RiCE CAkE ODySSEy

心絵マシテ

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冒険者が統べる村

グリッドアーツ

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『見事な裁量でした、萌知様。見目麗しいだけではなく、その非凡なる才覚が放つ艶やかさ、このモリスン感服するばかりです』

「うーん、1万2500ニ―ゼルか。もう少し色がつくかと思ったけど妥当な価格でおさまっちゃったなぁ~」

『さあ! 路銀も無事に稼いだことですし次はいかがなさいますか? 向かいたい場所などあれば、我にお申し付けくださいませ。もっとも知慧の魔導士たる貴女様なら、最初から我など不要かもしれもせんが』

「なんか、妙に褒めちぎられているような気がしてならない……ひょっとして、馬鹿にされているの私?」

魔道具を売り払った直後のモリスンはやけに上機嫌になっていた。
褒められて嬉しくないという事はない、ただ度が過ぎると嫌味にしか聞こえない。
何分、私も無垢な心の持ち主ではない……彼の期待には沿えない。

「そんなことは無い。モリスンにはとても助けられている」と瞳をウルウルさせて言えばきっと、大喜びするのだろう。
けれど、そんな上辺だけの言葉を差し伸べても彼の欲求は満たさない。
なぜなら、モリスンは女子に優しくされるよりも罵られる事を欲する変態だから。

「う~ん、金色の天秤……か、どこかの店先に置いてないかな?」

僭越せんえつながら申します。萌知様の探している天秤は魔道具なのですよね? でしたら、このような市場には出回らないかと』

「なら、どこに行けばあるのかなナビさん?」

『アーカイブスによれば、都市部にある魔法具の専門店かオークションで入手できるようです』

「折角だから、買い物ついでにたずねてみようよ。何か、新しい情報が得られるかもしれないし」

『だと、良いのですが……』

出店通りに戻った私達は、その足で武器屋や道具屋に向かい訊きこみを開始した。

「ねぇ、お兄さん。天秤のカタチをした魔道具ってあるかな? あれば見せて欲しいのだけど」

「おっ、いらっしゃい。えっ!? 魔道具なんてウチじゃ扱ってないなぁー、それよりも君、知的な魔法職の装備が似合いそうだね。オススメの武具があるだけど見てかない?」

何軒か梯子はしごしてみたが結局のところ、どの店も似たような反応だった。
ここいらのバザーで手に入るのは、普通の秤だけ、モリスンの忠告どおり魔道具と呼べる品は一つたりとも見当たらない。 
気づけば、私は最初に訪れた武具屋へ再訪問していた。
帰巣本能でもあるのか、私は……。

「おかえり、待ってたよ。どうだい! ウチの商品は」

そら、完全に弄られている……もはや店主の屈託ない笑顔が悪意にしか見えない。
それでも、資金も手に入ったことだ。
ここで、装備を整えたり、旅の必需となるモノを買い足すのも良い選択だと思う。
どうせ、アーカイブスで幾つか売れ行きのよいを特定してもらっても、村邑そんゆう規模では大した品揃えは期待できない。
なら、専門店に向かうより、出店で売っている品の中から掘り出し物を見つけ出した方が手っ取り早く済む。
消耗品である武具ならなおさらだ。
結果、その目論見は大当りだった。
武器屋の片隅に陳列してあるグローブやガットレット。
見た目はしょぼいようで実は通常の物ではない。
微量だが、加護が施されている。

武具屋のお兄さんは、ここに魔法職専用の装備があると言っていた。
確かに、魔法職の装備なら魔導士でも共通で装備できるものは幾つもある。
しかし、裏を返せば魔導士向きではない装備も割と多く出回っている。
ここに置いてあるスタッフなんかが良い例だ。
コイツは魔術師が扱うには何ら問題なく魔力を増幅させる武器としての能力を遺憾なく発揮してくれるだろう。
ところが魔導士が手にした途端、ただの鈍器と化す。
これには、魔力の抽出法の違いが大きく作用している。
多分、このお兄さんは例にもれず魔法について知識が浅い。
魔術と魔導、二つの違い。魔法にくみする我々がそれらにどういった取り決めで制限や仕切りを設けているのか、もう少し世間一般に広まってくれれば、こうしたボタンの掛け違いも起こらないかもしれない。

にしても、この籠手こてとか惚れ惚れするほどの出来栄えが良く、存分な魔力を帯びている。
初めて、祝福の印が刻まれた防具を目にしたが、これには感動すら沸きあがってくる。

「さっきから熱心に見入っているけど、気に入った物はあったかい? おや、グリッドアーツか! 最近、若い冒険者たちの間で流行っているんだぜ」

「珍しいよね、コレ。上等な品は魔道具の代用品になるんじゃない?」

「へっ、知らないのかい? というか、魔道具と比べちゃダメだ。ウチで取り扱っているのは、そこまで立派な性能を持っているわけじゃないから! コイツはさ、高性能ではない反面、消耗品としては扱いやすく安価で大量生産できる代物なんだ。そういった経緯もあって、冒険者がよくサブウェポンとして買っていくんだよ」

「へぇー勉強になったよ、ありがとね。じゃあ、このグローブとそっちのローブを買うよ。あっ! あと、アレが欲しいなぁ」

「へへっ、まいど! パワーグローブに黒の外套と。それに…………ええっ! これはチョット」

驚かれるのも無理なかった。
私が売ってくれと頼んだのは、見るかぎり売り物ではない店の奥に立てかけてあるだけの金属の棒。
到底、売値などつけられないガラクタである。
しかし、私には目利きできる瞳がある。
一目見て、強度、使い勝手、魔力伝導率、いずれも申し分のない優れた良品だと分かる。

「お客さん……これ、ただの物干し竿さお。もしかして、かけ出しの冒険者なのかな? だったら、初心者向けのガイドブックがあるんだけど。ほら! 伝説のハンター、ギデの新刊」

「本と冗談は間に合っているので、とにかく物干し竿を下さい」

目の前で、これ見よがしに本を広げる店のお兄さん。
どうやら、自身の言動のせいで完全に新人冒険者だと勘違いされてしまっている。
そもそも、私は一度たりとも冒険者だと名乗ってはいなし、なるつもりもない。
あくまでジップ村を訪れた旅人、それ以外の何者でもない。
昔、お向かいに住んでいた雑貨屋のお姉さんが教えてくれた。
店のスタッフが強く押しすすめてくる商品には何かしら裏があると。
それらは、まったく買い手がつかなく山のような在庫と化した残骸たちだと。
「特にアンタはカモにされそうだから気をつけな」とヤケ酒を煽る彼女は泥酔しながら言っていた。
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