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新世界での冒険
イレギュラーズ 2
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朝を迎えた煤の村は文字通り、塵芥一つ残っていなかった。
運が良ければ、未使用のアイテムでも回収できるかと期待して損した。
そこには更地が広がっているだけだった。
「こんなだったらスタート部屋で、コーヒーでも飲んでいけば良かった」
正直、取り急ぎ戻ったことを悔やんだ。
女神がコーヒーを出してくれるのかは、ともかく空腹だったことをすっかり忘れていた。
空腹に負けた僕はアイテムボックスを確認した。
そういえばナンマンダーのトカゲ肉があったはずだ。
ゲテモノ食だと贅沢も言っていられない、調理すれば食べられるはずだ。
つい今しがたの、希望はどこへと消えてしまったのだろうか。
数秒で僕は頓挫していた。
まず、食材があっても調理器具すら持ち合わせていない。
買おうにも資金どころか、店すらない。
近隣に村などはないかとチェックしたが、反応すら出て来ない。
この辺りで、建造物がある所といえば城塞跡地くらいだ。
調理器具はなくとも、探せば代用できる物は見つかるかもしれない。
「結局はフリダシからか……」
城塞跡に戻り僕は肩を落とした。
いくら方法がないとはいえ、自ら魔物の巣窟に来るなんて愚かしいのにも程がある。
道中、モンスターに遭遇しなかっただけでも奇跡だ。
というより、ここに来るのに運を使い果たした気がしてならない――――など少しでも考えてはいけない。
本当になってしまうから。
『敵の反応を感知しました。バトルを開始します』
「えっ? おい……おいおいおいマジかよ」
敵の方が先にプレイヤーに気づくとmEqから伝達される仕様になっているらしい。
心の準備も整わないまま、慌てふためく。
敵の姿が見えず周囲を見回すが、どう見てもモンスターの影すら見えない。
カン違いじゃないかとmEqに問い質そうとした矢先、パラボードの生体反応機能が敵の位置を示した。
フルダイブ型MMORPGの経験が早速、役に立った。
高性能なアシスト機能は常時展開させておくが基本だ。
くわえて、緊急時は焦って動くのではなく些細な周囲の変化に気づけることが大事だ。
「ん……」何かの気配を感じ、咄嗟にバックステップを踏んだ。
直後、見えない何かが空をかすめる音がした。
目の前にモンスターがいる。
そう確信し、足元にある石を蹴り上げた。
「ギャア!」という小さな悲鳴と共に何もなかった空間から突如として、フードを被った人影が姿を現した。
肌は浅黒く、長い耳と兎のような尻尾が特徴的なモンスターだった。
小柄で愛らしい見た目に反して、錆びついた短刀をチラつかせている。
殺気満々な姿勢は、僕からすればあまり感心できない。
敵名:ドレッドフード
種族:亜人
能力:不可視化
ステータス:NO DATA
ドロップアイテム:???、狩人の干し草
備考:集団で行動する人型モンスター。素早く狡猾である。
白昼堂々と旅人を狙って襲ってくる。
『モンスターアーカイブスが更新されました』
できれば、事前に知りたかった情報が一気に流れ込んできた。
単体なら、まだしも魔物図鑑の情報通り集団を相手にするとなると100%、僕に勝ち目はない。
逃げるが勝ちという格言もあるくらいだ。
撤退を余儀なくされるのなら、さっさと逃走した方がいい。
180度ターンし、来た道を戻ろうとした。
振り向いた先には、三体のドレッドフードが待ち構えていた。
「い、いつの間に……」
冒険者の行動パターンなど連中にとっては先刻承知のことだった。
ご丁寧に逃さないように先に退路を封じてくれるとは……笑えない話だ。
これは、もう完全な詰みだ。
モンスター対策を練らない限り、いつまでも同じことの繰り返しになってしまう。
そもそも、武器がないのだから戦いようがない。
戦う力さえあれば、ヒーラーの僕にでも攻撃を返すくらいはできるはずだ。
どんだけ鬼序盤なんだ、このゲームは……今となっては、あの悪ふざけした旗すら恋しくなってきた。
「旗か、待てよ……」
この瀬戸際に僕は重大なことを思い出した。
ふと、城塞跡地の奥に視線をやるとそびえ立つ巨体は今もなお健在だった。
最初に与えられた手旗を拒否した結果、アレが現れた。
もし仮に、一億歩譲って全長10メートルを超える岩石ゴーレムが、僕の専用武器だとしたら現状、手元に何もないのも納得がゆく。
確証はないけれど、そう思うと急に手足が震え出した。
恐怖で怯えているのではない。
戦う力を得られる可能性を見出しただけで、自分の中から気持ちが昂ってくるのが分かる。
やはり、RPGは戦闘が楽しめてなんぼ、やられっぱなしはもうゴメンだ。
「後は、ゴーレムのところまでどうやって向かうかだ」
城塞跡地側には少なくとも二体の生体反応が確認できる。
なんとかして、コイツらの包囲を突破しゴーレムのそばに辿りつかなければ……。
「ええい、ままよ。走ればどうにかなる」
無謀であったとしても命を賭ける価値は充分にある。
簡単になぶり殺されるよりも、奴らに一泡ふかせることができるのなら僕は抵抗する方を選ぶ。
どちらが先にくたばるのか? 死闘となるレースが幕を開けた。
運が良ければ、未使用のアイテムでも回収できるかと期待して損した。
そこには更地が広がっているだけだった。
「こんなだったらスタート部屋で、コーヒーでも飲んでいけば良かった」
正直、取り急ぎ戻ったことを悔やんだ。
女神がコーヒーを出してくれるのかは、ともかく空腹だったことをすっかり忘れていた。
空腹に負けた僕はアイテムボックスを確認した。
そういえばナンマンダーのトカゲ肉があったはずだ。
ゲテモノ食だと贅沢も言っていられない、調理すれば食べられるはずだ。
つい今しがたの、希望はどこへと消えてしまったのだろうか。
数秒で僕は頓挫していた。
まず、食材があっても調理器具すら持ち合わせていない。
買おうにも資金どころか、店すらない。
近隣に村などはないかとチェックしたが、反応すら出て来ない。
この辺りで、建造物がある所といえば城塞跡地くらいだ。
調理器具はなくとも、探せば代用できる物は見つかるかもしれない。
「結局はフリダシからか……」
城塞跡に戻り僕は肩を落とした。
いくら方法がないとはいえ、自ら魔物の巣窟に来るなんて愚かしいのにも程がある。
道中、モンスターに遭遇しなかっただけでも奇跡だ。
というより、ここに来るのに運を使い果たした気がしてならない――――など少しでも考えてはいけない。
本当になってしまうから。
『敵の反応を感知しました。バトルを開始します』
「えっ? おい……おいおいおいマジかよ」
敵の方が先にプレイヤーに気づくとmEqから伝達される仕様になっているらしい。
心の準備も整わないまま、慌てふためく。
敵の姿が見えず周囲を見回すが、どう見てもモンスターの影すら見えない。
カン違いじゃないかとmEqに問い質そうとした矢先、パラボードの生体反応機能が敵の位置を示した。
フルダイブ型MMORPGの経験が早速、役に立った。
高性能なアシスト機能は常時展開させておくが基本だ。
くわえて、緊急時は焦って動くのではなく些細な周囲の変化に気づけることが大事だ。
「ん……」何かの気配を感じ、咄嗟にバックステップを踏んだ。
直後、見えない何かが空をかすめる音がした。
目の前にモンスターがいる。
そう確信し、足元にある石を蹴り上げた。
「ギャア!」という小さな悲鳴と共に何もなかった空間から突如として、フードを被った人影が姿を現した。
肌は浅黒く、長い耳と兎のような尻尾が特徴的なモンスターだった。
小柄で愛らしい見た目に反して、錆びついた短刀をチラつかせている。
殺気満々な姿勢は、僕からすればあまり感心できない。
敵名:ドレッドフード
種族:亜人
能力:不可視化
ステータス:NO DATA
ドロップアイテム:???、狩人の干し草
備考:集団で行動する人型モンスター。素早く狡猾である。
白昼堂々と旅人を狙って襲ってくる。
『モンスターアーカイブスが更新されました』
できれば、事前に知りたかった情報が一気に流れ込んできた。
単体なら、まだしも魔物図鑑の情報通り集団を相手にするとなると100%、僕に勝ち目はない。
逃げるが勝ちという格言もあるくらいだ。
撤退を余儀なくされるのなら、さっさと逃走した方がいい。
180度ターンし、来た道を戻ろうとした。
振り向いた先には、三体のドレッドフードが待ち構えていた。
「い、いつの間に……」
冒険者の行動パターンなど連中にとっては先刻承知のことだった。
ご丁寧に逃さないように先に退路を封じてくれるとは……笑えない話だ。
これは、もう完全な詰みだ。
モンスター対策を練らない限り、いつまでも同じことの繰り返しになってしまう。
そもそも、武器がないのだから戦いようがない。
戦う力さえあれば、ヒーラーの僕にでも攻撃を返すくらいはできるはずだ。
どんだけ鬼序盤なんだ、このゲームは……今となっては、あの悪ふざけした旗すら恋しくなってきた。
「旗か、待てよ……」
この瀬戸際に僕は重大なことを思い出した。
ふと、城塞跡地の奥に視線をやるとそびえ立つ巨体は今もなお健在だった。
最初に与えられた手旗を拒否した結果、アレが現れた。
もし仮に、一億歩譲って全長10メートルを超える岩石ゴーレムが、僕の専用武器だとしたら現状、手元に何もないのも納得がゆく。
確証はないけれど、そう思うと急に手足が震え出した。
恐怖で怯えているのではない。
戦う力を得られる可能性を見出しただけで、自分の中から気持ちが昂ってくるのが分かる。
やはり、RPGは戦闘が楽しめてなんぼ、やられっぱなしはもうゴメンだ。
「後は、ゴーレムのところまでどうやって向かうかだ」
城塞跡地側には少なくとも二体の生体反応が確認できる。
なんとかして、コイツらの包囲を突破しゴーレムのそばに辿りつかなければ……。
「ええい、ままよ。走ればどうにかなる」
無謀であったとしても命を賭ける価値は充分にある。
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