいたわけよ。
モチ、中にはヤベェもんも含まれることがあっけど、別に私たちが違反しているわけじゃないしさ。
ホント、それだけなんだよ。
巷では私たちを犯罪者扱いする奴らがいるけど、デタラメもいい所さ。
まぁ、これも何かの縁だし、同じプレイヤーとしてアンタには誤解されたくないから明かしたわけよ」
「なるほどね。秘密にしていたのはチートだと疑われるのを懸念したからか?」
「それもあるけれど、コイツを誰かに奪われるのは嫌だからさ。
あと、兄貴がいないと動かせなくなるから困るんだよ」
自慢気に愛車を紹介する彼女はどこか嬉しそうだった。
見た感じ手入れも、しっかりとされてボディーもピカピカに磨かれている。
愛車を大事できる奴に悪い奴はいない。
昔、自動車好きの祖父がそんなことを言っていたような覚えがある。
マンゴープリンには悪いが01のことを話すつもりはない。
不公平だとしても、あれは乗り物ではなく戦闘兵器だ。
間違った使い方をする輩の手に渡ったら、国家さえ揺るがす事態に陥るだろう。
だから話たくとも口外できない。
むろん死亡という意ではなく、体力が底をついたという馬鹿の所業でしかなかった。
情けないことに、鎧の重さにより奴は身動きが取れなくなっていた。
まるで夏の暑さにバテて倒れた犬のように息を切らしながら横たわっていた。
「ホント、バカだなぁー。脱げよ! んな、暑苦しいもん」
「マイボディソウルは決して外さんぞ!」
「じゃあ、死ね。今すぐ逝けよ」
マンゴープリンが兄の背中をガシガシと蹴り続けている。
問答無用の死体蹴りに周囲から痛々しい視線が注がれていた。
いい加減、公然の場で兄妹喧嘩しないで欲しい。
近くにいる僕たちまでも、好奇の目で見られてしまう。
「お前ら遊んでんなよ。つぅーか、その鎧ボロボロじゃん。変形して着れてないし捨てろよ」
「ガッ! 誰のせいでこうなったと思うのかぁぁあ―――。
オーダーメイドだぞ、オーダーメイド!
本来なら弁償ものだが、そこのオーキッドに免じて許してやっているのに調子に乗るなよ、猿がぁああ――――」
「あん? もう一遍、死んでみるか?」
「いえ、結構で御座いますです……」
虚勢ばかり張っているが、身体は正直だ。
一度、ボコボコにされた相手には逆らえないと自然と鎧を脱ぎ捨てていた。
兜だけはつけたまま、他の装備一式を道端に置いたバッカモン!は木札を取り出す。
「拾って下さい」とペンで書いて鎧の傍に札を立てかけていたが、迷惑でしかない。
捨て猫じゃないんだから、拾う奴がいたら顔を拝んでみたいものだ。
「うはっやあ! 軽い、軽い」
軽量化に成功したバッカモン!はクワガタを取りに行く小学生のように全力ダッシュで人混みに消えてゆく。
何が、彼をあそこまで可笑しくしたのか?
僕らには理解できない。
妹のプリンに聞いてもいいが、聞くだけ嫌な予感しかしない。
三分後、血だらけになった馬鹿が道のど真ん中で突っ立っていた。
僕たちの到着を待っているみたいだが、皆で顔を伏せるしかない。
何があったのかだなんて愚問だ。何をやらかしたのか聞くのが正解だ。
「もうすぐ着くから」
バッカモン!の前を素通りしながら、マンゴープリンは駅を指差した。
そういえば、この二人の職業は、機関士に車掌と鉄道に関係している。
RPGらしからぬ職だが、僕の記憶ではキャラメイクの時点でそのようなクラスは実装されていなかったはずだ。
これも、またデータ改ざんの余波ということか……。
「馬車、馬車だよ! 馬に踏みつけられたぁぁあシュ―――」
背後から耳障りな声が聞こえる。
どうせなら、足蹴にされたショックで真人間になってくれないかと願うが望みは薄い。
チケットを購入し改札口を通る。
ここまでは日常とはさして変わりないが、ここはアルムハザードの世界だ。
ホームとホームの間、線路が敷かれているはずの部分がプールのように注水されていても別段、異常ではない。
「……いや、あり得ないだろうよ。水の上を何が走るんだよ」
「こんなで驚いてもらったら困るよ。そっちは一般用、私たちはこっちだからさ」
案内されるままに、ついてゆくと別のホームが見えてきた。
ホームというよりは車庫に近い。
そこに納まるようにして一台の列車が停車していた。
黒鉄でおおわれている車両は、蒸気機関を彷彿させるが酷似しているだけで厳密には異なる。
煙りを吐き出す煙突はないし連動して回転する車輪もついていない。
何より動力機関が違う。
コイツは蒸気ではなく魔力で動かせる。
METAL CLAYDの一種だ。
この車両は国の物ではなく、特定の所有者がいる。
パラボードで詳細を確認すると、僕はマンゴープリンの方に目をやった。
僕と同様、改ざんの影響を受けた支給装備なのだろう。
「どう、スゲェしょっ?」
「まぁな。コイツを使えば、遠方まで楽々と移動できるな。
例えば、荷を大量に運んだりしたい時なんか便利そうだ」
「それな!
私たちはさ、今まで業者から依頼された荷物を入出荷して金を稼いでいたわけよ。
モチ、中にはヤベェもんも含まれることがあっけど、別に私たちが違反しているわけじゃないしさ。
ホント、それだけなんだよ。
巷では私たちを犯罪者扱いする奴らがいるけど、デタラメもいい所さ。
まぁ、これも何かの縁だし、同じプレイヤーとしてアンタには誤解されたくないから明かしたわけよ」
「なるほどね。秘密にしていたのはチートだと疑われるのを懸念したからか?」
「それもあるけれど、コイツを誰かに奪われるのは嫌だからさ。
あと、兄貴がいないと動かせなくなるから困るんだよ」
自慢気に愛車を紹介する彼女はどこか嬉しそうだった。
見た感じ手入れも、しっかりとされてボディーもピカピカに磨かれている。
愛車を大事できる奴に悪い奴はいない。
昔、自動車好きの祖父がそんなことを言っていたような覚えがある。
マンゴープリンには悪いが01のことを話すつもりはない。
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