RiCE CAkE ODySSEy

心絵マシテ

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冒険者が統べる村

言霊使い

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不意をつく男の声が背後から聞こえた。
おかしい、ここに着くまでの間に人の気配はしなかったはずだ。
気配を消す術でもかけていたのだろうか?

「おい、ここで何をしている? この場所は権限ある者しか立ち入ることを許されない禁足の地だ。見た所、無断でやってきたようだが、まさか……薬草目当ての泥棒じゃないだろうな?」

「泥棒扱いなんて心外ね。休憩がてら散歩していたら、たまたまここを発見しただけなのに」

「アンタ、村の人間じゃないな。臭うぞ……ここの奴らとは違った風をまとう者を野放しにはできん」

イマイチ、言葉の意味がのめないけれど、嫌疑をかけられているのは確実だった。
ここは一つ、大人しく相手の出方をうかがっておいた方が賢明だ。
私はゆっくりと背後を振り向いた。
対面の立つ男性と幼い女の子。
男は腕や額に包帯を巻いていて満身創痍まんしんそういといった状態だ。
そんな彼の背に隠れるようして、女の子の方は私の様子をじぃーと注視している。
少々驚きはしたけど、ここで彼らと出会えたのはやはり運命的だと言わざるを得ない。
二人のことは知っている。
昨日、見かけた串焼き屋さんと村の女の子、リシリちゃん。
意外な組み合わせだが、リシリちゃんが彼の手を掴んでいるところから、二人は近しい間柄だとうかがえる。

「リシリ? なっ、不審者じゃなくて恩人だと! あの娘がか?」

「急に尻込みしているようだけど、私のこと捕まえなくていいの?」

「いや、こちらにも事情というモノがある。ところでお嬢さん、アンタ使らしいな?」

なっ、なんでこちらの正体に気づいて……というより、どうしてバレている?
思わぬ言葉に、若干面を喰らってしまったが、こういう時こそ冷静さをかいてはいけないと持ち直した。
同時に、自身の行動に不備がなかったか思い当たるフシを探ってみる。
昨日、出店通りでの一悶着があった時点で私が魔法を使っていたことは串焼き屋さんには気づく余地もないはずだ。
そもそも、チャフで魔力感知できないようにしていた。
可能性としては、ビーンズ一家の女魔術士が候補にあがるが、彼女から情報をもらい受けたとは想像もつかない。
思いだせ、何を見落としているのか? 私ならどうやって、魔法使いを見分ける?
直に触れて魔力を探る――――まさか……でもあり得ない話ではない。むしろ、そうであれば色々と合点がいく。

『そろそろ、答えが見つかりましたかな?』

タイミングを見計らったようにモリスンが意地の悪い質問をしてきた。やはり悪魔だ、答えを知っていても、こちらから尋ねなければ平然と黙っている。

「その子ね。私の正体に気づいたのは……だったら、誤魔化しても意味はないわね」

「認めるんだな。なら、こちらも隠す必要はなさそうだな。この娘、リシリも魔法が使える……といっても言霊の精霊っていう珍しいのと会話する程度なんだがな……ただ、それが原因なのか? コイツは人と普通に会話できない」

「失語症――という見方は早計かな、一種の魔法障害ということも考えられるし」

「そこまで理解できてりゃ話は早い。アンタの技量を見込んで一つ頼みがある、リシリの魔法障害を治してはもえないだろうか? 一度、助けられた身で厚かましいのは重々承知している。でも、アンタほどの魔術師なら必ず治療できるはずだ。礼ならあるったけはずむ。だから後生だ!」


予想だにしていなかった彼の依頼に私はたじろいでしまった。
魔法障害という単語自体は、魔法学(学科)や魔法術(実地)といった魔法の基礎理論を習う過程で耳が痛くなるほど聞くため、魔法の教育をしっかりと受けた者ならば誰でも知っている。
魔法障害……それは、魔法習得するにあたって誤った手順、方法で行うと稀に発生する魔力の変質。
個人個人が持つ魔力の性質は生まれつき定まっていて、それは肉体とも蜜に連結している。
そのことを知らないまま、適さない条件下で魔法習得ラーニングすると魔力の性質が変わり、肉体の方にも多大な影響を受けてしまう。
場合によっては生命を落とす危険もはらんでいるため、通常では無茶なラーニングは禁止されている。
一時的な症状なら対処法を用いればどうにかはなる。
けれど、罹患りかんした魔法障害を治した経験は一度もないし、治せるという説すら耳にしたことがない。
はっきり言って、自信がない上に私にはリシリちゃんを診る義務もなければメリットもない。

「素性もよく分からない相手によく頭を下げられるね、お兄さん。いくら頼まれても安請け合いするつもりはないよ、無理だと思うし。魔法障害の治し方なんて私には分からない」

「そうだな……迷惑以外の何物でもないよな、スマン。けど、確証ならある! コイツら、精霊たちが教えてくれたんだ。アンタみたいな魔術師ならリシリを救うことができるって。ほら、見えるだろう? この子の周りに集まる精霊の姿が」

否定はできなかった、目視しなくとも彼女の近くを浮遊する魔力を帯びた塊の存在はとうに気がついていた。

『おそらく、あの幼子は精霊を介して他者と交流しておるのでは?』

「そう考えるのが妥当だね。私が魔法使いだと知っていたのも精霊が彼らに告げ口したからだ。精霊に好かれる少女か……魔導士的には、なかなか興味を惹く逸材だわ」

『はあ~、安易に他の者との関係を築くのは貴女様の悪い癖ですぞ。こうしている間にも本来の目的からどんどん遠ざかっている気がします』

「目的ね……別段、急ぎというわけじゃないでしょ?」

『返答しかねます。この件に関しまして、アーカイブスでの情報開示は一切禁じられてますので』

「先代、所有者たちの差し金ね……そうまでして隠したい何かがあるって事か……」

モリスンが神経質になるもの分からなくはない。
私の身を案じてという意味も含まれてはいると思うが、私の持つ魔法がどこにどんなカタチで影響をもたらすのか、とうてい想像もつかない。
それはそれで恐ろしいのだろう、実感は湧かないけど。
ともあれ、旅に寄り道はつきものだ。何も、目的は一つにしなきゃいけないなんて決まりもない。
何より、串焼き屋さんは私に拒否されることを覚悟した上で、依頼を持ち出してきた。
なら、できる範囲で応じても良いんじゃないかなと思う。

「お兄さん、私はアンタじゃなくて萌知って名前だよ。それに魔術師ではなく。何度も言うけど、リシリちゃんが普通に話せるようになるのか保証はできない。それでも私に任せてくれるのなら、最善をつくしてみせるよ」

「すまない。ありがとう、本当に恩に着る。そういえば名乗るのを失念していたな。俺はタンゾウ。この薬草園の管理人兼、串焼き屋の店主をやっているビーンズ伯の元従者だ」
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