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新世界での冒険
栄枯盛衰という名の詭弁 3
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呼吸を整え、僕は身を乗り出した。
アバター(データで構成された肉体)とはいえ明らかにフルダイブ型とは感覚が違う。
Motion-Less VR特有のぼやけた世界感はそこになく、ありのままの現実がそこに広がっていた。
MMORPGオレガシーマのプレイヤーはHP、MP、SPという基礎数値を随時、確認することができる。
他にもレベルや基礎ステータスなどはあるが、戦闘中に表示されない。
典型的なRPGという観点に重きを置いた仕様となっている。
戦闘システム自体がどんな感じなのかは、会場で説明を受けている時から薄々と勘づいていた。
想定していた通りだ。
アバターの操作方法は意識する必要すらない。
普段と変わらず、意思さえあれば自在に動かせることが分かる。
本当に現実と仮想の境界がない。
ただし、この世界においては注意点がある。
それはSP(スピリットポイント)というオレガシーマならではのオリジナル設定である。
例えば、現状のようにモンスターと戦闘する際の行動は一定時間でSPが減少する。
SPとは……行動限界値とスキル発動値、双方の役割を担っている。
しかも、待機時間を設けてもSPは回復せず、数値を上昇させるには専用アイテムか、回復魔法が必須となる。
これにより、スキルの使用回数に制限を設け、戦闘に戦略性が生み出される。
完全にソロプレイには向いていない。
が、その分……高難度を求めるプレイヤーにとっては最高の環境とも言える。
MMORPGにおける一番の虚しさは、パワーインフレになった時である。
戦略を練るのが得意な策士の為にわざわざ用意されている機能だと言わざるを得ない。
無論、単独でプレイすること自体は何も悪いことばかりではない。
このようなチュートリアルにおいて気兼ねなくパラボードの操作練習することもできるし、実戦でももらえる報酬を独り占めできるというメリットもちゃんとある。
「のわっ!」
色々な動作タイミングを確認していると、ビックリ箱の黄色に染まった顔が目の前に迫ってきた。
反射的に側転しながら難を逃れても、通常のゲームとは異なり、すんなりとはいかない。
【派生効果攻撃】によって衝撃が飛び交ってくる。
魔物による衝突攻撃で放たれた衝撃によって僕は転倒して地面を転がってゆく。
めまいすら覚えるほどに回転した後に痛みではなく、全身に軽度のしびれを感じるようになった。
これが、オレガシーマにおけるダウン状態……つまりはスタン判定を受けたことになる。
一瞬ではあるが、身動きがとれないのは厳しい。
モンスターの攻撃を防ぐには、それなりの装備を整えないといけない。
また状況に応じて、攻撃パターンを見極めつつ回避行動を取るのも視野にいれておくべきだろう。
後衛職であるクレリックでは、どちらも容易ではないが……今は逃げ一択。
一度でもビックリ箱の攻撃を受ければゴリゴリとHPを削られてしまう。
再度、体勢を整えてから一気に前へと突き進む。
この際だ、攻撃モーションも確認しておこう。
こんな手旗で殴っても大したダメージは与えられないが、ビックリ箱の注意をそらすことは可能だ。
「てぇい!」
タイミングを見計らい、魔物の合間を縫って一撃を見舞う。
『バシィーン』鳴り響く音は心地よいがそれまでだ。
手応えどころか、かえって僕の手がジンジンと痺れている。
「はぁ? どういうことだ?」
攻撃した途端、SPが著しく減少してしまった。
思わず声を裏返しながら狼狽える僕だが状況からして、もっとも考えうるのは一つだ。
今の一撃がスキル攻撃であり、かつ序盤で扱うには消費が激し過ぎる物だった。
完全に大誤算もいいところだ。
これではビックリ箱の包囲から逃れることはできない。
途中でポイントが底を突き、動けなくなってしまう。
「さすがはDYNASだ……早くもチュートリアルで全滅してしまうとはな――――」
ーーーーーーーーー
「オレガシーマの世界にようこそ。
私は女神AIのmEqと申します。
ここではプレイヤー様のキャラクターを設定していただきます。
なお、β版であるため年齢と性別、スキンは変更できません。
プレイヤー様の生体データをもとにキャラを作製します」
「どうやら……僕はデジャブを見せられているようだな」
フッと鼻で笑いながら、気取ってみせるも本当にチュートリアルで力尽きたらしい。
まんまと女神の下りまで戻されてしまった。
面倒だが最初からキャラクターを作り直すことができるのだったら、悪くはない。
今度は戦士系の職業にしてビックリ箱を真っ二つにしてやる。
「プレイヤー登録を確認しました。
O-kid様、前回中断したところからゲームを再開します。
なお、一度決定された設定の変更はできませんのでご了承ください」
僕の意気込みは秒速で握りつぶされてしまった。
あまりに無情さに、笑顔が引きつりそうだ。
再び、アルムハザードの大地に落とされた瞬間、無数の丸顔が飛び出してきた。
箱ましっぐらな感じで、襲い掛かって来られても困るのだが―――――
ーーーーーーーー
「オレガシーマの世界にようこそ。
私は女神AIのmEqと申します。
ここではプレイヤー様のキャラクターを設定していただきます。
なお、β版であるため年齢と性別、スキンは変更できません。
プレイヤー様の生体データをもとにキャラを作製します」
結論から言うと再度全滅した……やり直すにしても詰んだ所から始まるとは、何たる鬼畜仕様なのだろうか。
これには、さすがにGMコールするしかない。
なんて事が可能なら、ここまで苦労はしない!
そんな素晴らしい機能は最初から存在してなかった。
アバター(データで構成された肉体)とはいえ明らかにフルダイブ型とは感覚が違う。
Motion-Less VR特有のぼやけた世界感はそこになく、ありのままの現実がそこに広がっていた。
MMORPGオレガシーマのプレイヤーはHP、MP、SPという基礎数値を随時、確認することができる。
他にもレベルや基礎ステータスなどはあるが、戦闘中に表示されない。
典型的なRPGという観点に重きを置いた仕様となっている。
戦闘システム自体がどんな感じなのかは、会場で説明を受けている時から薄々と勘づいていた。
想定していた通りだ。
アバターの操作方法は意識する必要すらない。
普段と変わらず、意思さえあれば自在に動かせることが分かる。
本当に現実と仮想の境界がない。
ただし、この世界においては注意点がある。
それはSP(スピリットポイント)というオレガシーマならではのオリジナル設定である。
例えば、現状のようにモンスターと戦闘する際の行動は一定時間でSPが減少する。
SPとは……行動限界値とスキル発動値、双方の役割を担っている。
しかも、待機時間を設けてもSPは回復せず、数値を上昇させるには専用アイテムか、回復魔法が必須となる。
これにより、スキルの使用回数に制限を設け、戦闘に戦略性が生み出される。
完全にソロプレイには向いていない。
が、その分……高難度を求めるプレイヤーにとっては最高の環境とも言える。
MMORPGにおける一番の虚しさは、パワーインフレになった時である。
戦略を練るのが得意な策士の為にわざわざ用意されている機能だと言わざるを得ない。
無論、単独でプレイすること自体は何も悪いことばかりではない。
このようなチュートリアルにおいて気兼ねなくパラボードの操作練習することもできるし、実戦でももらえる報酬を独り占めできるというメリットもちゃんとある。
「のわっ!」
色々な動作タイミングを確認していると、ビックリ箱の黄色に染まった顔が目の前に迫ってきた。
反射的に側転しながら難を逃れても、通常のゲームとは異なり、すんなりとはいかない。
【派生効果攻撃】によって衝撃が飛び交ってくる。
魔物による衝突攻撃で放たれた衝撃によって僕は転倒して地面を転がってゆく。
めまいすら覚えるほどに回転した後に痛みではなく、全身に軽度のしびれを感じるようになった。
これが、オレガシーマにおけるダウン状態……つまりはスタン判定を受けたことになる。
一瞬ではあるが、身動きがとれないのは厳しい。
モンスターの攻撃を防ぐには、それなりの装備を整えないといけない。
また状況に応じて、攻撃パターンを見極めつつ回避行動を取るのも視野にいれておくべきだろう。
後衛職であるクレリックでは、どちらも容易ではないが……今は逃げ一択。
一度でもビックリ箱の攻撃を受ければゴリゴリとHPを削られてしまう。
再度、体勢を整えてから一気に前へと突き進む。
この際だ、攻撃モーションも確認しておこう。
こんな手旗で殴っても大したダメージは与えられないが、ビックリ箱の注意をそらすことは可能だ。
「てぇい!」
タイミングを見計らい、魔物の合間を縫って一撃を見舞う。
『バシィーン』鳴り響く音は心地よいがそれまでだ。
手応えどころか、かえって僕の手がジンジンと痺れている。
「はぁ? どういうことだ?」
攻撃した途端、SPが著しく減少してしまった。
思わず声を裏返しながら狼狽える僕だが状況からして、もっとも考えうるのは一つだ。
今の一撃がスキル攻撃であり、かつ序盤で扱うには消費が激し過ぎる物だった。
完全に大誤算もいいところだ。
これではビックリ箱の包囲から逃れることはできない。
途中でポイントが底を突き、動けなくなってしまう。
「さすがはDYNASだ……早くもチュートリアルで全滅してしまうとはな――――」
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「オレガシーマの世界にようこそ。
私は女神AIのmEqと申します。
ここではプレイヤー様のキャラクターを設定していただきます。
なお、β版であるため年齢と性別、スキンは変更できません。
プレイヤー様の生体データをもとにキャラを作製します」
「どうやら……僕はデジャブを見せられているようだな」
フッと鼻で笑いながら、気取ってみせるも本当にチュートリアルで力尽きたらしい。
まんまと女神の下りまで戻されてしまった。
面倒だが最初からキャラクターを作り直すことができるのだったら、悪くはない。
今度は戦士系の職業にしてビックリ箱を真っ二つにしてやる。
「プレイヤー登録を確認しました。
O-kid様、前回中断したところからゲームを再開します。
なお、一度決定された設定の変更はできませんのでご了承ください」
僕の意気込みは秒速で握りつぶされてしまった。
あまりに無情さに、笑顔が引きつりそうだ。
再び、アルムハザードの大地に落とされた瞬間、無数の丸顔が飛び出してきた。
箱ましっぐらな感じで、襲い掛かって来られても困るのだが―――――
ーーーーーーーー
「オレガシーマの世界にようこそ。
私は女神AIのmEqと申します。
ここではプレイヤー様のキャラクターを設定していただきます。
なお、β版であるため年齢と性別、スキンは変更できません。
プレイヤー様の生体データをもとにキャラを作製します」
結論から言うと再度全滅した……やり直すにしても詰んだ所から始まるとは、何たる鬼畜仕様なのだろうか。
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