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幻影抱く灰色の都
妖精からの依頼
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「いい加減、悪ふざけは止めんか! メランコリック」
ミノさんが突然、大声を張り上げた。
普段のものとは違う、本気で怒鳴る彼に少々、ビックリする。
それは、精神魔法を仕掛けた術者も同じようで、動揺で魔力の流れが乱れ始めている。
こうなると、魔法の効果が消滅するのも時間の問題。
再度、掛け直そうにもこういった奇襲タイプの魔法はネタが割れてしまっては元も子もない。
対処法などいくらでも、用意されてしまう。
「懐かしいわね、ドワーフ。いつぞやぶりの再会かな?」
「最後に、ここに来たのは十五年前だ。元気そうでなりようだ、妖精」
「はぁ~お互いに、まったく変わりないね」
部屋に潜伏していた管理者は、本当に悪戯目的だったのか? 潔く、すべての魔法を解除し姿を表に現した。
意外にも若い女性だ。
管理者というから、もっと年配者を想像していたけれど、ここまで若々しいと何で廃都遺跡の管理という地味な仕事をこなしているのか? 不思議に思う。
「あれ? 私、どうしちゃったんだろ?」
「精神系の魔法か! ちっ、防ぎきれなかった……」
エビフライ以外の二人が正常に戻った。
女性は、その様子をまじまじと観察しながら、背中から生えている蝶に似た羽をパタパタと羽ばたかせている。
羽ェ――……?
正常ではないのは、彼女の容姿の方だった。
蝶の羽がある人間なんて知らないし、今まで聞いたこともない。
早速、アーカイブスを探ってみると妖精の記述が出てきた。
そういえば、ミノさんが彼女のことを妖精と呼んでいた。
暗喩か何かと早とちりしてしまったが、どうにも本物みたいだ。
「にわかには信じられないけれど……本物の妖精なんですか?」
「ふぅ~ん。君は随分と疑り深いね、魔導士。まぁ、いいや~それが魔法使いの性分だろうし」
「その、色々と忙しなくて受け入れられないといいますか……」
「正直で宜しいね。私はメランコリック、メランコと呼んで。因みにリックは部族名さ、リック族のメランコってカンジかな」
「モチって言います。実は、メランコさんにお願いしたい事がいくつかありまして許可を頂きに参りました」
「そう、かしこまらなくても良いよ。遺跡に関することなら申請書を提出して貰えば、大抵は受理するから」
「なら、ワタシの出番か。フュリウス・マキャートだ、メランコさん。以後、お見知りおきを」
メランコさんから、申請書類を手渡された私達はマキャートさんの指示を受けながら必要事項に記入していく――とはいかなかった。
当然の事ながら、私はこの世界の文字に馴染みが薄い。
アーカイブスを通して翻訳することはできるけれど、書くとなると悪戦苦闘してしまう。
やる前から結果が見えていたので、マキャートさんとトルテに代筆は任せる事にして、私とミノさんで書類の取りまとめや確認といった雑務をこなす事とした。
その間、猫は精神魔法について気になる所があったらしく、メランコさんと論じ合っていた。
エビの方は……堂々と他者のベッドで爆睡している。
まったくもって役に立たない。
「うむ。魔道具捜索の為の遺跡調査に、使い魔探しをする間の滞在許可、そしてサクリファイス城の入場許可とな。考えていた以上に多い。私はてっきり観光にでもきたのかと思っていたよ。極めつけは外壁正門の損害報告……一体全体何をどうすれば正門を破壊できるのだ?」
手にした書類に目を通しながら、メランコさんは低く唸っていた。
他はともかく、正門破壊の件は流石に厳しいかもしれない。
「門の修復なら、ワシがやろう。メランコ、それで構わないよな?」
「問題ないよ。けど、木材など素材はどこで調達するんだい? よもや、ここにある物を使用するつもりか
い?」
「お前さんの魔法を使えば造作もなかろう。加工はワシがやるのだから文句あるまい! それとも、遺跡とは無関係の見せかけだけの門に修繕費を求めるのか?」
「……気づいていたのかい。良いよ、素材は提供しよう。ただし、無条件というのはこちらとしても面白くはない。そうだね……君たちに討伐依頼を出そう。修復の素材はそれを成した時の報酬という形になる」
ミノさんが、私の方をチラッと見ていた。
折角、修理に協力してくれると善意で言ってくれたんだ。
ここで首を横に振るうわけにはいかない。
「わかりました。それで、どのような魔物を狩ればいいんですか?」
本音を言うと既に答えに辿りついてしまっていた。
ここで、私が修理をしないという選択をしても、困るのは管理者たるメランコさんの方なんじゃないかと……。
どのみち、彼女は門を修理しないといけない責務がある。
まぁ……それは、あくまでも理屈としてでの話で、本当にそんな事をしたら人間性を疑われるレベルの無責任な奴と認識されてしまうのだろう。
とどのつまり、私自身も門の修復に貢献しなければ胸のつっかえ、罪悪感は拭えないというわけだ。
「討伐する魔物はペイルライダーという夜の騎士だ。奴は、首のない馬に跨りながら死人たちを支配している。最近になって奴はこの付近を徘徊するようになってね。おちおち、眠れやしない」
「ちょい、待ちぃ。ペイルライダーだって! アンタ、アイツのヤバさ分かってるんかい? 並みの冒険者じゃ太刀打ちできんほどの凶悪な魔物じゃ。それを退治しろだなんて、無茶もいいところじゃけ」
それまでベッドに横たわっていたはずのハーンが急に飛び起きた。
依頼に懐疑的なのか? 彼は、ペイルライダーには関わるなと警告を発している。
ハーンのソワソワした様子からして、相当な強敵なのは充分に読み取れた。
「いくら強敵でも皆で力を合わせて戦えば、何とか互角に渡り合えるじゃない?」
「彼女の言う通り、君たちが総力を決すればペイルライダーの討伐は難しくはないはずだよ」
「アホ抜かせ! 奴に捕まったら最後、魂を抜き取られてしまうんじゃ。ワシもオイスタも奴に仲間をやられちょる
楽観視するなんぞもっての他よ」
魂の抜き取られる!? そんな事ができる魔物がいるとは露知らず、安易に依頼を受けてしまうところだった。
ひょっとすると、あのマテリアルソルジャーはペイルライダーという魔物にやられた犠牲者の末路なのでは……誰もかれも同様の事を考えてしまったのか、一瞬にして場の空気が重くなってしまった。
「なぁーに、私としても無理強いはするつもりはないよ。できないと思うのであれば、引き受けないのも君たちの自由だよ」
「その場合はどうなるんだ?」
「素材は現地調達になるんだろうね、白猫君。いずれにせよ、この魔都から脱出する為には奴を討伐しなければならない」
「へぇー、管理者なだけあって随分と詳しいんだな」
「長い事、この地に住んでいるから色々とね。ペイルライダーたちは自然発生した魔物ではない、ある日を境にサクリファイス城から、出現するようになった。おそらく、学者さんの求めている魔道具と何らか関係を持っていると私は推察しているんだ。ついて来なよ、面白いモノをみせてあげる」
そう言いながら、メランコさんは近くにある部屋のドアを開いた。
鉢植えの花が幾つも並ぶ細長い通路、その端には非常用とも見て取れる階段があり、それはホテルの屋上につながっていた。
その階段を使い、私たちは屋上へと上がった。
雑居や高層ビルがひしめき合う景色の合間に異様な佇まいを見せるモノがある。
サクリファイス城……。
遠目からでのハッキリと目視できる巨大で広大な建造物。
圧倒すべき存在感を放つ城塞は、不気味なまでに静まり返っていた。
ミノさんが突然、大声を張り上げた。
普段のものとは違う、本気で怒鳴る彼に少々、ビックリする。
それは、精神魔法を仕掛けた術者も同じようで、動揺で魔力の流れが乱れ始めている。
こうなると、魔法の効果が消滅するのも時間の問題。
再度、掛け直そうにもこういった奇襲タイプの魔法はネタが割れてしまっては元も子もない。
対処法などいくらでも、用意されてしまう。
「懐かしいわね、ドワーフ。いつぞやぶりの再会かな?」
「最後に、ここに来たのは十五年前だ。元気そうでなりようだ、妖精」
「はぁ~お互いに、まったく変わりないね」
部屋に潜伏していた管理者は、本当に悪戯目的だったのか? 潔く、すべての魔法を解除し姿を表に現した。
意外にも若い女性だ。
管理者というから、もっと年配者を想像していたけれど、ここまで若々しいと何で廃都遺跡の管理という地味な仕事をこなしているのか? 不思議に思う。
「あれ? 私、どうしちゃったんだろ?」
「精神系の魔法か! ちっ、防ぎきれなかった……」
エビフライ以外の二人が正常に戻った。
女性は、その様子をまじまじと観察しながら、背中から生えている蝶に似た羽をパタパタと羽ばたかせている。
羽ェ――……?
正常ではないのは、彼女の容姿の方だった。
蝶の羽がある人間なんて知らないし、今まで聞いたこともない。
早速、アーカイブスを探ってみると妖精の記述が出てきた。
そういえば、ミノさんが彼女のことを妖精と呼んでいた。
暗喩か何かと早とちりしてしまったが、どうにも本物みたいだ。
「にわかには信じられないけれど……本物の妖精なんですか?」
「ふぅ~ん。君は随分と疑り深いね、魔導士。まぁ、いいや~それが魔法使いの性分だろうし」
「その、色々と忙しなくて受け入れられないといいますか……」
「正直で宜しいね。私はメランコリック、メランコと呼んで。因みにリックは部族名さ、リック族のメランコってカンジかな」
「モチって言います。実は、メランコさんにお願いしたい事がいくつかありまして許可を頂きに参りました」
「そう、かしこまらなくても良いよ。遺跡に関することなら申請書を提出して貰えば、大抵は受理するから」
「なら、ワタシの出番か。フュリウス・マキャートだ、メランコさん。以後、お見知りおきを」
メランコさんから、申請書類を手渡された私達はマキャートさんの指示を受けながら必要事項に記入していく――とはいかなかった。
当然の事ながら、私はこの世界の文字に馴染みが薄い。
アーカイブスを通して翻訳することはできるけれど、書くとなると悪戦苦闘してしまう。
やる前から結果が見えていたので、マキャートさんとトルテに代筆は任せる事にして、私とミノさんで書類の取りまとめや確認といった雑務をこなす事とした。
その間、猫は精神魔法について気になる所があったらしく、メランコさんと論じ合っていた。
エビの方は……堂々と他者のベッドで爆睡している。
まったくもって役に立たない。
「うむ。魔道具捜索の為の遺跡調査に、使い魔探しをする間の滞在許可、そしてサクリファイス城の入場許可とな。考えていた以上に多い。私はてっきり観光にでもきたのかと思っていたよ。極めつけは外壁正門の損害報告……一体全体何をどうすれば正門を破壊できるのだ?」
手にした書類に目を通しながら、メランコさんは低く唸っていた。
他はともかく、正門破壊の件は流石に厳しいかもしれない。
「門の修復なら、ワシがやろう。メランコ、それで構わないよな?」
「問題ないよ。けど、木材など素材はどこで調達するんだい? よもや、ここにある物を使用するつもりか
い?」
「お前さんの魔法を使えば造作もなかろう。加工はワシがやるのだから文句あるまい! それとも、遺跡とは無関係の見せかけだけの門に修繕費を求めるのか?」
「……気づいていたのかい。良いよ、素材は提供しよう。ただし、無条件というのはこちらとしても面白くはない。そうだね……君たちに討伐依頼を出そう。修復の素材はそれを成した時の報酬という形になる」
ミノさんが、私の方をチラッと見ていた。
折角、修理に協力してくれると善意で言ってくれたんだ。
ここで首を横に振るうわけにはいかない。
「わかりました。それで、どのような魔物を狩ればいいんですか?」
本音を言うと既に答えに辿りついてしまっていた。
ここで、私が修理をしないという選択をしても、困るのは管理者たるメランコさんの方なんじゃないかと……。
どのみち、彼女は門を修理しないといけない責務がある。
まぁ……それは、あくまでも理屈としてでの話で、本当にそんな事をしたら人間性を疑われるレベルの無責任な奴と認識されてしまうのだろう。
とどのつまり、私自身も門の修復に貢献しなければ胸のつっかえ、罪悪感は拭えないというわけだ。
「討伐する魔物はペイルライダーという夜の騎士だ。奴は、首のない馬に跨りながら死人たちを支配している。最近になって奴はこの付近を徘徊するようになってね。おちおち、眠れやしない」
「ちょい、待ちぃ。ペイルライダーだって! アンタ、アイツのヤバさ分かってるんかい? 並みの冒険者じゃ太刀打ちできんほどの凶悪な魔物じゃ。それを退治しろだなんて、無茶もいいところじゃけ」
それまでベッドに横たわっていたはずのハーンが急に飛び起きた。
依頼に懐疑的なのか? 彼は、ペイルライダーには関わるなと警告を発している。
ハーンのソワソワした様子からして、相当な強敵なのは充分に読み取れた。
「いくら強敵でも皆で力を合わせて戦えば、何とか互角に渡り合えるじゃない?」
「彼女の言う通り、君たちが総力を決すればペイルライダーの討伐は難しくはないはずだよ」
「アホ抜かせ! 奴に捕まったら最後、魂を抜き取られてしまうんじゃ。ワシもオイスタも奴に仲間をやられちょる
楽観視するなんぞもっての他よ」
魂の抜き取られる!? そんな事ができる魔物がいるとは露知らず、安易に依頼を受けてしまうところだった。
ひょっとすると、あのマテリアルソルジャーはペイルライダーという魔物にやられた犠牲者の末路なのでは……誰もかれも同様の事を考えてしまったのか、一瞬にして場の空気が重くなってしまった。
「なぁーに、私としても無理強いはするつもりはないよ。できないと思うのであれば、引き受けないのも君たちの自由だよ」
「その場合はどうなるんだ?」
「素材は現地調達になるんだろうね、白猫君。いずれにせよ、この魔都から脱出する為には奴を討伐しなければならない」
「へぇー、管理者なだけあって随分と詳しいんだな」
「長い事、この地に住んでいるから色々とね。ペイルライダーたちは自然発生した魔物ではない、ある日を境にサクリファイス城から、出現するようになった。おそらく、学者さんの求めている魔道具と何らか関係を持っていると私は推察しているんだ。ついて来なよ、面白いモノをみせてあげる」
そう言いながら、メランコさんは近くにある部屋のドアを開いた。
鉢植えの花が幾つも並ぶ細長い通路、その端には非常用とも見て取れる階段があり、それはホテルの屋上につながっていた。
その階段を使い、私たちは屋上へと上がった。
雑居や高層ビルがひしめき合う景色の合間に異様な佇まいを見せるモノがある。
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