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幻影抱く灰色の都
エクスピエイションズ・ルーラー
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実物を目の当たりにして小さく息を飲む。
これが、難攻不落と謳われた城塞。
魔都のパンデモニウム。
サクリファイス城の外周を目にして改めて、状況が芳しくないことに気づかされる。
痛烈なダメージだった。
何なんだ……あの外堀は。
幅広い深淵の大穴、広大な面積を支配する闇が城全体を囲っているではないか!
駄目だ……これでは城内に侵入する手立てがない。
あの大穴は自然にできたものではない。
魔力の流れを感知してみたが、完全に外部からのマナを吸収し遮断している。
これでは、魔法を放っても完全無効化されてしまう。
さらに、最悪なのは城に入口らしき場所が見当たらないことだ。
入場口など元より無いのかもしれない。
なぜなら、ディングリングは空間転移魔法ディメンション・ループが使える。
私には使用不可能な魔法だ。
そもそも魔法として一般的に普及しているものではなく、あの魔女が独自で作成した外法になる。
状況を見る限り、完全な詰み状態なのだが、皆はコレをどう捉えているのだろう。
「どうしたの? 君たち、道が閉ざされたの知って絶望したかな? まぁ、そうなるよね。私もそうだった……ここに帰り路なんて存在しないんだよ。立ち入ったら最後、後は亡者どもから逃れて過ごすか、奴らの仲間入りをするかだ。私はね、これ以上の被害者を出してはいけないと思っている。ゆえに管理者を名乗り、外部の者たちと交渉している。魔導士、君は都の正門を破壊した――それが、どれほど周囲に実害をもたらすのか考えてみたのかい?」
「そ、それは……」
「メランコ女史、失礼ながら言わせて貰いますが流石に性急すぎでは? 聞けば、彼女とて望んでそうしたわけではないのですから、責任をすべて押し付けるのはいいかがものかと。それに……ワタシの仮説が正しければ、城に入る通路は存在するはずです。よくよく考えてみて下さい、出入口がないのは勝手が悪すぎです、それこそ、城としての機能が損なわれているという事になるでしょう。そもそも夜になって街中を徘徊する不死の戦士たちがどこからやってくるのか説明がつきません」
「真摯なのも結構だが何でも深く抱え込み過ぎるのは、お前さんの悪い癖だ。幸い、今ここにはこれだけの人数が揃っている。お前さんやヨーフだけではできなった事も、今なら実現できるのではないか?」
「学者、ミノ……少し、意地悪が過ぎた。すまないね、魔導士……でも、知っておいて貰いたかったんだ。ここは観光気分で来られるような場所じゃないって。訪れた者は贄となる、それこそサクリファイスと呼ばれる、この場所の所以さ」
マキャートさんとミノ船長が庇いだてしてくれたおかげで、メランコさんも何とか納得してくれたようだ。
とはいえ、彼女の指摘自体は的を外していない。
私は、新天地に浮かれすぎていたのだ……観光気分に浸っているのかどうであれ、そこまで事を大きく見据えていなかったのは紛れまなく事実だ。
志を重んじるであろう彼女からすれば、面白くもないのは必然。
そして、メランコさんの願いとは裏腹に、サクリファイス近辺は観光地化されているという皮肉。
彼女としても折り合いをつけようにも、行動範囲に制限がかかっている以上は想う様にできない。
何度も歯がゆい思いをしてきたのだろう。
私の勝手な憶測でしか語れない。
が、それまで我慢に我慢を重ねてきたものが今回の件で一気に爆発してしまったんだと思う。
ともあれ、この二人がいてくれて助かった。
マキャートさんはともかく船長の方は、無償なのに私たちに力を貸してくれる。
後から、何かを請求されるのではないかと若干の不安はあるけれど、今のところそんな素振りは微塵も見せてない。
まったくもって不思議だ、そういう徳の高い人も世界にはいるという事なのかな?
だから、余計にゴタゴタの巻き込んでしまって申し訳なく感じてしまう。
機会があれば、お礼をしたいと思う。
「おい! マキャート。これからどうすんだ? 現状、八方塞がりだ。何か考えがあると言っていたな? 状況を打破できんのか?」
「おうおう、偉そう言うのー、こん猫は。シビアになっても何もかわらんじゃろ」
「いんや、エビフリャをあの穴の中に放り込むことぐらいはできるぜ!」
「こっわ! ワレなら、ホンマにやりかねんわー」
「それなら、北西にある時計塔に向かうといい。私たちもそこを怪しんで何度か調査したが――」
「が? 何か問題があるのですね、女史」
表情を曇らせ言葉を詰まらせるメランコさんにマキャートさんは訊き返した。
調査したとは言っているが、上手くいかなかったのか? それともペイルライダーたちの妨害にでもあったのか?
彼女以外の全員が耳をかたむけ次の言葉を待った。
「ダークフレイム、闇魔法が塔の入り口を塞いでいて中には入れなかったのさ」
またか……ていうか! 思いっくそ本命じゃないですか、そこ!? 立ち入らせないようにしているのは、あからさまに何かを隠してある証拠だ。
これで、中に何もないのなら闇魔法のバリケード設置した奴は、途轍もないアホだと思う。
「だーくふれいむ? ですか。解除する方法がなかったんですよね」
「そうだ、あの炎は触れたモノを焼き尽くすまで消えないんだ。光属性のホーリーソングがあれば打ち消しは可能だが、聖法を使える人間なんてそうそういない。だから、そこで打ち止めになってしまったんだよ」
「あっ! それならバーナードさんに頼めばいいと思います」
左右の手の平を重ね合わせたトルテが、彼の方を向いた。
その当人は、先ほどから何故か、エビフライと組体操をしている。
飛行機か……何が楽しいのか共感できないし、なんで始めたのか理解もできない。
「すみません、カン違いでした」
常識の範疇を越えた行動を前に、前言を撤回するトルテ。
その瞳はまったくもって、凍てついている。
額に手をあて首を横に振るマキャートさんがメランコさんに告げる。
「……とにかく、時計塔に向かってみます。彼なら、魔法を解除できるかもしれない」
「マキャート君、ワシは正門の様子を見に行かねばならん。ここで一度、別行動になるが構わんかね?」
「はい、船長。時計にはワタシとバーナード、それに――――」
マキャートさんがこちらを一瞥したような気がした。
しかし、彼は私ではなく同行者にハーンを指名した。
「今は、気まずいかと思ってね。モチさん、彼のことで思う所はあるかもしれないけれど、悪く捉えないでほしい……アイツにはアイツなりの事情があるんだ」
独り言のように囁かれる彼の願い。
それを聞いた途端、私は思わず俯いてしまっていた。
誰かに気づかれないよう努めていたのに、そこまで露骨に態度として表れてしまっていたのか?
マキャートさんには、私がバーナードを避けている事をあっさりと見抜かれていた。
ここまで気を使われると、私としても気恥ずかしくなる。
かといって、すぐにバーナードと和解できるほど大人にはなれそうにない。
やはり、しばし時間が必要となる。
ここで別々に行動を取るのは、絶好の機会だと前向きに考えたほうが良い。
「それじゃ、メランコ。何か分かり次第、また報告に来る」
「ああ、魔物の討伐もできれば頼む」
「お前さん、まだ諦めていなかったのか!?」
お互いに顔を見合わせ、二ッと頬を緩める二人。
ミノさんたちがどういう間柄だったのか知らないし、無理に尋ねようとも思わない。
出会って、まだ日が浅いというもあるし、何でもかんでも知ろうとするのは無粋な気がしたからだ。
ホテル、リバーサイドを出て私達は二手に別れた。
これが、難攻不落と謳われた城塞。
魔都のパンデモニウム。
サクリファイス城の外周を目にして改めて、状況が芳しくないことに気づかされる。
痛烈なダメージだった。
何なんだ……あの外堀は。
幅広い深淵の大穴、広大な面積を支配する闇が城全体を囲っているではないか!
駄目だ……これでは城内に侵入する手立てがない。
あの大穴は自然にできたものではない。
魔力の流れを感知してみたが、完全に外部からのマナを吸収し遮断している。
これでは、魔法を放っても完全無効化されてしまう。
さらに、最悪なのは城に入口らしき場所が見当たらないことだ。
入場口など元より無いのかもしれない。
なぜなら、ディングリングは空間転移魔法ディメンション・ループが使える。
私には使用不可能な魔法だ。
そもそも魔法として一般的に普及しているものではなく、あの魔女が独自で作成した外法になる。
状況を見る限り、完全な詰み状態なのだが、皆はコレをどう捉えているのだろう。
「どうしたの? 君たち、道が閉ざされたの知って絶望したかな? まぁ、そうなるよね。私もそうだった……ここに帰り路なんて存在しないんだよ。立ち入ったら最後、後は亡者どもから逃れて過ごすか、奴らの仲間入りをするかだ。私はね、これ以上の被害者を出してはいけないと思っている。ゆえに管理者を名乗り、外部の者たちと交渉している。魔導士、君は都の正門を破壊した――それが、どれほど周囲に実害をもたらすのか考えてみたのかい?」
「そ、それは……」
「メランコ女史、失礼ながら言わせて貰いますが流石に性急すぎでは? 聞けば、彼女とて望んでそうしたわけではないのですから、責任をすべて押し付けるのはいいかがものかと。それに……ワタシの仮説が正しければ、城に入る通路は存在するはずです。よくよく考えてみて下さい、出入口がないのは勝手が悪すぎです、それこそ、城としての機能が損なわれているという事になるでしょう。そもそも夜になって街中を徘徊する不死の戦士たちがどこからやってくるのか説明がつきません」
「真摯なのも結構だが何でも深く抱え込み過ぎるのは、お前さんの悪い癖だ。幸い、今ここにはこれだけの人数が揃っている。お前さんやヨーフだけではできなった事も、今なら実現できるのではないか?」
「学者、ミノ……少し、意地悪が過ぎた。すまないね、魔導士……でも、知っておいて貰いたかったんだ。ここは観光気分で来られるような場所じゃないって。訪れた者は贄となる、それこそサクリファイスと呼ばれる、この場所の所以さ」
マキャートさんとミノ船長が庇いだてしてくれたおかげで、メランコさんも何とか納得してくれたようだ。
とはいえ、彼女の指摘自体は的を外していない。
私は、新天地に浮かれすぎていたのだ……観光気分に浸っているのかどうであれ、そこまで事を大きく見据えていなかったのは紛れまなく事実だ。
志を重んじるであろう彼女からすれば、面白くもないのは必然。
そして、メランコさんの願いとは裏腹に、サクリファイス近辺は観光地化されているという皮肉。
彼女としても折り合いをつけようにも、行動範囲に制限がかかっている以上は想う様にできない。
何度も歯がゆい思いをしてきたのだろう。
私の勝手な憶測でしか語れない。
が、それまで我慢に我慢を重ねてきたものが今回の件で一気に爆発してしまったんだと思う。
ともあれ、この二人がいてくれて助かった。
マキャートさんはともかく船長の方は、無償なのに私たちに力を貸してくれる。
後から、何かを請求されるのではないかと若干の不安はあるけれど、今のところそんな素振りは微塵も見せてない。
まったくもって不思議だ、そういう徳の高い人も世界にはいるという事なのかな?
だから、余計にゴタゴタの巻き込んでしまって申し訳なく感じてしまう。
機会があれば、お礼をしたいと思う。
「おい! マキャート。これからどうすんだ? 現状、八方塞がりだ。何か考えがあると言っていたな? 状況を打破できんのか?」
「おうおう、偉そう言うのー、こん猫は。シビアになっても何もかわらんじゃろ」
「いんや、エビフリャをあの穴の中に放り込むことぐらいはできるぜ!」
「こっわ! ワレなら、ホンマにやりかねんわー」
「それなら、北西にある時計塔に向かうといい。私たちもそこを怪しんで何度か調査したが――」
「が? 何か問題があるのですね、女史」
表情を曇らせ言葉を詰まらせるメランコさんにマキャートさんは訊き返した。
調査したとは言っているが、上手くいかなかったのか? それともペイルライダーたちの妨害にでもあったのか?
彼女以外の全員が耳をかたむけ次の言葉を待った。
「ダークフレイム、闇魔法が塔の入り口を塞いでいて中には入れなかったのさ」
またか……ていうか! 思いっくそ本命じゃないですか、そこ!? 立ち入らせないようにしているのは、あからさまに何かを隠してある証拠だ。
これで、中に何もないのなら闇魔法のバリケード設置した奴は、途轍もないアホだと思う。
「だーくふれいむ? ですか。解除する方法がなかったんですよね」
「そうだ、あの炎は触れたモノを焼き尽くすまで消えないんだ。光属性のホーリーソングがあれば打ち消しは可能だが、聖法を使える人間なんてそうそういない。だから、そこで打ち止めになってしまったんだよ」
「あっ! それならバーナードさんに頼めばいいと思います」
左右の手の平を重ね合わせたトルテが、彼の方を向いた。
その当人は、先ほどから何故か、エビフライと組体操をしている。
飛行機か……何が楽しいのか共感できないし、なんで始めたのか理解もできない。
「すみません、カン違いでした」
常識の範疇を越えた行動を前に、前言を撤回するトルテ。
その瞳はまったくもって、凍てついている。
額に手をあて首を横に振るマキャートさんがメランコさんに告げる。
「……とにかく、時計塔に向かってみます。彼なら、魔法を解除できるかもしれない」
「マキャート君、ワシは正門の様子を見に行かねばならん。ここで一度、別行動になるが構わんかね?」
「はい、船長。時計にはワタシとバーナード、それに――――」
マキャートさんがこちらを一瞥したような気がした。
しかし、彼は私ではなく同行者にハーンを指名した。
「今は、気まずいかと思ってね。モチさん、彼のことで思う所はあるかもしれないけれど、悪く捉えないでほしい……アイツにはアイツなりの事情があるんだ」
独り言のように囁かれる彼の願い。
それを聞いた途端、私は思わず俯いてしまっていた。
誰かに気づかれないよう努めていたのに、そこまで露骨に態度として表れてしまっていたのか?
マキャートさんには、私がバーナードを避けている事をあっさりと見抜かれていた。
ここまで気を使われると、私としても気恥ずかしくなる。
かといって、すぐにバーナードと和解できるほど大人にはなれそうにない。
やはり、しばし時間が必要となる。
ここで別々に行動を取るのは、絶好の機会だと前向きに考えたほうが良い。
「それじゃ、メランコ。何か分かり次第、また報告に来る」
「ああ、魔物の討伐もできれば頼む」
「お前さん、まだ諦めていなかったのか!?」
お互いに顔を見合わせ、二ッと頬を緩める二人。
ミノさんたちがどういう間柄だったのか知らないし、無理に尋ねようとも思わない。
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