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幻影抱く灰色の都
上陸作戦
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正門に向かう為に、ミノ船長は迷わず海路を選択した。
理由としては、大河を下降していけば正門に最短ルートで辿り着けること。
門の修繕にはなるべく多くの人手が必要とする為、団体でかつ時間もかけずに移動するが好ましいこと。
もはや、船での水上移動が選択されるのは必然だった。
水辺は不死の魔物に襲われるリスクはないと豪語する船長。
確か、昨日もハーンたちがそんなことを言っていた気がする。
詳しく尋ねてみると、魔物たちは何故か水辺を嫌うそうだ。
そこに例外はなく、死人を統率しているとされるペイルライダーですら同様の反応を見せるという。
それと、高い場所にも来れないというか、階段が上手く登れないらしい。
なんとも間の抜けた話なんだけど、メランコさんたちはそのおかげでソルジャーたちから襲撃を受けずに済んでいるそうだ。
この習性を活かし、時計塔班は安置を確保しつつ調査にあたっているはず。
魔物の対策は万全として、こちらはこちらで新たな問題が浮上していた。
「港がないんですか!?」トルテの声が甲板に響く。上手く説明できないオイスタが、どうしたものかと困惑の表情を見せている。
「どうしたの?」それとなく近づいて私は、二人の話を聞いてみることにした。
でなければ、普段から寡黙な彼が余計に口を閉ざしてしまうと思えたからだ。
「モチさん。どうやら、私が入ってきた門の近辺には、この船を停泊させる場所がないみたいなんです! それを皆さん知っていて私たちに黙っていたんですよ。信じられますか? 陸に上がれないなんて!」
「だけん! 近場に接岸して小舟で岸まで行くわな。そげな、噛みつかれても困るわい」
「オイスタさん、私の荷物がどれだけ重量あるのか? 試しに持ってみます? きっと、小舟なんて軽く沈んじゃいますよ」
「アホらしか、女子が背負える程度のもんで船が沈没するなんて笑い話にもならんたい」
どうして、こうなった……。
それが私の脳裏に真っ先に浮かんだ言葉だった。
き、気のせいだろうか? 私が介入したことで二人の関係が余計にこじれてしまっているのは……それは、ともかくオイスタはとんだとばっちりを受けているようにも見える。
乗船してからのトルテはどこか様子がおかしい。
「フン!! ふぬんぬ――んううう、があっ!」
オイスタの腰が逝った。
トルテのバックパックを背負い込もうと果敢にチャレンジしたのに関わらず、背負うどころか持ち上げる事すらできずに敗北を喫した。
これから、重労働をしようというのに、この男は何をやっているんだ。
生まれたばかりの小鹿のように、全身をプルプルさせながら立ち上がろうとする雄姿は、具合のヤバさだけがひしひしと伝わってくる。
「本当ね……今回だけだから」
致し方無いと癒しの指輪を使用する。私は整体師ではなく魔導士なんだけど……。
本来なら、こんな風に使いたくはないのだけど、二人の巻き沿いをくらって船長に叱責されるのは勘弁だ。
「モチさん、オイスタさん、すみませんでした!! 自身の何気ない一言で大事になってしまうなんて私、全然考えてなくて……」
トルテは誰に言われるでもなく、自らから頭を下げてきた。
この辺りが、この年頃の女の子とは違って見えてくる。妙に大人びているというか、分相応を弁えているなといった感じの印象がある。
ならばこそ、私は彼女に言わなければならない。
「どうしてオイスタと揉めていたの? 門を修理するだけなんだから、トルテにはここで待機してて貰っても良いんだよ。無理して小舟に乗っても大変でしょ」
「それは……駄目です! モチさんや船長さんを手伝うのが私の役目だからです。それに重量オーバーだからといってこのバッグを置いていくわけにはいきません。この中には、大切な商売道具が入っているです、それをなくしてしまったりしたらシャレになりませんから」
「ガリアブレーヴァだっけ? グリッドアーツも手放せないというわけだよね」
「はい! 勿論です」
「それで、船長からいくらで雇われたの?」
「はひっ! なああなん事ですかぁ~」
やっぱりか……本当に抜け目がない。
図星を突かれた彼女の目は完全に泳いでいた。
無論、どういった感じで商いを行っていくのかなんて、トルテ自身の采配で取り決めることであって顧客の私には関係のない話だ。
しかし、二重契約となると話は変わる。
トルテは現状、私と同行しサクリファイス攻略の手助けをして貰うことになっている。
いくら、船長たちと関係が良好だからといっても彼らと私との目的は全くの別物と言える。
そんな事をすれば、いずれ支障をきたすのは明白。
誰かしらがキケンにさらされる可能性も否定できない。
今後、彼女には自重して貰うか、契約解除するしか方法はないと思う。
「トルテにはそれなりの事情があるとは思うけど、二重契約は無理があるよ。少なくとも船長の依頼を受けるのであれば、私との契約は解消して欲しい。私も、色々と複雑な事情を抱えて此処に来ているから、周囲に情報を漏洩させてしまうのだけは、なんとしても避けたいの。だから、信用に足る人物でないとすべてを打ち明かせない、安心して任せられないんだ。」
「モチさん……ごめん……なさい。もう少しだけ、時間をください。必ず答えますので……」
消え入りそうな声をだす彼女に、私は無言で頷く。
それが、私ができる精一杯なのだから……。
それでも、心の奥底にはモヤモヤするモノがあった。
それは彼女に対するものではなく、自身の判断が正しかったのかという疑念から生じていた。
絶対に何かを見落としている、不吉な心の囁きが私の精神を蝕んでくる。
できれば、杞憂であれば良いのだけど――――
「面舵一杯、間もなく接岸する、錨を下ろせ。小舟の準備をしろ!!」
船舵を回す船長が叫ぶと、船上が慌ただしくなってきた。
急いで錨を下ろす準備に取り掛かるトルテ。
ただでさえ人数が少ないというのに、ベテラン船員であるオイスタは自爆したまま錨を下ろしていないのだから、私たちの負担は半端ない。
私もウツロ君と一緒にデッキ上に収納されていた小舟を取りだし上陸に備えた。
取り出した二艘の小舟のうち一艘は私に割り当てられた。
そうでもしなければ、トルテを陸まで連れていけないからだ。
正確には彼女の荷物なのだけど、それはどうでもいい。
縄梯子を降りていく船乗りたちを横目に、私とトルテはフロートの魔法でさっさと小舟に移動していく。
このまま、歩いて水辺を横断できれば最高だと想像するも、残念ながらフロートで横移動するには、エアーブラストも同時発動させ飛んでいくしかない。
私、一人なら可能でも二人分の魔力操作は不可能。
そこで、この小舟君が活躍するというわけだ。
やり方は極めて簡単、普段ロッドに使っている飛行魔法をそのまま船体に応用するだけ!
一瞬にして陸に到着する感じだ。
ただし、道中何が起きても一切の保証はない。
例えば、加速し過ぎて船体が空を飛んだり、あるいは天に向かって空中分解しても……。
「困った時は、ダウンバーストで一発解決さ!!」
「何も、解決してないじゃないですか!? 思いっきり水面に落下してずぶ濡れなんですけど。というか! 船! 船が木端微塵になっちゃいましたよ……」
「いやー、なんかゴメンね。勢いを抑えきれないまま、陸に降ろしたら不味いと思ってね! エアーブローで濡れた服は乾かすから」
かくして私達は無事? 上陸に成功した。
トルテの荷は事前に風魔法で保護しておいて良かったとつくづく思う。
理由としては、大河を下降していけば正門に最短ルートで辿り着けること。
門の修繕にはなるべく多くの人手が必要とする為、団体でかつ時間もかけずに移動するが好ましいこと。
もはや、船での水上移動が選択されるのは必然だった。
水辺は不死の魔物に襲われるリスクはないと豪語する船長。
確か、昨日もハーンたちがそんなことを言っていた気がする。
詳しく尋ねてみると、魔物たちは何故か水辺を嫌うそうだ。
そこに例外はなく、死人を統率しているとされるペイルライダーですら同様の反応を見せるという。
それと、高い場所にも来れないというか、階段が上手く登れないらしい。
なんとも間の抜けた話なんだけど、メランコさんたちはそのおかげでソルジャーたちから襲撃を受けずに済んでいるそうだ。
この習性を活かし、時計塔班は安置を確保しつつ調査にあたっているはず。
魔物の対策は万全として、こちらはこちらで新たな問題が浮上していた。
「港がないんですか!?」トルテの声が甲板に響く。上手く説明できないオイスタが、どうしたものかと困惑の表情を見せている。
「どうしたの?」それとなく近づいて私は、二人の話を聞いてみることにした。
でなければ、普段から寡黙な彼が余計に口を閉ざしてしまうと思えたからだ。
「モチさん。どうやら、私が入ってきた門の近辺には、この船を停泊させる場所がないみたいなんです! それを皆さん知っていて私たちに黙っていたんですよ。信じられますか? 陸に上がれないなんて!」
「だけん! 近場に接岸して小舟で岸まで行くわな。そげな、噛みつかれても困るわい」
「オイスタさん、私の荷物がどれだけ重量あるのか? 試しに持ってみます? きっと、小舟なんて軽く沈んじゃいますよ」
「アホらしか、女子が背負える程度のもんで船が沈没するなんて笑い話にもならんたい」
どうして、こうなった……。
それが私の脳裏に真っ先に浮かんだ言葉だった。
き、気のせいだろうか? 私が介入したことで二人の関係が余計にこじれてしまっているのは……それは、ともかくオイスタはとんだとばっちりを受けているようにも見える。
乗船してからのトルテはどこか様子がおかしい。
「フン!! ふぬんぬ――んううう、があっ!」
オイスタの腰が逝った。
トルテのバックパックを背負い込もうと果敢にチャレンジしたのに関わらず、背負うどころか持ち上げる事すらできずに敗北を喫した。
これから、重労働をしようというのに、この男は何をやっているんだ。
生まれたばかりの小鹿のように、全身をプルプルさせながら立ち上がろうとする雄姿は、具合のヤバさだけがひしひしと伝わってくる。
「本当ね……今回だけだから」
致し方無いと癒しの指輪を使用する。私は整体師ではなく魔導士なんだけど……。
本来なら、こんな風に使いたくはないのだけど、二人の巻き沿いをくらって船長に叱責されるのは勘弁だ。
「モチさん、オイスタさん、すみませんでした!! 自身の何気ない一言で大事になってしまうなんて私、全然考えてなくて……」
トルテは誰に言われるでもなく、自らから頭を下げてきた。
この辺りが、この年頃の女の子とは違って見えてくる。妙に大人びているというか、分相応を弁えているなといった感じの印象がある。
ならばこそ、私は彼女に言わなければならない。
「どうしてオイスタと揉めていたの? 門を修理するだけなんだから、トルテにはここで待機してて貰っても良いんだよ。無理して小舟に乗っても大変でしょ」
「それは……駄目です! モチさんや船長さんを手伝うのが私の役目だからです。それに重量オーバーだからといってこのバッグを置いていくわけにはいきません。この中には、大切な商売道具が入っているです、それをなくしてしまったりしたらシャレになりませんから」
「ガリアブレーヴァだっけ? グリッドアーツも手放せないというわけだよね」
「はい! 勿論です」
「それで、船長からいくらで雇われたの?」
「はひっ! なああなん事ですかぁ~」
やっぱりか……本当に抜け目がない。
図星を突かれた彼女の目は完全に泳いでいた。
無論、どういった感じで商いを行っていくのかなんて、トルテ自身の采配で取り決めることであって顧客の私には関係のない話だ。
しかし、二重契約となると話は変わる。
トルテは現状、私と同行しサクリファイス攻略の手助けをして貰うことになっている。
いくら、船長たちと関係が良好だからといっても彼らと私との目的は全くの別物と言える。
そんな事をすれば、いずれ支障をきたすのは明白。
誰かしらがキケンにさらされる可能性も否定できない。
今後、彼女には自重して貰うか、契約解除するしか方法はないと思う。
「トルテにはそれなりの事情があるとは思うけど、二重契約は無理があるよ。少なくとも船長の依頼を受けるのであれば、私との契約は解消して欲しい。私も、色々と複雑な事情を抱えて此処に来ているから、周囲に情報を漏洩させてしまうのだけは、なんとしても避けたいの。だから、信用に足る人物でないとすべてを打ち明かせない、安心して任せられないんだ。」
「モチさん……ごめん……なさい。もう少しだけ、時間をください。必ず答えますので……」
消え入りそうな声をだす彼女に、私は無言で頷く。
それが、私ができる精一杯なのだから……。
それでも、心の奥底にはモヤモヤするモノがあった。
それは彼女に対するものではなく、自身の判断が正しかったのかという疑念から生じていた。
絶対に何かを見落としている、不吉な心の囁きが私の精神を蝕んでくる。
できれば、杞憂であれば良いのだけど――――
「面舵一杯、間もなく接岸する、錨を下ろせ。小舟の準備をしろ!!」
船舵を回す船長が叫ぶと、船上が慌ただしくなってきた。
急いで錨を下ろす準備に取り掛かるトルテ。
ただでさえ人数が少ないというのに、ベテラン船員であるオイスタは自爆したまま錨を下ろしていないのだから、私たちの負担は半端ない。
私もウツロ君と一緒にデッキ上に収納されていた小舟を取りだし上陸に備えた。
取り出した二艘の小舟のうち一艘は私に割り当てられた。
そうでもしなければ、トルテを陸まで連れていけないからだ。
正確には彼女の荷物なのだけど、それはどうでもいい。
縄梯子を降りていく船乗りたちを横目に、私とトルテはフロートの魔法でさっさと小舟に移動していく。
このまま、歩いて水辺を横断できれば最高だと想像するも、残念ながらフロートで横移動するには、エアーブラストも同時発動させ飛んでいくしかない。
私、一人なら可能でも二人分の魔力操作は不可能。
そこで、この小舟君が活躍するというわけだ。
やり方は極めて簡単、普段ロッドに使っている飛行魔法をそのまま船体に応用するだけ!
一瞬にして陸に到着する感じだ。
ただし、道中何が起きても一切の保証はない。
例えば、加速し過ぎて船体が空を飛んだり、あるいは天に向かって空中分解しても……。
「困った時は、ダウンバーストで一発解決さ!!」
「何も、解決してないじゃないですか!? 思いっきり水面に落下してずぶ濡れなんですけど。というか! 船! 船が木端微塵になっちゃいましたよ……」
「いやー、なんかゴメンね。勢いを抑えきれないまま、陸に降ろしたら不味いと思ってね! エアーブローで濡れた服は乾かすから」
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