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二十一話 アニキ、新たなる魔法少女と邂逅
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『どうやら、黒のようだね』
ドアの取っ手をつかむと、ドブさんが喋りだした。
『吾輩に妙案がある。これで、変体だって怖くない! さぁ、キュイちゃんエントリーする――――のわあああぁぁぁ!!!』
「失礼します……」
いくら、策があっても間に合わなければ意味ががない。
ここは、ドブさんの誘いには乗らず、鴨川君を救出するのが先決だ。
戦隊ヒーローとして培った経験が物を言う。
敵の注意を被害者から遠ざけるために、あえて敵陣へと踏み込む。
どのみち、ガゥがいない以上、ボクが魔法少女に変身したところで攻撃を仕掛ける手立てがない。
もし敵に理性や知性があるのなら、学校で大事を起こしたくないはずだ。
一般生徒として接すれば、怪人としての本性が現さないかもしれない。
そこに賭けるのみ……。
勢い任せに保健室に入ると見覚えのある横顔が視界に飛び込んできた。
デスクの上で、カタカタとPCのキーボードを叩いているのは体育教諭のカルタ先生だ。
先生はボクの方を一瞥すると、すぐにまた手を動かし始めた。
「君は今朝の生徒だね。何の用かな? 見ての通り私は多忙でね……サインなら後にしてくれないか?」
「カルタ先生……どうして体育教諭の貴方が保健室にいるんですか?」
その一言で、キーボードから音が消えた。
彼は、指先でズレた眼鏡をクィッと直していた。
「実は保健の教諭に留守を任されてね。その間に私は自分の仕事をやっているところだ」
「でも、パソコンの本体もない状態でやっても意味がないんじゃ……」
ガタッ! と音を立てて座椅子が倒れた。
掛けていたメガネを外しながらカルタ先生は、額に素手をあてがう。
深いため息をつきながら「盲点だったな……」と呟いて見せた。
何が盲点だったのか? 聞くだけ無駄だと言える。
平静を取り繕っていても、キーボードだけで許されるのは、ミュージシャンだけだ。
こちらも、指摘できる所は遠慮なく言うつもりだ。
「こいつは、エアーPCと言って昨今、流行っているスピードラーニングの一種だ」
「絶対、嘘だぁぁ!! 今、盲点とか言っていましたよね? どうしてバレるような嘘をつくんですか!? そもそもスピードラーニングが今更、流行るわけないでしょうが!」
「残念だ。気づかなければ……君を傷つけることはなかったのが」
立ち上がったままの姿勢でカルタ先生は、首をコキコキと鳴らしボクの方へと近づいてきた。
『危ない! しゃがむんだ!!』
ドブさんの叫び声でほんの一瞬早く、相手からの攻撃に反応できた。
身体を低くすると、頭上を硬い何かが通過した。
直後、背後から何かを吹き飛ばしたような接触音が辺りに轟いた。
恐る恐るの振り向くと、保健室のドアが消えていた。
「ちぃぃぃ、仕留め損なったポ。これ以上、時間をかけていられない」
騒ぎを聞きつけた生徒や教師たちがここへと向かってきている。
目立つことを嫌った先生は、ケツから伸びた物を回収していた。
それは鳥の尾っぽだった。ボクのカン違いでなければ、人間サイズに巨大化した鳥の尾だ!
「先生は変体なんですか? そのぉ、性的な変態ではなくて……肉体的な」
「肉体を求めてなにがおかしい!? 私はクリッピ―、完全なる筋肉に魅入られし男。男色がバレたからには君を、生かしてはおけないポ。悪く思わないでくれたまえ―――」
一方通行すぎる。自分の秘密を勝手にカミングアウトしておきながら、ボクを始末するとか言い出しているのは、とばっちりもいいところだ。
荒唐無稽すぎてついてゆけない。
「おおおおおおおっ、キャストオフだポ!」
カルタ先生の身体が飛び散り、中から別の生き物が現れた。
二足歩行する鳥人間、その頭は特大の目玉クリップで挟まれていて変体というより、怪人という印象を受けた。
ボクが目を離したわずかな隙をついて、怪人は保健室の窓ガラスを蹴破り逃走を図っていた。
「に、逃がさないぞ! って! 鴨川君、放して」
慌てて後を追おうとするも、床下に倒れ込んでいた鴨川君がボクの足元にしがみついて放そうとしない。
よほど怖い思いしたのだろう? そう思いきや、彼はどさくさに紛れて人の足の匂いを嗅いで興奮していた。
あまりの上級者ぷりに、背筋が凍った。
脇腹につま先蹴りを入れて、鴨川君が悶絶しているうちに、ボクは保健室を後にした。
「あっ! 新庄さん。ちょうど、アナタを探していました」
「イドロ先生、すみませんが今は取り急いでいるので、要件は後で聞きます!」
「いえ、アナタに届け物です。テイキッ!」
事態がイマイチ飲み込めないけど、ボクあてに荷物が届いたらしい。
手のひらサイズの四角い金属の塊……心当たりは全くないが受け取れと言われたら受け取るしかない。
謎の物体を手に取り、校舎の外へと飛びだした。
鳥の怪人となったカルタ先生は、確かに校舎裏の方へと向かっていった。
その先には自転車の駐輪場がある。
この学校に来る前に、一度下見をしに来たのは正解だった。
「観念なさい! ド変態め! この魔法少女、シルフィードハーネスがアンタを成敗してあげるわ」
女の子の声とともに火ダルマとなった怪人クリッピ―が宙を舞っていた。
先に見える人影は、確かに魔法少女を名乗っていた。
ハンドガンを手にした、彼女の姿にボクは目を丸くした。
ドアの取っ手をつかむと、ドブさんが喋りだした。
『吾輩に妙案がある。これで、変体だって怖くない! さぁ、キュイちゃんエントリーする――――のわあああぁぁぁ!!!』
「失礼します……」
いくら、策があっても間に合わなければ意味ががない。
ここは、ドブさんの誘いには乗らず、鴨川君を救出するのが先決だ。
戦隊ヒーローとして培った経験が物を言う。
敵の注意を被害者から遠ざけるために、あえて敵陣へと踏み込む。
どのみち、ガゥがいない以上、ボクが魔法少女に変身したところで攻撃を仕掛ける手立てがない。
もし敵に理性や知性があるのなら、学校で大事を起こしたくないはずだ。
一般生徒として接すれば、怪人としての本性が現さないかもしれない。
そこに賭けるのみ……。
勢い任せに保健室に入ると見覚えのある横顔が視界に飛び込んできた。
デスクの上で、カタカタとPCのキーボードを叩いているのは体育教諭のカルタ先生だ。
先生はボクの方を一瞥すると、すぐにまた手を動かし始めた。
「君は今朝の生徒だね。何の用かな? 見ての通り私は多忙でね……サインなら後にしてくれないか?」
「カルタ先生……どうして体育教諭の貴方が保健室にいるんですか?」
その一言で、キーボードから音が消えた。
彼は、指先でズレた眼鏡をクィッと直していた。
「実は保健の教諭に留守を任されてね。その間に私は自分の仕事をやっているところだ」
「でも、パソコンの本体もない状態でやっても意味がないんじゃ……」
ガタッ! と音を立てて座椅子が倒れた。
掛けていたメガネを外しながらカルタ先生は、額に素手をあてがう。
深いため息をつきながら「盲点だったな……」と呟いて見せた。
何が盲点だったのか? 聞くだけ無駄だと言える。
平静を取り繕っていても、キーボードだけで許されるのは、ミュージシャンだけだ。
こちらも、指摘できる所は遠慮なく言うつもりだ。
「こいつは、エアーPCと言って昨今、流行っているスピードラーニングの一種だ」
「絶対、嘘だぁぁ!! 今、盲点とか言っていましたよね? どうしてバレるような嘘をつくんですか!? そもそもスピードラーニングが今更、流行るわけないでしょうが!」
「残念だ。気づかなければ……君を傷つけることはなかったのが」
立ち上がったままの姿勢でカルタ先生は、首をコキコキと鳴らしボクの方へと近づいてきた。
『危ない! しゃがむんだ!!』
ドブさんの叫び声でほんの一瞬早く、相手からの攻撃に反応できた。
身体を低くすると、頭上を硬い何かが通過した。
直後、背後から何かを吹き飛ばしたような接触音が辺りに轟いた。
恐る恐るの振り向くと、保健室のドアが消えていた。
「ちぃぃぃ、仕留め損なったポ。これ以上、時間をかけていられない」
騒ぎを聞きつけた生徒や教師たちがここへと向かってきている。
目立つことを嫌った先生は、ケツから伸びた物を回収していた。
それは鳥の尾っぽだった。ボクのカン違いでなければ、人間サイズに巨大化した鳥の尾だ!
「先生は変体なんですか? そのぉ、性的な変態ではなくて……肉体的な」
「肉体を求めてなにがおかしい!? 私はクリッピ―、完全なる筋肉に魅入られし男。男色がバレたからには君を、生かしてはおけないポ。悪く思わないでくれたまえ―――」
一方通行すぎる。自分の秘密を勝手にカミングアウトしておきながら、ボクを始末するとか言い出しているのは、とばっちりもいいところだ。
荒唐無稽すぎてついてゆけない。
「おおおおおおおっ、キャストオフだポ!」
カルタ先生の身体が飛び散り、中から別の生き物が現れた。
二足歩行する鳥人間、その頭は特大の目玉クリップで挟まれていて変体というより、怪人という印象を受けた。
ボクが目を離したわずかな隙をついて、怪人は保健室の窓ガラスを蹴破り逃走を図っていた。
「に、逃がさないぞ! って! 鴨川君、放して」
慌てて後を追おうとするも、床下に倒れ込んでいた鴨川君がボクの足元にしがみついて放そうとしない。
よほど怖い思いしたのだろう? そう思いきや、彼はどさくさに紛れて人の足の匂いを嗅いで興奮していた。
あまりの上級者ぷりに、背筋が凍った。
脇腹につま先蹴りを入れて、鴨川君が悶絶しているうちに、ボクは保健室を後にした。
「あっ! 新庄さん。ちょうど、アナタを探していました」
「イドロ先生、すみませんが今は取り急いでいるので、要件は後で聞きます!」
「いえ、アナタに届け物です。テイキッ!」
事態がイマイチ飲み込めないけど、ボクあてに荷物が届いたらしい。
手のひらサイズの四角い金属の塊……心当たりは全くないが受け取れと言われたら受け取るしかない。
謎の物体を手に取り、校舎の外へと飛びだした。
鳥の怪人となったカルタ先生は、確かに校舎裏の方へと向かっていった。
その先には自転車の駐輪場がある。
この学校に来る前に、一度下見をしに来たのは正解だった。
「観念なさい! ド変態め! この魔法少女、シルフィードハーネスがアンタを成敗してあげるわ」
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