RiCE CAkE ODySSEy

心絵マシテ

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惨劇のカンパ二ーレ

ルートB

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ホテル、リバーサイドを出た私達はそれぞれ別行動をとるカタチとなった。
時計塔に隠されたの秘密には多大な興味があるというのに、バーナードとギクシャクした関係になってしまった為、私は時計塔側のチームから外されてしまった。
無論、マキャートさんを悪くは思わない。あの時点では公正な判断であり、私の自業自得と言わざるを得ない。
それでも、このまますんなりと従ってしまうだけの自分に、腹立たしさがつのるばかりだった。

「どうかしました?」

時計班の背中を見送り続けていると、トルテが小首を傾げていた。
ミノさん達が、港の方へと戻ろうとしているのに、私だけが未練タラタラでその場から動けない。

「あーあ! そんなに連中が心配なら追えば? トルテには俺様から説明しておいてやるからさ」

「トルテ? ど、どうしちゃったの……」

「トルテじゃねぇよ。俺様はタタン、アイツの片割れ。トルテの中に宿っているもう一つの魂だ」

「タタン!? この既視感……そういう事。戦っている最中に出てくるのは、あなたの方だったのね」

彼女の豹変ぶりには大変、驚かせられた。何やら深い事情があるみたいだけど、今は聞く耳を持つどころではない。こうしているうちにも、バーナード達はどんどん視界から遠ざかっていく。

「ゴメン! タタンって言ったっけ、皆に伝えておいてくれないかな。私、時計塔班に同行するよって!」

なんて身勝手で無責任な奴なんだ私は……本来なら、自分が破壊した正門の修理しなければいけないというのに、人任せにするなんて最低だ。
きっと、マキャートさんは呆れるに違いない。ミノさんだって激怒するはずだ。
それでも、この胸中に渦巻く嫌な予感を解消する為に彼らを追いかけずにはいられない。

「はぁはぁ……なんとか間に合った」

「モチさん? どうして、来てしまったんだ? 君には、門の方を頼んだはずなんだが……」

ついて来た私を見る皆の反応は案の定、不可解といった感じだった。
無理もない、マキャートさんの心遣いを無碍むげにしてしまったのだから誰に文句を言われても仕方ない。

「ごめんなさい……今のままの状態で別れるのは、どうしてもダメな気がしてならなかったの。マキャートさんの想いを台無しにしてしまった事も、私の我がままが皆に迷惑をかけているのも重々、分かっている! その上で、お願い! 私も時計塔の調査に加えて欲しいの」

「いや、ワタシの方こそ君の気持ちをよく考えず指示を出してしまった……だが」

「マキャート、良いじゃねぇか。本人が来たいって言ってんだ、別に断る理由はないだろう? 正直、俺達三人だけで人手が足りるのかも分からんかったし。なぁ? エビ」

「ワシはどうでも構わん! 向こうはキャプテンがおる。門の応急処置なら、あん人一人でもどうにかできるって」

「そうか、君たちが問題ないと判断するのなら、ワタシがとやかく言うのも無粋というものだな。改めて歓迎するよ、モチ君」

バーナードとハーン、二人のフォローのおかげで私も時計塔の調査班として参加が許されることになった。
まだ、何一つとして問題は解決していないけれど、今はそれでいい。焦ったところでロクな結果にはないらない。
リバーサイドを出てからしばらく、私たちはビル群で囲まれた場所を進んでいた。
時計塔に到着するまで後、四時間ほどは歩かないといけないらしい。
日没前には辿り着けるものの、今日は野宿確定だ。
聞けば、紫甲冑たちは高いところには登れないという。
幸い、ここいらには高層建造物が多い。そのことを上手く使えば、一晩やり過ごすことはできる。

「そういや、姉ちゃん。昨日みたいに空を飛んで移動しないんじゃな?」ハーンの些細な一言でハッとした。

私の手元には今、物干し竿がない。
船に置いてきてしまったままだ。
魔法を使う分には何ら支障はきたさないけれど、戦闘で接近戦に持ち込まれたら対処しようがない。
その点を留意して行動しなければ。

このまま何事もなく、時計塔に到着する。そんなお気楽な事を頭に浮かべてしまったせいなのか?
地割れで道が遮断されていた。
助走をつけて跳躍したいところだが、生憎と裂け目幅は広く地面の奥深くまで崩落している。
人の足で飛び越えるのは、到底無理だろう。

「迂回するしかないのか……時間のロスは痛手だが」

「とは言え、どこまで延びているんだ? この地滑り。見渡す限りずっと続いているな、こりゃ~、体力が持たんぞ」

表情を険しくしながら論じる男二人。
すでに、何度か目にした光景でも彼らなら解決策を必ず見出してくれるはず……そんな安心感がある。
こちらの期待に応えるかのように、話合いは早々に済んだ。

「何か、手立てはありそうですか?」

「少し時間をくれ、遁甲盤で道を見つけるから」

私にそう答えながら、マキャートさんは懐から真円の石板を取り出す。
黒無垢の平らな板は、祭事に使う石鏡のようだ。
マキャートさん曰く、これが遁甲盤になるという。
私が知っている物は、もっと沢山の文字がわちゃわちゃと書かれている印象があるので、二つ返事で納得とはいかない。
それでも、彼が板鏡に手をかざすと光輝く文字がくっきりと浮かび上がってくる。
魔力に反応して起動する辺り、これも魔道具の仲間だという事か。
文字が読めない分、操作の仕方も掴めない。
指を動かす度に文字の配置が換わる事からして液晶画面に触れている感覚があるかもしれない。
術式でも入力しているのかな?

「マキャートさん、占星術って星見しないんですか? 遁甲盤だと風水ってイメージが強いんですけど」

「ん? 風水? どうやら、占星術について少し話したほうが良いかもしれないね。占星術は別に夜空の星の位置や動きを観測しているわけではなく、人が持つ運命の星を見て先を導き出しているんだ。それには、地脈も関係してくるから遁甲盤が必須となる」

「思っていた以上に複雑なんですね……」

「君がそれを言うのかい? ワタシ自身、君の魔法を目にした事はないが、これでも魔術師の端くれだ。賢者と呼ばれる術師と互角に渡り合えるぐらいのレベルを持った魔導士が目の前にいる事ぐらいは分かっているつもりだ」

「うっ、耳が痛いかな。それだけ見えるのなら、やっぱり他者の未来とか見えちゃうのかな?」

「だったら良かったんだけど……残念ながら、未来は一刻一刻と絶えず変化するものだよ。確定確実なんてモノがあるわけがない。大切なのは今現在、何をどう求めるかさ。それにより未来は左右される」

マキャートさんの言葉にシュレーディンガー猫実験の話が思い浮かんだ。
世間一般では結構、誤解されがちな思考実験ではあるが、今の会話に置き換えれば、可でもあるし不可でもある未来はその時にならなければ分からないという事になる。

それが占星術の限界という事にもなる。
おかげで、異空間で出会った女性……ラズさんの能力の正体についてもおおよその見当がついてきた。
あれは予知なんて生易しいものじゃない……未来への強制介入だ。

「結果がでたよ」マキャートさんの一声で周辺を見回っていたバーナードたちが集合する。
全員がそろうと、占星術師としての彼から結論が開示された。

「粗方、探ってみたがこの亀裂自体、相当な長さがある。とてもじゃないが迂回は望めない。そこでここからすぐ近くにある鉄塔を使う。モチさんの魔法に頼る事になるけど良いかい?」

「ええ、問題ありません」私は、コクリと頷いた。
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