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黄昏る命
レイズデッド 3
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「何か、怪しいな……個人で【モビィークトレイン】を所有しているなんて聞いたこともない」
ヤイナが訝しげな顔で僕たちを見ていた。
もとより、この世界の価値観についてはゲーム感覚でいた。
リアルではあり得ないことも、ゲームでは成立すると思っていたけれど、さすがはVRUだ。
NPCの反応もリアルに寄せてある。
冷静に考えてみれば、この規模の乗り物や施設を利用するだけでも維持費が相当かかる。
稼いでいるからといって、富豪でもないホーガン兄妹が独占して使えるのは、あまりに現実とかけ離れている。
「フフフ、フシュッ――――!
これだから、めんたい娘は困りますなぁー。
リリースレンタルという言葉も知らないとは、世も末よ」
誰も頼んでいないのに、バッカモン!が偉そうに語りだした。
リリースレンタルという単語は僕も初耳だ。
好奇心から、それがどういう物なのかと訊ねてみる。
「俺の物は俺の物、お前の物も俺の物、お前はお前、to the victory!」
「聞いた僕が馬鹿だったよ」
何かの念仏のようなことを言い始めていた。
よくよく聞くとジャイアニズムを提唱しているだけだった。
とりあえず、バッカモン!が何も考えていないことはよーく理解できた。
それらしいことを言って、はぐらかそうとしてもヤイナには通用しない。
「マジかよ。じゃあ、オレでもリリースレンタルできんの?」
…………メチャクチャ、鵜呑みしていた。
なんなら、ガッツリと食いついていた。
彼女がこの手の反応を見せるということは、バッカモン!自身がリリースレンタルという言語があると本気で信じている証拠だ。
嘘をついていれば、間髪入れずに彼は蹴り飛ばされていただろう。
「んまぁ、プリンちゃんみたいにセクスィー形態と色香のコンボで駅員たちを落ちせれば、いけるポー。
幼児形態でも相手によれば―――――ハッ!」
調子に乗ったバッカモン!は口を滑らせたことに気づくと絶句していた。
ヤイナに容姿こと言うのは自殺行為でしかない。
状況からすれば核ミサイルのボタンを押したのと同じだ。
「せがさたぁぁああ―――――ん!」
言うまでもなく、高速のカカト落としが馬鹿の脳天に直撃していた。
鼻から大量に血を噴き出しながら「アイル ビー バック」告げてバッカモン!は息絶えた。
一日に何度、死ねば気が済むのだコイツはと心底呆れてしまうがヤイナもヤイナだ。
相手が救いようのない奴でもポンポン、殺していいわけがない。
「ちっとは、僕の苦労も考えろよ」
「だって、超ムカつくしキモイし臭いし良い所ないし――――」
そう言われると何も言い返せない自分がいた。
泣く泣くリザレクションを使うが、もうMPが尽きかけてきた。
同じ野郎ばかり生き返らせても一ミクロンも嬉しくない。
逆に命を粗末している気分になってくる。
「ふぅ~、死ぬかと思った……」
「いや、普通に死んでたけどな」
蘇生直後から、どうしょうもない会話してくる。
すでに死に慣れてきたコイツも反省の色がない。
僕が蘇生を断わる可能性すら、そのオツムの中には入っていないのだろう。
「そうだ! 良いこと思いついたぞ。
エロいことじゃないけど、先輩にも朗報だ」
「僕がエロい話に期待しているような言い方はヤメロ……」
「そう興奮すんなって。せっかく、モビィークトレインがあるんだ。
これに乗って、レイズの所に行かないか?
今日の今日のだし、きっとターゲットも度肝を抜かすと思うぜ」
「友達ん家へサプライズパーティーしに行くようなノリで言うなよ。
第一、準備もできていないし、アンゾに報告も入れないとならない。
いくら夜間だからって楽々、入り込める場所じゃないはずだ」
「またかぁー。心配しすぎなんだよ」
馬耳東風とは良く言ったものだ。
僕の忠告を聞き入れず、地図を取り出したヤイナは二人にとある場所まで列車で向かうように依頼していた。
その場所とは街道北部にある診療所だった。
提示させた場所を見たマンゴープリンの表情が、次第に険しくなってきた。
「アンタ、正気なの? ここって誰も住んでいない、廃墟しかない場所よ」
それまでとは異なる、重苦しい雰囲気に包まれた彼女は何か特別な事情を知っているようだった。
気にはなるが聞きだすことは当然しない。
知ったところで何も変わらないし、僕たちはそこに向かわなければならない。
そこが無人の廃墟だと知ればことさらだ。
「あーもう! 何があっても知らないから。自己責任で何とかしてよね。
兄貴、炉を温めて、魔法石の用意を!」
「あいよ、マックスチャアアアジィィ――――」
場の勢いだけで生きている彼らは、他者の忠告なんか聞こうとはしない。
モビィークトレインを走らせたいだけの鉄オタと、戦闘狂の靴屋のせいで僕まで巻き添えを喰らうカタチになってしまった。
聞きたいことは山ほどあるのに、そんな雰囲気ではない。
できることなら乗車したくはない。
その願いは天に届かず、強引に車内へと押し込まれてしまった。
大型トレーラー、顔負けの竹槍マフラーが列車の両脇を固めるように取り付けてある。
前方から噴きつける水蒸気のせいで視界は零、窓の外が全く見えない。
出だしから、こんな感じだ。後のことを考えると胃が痛む。
そんなことばかり、気にしていると奇妙な浮遊感が全身に伝わってきた。
ヤイナが訝しげな顔で僕たちを見ていた。
もとより、この世界の価値観についてはゲーム感覚でいた。
リアルではあり得ないことも、ゲームでは成立すると思っていたけれど、さすがはVRUだ。
NPCの反応もリアルに寄せてある。
冷静に考えてみれば、この規模の乗り物や施設を利用するだけでも維持費が相当かかる。
稼いでいるからといって、富豪でもないホーガン兄妹が独占して使えるのは、あまりに現実とかけ離れている。
「フフフ、フシュッ――――!
これだから、めんたい娘は困りますなぁー。
リリースレンタルという言葉も知らないとは、世も末よ」
誰も頼んでいないのに、バッカモン!が偉そうに語りだした。
リリースレンタルという単語は僕も初耳だ。
好奇心から、それがどういう物なのかと訊ねてみる。
「俺の物は俺の物、お前の物も俺の物、お前はお前、to the victory!」
「聞いた僕が馬鹿だったよ」
何かの念仏のようなことを言い始めていた。
よくよく聞くとジャイアニズムを提唱しているだけだった。
とりあえず、バッカモン!が何も考えていないことはよーく理解できた。
それらしいことを言って、はぐらかそうとしてもヤイナには通用しない。
「マジかよ。じゃあ、オレでもリリースレンタルできんの?」
…………メチャクチャ、鵜呑みしていた。
なんなら、ガッツリと食いついていた。
彼女がこの手の反応を見せるということは、バッカモン!自身がリリースレンタルという言語があると本気で信じている証拠だ。
嘘をついていれば、間髪入れずに彼は蹴り飛ばされていただろう。
「んまぁ、プリンちゃんみたいにセクスィー形態と色香のコンボで駅員たちを落ちせれば、いけるポー。
幼児形態でも相手によれば―――――ハッ!」
調子に乗ったバッカモン!は口を滑らせたことに気づくと絶句していた。
ヤイナに容姿こと言うのは自殺行為でしかない。
状況からすれば核ミサイルのボタンを押したのと同じだ。
「せがさたぁぁああ―――――ん!」
言うまでもなく、高速のカカト落としが馬鹿の脳天に直撃していた。
鼻から大量に血を噴き出しながら「アイル ビー バック」告げてバッカモン!は息絶えた。
一日に何度、死ねば気が済むのだコイツはと心底呆れてしまうがヤイナもヤイナだ。
相手が救いようのない奴でもポンポン、殺していいわけがない。
「ちっとは、僕の苦労も考えろよ」
「だって、超ムカつくしキモイし臭いし良い所ないし――――」
そう言われると何も言い返せない自分がいた。
泣く泣くリザレクションを使うが、もうMPが尽きかけてきた。
同じ野郎ばかり生き返らせても一ミクロンも嬉しくない。
逆に命を粗末している気分になってくる。
「ふぅ~、死ぬかと思った……」
「いや、普通に死んでたけどな」
蘇生直後から、どうしょうもない会話してくる。
すでに死に慣れてきたコイツも反省の色がない。
僕が蘇生を断わる可能性すら、そのオツムの中には入っていないのだろう。
「そうだ! 良いこと思いついたぞ。
エロいことじゃないけど、先輩にも朗報だ」
「僕がエロい話に期待しているような言い方はヤメロ……」
「そう興奮すんなって。せっかく、モビィークトレインがあるんだ。
これに乗って、レイズの所に行かないか?
今日の今日のだし、きっとターゲットも度肝を抜かすと思うぜ」
「友達ん家へサプライズパーティーしに行くようなノリで言うなよ。
第一、準備もできていないし、アンゾに報告も入れないとならない。
いくら夜間だからって楽々、入り込める場所じゃないはずだ」
「またかぁー。心配しすぎなんだよ」
馬耳東風とは良く言ったものだ。
僕の忠告を聞き入れず、地図を取り出したヤイナは二人にとある場所まで列車で向かうように依頼していた。
その場所とは街道北部にある診療所だった。
提示させた場所を見たマンゴープリンの表情が、次第に険しくなってきた。
「アンタ、正気なの? ここって誰も住んでいない、廃墟しかない場所よ」
それまでとは異なる、重苦しい雰囲気に包まれた彼女は何か特別な事情を知っているようだった。
気にはなるが聞きだすことは当然しない。
知ったところで何も変わらないし、僕たちはそこに向かわなければならない。
そこが無人の廃墟だと知ればことさらだ。
「あーもう! 何があっても知らないから。自己責任で何とかしてよね。
兄貴、炉を温めて、魔法石の用意を!」
「あいよ、マックスチャアアアジィィ――――」
場の勢いだけで生きている彼らは、他者の忠告なんか聞こうとはしない。
モビィークトレインを走らせたいだけの鉄オタと、戦闘狂の靴屋のせいで僕まで巻き添えを喰らうカタチになってしまった。
聞きたいことは山ほどあるのに、そんな雰囲気ではない。
できることなら乗車したくはない。
その願いは天に届かず、強引に車内へと押し込まれてしまった。
大型トレーラー、顔負けの竹槍マフラーが列車の両脇を固めるように取り付けてある。
前方から噴きつける水蒸気のせいで視界は零、窓の外が全く見えない。
出だしから、こんな感じだ。後のことを考えると胃が痛む。
そんなことばかり、気にしていると奇妙な浮遊感が全身に伝わってきた。
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