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新世界での冒険
煤塗れの寒村 4
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どうにも穏やかではない。
魔物を退治できたのは良かったけれど、数名とはいえ犠牲者が出た。
同胞をやられ気落ちするのはわかるが、僕には関係ない話だ。
酷い言い方をするかもしれないが、赤の他人である彼らのことは何一つ知らない。
勝手に首を突っ込んできたのは向こうのほうだ。
悲しいとも思わないし同情する理由もない。
ただただ「残念でした」と答えるしかない。
仮に「お前のせいで仲間が死んだ」と責め立てられても何もできないわけだ。
何より、アルムハザードの住人とは僕からすればデータ上の存在である。
もとより生死の枠組みから外れている。
そのような存在を生命として見ることは、聖人君主でもない限り難しいだろう。
老翁たちはずっと、深刻そうな顔つきでコソコソと話し合っていた。
誰も「お構いなく」とは言っていないのに、僕は相手にすらされていない。
ずっと、ここに留まっているのもいい加減、馬鹿らしくなってきた。
彼らがあーだ、こーだ、話している隙に次の村へと向かうことにした。
『新規獲得アイテムがあります』
mEqの通知を聞いて、すぐにパラバードを開いた。
空だったアイテムボックスにNEWという文字が表示されている。
「……まさかな。ナンマンダーが討伐されて、そのアイテムドロップが僕のところに入ったなんてあり得――――」
その、まさかだった。
ボックス内には【ナンマンダーの肉】と【青い鱗】が保管されていた。
棚から牡丹餅とは、このことだろう。
もっとも、これらアイテムの使い方がサッパリ分かっていないので、ありがたみは薄いが。
「こら、待たんか!」
連中の一人が血相を変えて、僕の進路方向に割って入ってきた。
両手をひろげて大の字になる姿に絶句していると、瞬く間に包囲され、無数の刃が突きつけられた。
どうして、このような手荒な真似をするのか?
尋ねてみると思いも寄らない回答が返ってきた。
「聞きてぇことがあると言ったはずだ。オメエは、オラたちの村を煤だらけにした奴の仲間だろうがよ。
すぐに分かるぞ、バルムンクの亡霊どもが!」
相手の言っていることが飲み込めず、目が点になる。
バルムンクの亡霊と呼ばれ、即座にワールドマップを確認してみた。
男たちが僕を警戒する理由がそこにあった。
バルムンク城塞跡地に向かうには、西にある煤の村を必ず通過しないといけない。
地図上では、ここら一帯は岩山に囲まれた岬となっている。
現状、モンスターの巣窟と化しているバルムンク城塞方面から人がやってくることはまず無い。
また、岬の先端に位置する城塞自体も岩山に沿った断崖絶壁の場所にあり、海路からのアクセスは完璧に無理だ。
にもかかわらず、僕は城塞の方からフラっと現れたのだ。
老翁たちが亡霊と疑い怪しむのも納得がいく。
それに、村を煤塗れにしたという謎の人物に妙な引っかかりを覚える。
亡霊の仕業かどうかはともかく、実際に村の状態を見てみなければ何も探ることはできない。
村まで同行したいと交渉しようとするも、その必要はなかった。
縄で縛り上げられた僕は、村まで強制連行されることになった。
現実に限りなく近いとはいえ、どこかゲームの世界だという意識が強い。
普段ならパニックってしまう状況なのに、自分でも驚くほど冷静でいられる。
ひょっとしたら、オレガシーマのシステムが影響しているのかもしれない。
クレリックの基礎ステータスは、体力を示すHPと精神力のINTが高いのが特徴だ。
特に僕のINTは初期レベルにもかかわらず三桁もある。
これが凄いことなのか? 情報が少なすぎて判断できない。
けれど、いつもと感じが違う自分に新鮮味がある。
「チッ、また余計なのが増えちまった。
こう立て続けにガヤが出るとは不吉な予感しかしねぇ」
場違いなほど内心浮かれていると、僕を縛る縄を引っ張りながらオッサンが小言を言っていた。
ガヤとは何を意味するのか、定かではないが、僕の他にも彼らに捕まった者がいるような言い方だ。
だとしたら、他のβテストプレイヤーである可能性は充分にある。
「あの、もしかして僕以外にもバルムンク城塞からやってきた人物がいるの?」
「あっ? テメェと会話する義理なんざねぇーんだよ。話しかけんな!」
相手との会話が成り立つとはいえ、心象は最悪だった。
彼らと仲良くするつもりはないが、どうしてここまで憎まれないといけないのか腑に落ちない。
ほどなくして、彼らの集落である煤の村が見えてきた。
その風景を見た第一印象は、違和感の塊だと感じた。
白と黒、灰のみの色合いしかない集落は、言葉通り煤けていた。
まるで水墨画のようだ。
木々や建物、家畜など外に出ている物はすべてモノクロになっていた。
「酷い有り様だ……どうして、こんなことに?」
「けっ、白を切るつもりかぁ? なら、教えてやる。
コイツはテメェと同じ、ガヤの仕業だ。
奴は一ヵ月ほど前に、この村にやってきて実験と称し村全体に呪いの魔光を放ちやがった。
以来、村はずっとこのままだ。
俺たちは無事だが……生活に耐えられねぇ女、子供は村を出て行っちまった。
今、ここに残っているのは、村から出られない老人と何とかして村を救いたい奴らだけだ」
眉間にシワを寄せるオッサンは苦悩していた。
事情はそれとなく把握したし、大変そうだとは思う。
だが、ソイツと僕には何の接点もない。
ガヤがどうであれ、コチラの言い分も聞かずに、身柄を拘束してくるのも我慢ならない。
「僕をどうするつもりだ?」
腹立たしくなってきた僕は、語気を強めてオッサンに問いかけた。
魔物を退治できたのは良かったけれど、数名とはいえ犠牲者が出た。
同胞をやられ気落ちするのはわかるが、僕には関係ない話だ。
酷い言い方をするかもしれないが、赤の他人である彼らのことは何一つ知らない。
勝手に首を突っ込んできたのは向こうのほうだ。
悲しいとも思わないし同情する理由もない。
ただただ「残念でした」と答えるしかない。
仮に「お前のせいで仲間が死んだ」と責め立てられても何もできないわけだ。
何より、アルムハザードの住人とは僕からすればデータ上の存在である。
もとより生死の枠組みから外れている。
そのような存在を生命として見ることは、聖人君主でもない限り難しいだろう。
老翁たちはずっと、深刻そうな顔つきでコソコソと話し合っていた。
誰も「お構いなく」とは言っていないのに、僕は相手にすらされていない。
ずっと、ここに留まっているのもいい加減、馬鹿らしくなってきた。
彼らがあーだ、こーだ、話している隙に次の村へと向かうことにした。
『新規獲得アイテムがあります』
mEqの通知を聞いて、すぐにパラバードを開いた。
空だったアイテムボックスにNEWという文字が表示されている。
「……まさかな。ナンマンダーが討伐されて、そのアイテムドロップが僕のところに入ったなんてあり得――――」
その、まさかだった。
ボックス内には【ナンマンダーの肉】と【青い鱗】が保管されていた。
棚から牡丹餅とは、このことだろう。
もっとも、これらアイテムの使い方がサッパリ分かっていないので、ありがたみは薄いが。
「こら、待たんか!」
連中の一人が血相を変えて、僕の進路方向に割って入ってきた。
両手をひろげて大の字になる姿に絶句していると、瞬く間に包囲され、無数の刃が突きつけられた。
どうして、このような手荒な真似をするのか?
尋ねてみると思いも寄らない回答が返ってきた。
「聞きてぇことがあると言ったはずだ。オメエは、オラたちの村を煤だらけにした奴の仲間だろうがよ。
すぐに分かるぞ、バルムンクの亡霊どもが!」
相手の言っていることが飲み込めず、目が点になる。
バルムンクの亡霊と呼ばれ、即座にワールドマップを確認してみた。
男たちが僕を警戒する理由がそこにあった。
バルムンク城塞跡地に向かうには、西にある煤の村を必ず通過しないといけない。
地図上では、ここら一帯は岩山に囲まれた岬となっている。
現状、モンスターの巣窟と化しているバルムンク城塞方面から人がやってくることはまず無い。
また、岬の先端に位置する城塞自体も岩山に沿った断崖絶壁の場所にあり、海路からのアクセスは完璧に無理だ。
にもかかわらず、僕は城塞の方からフラっと現れたのだ。
老翁たちが亡霊と疑い怪しむのも納得がいく。
それに、村を煤塗れにしたという謎の人物に妙な引っかかりを覚える。
亡霊の仕業かどうかはともかく、実際に村の状態を見てみなければ何も探ることはできない。
村まで同行したいと交渉しようとするも、その必要はなかった。
縄で縛り上げられた僕は、村まで強制連行されることになった。
現実に限りなく近いとはいえ、どこかゲームの世界だという意識が強い。
普段ならパニックってしまう状況なのに、自分でも驚くほど冷静でいられる。
ひょっとしたら、オレガシーマのシステムが影響しているのかもしれない。
クレリックの基礎ステータスは、体力を示すHPと精神力のINTが高いのが特徴だ。
特に僕のINTは初期レベルにもかかわらず三桁もある。
これが凄いことなのか? 情報が少なすぎて判断できない。
けれど、いつもと感じが違う自分に新鮮味がある。
「チッ、また余計なのが増えちまった。
こう立て続けにガヤが出るとは不吉な予感しかしねぇ」
場違いなほど内心浮かれていると、僕を縛る縄を引っ張りながらオッサンが小言を言っていた。
ガヤとは何を意味するのか、定かではないが、僕の他にも彼らに捕まった者がいるような言い方だ。
だとしたら、他のβテストプレイヤーである可能性は充分にある。
「あの、もしかして僕以外にもバルムンク城塞からやってきた人物がいるの?」
「あっ? テメェと会話する義理なんざねぇーんだよ。話しかけんな!」
相手との会話が成り立つとはいえ、心象は最悪だった。
彼らと仲良くするつもりはないが、どうしてここまで憎まれないといけないのか腑に落ちない。
ほどなくして、彼らの集落である煤の村が見えてきた。
その風景を見た第一印象は、違和感の塊だと感じた。
白と黒、灰のみの色合いしかない集落は、言葉通り煤けていた。
まるで水墨画のようだ。
木々や建物、家畜など外に出ている物はすべてモノクロになっていた。
「酷い有り様だ……どうして、こんなことに?」
「けっ、白を切るつもりかぁ? なら、教えてやる。
コイツはテメェと同じ、ガヤの仕業だ。
奴は一ヵ月ほど前に、この村にやってきて実験と称し村全体に呪いの魔光を放ちやがった。
以来、村はずっとこのままだ。
俺たちは無事だが……生活に耐えられねぇ女、子供は村を出て行っちまった。
今、ここに残っているのは、村から出られない老人と何とかして村を救いたい奴らだけだ」
眉間にシワを寄せるオッサンは苦悩していた。
事情はそれとなく把握したし、大変そうだとは思う。
だが、ソイツと僕には何の接点もない。
ガヤがどうであれ、コチラの言い分も聞かずに、身柄を拘束してくるのも我慢ならない。
「僕をどうするつもりだ?」
腹立たしくなってきた僕は、語気を強めてオッサンに問いかけた。
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