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新世界での冒険
イレギュラーズ 3
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直線距離にして約50m弱、走るだけならそこそこ自信はある。
問題は、どうやってドレッドフードたちの隙を突くかだ。
おそらくは、僕よりも経験や能力が高い連中にその場しのぎのフェイントなど通用しないはず。
やるなら、とことん。コチラも腹をくくっていくしかない。
「わああああああっ―――――!!!」
威嚇の雄叫びを上げながら僕は直進した。
小細工は不要、どうせ体力も少ないのだ。
走って逃げ切ることは難しいと判断し敵の虚を突く作戦へと打って出た。
まさか、ひ弱な僧侶が両手を万歳しながら、走ってくるとは想定していなかったのだろう。
明らかにドレッドノートたちの動きが鈍い。
しかし、O-kidの脚力はそれすら上回るほど非力だった。
リアルの感覚で走っても、ちっとも前に進まない。
尋常ではないほど身体が重く感じてしまう。
「背中に人一人、背負っているみたい……だ」
全速力の僕と、ひるんだドレッドノートの対決はほぼ互角に見えた。
これでは間に合わない、そう思えたが相手もオッチョコチョイだ。
焦りすぎて地面にダガーナイフを落としていた。
それを拾い上げるタイミングで僕の膝が上手いことドレッドノートの顔面に直撃した。
「ピギャ――――」小動物のような声を出し、亜人は仰向けで倒れた。
まずは一体、どうにか除外すること成功した。
残すはもう一体。この調子で先を進もうとする僕だが油断大敵だ。
倒れていたドレッドノートがズボンの裾をつかんできたせいで、僕はバランスを崩しその場で転倒してしまった。
幸いにも両膝を地面につけた状態ではあったものの、後方から迫ってくる追っ手を振り切る余裕などなかった。
途端に、足に力が入らず身動きが取れなくなった。
勝てない戦いに挑めるほど、僕は馬鹿じゃない。
無理だと分かっていることをどうにかしても、結局は時間を浪費するだけである。
ここで諦めるのも賢い選択、立派な英断だ。
諦めないことは決して美談なんかじゃない。
努力しなければ、何も叶わないなど吹聴する奴は努力の意味を知らないヤツだ。
努力する権利とは才能がある者にだけ与えられた特権だ。
それ以外の奴が真似をしても、最初から適応する能力がないのだから努力が実を結ぶことなどありはしない。
あってはならない。
「瀕死ならタスケテの一つでも出てくるかと思ったけど、拍子抜けだわな。
潔く受け入れることがカッコイイとでも?
ハッキリ言ってダサいわ、自分。
悔しそうな顔をしながら何の抵抗もしないつもりかい」
城塞跡地の奥から、知らない声が響いてきた。
同時に何かが僕の頭上を通過すると、背後に迫るドレッドノートたちが苦痛の声を上げていた。
「おい! チャンスだろう。まだ逃げる気があんなら、こっち来い。
でなきゃ、亜人もろとも串刺しにするぞ」
状況が呑み込めないが、どうやら声の主は僕を助けてくれようとしているようだ。
知らない相手に借りなんか作りたくないが、ダサいとバカにされて黙っていられるほど愚かではない。
「クソッ、僕の気持ちも知らないくせにぃ」
歯を食いしばりながら、未だに足首をつかんでいるドレッドノートの頭部に石を叩きつけてやった。
グチャリとした感触が右手に伝わってくる。
息絶えたソイツの手が外れず、何度も何度も足を振り払う。
ペタンと地面をついていたドレッドノートの素手から、ようやく解放された僕は、すぐにゴーレムの下へと駆けこんだ。
「兄ちゃんよ。助けて貰って礼すらないのかい?」
「うっさいな! 誰もそんなこと頼んでないだろう。
そっちこそ、協力する気があるのなら姿ぐらいは見せろよ。
正体すら明かさない奴なんか信用できるかってんだ」
「ふむ、それもそっかぁ! 失礼したな、俺の名はロビンアーム。
最弱を脱却する男だ。お前さんもβテスターだろ?」
羽織っていたフードを取り除いて顔を見せたのは、二十代ぐらいの男だった。
手につかんだパラボードを彼は振ってみせた。
間違いなく、本物の人間だ。
アバターのせいで見た目、体育会系だが、どことなく商社マンのような雰囲気も漂わせていた。
男は走りながら逆立つ短めの前髪を何度も櫛でセットしていた。
ゲーム開始時に配給された初心者装備で身を固めているが、それも一切乱れなく着こなしている。
常に身だしなみに気を遣っている人物でなければ、こうも身綺麗とはいかない。
そして見事なまでに僕の歩幅に合わせて並走する姿が邪魔で仕方ない。
「俺が来たからにはもう安心だ。
あんな雑魚ども、この強弓アイアンスピリット(仮名)でバーベキューの具材にしてやろう」
「例えが生々しくて、おっかねぇよ。
それにアイツらがアレで全部なわけがない。
パラボードのマップを確認しろ、紅い点が少しずつコチラに移動し、増えてきている」
「そうか、じゃあ! 健闘を祈る」
「コラコラ、待てよ」
真実を告げた途端、男は一人加速し走り去っていった。
僕はというと変わらず鈍足だ。
彼の援護射撃によって、なんとかドレッドノートたちの追跡を振り切ることには成功した。
ゴーレムの真下に到着すると、間髪容れずに本体によじ登ってみた。
もし、これが僕の武器ならどこかに操作盤があるはずだ。
月並みだが、ロボット感覚なら胸元か背の部分が怪しい。
そうこう探しているうちに、追手がゴーレムに飛び掛かり這い上がってきた。
身軽な分、動きが素早い。
気持ち悪いほどスルスルと登ってきて、一気に詰め寄ってくる。
驚いた僕はうっかり足を滑らせてしまった。
その拍子でドレッドノートの顔を蹴り飛ばすと、後続にいる仲間を巻き込んで魔物たちが地面へと落下してゆく。
問題は、どうやってドレッドフードたちの隙を突くかだ。
おそらくは、僕よりも経験や能力が高い連中にその場しのぎのフェイントなど通用しないはず。
やるなら、とことん。コチラも腹をくくっていくしかない。
「わああああああっ―――――!!!」
威嚇の雄叫びを上げながら僕は直進した。
小細工は不要、どうせ体力も少ないのだ。
走って逃げ切ることは難しいと判断し敵の虚を突く作戦へと打って出た。
まさか、ひ弱な僧侶が両手を万歳しながら、走ってくるとは想定していなかったのだろう。
明らかにドレッドノートたちの動きが鈍い。
しかし、O-kidの脚力はそれすら上回るほど非力だった。
リアルの感覚で走っても、ちっとも前に進まない。
尋常ではないほど身体が重く感じてしまう。
「背中に人一人、背負っているみたい……だ」
全速力の僕と、ひるんだドレッドノートの対決はほぼ互角に見えた。
これでは間に合わない、そう思えたが相手もオッチョコチョイだ。
焦りすぎて地面にダガーナイフを落としていた。
それを拾い上げるタイミングで僕の膝が上手いことドレッドノートの顔面に直撃した。
「ピギャ――――」小動物のような声を出し、亜人は仰向けで倒れた。
まずは一体、どうにか除外すること成功した。
残すはもう一体。この調子で先を進もうとする僕だが油断大敵だ。
倒れていたドレッドノートがズボンの裾をつかんできたせいで、僕はバランスを崩しその場で転倒してしまった。
幸いにも両膝を地面につけた状態ではあったものの、後方から迫ってくる追っ手を振り切る余裕などなかった。
途端に、足に力が入らず身動きが取れなくなった。
勝てない戦いに挑めるほど、僕は馬鹿じゃない。
無理だと分かっていることをどうにかしても、結局は時間を浪費するだけである。
ここで諦めるのも賢い選択、立派な英断だ。
諦めないことは決して美談なんかじゃない。
努力しなければ、何も叶わないなど吹聴する奴は努力の意味を知らないヤツだ。
努力する権利とは才能がある者にだけ与えられた特権だ。
それ以外の奴が真似をしても、最初から適応する能力がないのだから努力が実を結ぶことなどありはしない。
あってはならない。
「瀕死ならタスケテの一つでも出てくるかと思ったけど、拍子抜けだわな。
潔く受け入れることがカッコイイとでも?
ハッキリ言ってダサいわ、自分。
悔しそうな顔をしながら何の抵抗もしないつもりかい」
城塞跡地の奥から、知らない声が響いてきた。
同時に何かが僕の頭上を通過すると、背後に迫るドレッドノートたちが苦痛の声を上げていた。
「おい! チャンスだろう。まだ逃げる気があんなら、こっち来い。
でなきゃ、亜人もろとも串刺しにするぞ」
状況が呑み込めないが、どうやら声の主は僕を助けてくれようとしているようだ。
知らない相手に借りなんか作りたくないが、ダサいとバカにされて黙っていられるほど愚かではない。
「クソッ、僕の気持ちも知らないくせにぃ」
歯を食いしばりながら、未だに足首をつかんでいるドレッドノートの頭部に石を叩きつけてやった。
グチャリとした感触が右手に伝わってくる。
息絶えたソイツの手が外れず、何度も何度も足を振り払う。
ペタンと地面をついていたドレッドノートの素手から、ようやく解放された僕は、すぐにゴーレムの下へと駆けこんだ。
「兄ちゃんよ。助けて貰って礼すらないのかい?」
「うっさいな! 誰もそんなこと頼んでないだろう。
そっちこそ、協力する気があるのなら姿ぐらいは見せろよ。
正体すら明かさない奴なんか信用できるかってんだ」
「ふむ、それもそっかぁ! 失礼したな、俺の名はロビンアーム。
最弱を脱却する男だ。お前さんもβテスターだろ?」
羽織っていたフードを取り除いて顔を見せたのは、二十代ぐらいの男だった。
手につかんだパラボードを彼は振ってみせた。
間違いなく、本物の人間だ。
アバターのせいで見た目、体育会系だが、どことなく商社マンのような雰囲気も漂わせていた。
男は走りながら逆立つ短めの前髪を何度も櫛でセットしていた。
ゲーム開始時に配給された初心者装備で身を固めているが、それも一切乱れなく着こなしている。
常に身だしなみに気を遣っている人物でなければ、こうも身綺麗とはいかない。
そして見事なまでに僕の歩幅に合わせて並走する姿が邪魔で仕方ない。
「俺が来たからにはもう安心だ。
あんな雑魚ども、この強弓アイアンスピリット(仮名)でバーベキューの具材にしてやろう」
「例えが生々しくて、おっかねぇよ。
それにアイツらがアレで全部なわけがない。
パラボードのマップを確認しろ、紅い点が少しずつコチラに移動し、増えてきている」
「そうか、じゃあ! 健闘を祈る」
「コラコラ、待てよ」
真実を告げた途端、男は一人加速し走り去っていった。
僕はというと変わらず鈍足だ。
彼の援護射撃によって、なんとかドレッドノートたちの追跡を振り切ることには成功した。
ゴーレムの真下に到着すると、間髪容れずに本体によじ登ってみた。
もし、これが僕の武器ならどこかに操作盤があるはずだ。
月並みだが、ロボット感覚なら胸元か背の部分が怪しい。
そうこう探しているうちに、追手がゴーレムに飛び掛かり這い上がってきた。
身軽な分、動きが素早い。
気持ち悪いほどスルスルと登ってきて、一気に詰め寄ってくる。
驚いた僕はうっかり足を滑らせてしまった。
その拍子でドレッドノートの顔を蹴り飛ばすと、後続にいる仲間を巻き込んで魔物たちが地面へと落下してゆく。
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