RiCE CAkE ODySSEy

心絵マシテ

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還らずの森

真夜中のキャンプ

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結界が施されていた地点を後に、私は木々の合間を駆け抜けていた。
音を立てず気配を消し移動するのは昔から得意だったけど、ちっとも嬉しくはない。

――なんか、得体のしれないモノがいる。

いくらエアリアルサーチで森全体を探ろうとしても、何故か途中で無効化されてしまう。
原因は不明。失意のどん底に転げ落ちてゆく私にトドメをくれようと運命は更なる難題をかした。
強力な魔力を有する気配が四つ。
燃え盛るようにあふれ出してくるマナの波動は人が放つそれとは比較にならないほど強く禍々しい。
古来より魔物と称される霊的な存在……そうだとしたら、かなり怖い相手だ。
彼らは基本、無断で自分たちの縄張りを踏み荒らす者に対し容赦なく攻撃をしかけてくる。
現世なら霊障、魔法干渉程度ですんだが、ここは原則として魔法が成り立っている世界、魔法攻撃を多用し襲ってくる可能性がある。
加えて物理攻撃は無効、かといって魔法耐性が低いわけでもない。
神職ならまだしも、ぶっちゃけ魔術師……いや、空気中に漂うマナに依存して魔力を練らないといけないから形式的には魔導士か。
どちらにしても魔法職はアストラル体とやり合うには相性が悪すぎる。
その上、現段階において自分の魔法性能について、ほとんど把握できていない。
使用可能な魔法体系自体が、今まで認識していたものとは、まったく異なる仕様になってしまっている……そのせいで何が起きるのか事前予測がたたないし、どこまでが能力の限界なのかも定かではない。
とにかく地道な魔法検証とその為の時間が必要。
全てのデータが揃うまでの間は極力、敵との接触は避けたい。
幸いにも、魔物たちは遥か遠方、未だこちらに気づいてはいないみたいだ。
このまま迅速に森を抜けるとしよう、それで万事解決だ。

「ううっ……さむっ。そろそろ限界!」

川岸まで辿りつくと長い時間、夜風に吹きつけられ続けたせいで全身の震えがおさまらなくなってきた。
徐々に筋肉が強張り身体は重くなっていく。
だるさと眠気をこらえながら、何か暖をとれるものはないかと探ってみた。

「木炭? こんな場所に? って、これは……」

周囲に幾つか散らばっている木炭、その一つを拾い上げると手にずしりとした感触が伝わってきた。
これは木炭ではない、一見すると見間違えるが石ころ、鉱石の一種だ。
しかも、ただの鉱石ではない。
手に取って初めて分かるが、表面は酸化した金属で覆われているが内には大量のマナを含有している……。
なるほどね、表面の金属部分でマナを遮断しているからエアリアルサーチでも発見できなかったわけか。
正式名は何ていうのか知らないけど、さしずめマナ鉱石という感じかな。
とりあえず、ファイアボールで炙ってみよう!
マナの塊なら熱エネルギーに変換できるかもしれない。

「うわっ!! ヤバっ……何コレぇぇ――――ええ!!」

試しに着火してみた。
すげー燃えた。
石ころ一つでキャンプファイヤーなみの火炎が立ち上るのをみて圧倒されつつも若干、ドン引きした。
とはいえ――

「はあぁぁ~暖かがいぃぃ、生き返るわ」

体力を消耗しきる前に焚き火を起こせたのは大きい。
少なくとも、当面の間は急場をしのげる。

「せっかく火もあることだし、アウトドアクッキングでもしたいなぁ~、食材があればなぁ~」

わざとらしく独りぼやきながら、私は視線を真横に泳がせてみる。
近場にある木の根元にチラッとキノコの傘が見えている。
さきほど、マナ鉱石を拾い集めている際に発見した貴重な食材だ。
見たことのない色合いをしているキノコではあるものの、毒キノコでないことはすでに魔法で調べがついている。
あとは、どう調理するかだ!
まずは土魔法で粘度を生成して、一気に凝固させ鍋釜と釜戸を作る。
鍋底にそこら辺に生えていた大きめの葉を敷き詰め、水魔法で川の水を浄化し鍋に入れる。
燃え盛る火炎を釜戸に入れて、その上に鍋をのせる。
直火でもすすけないのがマナ鉱石の優れたところだ。
沸騰するまでしばし待つ、待っている間にキノコを木の枝に三本ずつ刺してまとめておく。
沸騰後、キノコを投入。
そのまま茹でれば、即席キノコの水煮の完成だ。
調理と呼べるレベルには到底及ばないが、準備する段階で工程一つずつに繊細さを要求された。
おかげで、魔力コントロールの良い練習にはなった。

「冷めないうちにいただきますか!」

出来立てのキノコ料理を口に運ぼうとした次の瞬間、得も言われぬ不快感が私に襲い掛かってきた。

「おっおおえええっえ、くっさ――! 臭い、クサイよコレ、う〇こ臭いぃいいいいいいっ!!」

悪臭という名のテロ攻撃が始まった。
それまでなんの変哲もないキノコだったものが、熱を通した途端に汚物と化した。
目に涙をためながら何とか耐える。
臭さのあまり、あやうく吐瀉物としゃぶつが飛び出てしまいそうだった。
アレはもう口にして良いものではない。
食したら、頬っぺた以外のものを確実に落としてしまう。

「―――――来ている」

即座に火元の鉱石に水をかけ消すと、私は木の陰に身を隠した。
あれだけ盛大なキャンプファイヤーをしていた上に大騒ぎしたんだ、気づかない方がおかしいぐらいだ。
それとも、この臭さのせいか?

「まだ、めちゃくちゃ、臭おおぉお――う!」

私は、たまらず手にしたままだった汚物を川向こうへ全力で投げつけた。
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