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新世界での冒険
瞬殺悪鬼 4
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ザっと見ただけでも大人、三十人近くはいる。
やはり、正面突破するには無茶があり過ぎた。
もとをたどれば、僕の制止を無視して一人先走ったカズキのせいだ。
固く拳をにぎり、思わず彼を睨みつける自分がいた。
当の本人はそんなことすらお構いなしに首の関節を鳴らしている。
この人数を一度に相手しようとする、その無謀さが信じられない。
不良の喧嘩じゃないんだ。
いくら腕っぷしに自信があっても、ゲームのバトルシステムを熟知していなければ奴らのサンドバックになるだけだ。
僕の心配を他所にカズキは至って冷静であり、しきりにうなずく素振りを見せていた。
多分、mEqと会話しているのだろう。
何かに集中している時は、結構大人しい。
カズキの初期装備からして彼のジョブは【侍】であると推測できる。
一撃必殺を得意とするサムライは攻撃力が抜群に高く、動きが素早い。
反面、持久力が低く、SPの上限値がなかなか上がらない。
また、防御面でも非常に脆く。
フルアーマーのような重装備を装着できない。
「コイツら……逃亡者なのか! 生きてこの村から出られると思うなよ」
とてもじゃないが、村人らしからぬ凶悪な一言が発せられた。
村人だから怖くないなんてことはない。
鼻に輪っかをつけている奴や、身体に墨を入れているオッサン、頭に旗を挿しているヤバイのなどが勢ぞろいして反社のバーゲンセール状態になっている。
さすがは盗賊と言わざるを得ない。
言いたくもないが、奴らのお目当ての者は僕とカズキだ。
全方向から圧をかけて一斉に迫ってくる。
右往左往する僕の前で、妙な落ち着きを保つカズキがいた。
こんな状態でも動じない彼の背中を目にした瞬間、怯んで尻込みしている自分が情けなく思えていた。
「はぁぁあ――――、更年期の呼吸!」
鉄の棒を片手にカズキがスキルを発動させた。
聞き間違いでなければ、確かに【更年期の呼吸】と叫んでいた。
この時点で、すでに嫌な予感はしていた。
そして、それは実際のものとなる。
「ぜぇぇ……ぜぇぇ……はぁっはぁっ……………ぜぇ―――ひゅうぅぅ、ンハッ……ハッ、ハッ――――」
腰を六十五度ぐらいに曲げて、胸に手をあてがう。
全身汗だくとなり、動悸、息切れを起こすカズキは、更年期の苦しさを体現しようとしているようだが……意味があるのか?
あからさまに弱っている姿にデバフ(弱体化効果)でもかかっているのではないかと懸念してしまう。
なんにせよ、このままでは彼が危うい。
混乱に乗じて逃げようにも、僕は僕で包囲され身動きが取れずにいる。
自分だけ助かるという可能性の芽すら摘み取れてしまった。
もしカズキと共闘できたのなら、また違った結果が見えたかもしれない。
けど、それは現実的な考えではなく願望だ。
刀を持たないサムライと、回復魔光しか扱えないクレリック。
どのみち、集団リンチに遭って終わる。
あとは生存時間が長い短いかの違いだ。
やっぱり、初手からミスったのだろう。
あの祠を破壊してはいけなかったのだ。
下手に移動しなければ、コイツらと遭遇することもなかった。
「うはぁ、シバキたおしてやんぞぉぉぉ、ガヤどもが!」
意気揚々と村の若者が、ワインボトルを投げつけてきた。
僕よりも近場にいるカズキの頭に向けて、ボトルが飛んでくる。
「カズキ、避けろ」と自分でも気づかない内に声を上げていた。
普段なら人助けなど無関心な僕でも、状況が状況だ。
知らんぷりを決め込むほどのクズではない。
ましてや、顔見知りの危機。
どうにかできないのかと激しく動揺してしまう。
その矢先だった……カズキの口元がニチャリと歪んだ。
「なあ―――んて嘘だぴょん! 弱っているとでも思ったのかぁ?
カスゴミどもがぁぁ! 油断したなぁ。
まんまと、おびき寄せられてくれたおかげでタイパ(タイムパフォーマンス)がはかどるぜぃ!」
勢い任せでカズキが鉄の棒を振り回した。
彼のフルスイングによって、打ち上げられた村人たちが次々と空の彼方に消えてゆく。
さらに、そこら辺にいた村人の若者の腕を掴むとカズキは、力任せに彼を縦横無尽に振り回し始めた。
サムライのくせに怪力すぎるのではないだろうか……?
カズキは人体を一本の刀剣とし惨事を巻き起こしていく。
「なんて、滅茶苦茶な戦い方なんだ……ハハッ」
この時ばかりは自然と本心がだだ漏れてしまっていた。
同胞に激突され、ドミノ倒しになってゆく村人たちの様は見ていて胸がスカッとした。
必要以上の追い詰めが眠れる悪鬼を呼び起こしてしまったと言えよう。
なおもカズキは容赦なく、鉄の棒で敵を叩きのめしてゆく。
反撃してきた奴らは取り押さえて、ぶん投げている。
相手が悲鳴を上げる度に、彼は高らかな声で爆笑していた。
弱者から一転して唐突に現れた支配者に、今度は村人たちが逃げ惑うカタチになっていた。
「ヒィィィ! ご、おごご勘弁をぉぉ、私には妻と幼い子がおりますので……」
「あ? それがどうした? 俺様の家にはチワワがいるから関係ないよな。
害虫は一匹、残さず駆除するのが斑紋家の家訓だ。
しっかり気張って逝けや! 秘剣……世界崩壊剣」
何の捻りもないネーミングのスキルが発動した。
名前以前に、それは……ドがつくほどのストレートな剣技だった。
一分一厘違わない惨劇の刃が、アルムハザードの地図上から煤の村を一瞬で消滅させた。
やはり、正面突破するには無茶があり過ぎた。
もとをたどれば、僕の制止を無視して一人先走ったカズキのせいだ。
固く拳をにぎり、思わず彼を睨みつける自分がいた。
当の本人はそんなことすらお構いなしに首の関節を鳴らしている。
この人数を一度に相手しようとする、その無謀さが信じられない。
不良の喧嘩じゃないんだ。
いくら腕っぷしに自信があっても、ゲームのバトルシステムを熟知していなければ奴らのサンドバックになるだけだ。
僕の心配を他所にカズキは至って冷静であり、しきりにうなずく素振りを見せていた。
多分、mEqと会話しているのだろう。
何かに集中している時は、結構大人しい。
カズキの初期装備からして彼のジョブは【侍】であると推測できる。
一撃必殺を得意とするサムライは攻撃力が抜群に高く、動きが素早い。
反面、持久力が低く、SPの上限値がなかなか上がらない。
また、防御面でも非常に脆く。
フルアーマーのような重装備を装着できない。
「コイツら……逃亡者なのか! 生きてこの村から出られると思うなよ」
とてもじゃないが、村人らしからぬ凶悪な一言が発せられた。
村人だから怖くないなんてことはない。
鼻に輪っかをつけている奴や、身体に墨を入れているオッサン、頭に旗を挿しているヤバイのなどが勢ぞろいして反社のバーゲンセール状態になっている。
さすがは盗賊と言わざるを得ない。
言いたくもないが、奴らのお目当ての者は僕とカズキだ。
全方向から圧をかけて一斉に迫ってくる。
右往左往する僕の前で、妙な落ち着きを保つカズキがいた。
こんな状態でも動じない彼の背中を目にした瞬間、怯んで尻込みしている自分が情けなく思えていた。
「はぁぁあ――――、更年期の呼吸!」
鉄の棒を片手にカズキがスキルを発動させた。
聞き間違いでなければ、確かに【更年期の呼吸】と叫んでいた。
この時点で、すでに嫌な予感はしていた。
そして、それは実際のものとなる。
「ぜぇぇ……ぜぇぇ……はぁっはぁっ……………ぜぇ―――ひゅうぅぅ、ンハッ……ハッ、ハッ――――」
腰を六十五度ぐらいに曲げて、胸に手をあてがう。
全身汗だくとなり、動悸、息切れを起こすカズキは、更年期の苦しさを体現しようとしているようだが……意味があるのか?
あからさまに弱っている姿にデバフ(弱体化効果)でもかかっているのではないかと懸念してしまう。
なんにせよ、このままでは彼が危うい。
混乱に乗じて逃げようにも、僕は僕で包囲され身動きが取れずにいる。
自分だけ助かるという可能性の芽すら摘み取れてしまった。
もしカズキと共闘できたのなら、また違った結果が見えたかもしれない。
けど、それは現実的な考えではなく願望だ。
刀を持たないサムライと、回復魔光しか扱えないクレリック。
どのみち、集団リンチに遭って終わる。
あとは生存時間が長い短いかの違いだ。
やっぱり、初手からミスったのだろう。
あの祠を破壊してはいけなかったのだ。
下手に移動しなければ、コイツらと遭遇することもなかった。
「うはぁ、シバキたおしてやんぞぉぉぉ、ガヤどもが!」
意気揚々と村の若者が、ワインボトルを投げつけてきた。
僕よりも近場にいるカズキの頭に向けて、ボトルが飛んでくる。
「カズキ、避けろ」と自分でも気づかない内に声を上げていた。
普段なら人助けなど無関心な僕でも、状況が状況だ。
知らんぷりを決め込むほどのクズではない。
ましてや、顔見知りの危機。
どうにかできないのかと激しく動揺してしまう。
その矢先だった……カズキの口元がニチャリと歪んだ。
「なあ―――んて嘘だぴょん! 弱っているとでも思ったのかぁ?
カスゴミどもがぁぁ! 油断したなぁ。
まんまと、おびき寄せられてくれたおかげでタイパ(タイムパフォーマンス)がはかどるぜぃ!」
勢い任せでカズキが鉄の棒を振り回した。
彼のフルスイングによって、打ち上げられた村人たちが次々と空の彼方に消えてゆく。
さらに、そこら辺にいた村人の若者の腕を掴むとカズキは、力任せに彼を縦横無尽に振り回し始めた。
サムライのくせに怪力すぎるのではないだろうか……?
カズキは人体を一本の刀剣とし惨事を巻き起こしていく。
「なんて、滅茶苦茶な戦い方なんだ……ハハッ」
この時ばかりは自然と本心がだだ漏れてしまっていた。
同胞に激突され、ドミノ倒しになってゆく村人たちの様は見ていて胸がスカッとした。
必要以上の追い詰めが眠れる悪鬼を呼び起こしてしまったと言えよう。
なおもカズキは容赦なく、鉄の棒で敵を叩きのめしてゆく。
反撃してきた奴らは取り押さえて、ぶん投げている。
相手が悲鳴を上げる度に、彼は高らかな声で爆笑していた。
弱者から一転して唐突に現れた支配者に、今度は村人たちが逃げ惑うカタチになっていた。
「ヒィィィ! ご、おごご勘弁をぉぉ、私には妻と幼い子がおりますので……」
「あ? それがどうした? 俺様の家にはチワワがいるから関係ないよな。
害虫は一匹、残さず駆除するのが斑紋家の家訓だ。
しっかり気張って逝けや! 秘剣……世界崩壊剣」
何の捻りもないネーミングのスキルが発動した。
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