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プロローグ 旅の天秤
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「何?」
「あの、修学旅行のスケジュールのことで――」
「無理無理、今日の放課後は部活あるし。悪いけど、他の人と適当に決めておいて」
氷下さんは私に呼ばれて露骨に表情を曇らせた。
毎度のことでもう慣れているが彼女は極度のめんどくさがりで、何でもかんでも他者に押しつけようとする。
それだけならまだマシだが、他者に頼んでおいて自分の意にそぐわない結果になると彼女は難癖をつけてくる。
その性格が災いして氷下さんと好んで班を組もうする人はいない。
所詮は余り者同士で結成された班、私を含め灰汁の強い人間ばかりだ。
班長を押し付けられた感は否めないが、任された以上は何とかしてあげたい気持ちはある。
まあ、想いだけなんだけどね……。
私に統率力なんて期待したところで期待に応えられないのは目に見えている。
真のチームワーク、団結力を生み出せるのは疑う余地なくクラスカースト上位である彼女たちぐらいだろう。
廊下側席の方を私はチラッと見てみた。
まだ、昼休みというのもあり教室には点々とクラスメイトがいる。
その中で談笑している彼女たち三人の姿は一際眩く、カリスマ性という強烈な個性の圧を放出し続けている。
「す、スゴイ……モデル雑誌の表紙みたいな感じになっちゃってる」
地下アイドルとして活躍している、小鳩さんを中心としたグループ。
後の二人はアイドルではないものの、やはり顔立ちやスタイルが良い。
類は友を呼ぶというがまさにそれだ。
三人はいつも一緒にいるのに、適度な距離感を保ってお互いに上手く接しているような気がする。
「あっ……へっ?」
しまったあー、完全に見入ってしまっていた。
おかげで、小鳩さんと視線が合ってしまった。
普通に気持ち悪がられたらどうしようと不安がる私に対し、嫌悪するどころか微笑して手を振ってくれている。
天使だ、天使がおられるよ~、そこまでされたらこっちの方が恥ずかしい。
羞恥心に負けた私は手にしていた修学旅行の栞を開いて顔をうずめてしまった。
あり得ない、あの小鳩さんが私に?
もしかしたら、手を振ったのはちょっとコッチに来いという呼び出しではないのか?
様々な憶測が頭の中で飛び交う。
「月舘さん、ハロハロ。ごめんね~、いきなりで驚かせちゃった?」
「こ、な鳩しゃん!」
不意を突く、追撃。
透き通った絹肌に長いまつ毛、艶やかなロング髪はとても柔らかそうで触りたくなる。
間近で見ると我々とは格段に違う美の塊が、すぐそばに来ている。
この状況でテンパるなというのは無理だ。
どう対応していいのか?焦って思考が上手く回らない。
「クスッ、そんなに緊張しないで。前々から気になってたから声をかけてみたの」
「えーと、気に障るの間違いじゃ……小鳩さんたちのこと不要に眺めていたわけですし」
「月舘さんってさ、正直者なんだね。大丈夫だよ、私もあの二人もそういうの気にしない質だから。それより――」
顔をグイと近づけた小鳩さんがマジマジと見つめてくる。
もっと周囲に騒がれるかと思ったが思った以上に反応がない……。
「顔色が良くないわ。何か困っている? 例えば、先生に意地悪されたとか」
「ど、どうして……そう思うの?」
「さっき、話しているの見たから。月舘さん素直だから、先生に命令されたらまんま従いちゃいそうだし。間違いなく目をつけられているよ」
初めて会話してみて分かった。
小鳩さんの魅力は外見だけじゃない。
内面から、かもしだされるミステリアスな雰囲気は惹きつけられるものがある。
くわえて色々と鋭い。
話せば話すほど、ボロが出る私の異質さに気づいてしまうおそれがある。
「余計なお節介かもだけど、何かトラブったら気兼ねなく相談してね。できるだけ力になるから」
「ありがとう、気持ちだけ受け取ります。私は大丈夫だから……そういう扱い慣れているし」
「それ慣れちゃいけないよ、月舘さん。貴女の価値は周りの判断で決まるわけじゃないし、自分の価値を決められるのは世界でたった一人、自身だけだよ……だから悲観的に自己否定しないで、ね?」
「それ、言うは易く行うは難しです。私にとって」
「そ、そうだよね。なんか偉そうな事言ってゴメンね。月舘さんのこと、まだよく分かっていないけど……心配なの、貴女のこと」
「どうして、小鳩さんが気に掛けるんですか? 今までお互いと話すらしたことのない関係なのに」
「あの、修学旅行のスケジュールのことで――」
「無理無理、今日の放課後は部活あるし。悪いけど、他の人と適当に決めておいて」
氷下さんは私に呼ばれて露骨に表情を曇らせた。
毎度のことでもう慣れているが彼女は極度のめんどくさがりで、何でもかんでも他者に押しつけようとする。
それだけならまだマシだが、他者に頼んでおいて自分の意にそぐわない結果になると彼女は難癖をつけてくる。
その性格が災いして氷下さんと好んで班を組もうする人はいない。
所詮は余り者同士で結成された班、私を含め灰汁の強い人間ばかりだ。
班長を押し付けられた感は否めないが、任された以上は何とかしてあげたい気持ちはある。
まあ、想いだけなんだけどね……。
私に統率力なんて期待したところで期待に応えられないのは目に見えている。
真のチームワーク、団結力を生み出せるのは疑う余地なくクラスカースト上位である彼女たちぐらいだろう。
廊下側席の方を私はチラッと見てみた。
まだ、昼休みというのもあり教室には点々とクラスメイトがいる。
その中で談笑している彼女たち三人の姿は一際眩く、カリスマ性という強烈な個性の圧を放出し続けている。
「す、スゴイ……モデル雑誌の表紙みたいな感じになっちゃってる」
地下アイドルとして活躍している、小鳩さんを中心としたグループ。
後の二人はアイドルではないものの、やはり顔立ちやスタイルが良い。
類は友を呼ぶというがまさにそれだ。
三人はいつも一緒にいるのに、適度な距離感を保ってお互いに上手く接しているような気がする。
「あっ……へっ?」
しまったあー、完全に見入ってしまっていた。
おかげで、小鳩さんと視線が合ってしまった。
普通に気持ち悪がられたらどうしようと不安がる私に対し、嫌悪するどころか微笑して手を振ってくれている。
天使だ、天使がおられるよ~、そこまでされたらこっちの方が恥ずかしい。
羞恥心に負けた私は手にしていた修学旅行の栞を開いて顔をうずめてしまった。
あり得ない、あの小鳩さんが私に?
もしかしたら、手を振ったのはちょっとコッチに来いという呼び出しではないのか?
様々な憶測が頭の中で飛び交う。
「月舘さん、ハロハロ。ごめんね~、いきなりで驚かせちゃった?」
「こ、な鳩しゃん!」
不意を突く、追撃。
透き通った絹肌に長いまつ毛、艶やかなロング髪はとても柔らかそうで触りたくなる。
間近で見ると我々とは格段に違う美の塊が、すぐそばに来ている。
この状況でテンパるなというのは無理だ。
どう対応していいのか?焦って思考が上手く回らない。
「クスッ、そんなに緊張しないで。前々から気になってたから声をかけてみたの」
「えーと、気に障るの間違いじゃ……小鳩さんたちのこと不要に眺めていたわけですし」
「月舘さんってさ、正直者なんだね。大丈夫だよ、私もあの二人もそういうの気にしない質だから。それより――」
顔をグイと近づけた小鳩さんがマジマジと見つめてくる。
もっと周囲に騒がれるかと思ったが思った以上に反応がない……。
「顔色が良くないわ。何か困っている? 例えば、先生に意地悪されたとか」
「ど、どうして……そう思うの?」
「さっき、話しているの見たから。月舘さん素直だから、先生に命令されたらまんま従いちゃいそうだし。間違いなく目をつけられているよ」
初めて会話してみて分かった。
小鳩さんの魅力は外見だけじゃない。
内面から、かもしだされるミステリアスな雰囲気は惹きつけられるものがある。
くわえて色々と鋭い。
話せば話すほど、ボロが出る私の異質さに気づいてしまうおそれがある。
「余計なお節介かもだけど、何かトラブったら気兼ねなく相談してね。できるだけ力になるから」
「ありがとう、気持ちだけ受け取ります。私は大丈夫だから……そういう扱い慣れているし」
「それ慣れちゃいけないよ、月舘さん。貴女の価値は周りの判断で決まるわけじゃないし、自分の価値を決められるのは世界でたった一人、自身だけだよ……だから悲観的に自己否定しないで、ね?」
「それ、言うは易く行うは難しです。私にとって」
「そ、そうだよね。なんか偉そうな事言ってゴメンね。月舘さんのこと、まだよく分かっていないけど……心配なの、貴女のこと」
「どうして、小鳩さんが気に掛けるんですか? 今までお互いと話すらしたことのない関係なのに」
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