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還らずの森
その名は
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――湿った土の匂いがする。
ひんやりとした感触が頬に伝う。
心地良いと感じたのは一瞬、次第に口の中へとじゃりじゃりとした感触が広がってゆく。
ゲホゲホと咳込むと、口の中から唾液混じりの異物が飛び出てきた。
まったくもって最悪の目覚めだ、涙や鼻水で顔中ぐちゃぐちゃになってしまった。
私は地面に顔を突っ伏していた。
生涯忘れられそうにないほど無様な姿、周囲に誰もいないことがせめてもの救いだ。
なんとか身体を起こし、周囲の状況を確認すると暗闇にまみれた灰色の茂みが視界を奪ってきた。
森だ……草木の香りがする静寂に支配されたこの空間で私は独り気絶していたらしい。
しばらくして頭を両手で抱えひざを折る自分がいた。
なぜか、頭がズキズキと痛む……リアルな痛み。
咄嗟にセーラー服をめくり上げ確認する。
無い……拳銃で撃たれたはずの腹部に負傷した形跡はどこにもない、あれだけ出血していたというのに。
本来なら安堵するべきところなのに、在るはずのモノがナイというのは得体の知れない不気味さしか残らない。
長い長い旅の始まり。
ここが始発の駅、どうやら私は世界の陰に潜んでいた異世界に飛ばされてしまったみたいだ。
ふと脳裏をよぎる隠世という文字。
そうだ、ここは隠世と呼ばれる世界……のはず、どうして森の中にいるのか? まったく分からない。
一体、どうすれば現世に戻れるのだろうか? 誰かが何かを言っていた気がするけど、記憶がイマイチはっきりしない。
この症状……魔法障害かもしれない。
不完全な状態で術式を発動すると低確率で身体に異常をきたす事がある。
症状は様々だが、記憶の欠如もそのうちに一つに該当する。
現に私は自分の名すら思い出すのに一苦労な始末。考え込むだけで気分が鬱々する。
確か鳥系だったような……三鷹? 鷲津? 鷺沼? 鶴舞? 雀宮? ってわたしゃ、駅名マニアかーい!
私とは一体どんな人間だったのか? 再三、思い出そうと試みても記憶の片鱗すら掴めない。
自分が自分ではなく他人になったような不思議な感覚に戸惑うばかりだ。
「そーだ! 所持品。身分証さえあれば自分のことが分かる」
制服の胸ポケットに手を突っ込むと期待を裏切らず生徒手帳が出てきた。
思い出すのが困難ならば、自身が何者なのかコレで確かめればいい。
手帳を開く、名前は――――月舘萌知だ。
「ひ、一文字も合ってねえ……誰よ、鳥みたいなのって言ったの?」
言うまでもなく三十秒前の私だ。
脆弱しきった記憶にがく然とし受け思わず手元が狂ってしまった。
落下した手帳から、折り畳んだメモ用紙が顔をのぞかせている。
「宝玉 天秤が揃う時、パズルは解かれる? これは一体、何を示唆しているんだろう?」
拾い上げたメモには謎の一文が記されていた。
私の筆跡みたいな気もするけど、当然書いた記憶はない。
多分、今のような事態を想定して事前にしるした物なんだろう。
これを残したということは宝玉と天秤が、この難解な状況を打破する重要なファクターと思って違いない。
急いで辺りを探ってみよう。
ひんやりとした感触が頬に伝う。
心地良いと感じたのは一瞬、次第に口の中へとじゃりじゃりとした感触が広がってゆく。
ゲホゲホと咳込むと、口の中から唾液混じりの異物が飛び出てきた。
まったくもって最悪の目覚めだ、涙や鼻水で顔中ぐちゃぐちゃになってしまった。
私は地面に顔を突っ伏していた。
生涯忘れられそうにないほど無様な姿、周囲に誰もいないことがせめてもの救いだ。
なんとか身体を起こし、周囲の状況を確認すると暗闇にまみれた灰色の茂みが視界を奪ってきた。
森だ……草木の香りがする静寂に支配されたこの空間で私は独り気絶していたらしい。
しばらくして頭を両手で抱えひざを折る自分がいた。
なぜか、頭がズキズキと痛む……リアルな痛み。
咄嗟にセーラー服をめくり上げ確認する。
無い……拳銃で撃たれたはずの腹部に負傷した形跡はどこにもない、あれだけ出血していたというのに。
本来なら安堵するべきところなのに、在るはずのモノがナイというのは得体の知れない不気味さしか残らない。
長い長い旅の始まり。
ここが始発の駅、どうやら私は世界の陰に潜んでいた異世界に飛ばされてしまったみたいだ。
ふと脳裏をよぎる隠世という文字。
そうだ、ここは隠世と呼ばれる世界……のはず、どうして森の中にいるのか? まったく分からない。
一体、どうすれば現世に戻れるのだろうか? 誰かが何かを言っていた気がするけど、記憶がイマイチはっきりしない。
この症状……魔法障害かもしれない。
不完全な状態で術式を発動すると低確率で身体に異常をきたす事がある。
症状は様々だが、記憶の欠如もそのうちに一つに該当する。
現に私は自分の名すら思い出すのに一苦労な始末。考え込むだけで気分が鬱々する。
確か鳥系だったような……三鷹? 鷲津? 鷺沼? 鶴舞? 雀宮? ってわたしゃ、駅名マニアかーい!
私とは一体どんな人間だったのか? 再三、思い出そうと試みても記憶の片鱗すら掴めない。
自分が自分ではなく他人になったような不思議な感覚に戸惑うばかりだ。
「そーだ! 所持品。身分証さえあれば自分のことが分かる」
制服の胸ポケットに手を突っ込むと期待を裏切らず生徒手帳が出てきた。
思い出すのが困難ならば、自身が何者なのかコレで確かめればいい。
手帳を開く、名前は――――月舘萌知だ。
「ひ、一文字も合ってねえ……誰よ、鳥みたいなのって言ったの?」
言うまでもなく三十秒前の私だ。
脆弱しきった記憶にがく然とし受け思わず手元が狂ってしまった。
落下した手帳から、折り畳んだメモ用紙が顔をのぞかせている。
「宝玉 天秤が揃う時、パズルは解かれる? これは一体、何を示唆しているんだろう?」
拾い上げたメモには謎の一文が記されていた。
私の筆跡みたいな気もするけど、当然書いた記憶はない。
多分、今のような事態を想定して事前にしるした物なんだろう。
これを残したということは宝玉と天秤が、この難解な状況を打破する重要なファクターと思って違いない。
急いで辺りを探ってみよう。
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