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四章、贖罪の系譜
79話 鏡合わせの二人
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「話はお店の中でしましょう」
キィーナがゆっくりと楽器店の扉を開いた。
本来なら営業中の時間だが、店主に無理を言って少しだけ貸し切りにして貰った。
「ここに来るのは、どうせ決まった連中だけだわ」
そう皮肉交じりに笑う店主だが、彼自身が常連の来店を何よりも楽しみしている。
でなければ、店内に流れるBGMが客の好みに合わせて変わることはない。
先程まではジャズが奏でられていたが、サラがくるとクラシックにレコードが交換された。
レコード売り場から奥に進むと大小様々な楽器が展示されていた。
壁に沿って置かれたドラムや木管楽器、ハープやヴァイオリンなどの弦楽器がずらりと並ぶ。
サラが得意とするフルートもガラスのショーケースに飾られている。
鈍色の光沢を静かに放っているが彼女の目には止まらない。
普段、見慣れているから反応が薄い――――わけではない。
一刻も早くアニエスちゃんの居場所を聞きたくて気が気でないようだ。
私たちは二階に上がると、応接テーブルを挟んで向かい合うカタチで席についた。
「それで、わざわざここで話す意味があるの?」
「はい、サラさんにとっては大事な話ですから。
それに、ダレかに聞かれたりしたら追々、メンド―になると思うので」
キィーナにしてはかなり気の利いた言葉だ。
この店を指定したのは私だが、あとの段取りはすべてキィーナに任せてある。
探偵の資格を得るために挑む初の試験。
事件の真相を辿るキィーナの口から彼女の推理が語られる。
「真実とは、目に見えて初めて存在が明らかになるものです。
自分ではない、ダレかが語るモノはその人の事実であり真実ではありません。
私たちは最初から、ずっと思いチガいをしてきました。
いえ……そうなるように仕組まれていたんです。
すべてはアニエスちゃんを守るために」
「守る? アニエスさんは誰かに狙われていたの?」
サラが不思議そうな面持ちでキィーナを見ていた。
不安がっているようで、そうでもない微妙な反応だ。
だからこそ、余計に疑わしく思えてしまう。
「狙われていたのではなく、狙わせるのが目的です。
そうすれば、司祭のお孫さんがゆうかいされたと、さわぎになるから。
大事になるほど犯人からすれば好都合となります」
「まるで、誘拐されたのが別人のような言い草ね。
だとすれば、アニエスさんがいないことが、ますます不自然な話になるんだけど?」
「いないではなく、最初から他者の名を使用していたんです。
そうですよね? サラさん……いいえ! アニエス・ロワさん」
キィーナがゆっくりと楽器店の扉を開いた。
本来なら営業中の時間だが、店主に無理を言って少しだけ貸し切りにして貰った。
「ここに来るのは、どうせ決まった連中だけだわ」
そう皮肉交じりに笑う店主だが、彼自身が常連の来店を何よりも楽しみしている。
でなければ、店内に流れるBGMが客の好みに合わせて変わることはない。
先程まではジャズが奏でられていたが、サラがくるとクラシックにレコードが交換された。
レコード売り場から奥に進むと大小様々な楽器が展示されていた。
壁に沿って置かれたドラムや木管楽器、ハープやヴァイオリンなどの弦楽器がずらりと並ぶ。
サラが得意とするフルートもガラスのショーケースに飾られている。
鈍色の光沢を静かに放っているが彼女の目には止まらない。
普段、見慣れているから反応が薄い――――わけではない。
一刻も早くアニエスちゃんの居場所を聞きたくて気が気でないようだ。
私たちは二階に上がると、応接テーブルを挟んで向かい合うカタチで席についた。
「それで、わざわざここで話す意味があるの?」
「はい、サラさんにとっては大事な話ですから。
それに、ダレかに聞かれたりしたら追々、メンド―になると思うので」
キィーナにしてはかなり気の利いた言葉だ。
この店を指定したのは私だが、あとの段取りはすべてキィーナに任せてある。
探偵の資格を得るために挑む初の試験。
事件の真相を辿るキィーナの口から彼女の推理が語られる。
「真実とは、目に見えて初めて存在が明らかになるものです。
自分ではない、ダレかが語るモノはその人の事実であり真実ではありません。
私たちは最初から、ずっと思いチガいをしてきました。
いえ……そうなるように仕組まれていたんです。
すべてはアニエスちゃんを守るために」
「守る? アニエスさんは誰かに狙われていたの?」
サラが不思議そうな面持ちでキィーナを見ていた。
不安がっているようで、そうでもない微妙な反応だ。
だからこそ、余計に疑わしく思えてしまう。
「狙われていたのではなく、狙わせるのが目的です。
そうすれば、司祭のお孫さんがゆうかいされたと、さわぎになるから。
大事になるほど犯人からすれば好都合となります」
「まるで、誘拐されたのが別人のような言い草ね。
だとすれば、アニエスさんがいないことが、ますます不自然な話になるんだけど?」
「いないではなく、最初から他者の名を使用していたんです。
そうですよね? サラさん……いいえ! アニエス・ロワさん」
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