暗殺ギルドのリザレクター

心絵マシテ

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新世界での冒険

瞬殺悪鬼 3

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 ゲームとは皆で楽しくワイワイとやる物だ。
 そう語る輩に限ってゲームの本質を理解していない。

 ゲームでもジャンルというものがある。
 内容によっては協力プレイ必須な場合もあるし、誰かと一緒に楽しめること自体、僕は否定しない。
 しないが……肯定もできない。

 なぜなら僕らはオンラインゲーマーだからだ。
 オンラインの醍醐味とは、すなわちプレイヤー同士の対戦だ。
 こういうレッテル貼りをすると齟齬そごが生じてしまうかもしれない。
 けど、事実として僕らは競い合い優劣をハッキリさせる。
 勝てば勝つほど気分が良くなるし、立て続けに負ければストレスも溜まる。

 ある意味、MMORPGは闘争の連続である。
 自分がいかに最速攻略するのか、バトルにおいてどれほどの強者なのか。
 周囲に知らしめたいという願望から、僕はガチでゲームと向き合う。
 決して誰かと親しくなりたいとか、褒められたいわけではない。

 誰よりも強くなって、ハイレベルなプレイヤーであることを認めさせたいだけだ。
 他のプレイヤーから羨望やひがみの声が上がるほど、自分の価値が上がるような錯覚に捕らわれる。
 ようするに悦に浸るというヤツだ。

 一々、語る必要もないゲーマーの常識だが、稀にカズキのようにゲームに対する熱量が低いプレイヤーもいる。
 ライト層とか、マッタリ勢とか呼ばれているが連中とは、あまりウマが合わない。

「所詮、ゲームだからムキにならない」というツマラナイ言い訳も聞きたくない。
 たかがゲーム、されどゲーム。
 ゲームの可能性は、人の思考で決められるほど単純な物ではないというのが僕の持論である。

 本気を出せる物があれば、全力で取り掛かる。
 もちろん、他者への配慮は欠かさない。
 そこは分類的にモラルの範疇であり、私的プレイスタイルとは別枠になる。

 ようは迷惑かけないから好きにやらせてくれということだ。

 そんな僕が最も嫌うのはレベル差が大きい相手との共闘だ。
 レベルとはキャラクターではなく、プレイヤーとして経験のことを指す。
 誰だって経験があるはずだ。
 初心者に近いプレイヤーに色々とレクチャーし手助けをしてあげる。
 最初は楽しいが、ゲームの古参になるころには鬱陶しささえ覚えてくる。

 誰しも善良な人間だとは限らないし、飽きればゲーム自体を辞めてしまう。
 こちらも慈善事業ではないんだと、何度も思い知らされた。

 結論として損切りは早めにするのが、お互いのためになる。
 ここでは同じ新参者だが、時間が経つにつれて実力差が如実に現れる。
 自分が劣ると認識させてしまったら相手のモチベーションを下げてしまう。
 こちらも一々、気遣って相手のレベルに合わせるなんて、まっぴらごめんだ。

「共闘するのは、この村から無事に脱出し安置を確保するまでだ。
それと僕への攻撃は一切禁止な。
この二点が約束できるのなら、牢から出してやってもいい」

「異存はねぇよ、オーキッド。テメェの好きなようにしな」

 出された条件を素直に受け入れるカズキ。
 存外、物分かりが良いのかもしれない。
 まぁ、裏切るか、どうかは別の話になるが…………今から疑っても仕方ない。

 三本ある鍵の内、これだと思う物を選び素早く錠を解除した。
 牢獄の檻が開くとカズキは堪らず飛び跳ねるようにして出てきた。

「まずは僕からだ。拘束具を外してくれ」

「おうよ。さっき使用したのがコイツだから、残りの二本のどちらかだな……チッ、ダメな方かよ」

 二分の一の確率を物の見事に外したカズキによって、手足に装着させられた拘束具は外された。
 お互い自力では鍵を差し込めないのが、妙にもどかしい。
 約束を反故にされないだけ良かったとは言える。
 金属の重みから解放され、自分の手足が軽くなるのを感じた。

「俺様の番だ。頼むぜ」

 言われるまでもなく、瞬殺で拘束具を取り外してやった。
 運営から支給された着衣の一つだろうか?
 乱れた着流しの襟を正すと、カズキは大きく身体を伸ばしていた。

「やっとスッキリとした。あんがとな……少し待ってな」

 いきなり屈みこむと、カズキはオッソンの腰についていたバッグを剥ぎ取った。
 その中に入っていた小瓶を取り出しパラボード越しにしげしげと眺めると、うち一本を僕の方へ放ってきた。

「これは……回復薬か」

 パシンと小気味よい音を立て、青色の液体が入った小瓶が僕の手の中に収まった。
 ありがたいことにSP回復薬だ。
 正直、もう自力で立つのもキツイ。
 ここに来るまでも、ほとんどオッソンに引っ張られてきたようなものだ。

「飲んどけ。どうせ誰も飲まないだろうし、フラフラ動かれても邪魔だ。
さてと、これで存分に村の野郎どもへのお礼参りができる」

 口元を歪めながら、カズキは自分がいた檻の鉄格子から鉄棒を一本引き抜いた。
 力任せなどとは次元が違う。
 まさに片手一つで粘土細工を扱うようにひん曲げて格子をもぎ取ってしまった。

 常識ある人間なら彼のことを異質と呼ぶべきかもしれない。
 曲げた鉄棒を膝で引っ張って真っすぐに修正している。
 どうやら即席の武器を作っているようだ。

 こうなると、手に負えなくなるのは目に見えている。
 鉄棒を握りながらグリップ感を確かめると、カズキはすぐに表へと出ていった。

 事前にざっと打ち合わせしたかったけど、そんな物は初めからない。
 逃げも隠れもせず、堂々と正面切って戦おうとしている。
 男らしいとも取れるが、アイツの場合は脳筋なだけだ。
 勝ち負けなど関係ない……自分が望んだように暴れてゆく。

「言わんこっちゃない。だから組むのは嫌いなんだ」


 回復瓶を一気にあおり僕も外へと向かった。
 祠を出てすぐ、荒々しい喧騒が飛び交ってくる。
 そこに広がる光景に僕は絶句し失望した。

 大多数の村民が集結し、僕らの行く手を塞ぐ形で取り囲んできた。
 殺意に満ちた連中の行動は、危険極まりない。
 隙あらば、即座に襲撃を受けてしまうのではと肝を冷やすばかりだ。
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