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三章、思惑渦巻くクシュルティナ
70話 窮鼠、猫を噛む
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瞬きすることすら忘れた表情に一瞬、ゾクッとした。
ラゲルの瞳からゲゲルとは異なる怒りのようなモノが滲み出ていた。
向こうもプロだ。自身の失態に気づいてすぐにまた笑顔に戻る。
「実は、僕には生き別れの兄さんがいるんだよね~。どこにいるのか分からないから、見かけたら居場所を教えてくれないかなぁ~?」
「どこにいるまでは分からないけど、そう遠くない所で会ったよ!」
二度も動じることはなかった。
ラゲルはキィーナに風船を手渡しながら、私の耳元で「あの男に関わらないほうがいい」とだけ呟いた。
言われなくても、コチラから願い下げだと言いたかったけれど、ラゲルの口ぶりからしてゲゲルことミゲルが野盗の首魁になっていることを知らないようだ。
時間があれば教えてやりたいけれど、話も聞きたくないと断られそうな雰囲気だ。
嫌な予感がした。天啓と呼ぶべきか、こういう時の私の勘はよく当たる。
アニエスちゃんの一件にゲゲル一派が関わっているような気がしてならない。
確証などまったくないけれど、そう仮定すると相手は武装した集団だ。
とてもじゃないけど魔祓いとはわけが違う。私の手には負えない案件となる。
だが、一つだけ希望はある。野盗がグランデル司祭の孫である彼女を誘拐したとすれば、目的は身代金だ。
アニエスちゃんが生存している可能性は高い。
しかし、二週間以上も経つのに一向にコンタクト取ってこないのは何故か?
野盗たちを含めてトラブルに見舞われた可能性も無視できない。
そこを疑ってしまうのは、やはり私たちを付け狙っていた謎の存在があるからこそだ。
あれは人などではなかった。感覚的に邪霊や悪魔の類だ。
人に襲い掛かりながらも、すぐに逃げ出したのは私が天敵である神職とみなしたからだろう。
いずれにせよ、現段階では憶測の域を出ない話だ。
深く考えすぎるのは良くない、余計に頭がこんがらがってしまうだけだ。
*
陽が傾いてゆくと、燃えるようなオレンジ色に空が染まってゆく。
濃い青から水色、紫、ピンクと天然のグラデーションを彩る空色を見ると胸がキュンと締めつけられる。
幼少の頃から感じる、この感覚は紛れもなく美しく儚げなものを愛おしく思う気持ちだ。
じきにクシュルティナの街も昼間とは別の顔に変わる。
その前に私とキィーナは音楽学院の傍で彼女が下校するのを待ち伏せていた。
サラが動きを見せるのなら、私たちが接触してきた今日である確率は高い。
彼女が事件に関与しているという推理が正しければ、主犯格である人物にコンタクトを取るはずだ。
ただし、その人物が校内にいたとすればコチラもお手上げだ。
まぁ、そこは対策を講じているから抜かりはないと思うケド。
ラゲルの瞳からゲゲルとは異なる怒りのようなモノが滲み出ていた。
向こうもプロだ。自身の失態に気づいてすぐにまた笑顔に戻る。
「実は、僕には生き別れの兄さんがいるんだよね~。どこにいるのか分からないから、見かけたら居場所を教えてくれないかなぁ~?」
「どこにいるまでは分からないけど、そう遠くない所で会ったよ!」
二度も動じることはなかった。
ラゲルはキィーナに風船を手渡しながら、私の耳元で「あの男に関わらないほうがいい」とだけ呟いた。
言われなくても、コチラから願い下げだと言いたかったけれど、ラゲルの口ぶりからしてゲゲルことミゲルが野盗の首魁になっていることを知らないようだ。
時間があれば教えてやりたいけれど、話も聞きたくないと断られそうな雰囲気だ。
嫌な予感がした。天啓と呼ぶべきか、こういう時の私の勘はよく当たる。
アニエスちゃんの一件にゲゲル一派が関わっているような気がしてならない。
確証などまったくないけれど、そう仮定すると相手は武装した集団だ。
とてもじゃないけど魔祓いとはわけが違う。私の手には負えない案件となる。
だが、一つだけ希望はある。野盗がグランデル司祭の孫である彼女を誘拐したとすれば、目的は身代金だ。
アニエスちゃんが生存している可能性は高い。
しかし、二週間以上も経つのに一向にコンタクト取ってこないのは何故か?
野盗たちを含めてトラブルに見舞われた可能性も無視できない。
そこを疑ってしまうのは、やはり私たちを付け狙っていた謎の存在があるからこそだ。
あれは人などではなかった。感覚的に邪霊や悪魔の類だ。
人に襲い掛かりながらも、すぐに逃げ出したのは私が天敵である神職とみなしたからだろう。
いずれにせよ、現段階では憶測の域を出ない話だ。
深く考えすぎるのは良くない、余計に頭がこんがらがってしまうだけだ。
*
陽が傾いてゆくと、燃えるようなオレンジ色に空が染まってゆく。
濃い青から水色、紫、ピンクと天然のグラデーションを彩る空色を見ると胸がキュンと締めつけられる。
幼少の頃から感じる、この感覚は紛れもなく美しく儚げなものを愛おしく思う気持ちだ。
じきにクシュルティナの街も昼間とは別の顔に変わる。
その前に私とキィーナは音楽学院の傍で彼女が下校するのを待ち伏せていた。
サラが動きを見せるのなら、私たちが接触してきた今日である確率は高い。
彼女が事件に関与しているという推理が正しければ、主犯格である人物にコンタクトを取るはずだ。
ただし、その人物が校内にいたとすればコチラもお手上げだ。
まぁ、そこは対策を講じているから抜かりはないと思うケド。
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