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禁反魂の法理
ゲノムスコープ
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線路に沿って加速するビュンビュンライナー。
面白い事に車輪もなく、レールは一本しかないのに物凄い速度で疾走している。
見た目はSLに近いのに、走りはどちらかいうとリニアモーターカーのようだ。
夢と希望を乗せて走る、そんな感じでなく速さと機能性を追求したマシンにしか見えなくなってきた。
「不味い! どげんかせんと、間に合わなくなる。ハーン! 手伝え」
「しゃないのうー、どうしてコイツらと乗り合いなとんじゃ!?」
「つべこべ言わず、やれや珍味」
「なんじゃワレ!」
「ハァア――ン!!」
「わーた、わーた、そうカッカすんなや。後でじっくり聞かせてもらうわ。んじゃ、一仕事するかの~。轡式忍術! 衣舞吹雪」
最後尾に座ったままハーンが指で印を結ぶと彼の背後から細やかなパン粉が宙を舞い出した。
どう見てもゴミを撒き散らかしているようにしか見えなく、迷惑この上ない技だ。
さらに香ばしい匂いがする生暖かい風が辺りに漂う。
意味があるのか? 疑いたくもなるがライナーの速度は確かに上昇している。
効果については分かった。
しかし、これこそが忍術だ! と言われも容認できない……そもそもが私のイメージする忍術とはかけ離れている。
なんか……こう、もっとあるよね?
ガシャ! ガシャガシャガシャ!!
鎖を引きずるような、または金属がぶつかり合ったような音が風に乗って聞こえてきた。
初めは何の音なのか? 見当も及ばず焦燥感だけが胸中を駆け巡る。
集中し耳を澄ませていると音は一定のリズムを刻んでいるのが分かる。
このリズム感――間違いなく行進だ! それも十や二十ではない。
もっと巨大でもっと壮大、数百あるいは千以上の大軍行。
飛行するロッドの高度上げてようやく、何が迫ってきているのか判明した。
住宅地を埋め尽くすがごとく広がっていく一面の紫は甲冑を身にまとう戦士たち。
一体、どこの軍勢なのだろうと問うのは、愚の骨頂だ。
決っている、サクリファイスから出てきた軍勢ほかならない。
最悪なことに奴らは、私達がいる方角に集結してきている。
侵入者は容赦なく排除するというわけか。
「しんがりは、私がやるわ。皆は、なんとか逃げ切って!!」
「はあ? お前どういう――」
「分かった! 頼りにするけーの、姉ちゃん」
ゆるキャラたちを乗せたライナーを見送り、私は住宅地の方角へロッドを飛ばした。
どれだけいるのだと言うのか!? 無限に湧き続けている甲冑戦士たちを眺めながら私は、対策を練った。
全員を始末する事自体は不可能ではない……が無理がある。
ここは観光地である遺跡のど真ん中だ。
もし、遺跡が国宝だったり世界遺産だった場合、超級や上級の魔法で遺跡を無闇に傷つけるのは取り返しのつかない事になる。
不用意に襲撃の芽を摘み取れない以上、大将首だけを狙った方が無難だ。
こういった集団には意思の統率をはかる指揮官クラスの魔物が必ずいるはず。
ソイツを見つけて一網打尽にすれば、この集団は隊としての機能を失う。
名称 マテリアルソルジャー
種族 アンデッド
弱点 光属性
備考 錬金術で生み出された亡者。術者の命には絶対で、命ある者に襲い掛かってくる。マテリアルリーダーによって常時管理されている。
さて、どうしたものか……電撃戦で確実に大打撃を与えるのには、このバイトリーダーならぬ、アテリアルリーダーってのを探し出さないといけない。それも怒涛の勢いで押し寄せている数の中からだ……。
仕方ない、使うのは気が進まないけれどアレをやってみるか?
「神眼、顕現せよ! ゲノムスコープ」
金色の瞳にカレイドスコープのような光の模様が浮き上がる。
この状態時に見た生物は姿かたちに関わらず、遺伝子レベルで見分けることができる。
ここまで、敵がひしめき合っている場合、魔力感知では個体判別はできない。
容姿をあてに探すにしても、ソルジャーとリーダーは似通い過ぎているみたいだし、もとからリーダーがどんな感じの魔物なのか、私も知らない。
そんな時にゲノムスコープと命名したこの能力は活躍する。
あまり長い時間の使用は厳禁だけれど、これなら、どれほど距離が離れていても群れの中から一体だけ異なる遺伝子を持つ魔物を捕捉できる。
「居た! 発動、フレアスターマイン!!」
マテリアルリーダーを見つけた。
私は、地上に急降下し魔物の群れに飛び込む用意をする。
攻撃算段はすでに整えてある……エアーブラストで加速するのと同時に前方に火属性のエンチャント魔法ヒートブローを展開する。
複数の魔法を一辺に用いる攻撃方法。
この魔法の着想自体はハーンのフライボンバーから得た。
簡潔に言えばただの体当たりになる。
ただ、尋常はない速度で飛翔するソレはロケット砲と何ら違わない威力を誇る。
ゆえに魔物の山をも引き裂くように割って入っていける。
空気抵抗によりヒートブローから熱線が放射状に伸びてソルジャーたちの甲冑を焼き焦がす。
もはや、私のロッドを止められる敵などいない。
進行方向を塞ごうものならば、轢き飛ばし突き進んでいく。
その向こう側にいるリーダーを目掛けて――
間近で見てもリーダーの容姿は、他と見分けがつかなかった。
唯一、見分ける方法は首にぶら下げているプレート。
四方が整った真四角のそれを装備しているのが奴らのリーダーだ。
早速、体当たりをぶちかましてみると果敢にも、リーダーは受け止めようとしてきた。
とはいってみても、耐えられたのはほの僅かな時間、エアーブラストの威力を少し強めてみたらボーリングの玉のように転がり仲間を次々に巻き込み転倒させていく。
この状況……ドミノ倒しだ。
意図していたものとは違った結果になったものの、足止めには充分な成果が出た。
「これは戦利品として貰っていくよ」
リーダーが転倒した際にプレートが首から外れ、私のロッドの先端に偶然引っ掛かった。
ドロップアイテムも入手したことだし、これ以上はここに長居する理由もない。
再度、上空に浮上し私も港に向かうことにした。
港が近くなるにつれて、巨大な黒影が視界に入ってきた。
大砲がある形からして軍艦みたいな感じがする。
そう、あくまで感じ。船の事に疎い私には、何が何だかさっぱりだ。
後で、アーカイブスを閲覧しなければ……。
「あっ! モチさん」
「無事だったんか!! ほんに良かったわ~ご苦労さんよ」
港に到着したところで、停泊中の船に乗り込もうとする皆と合流した。
オイスタ達からねぎらいの言葉をかけられると、妙な気分になる……知らない間に和解が成立していたせいかもしれない。
皆が縄梯子に登っていく中、バーナードだけが、やけに静かになっていた。
いきなり大人しくされると変に気になってしまう。
気にはなるけど、一々聞くのも何だか億劫になってくる。
そう言えば、ここに入る時も、かなり否定的だった。
それが関係しているのかも知れない。
甲板にあがると、映画とかで見た海賊船を彷彿させる空間が広がっていた。
薄汚れたマストにギシギシ音を立てる床、これで大勢の乗組員が酒盛りでもしていれば完璧なんだけど、どうやら人手不足らしい。
甲板には、血色の悪い痩せた少年が一人で荷を運んでいるだけだ。
「ウツロ、一人け? 船長はどこじゃ?」
船長の居場所をハーンが尋ねると少年と無言で船室への扉を指差した。
ついてくるように促すハーンに伴い、船長室へ足を運ぶ。
建付けの悪い扉をノックし開くと、そこで角の付いたバイキングメットを被った男と丸眼鏡をかけた背の高い男性に出会った。
面白い事に車輪もなく、レールは一本しかないのに物凄い速度で疾走している。
見た目はSLに近いのに、走りはどちらかいうとリニアモーターカーのようだ。
夢と希望を乗せて走る、そんな感じでなく速さと機能性を追求したマシンにしか見えなくなってきた。
「不味い! どげんかせんと、間に合わなくなる。ハーン! 手伝え」
「しゃないのうー、どうしてコイツらと乗り合いなとんじゃ!?」
「つべこべ言わず、やれや珍味」
「なんじゃワレ!」
「ハァア――ン!!」
「わーた、わーた、そうカッカすんなや。後でじっくり聞かせてもらうわ。んじゃ、一仕事するかの~。轡式忍術! 衣舞吹雪」
最後尾に座ったままハーンが指で印を結ぶと彼の背後から細やかなパン粉が宙を舞い出した。
どう見てもゴミを撒き散らかしているようにしか見えなく、迷惑この上ない技だ。
さらに香ばしい匂いがする生暖かい風が辺りに漂う。
意味があるのか? 疑いたくもなるがライナーの速度は確かに上昇している。
効果については分かった。
しかし、これこそが忍術だ! と言われも容認できない……そもそもが私のイメージする忍術とはかけ離れている。
なんか……こう、もっとあるよね?
ガシャ! ガシャガシャガシャ!!
鎖を引きずるような、または金属がぶつかり合ったような音が風に乗って聞こえてきた。
初めは何の音なのか? 見当も及ばず焦燥感だけが胸中を駆け巡る。
集中し耳を澄ませていると音は一定のリズムを刻んでいるのが分かる。
このリズム感――間違いなく行進だ! それも十や二十ではない。
もっと巨大でもっと壮大、数百あるいは千以上の大軍行。
飛行するロッドの高度上げてようやく、何が迫ってきているのか判明した。
住宅地を埋め尽くすがごとく広がっていく一面の紫は甲冑を身にまとう戦士たち。
一体、どこの軍勢なのだろうと問うのは、愚の骨頂だ。
決っている、サクリファイスから出てきた軍勢ほかならない。
最悪なことに奴らは、私達がいる方角に集結してきている。
侵入者は容赦なく排除するというわけか。
「しんがりは、私がやるわ。皆は、なんとか逃げ切って!!」
「はあ? お前どういう――」
「分かった! 頼りにするけーの、姉ちゃん」
ゆるキャラたちを乗せたライナーを見送り、私は住宅地の方角へロッドを飛ばした。
どれだけいるのだと言うのか!? 無限に湧き続けている甲冑戦士たちを眺めながら私は、対策を練った。
全員を始末する事自体は不可能ではない……が無理がある。
ここは観光地である遺跡のど真ん中だ。
もし、遺跡が国宝だったり世界遺産だった場合、超級や上級の魔法で遺跡を無闇に傷つけるのは取り返しのつかない事になる。
不用意に襲撃の芽を摘み取れない以上、大将首だけを狙った方が無難だ。
こういった集団には意思の統率をはかる指揮官クラスの魔物が必ずいるはず。
ソイツを見つけて一網打尽にすれば、この集団は隊としての機能を失う。
名称 マテリアルソルジャー
種族 アンデッド
弱点 光属性
備考 錬金術で生み出された亡者。術者の命には絶対で、命ある者に襲い掛かってくる。マテリアルリーダーによって常時管理されている。
さて、どうしたものか……電撃戦で確実に大打撃を与えるのには、このバイトリーダーならぬ、アテリアルリーダーってのを探し出さないといけない。それも怒涛の勢いで押し寄せている数の中からだ……。
仕方ない、使うのは気が進まないけれどアレをやってみるか?
「神眼、顕現せよ! ゲノムスコープ」
金色の瞳にカレイドスコープのような光の模様が浮き上がる。
この状態時に見た生物は姿かたちに関わらず、遺伝子レベルで見分けることができる。
ここまで、敵がひしめき合っている場合、魔力感知では個体判別はできない。
容姿をあてに探すにしても、ソルジャーとリーダーは似通い過ぎているみたいだし、もとからリーダーがどんな感じの魔物なのか、私も知らない。
そんな時にゲノムスコープと命名したこの能力は活躍する。
あまり長い時間の使用は厳禁だけれど、これなら、どれほど距離が離れていても群れの中から一体だけ異なる遺伝子を持つ魔物を捕捉できる。
「居た! 発動、フレアスターマイン!!」
マテリアルリーダーを見つけた。
私は、地上に急降下し魔物の群れに飛び込む用意をする。
攻撃算段はすでに整えてある……エアーブラストで加速するのと同時に前方に火属性のエンチャント魔法ヒートブローを展開する。
複数の魔法を一辺に用いる攻撃方法。
この魔法の着想自体はハーンのフライボンバーから得た。
簡潔に言えばただの体当たりになる。
ただ、尋常はない速度で飛翔するソレはロケット砲と何ら違わない威力を誇る。
ゆえに魔物の山をも引き裂くように割って入っていける。
空気抵抗によりヒートブローから熱線が放射状に伸びてソルジャーたちの甲冑を焼き焦がす。
もはや、私のロッドを止められる敵などいない。
進行方向を塞ごうものならば、轢き飛ばし突き進んでいく。
その向こう側にいるリーダーを目掛けて――
間近で見てもリーダーの容姿は、他と見分けがつかなかった。
唯一、見分ける方法は首にぶら下げているプレート。
四方が整った真四角のそれを装備しているのが奴らのリーダーだ。
早速、体当たりをぶちかましてみると果敢にも、リーダーは受け止めようとしてきた。
とはいってみても、耐えられたのはほの僅かな時間、エアーブラストの威力を少し強めてみたらボーリングの玉のように転がり仲間を次々に巻き込み転倒させていく。
この状況……ドミノ倒しだ。
意図していたものとは違った結果になったものの、足止めには充分な成果が出た。
「これは戦利品として貰っていくよ」
リーダーが転倒した際にプレートが首から外れ、私のロッドの先端に偶然引っ掛かった。
ドロップアイテムも入手したことだし、これ以上はここに長居する理由もない。
再度、上空に浮上し私も港に向かうことにした。
港が近くなるにつれて、巨大な黒影が視界に入ってきた。
大砲がある形からして軍艦みたいな感じがする。
そう、あくまで感じ。船の事に疎い私には、何が何だかさっぱりだ。
後で、アーカイブスを閲覧しなければ……。
「あっ! モチさん」
「無事だったんか!! ほんに良かったわ~ご苦労さんよ」
港に到着したところで、停泊中の船に乗り込もうとする皆と合流した。
オイスタ達からねぎらいの言葉をかけられると、妙な気分になる……知らない間に和解が成立していたせいかもしれない。
皆が縄梯子に登っていく中、バーナードだけが、やけに静かになっていた。
いきなり大人しくされると変に気になってしまう。
気にはなるけど、一々聞くのも何だか億劫になってくる。
そう言えば、ここに入る時も、かなり否定的だった。
それが関係しているのかも知れない。
甲板にあがると、映画とかで見た海賊船を彷彿させる空間が広がっていた。
薄汚れたマストにギシギシ音を立てる床、これで大勢の乗組員が酒盛りでもしていれば完璧なんだけど、どうやら人手不足らしい。
甲板には、血色の悪い痩せた少年が一人で荷を運んでいるだけだ。
「ウツロ、一人け? 船長はどこじゃ?」
船長の居場所をハーンが尋ねると少年と無言で船室への扉を指差した。
ついてくるように促すハーンに伴い、船長室へ足を運ぶ。
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