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新世界での冒険
瞬殺悪鬼 1
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「その設問になんか意味があんのかぁ?」
目をパチクリさせるオッサンは、僕の問いを理解できていない感じだった。
若干の違和感を覚えつつも話を進めた。
「捕まえたのなら、裁判するとか尋問するとかあるでしょう。
場合によっては――――――」
その先の単語が喉元でつっかえていた。
ゲーム内だとしても、開始早々捕虜になるなんて理不尽すぎる。
このわけも分からない事態がイベントの一環だとすれば、やりすぎていると思う。
あとで注意点として運営に報告しておかないといけない。
耳を撫でながらパラボードを開き、メモの項目に文字を入力した。
こうしておけば、伝え忘れても運営側の目に留まるはずだ。
「ガヤは、外に出してはおけん。
こん前に来たんのは、大鬼のような男じゃけん。
皆して震え上がっとったわ」
何故か、オッサンの口調が土佐弁混じりになっていたが言及はしない。
理由を知ったところで僕に微塵も得がないからだ。
木と藁でできた災害に備えられないボロ屋が、ひしめき合う中を黙々と歩かされた。
この村の住まいは家というより小屋に近い。
造りもお粗末だし、手入れもされていない。
酷いところでは、壁穴だらけで雨風すらしのげていない。
家屋の体を成していないのである。
外に出ている村人たちは全員、揃って僕を凝視していた。
不審者をみるような眼差しを向けられると、精神的にキツイものがある。
笑顔を見せる者は誰もなく皆、無表情のままだ。
お面のような顔つきが不気味で腕に鳥肌が立ってしまった。
「お前たちは、あの魔術師の仲間だろう?
お前たちを囮にして奴を捕まえる。
呪いを消し去る方法は、術者を消すか呪文を上書きするしかないからなっ」
しばらくして、村の奥にある洞穴が見えてきた。
こういう場所は大抵、神を祀ってあるか牢獄があるかのどちらかだ。
まさに天国か地獄……。
「……のクソどもがぁぁああ―――――!! 俺様を閉じ込めてタダでは済まさねぇぞ!」
……どうやら後者の方みたいだ。
洞穴に入る前から、凄まじい怒声が響いていた。
どこぞの誰か知らないが、村人の話から推測するにβテスターの一人である可能性が高い。
僕のように何も知らず、捕まったクチだろう。
「だよなぁ~」としか言いようがない。
我々の知る村人とは、ここまで好戦的かつ能動的ではない。
ここの連中は村人の皮をかぶったバイキングか何かだ。
「入れ」と背中を押されて洞穴の中に足を踏み入れた。
想像していたよりも奥行きは短く、すでに牢が見えていた。
三つある牢屋、その内の一つに大柄な男が収容されていた。
近くにいる見張り番と思われる若者が怯えきった表情で棒立ちしている。
「オッソン! やっと戻ってきたんですね」
――――えっ? 名前がオッソンだったの?
自身の耳を疑ってしまうほどの紛らわしさに困惑を禁じ得ない。
というか、モブでも名前ぐらいは、ちゃんとした物をつけてやればいいのにと思ってしまう。
「ご苦労さん。しばらくは休憩していな、小僧」
オッサンことオッソンに言われて若者は足早に外へと出ていった。
去り際に彼は「異質なもんは恐ろしくて敵わないわ」と泣きそうな声を上げていた。
異質か……プレイヤーに対する認識なのか知らないが蔑称もいいところだ。
これも魔術師とやらのせいか……?
理屈は分からないが、どうやら、ここの村の連中はプレイヤーとそうでない者を見分けることができるらしい。
だからだろうか。
牢屋に閉じ込められている彼と目があった瞬間、妙に合点がいってしまった。
「カズキ……お前だったのか」
髪ゴムで束ねられたロン毛の金髪が記憶に新しい。
ゲーム開始前、久方ぶりに再会した旧友が牢屋の中で喚いていた。
ガスッ、ガスッとしきりに音が鳴る。
カズキは手足を拘束された状態で鉄格子に体当たりしていた。
「思った通り、同胞だったか。
お前たちの目的が何なのかなどどーでもいい。
俺たちの脅威であることに変わらないのだからな」
むき出しの敵意が僕の方に向けられている。
自ずと頭の中が真っ白になりかけた。
僕たちは新世界を冒険するためにオレガシーマをログオープンしたのではないのか?
今更だが、気づいてしまった……このゲームNPCはどこか行き過ぎた感がある。
おそらく、彼らの行動の制限が緩いか、あるいは制限自体が設けられていないまでも考えられる。
「あ? んな奴、知らねぇ。
んなことより、いつまでクソ狭い所に閉じこめるつもりだぁぁあ」
「弱い奴ほど、よく吠えるわ。
心配しなくとも明朝には出してやる。その時が、オメェらの最期だがな!」
「ざけんな! おい、テメェも黙ってないで抵抗ぐらいしやがれ」
ビリビリと空気を震わせながらカズキが叫んだ。
予期せぬカタチでとばっちりをくらってしまった。
それはそれで不服だが、今は気にするところではない。
問題はカズキ自身の方だ……明らかに様子がおかしい。
今は知らないけれど僕が知っている彼は、人前で声を荒げたりしないし、高圧的な態度を取ることもない。
本物のカズキなのか疑いたくなるほど、豹変してしまっている。
特に、誰彼かまわず凄んでくる目つきが異常なまでに恐ろしい。
目をパチクリさせるオッサンは、僕の問いを理解できていない感じだった。
若干の違和感を覚えつつも話を進めた。
「捕まえたのなら、裁判するとか尋問するとかあるでしょう。
場合によっては――――――」
その先の単語が喉元でつっかえていた。
ゲーム内だとしても、開始早々捕虜になるなんて理不尽すぎる。
このわけも分からない事態がイベントの一環だとすれば、やりすぎていると思う。
あとで注意点として運営に報告しておかないといけない。
耳を撫でながらパラボードを開き、メモの項目に文字を入力した。
こうしておけば、伝え忘れても運営側の目に留まるはずだ。
「ガヤは、外に出してはおけん。
こん前に来たんのは、大鬼のような男じゃけん。
皆して震え上がっとったわ」
何故か、オッサンの口調が土佐弁混じりになっていたが言及はしない。
理由を知ったところで僕に微塵も得がないからだ。
木と藁でできた災害に備えられないボロ屋が、ひしめき合う中を黙々と歩かされた。
この村の住まいは家というより小屋に近い。
造りもお粗末だし、手入れもされていない。
酷いところでは、壁穴だらけで雨風すらしのげていない。
家屋の体を成していないのである。
外に出ている村人たちは全員、揃って僕を凝視していた。
不審者をみるような眼差しを向けられると、精神的にキツイものがある。
笑顔を見せる者は誰もなく皆、無表情のままだ。
お面のような顔つきが不気味で腕に鳥肌が立ってしまった。
「お前たちは、あの魔術師の仲間だろう?
お前たちを囮にして奴を捕まえる。
呪いを消し去る方法は、術者を消すか呪文を上書きするしかないからなっ」
しばらくして、村の奥にある洞穴が見えてきた。
こういう場所は大抵、神を祀ってあるか牢獄があるかのどちらかだ。
まさに天国か地獄……。
「……のクソどもがぁぁああ―――――!! 俺様を閉じ込めてタダでは済まさねぇぞ!」
……どうやら後者の方みたいだ。
洞穴に入る前から、凄まじい怒声が響いていた。
どこぞの誰か知らないが、村人の話から推測するにβテスターの一人である可能性が高い。
僕のように何も知らず、捕まったクチだろう。
「だよなぁ~」としか言いようがない。
我々の知る村人とは、ここまで好戦的かつ能動的ではない。
ここの連中は村人の皮をかぶったバイキングか何かだ。
「入れ」と背中を押されて洞穴の中に足を踏み入れた。
想像していたよりも奥行きは短く、すでに牢が見えていた。
三つある牢屋、その内の一つに大柄な男が収容されていた。
近くにいる見張り番と思われる若者が怯えきった表情で棒立ちしている。
「オッソン! やっと戻ってきたんですね」
――――えっ? 名前がオッソンだったの?
自身の耳を疑ってしまうほどの紛らわしさに困惑を禁じ得ない。
というか、モブでも名前ぐらいは、ちゃんとした物をつけてやればいいのにと思ってしまう。
「ご苦労さん。しばらくは休憩していな、小僧」
オッサンことオッソンに言われて若者は足早に外へと出ていった。
去り際に彼は「異質なもんは恐ろしくて敵わないわ」と泣きそうな声を上げていた。
異質か……プレイヤーに対する認識なのか知らないが蔑称もいいところだ。
これも魔術師とやらのせいか……?
理屈は分からないが、どうやら、ここの村の連中はプレイヤーとそうでない者を見分けることができるらしい。
だからだろうか。
牢屋に閉じ込められている彼と目があった瞬間、妙に合点がいってしまった。
「カズキ……お前だったのか」
髪ゴムで束ねられたロン毛の金髪が記憶に新しい。
ゲーム開始前、久方ぶりに再会した旧友が牢屋の中で喚いていた。
ガスッ、ガスッとしきりに音が鳴る。
カズキは手足を拘束された状態で鉄格子に体当たりしていた。
「思った通り、同胞だったか。
お前たちの目的が何なのかなどどーでもいい。
俺たちの脅威であることに変わらないのだからな」
むき出しの敵意が僕の方に向けられている。
自ずと頭の中が真っ白になりかけた。
僕たちは新世界を冒険するためにオレガシーマをログオープンしたのではないのか?
今更だが、気づいてしまった……このゲームNPCはどこか行き過ぎた感がある。
おそらく、彼らの行動の制限が緩いか、あるいは制限自体が設けられていないまでも考えられる。
「あ? んな奴、知らねぇ。
んなことより、いつまでクソ狭い所に閉じこめるつもりだぁぁあ」
「弱い奴ほど、よく吠えるわ。
心配しなくとも明朝には出してやる。その時が、オメェらの最期だがな!」
「ざけんな! おい、テメェも黙ってないで抵抗ぐらいしやがれ」
ビリビリと空気を震わせながらカズキが叫んだ。
予期せぬカタチでとばっちりをくらってしまった。
それはそれで不服だが、今は気にするところではない。
問題はカズキ自身の方だ……明らかに様子がおかしい。
今は知らないけれど僕が知っている彼は、人前で声を荒げたりしないし、高圧的な態度を取ることもない。
本物のカズキなのか疑いたくなるほど、豹変してしまっている。
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