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心絵マシテ

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ぼっちの魔王

38話 そこやま

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 広間を抜けた先は、外壁に覆われた細長い通路が続いていた。
 既視感がある光景に、記憶を手繰りよせてみる。
 周囲をよくよく見渡すと、そこが万里の長城に似ていることに気づいた。
 まぁ、実物を見たことはないけどね。あの壁、イイ感じの便所と化しているらしいよ?

 本殿に向けて歩くことしばし、砂漠のど真ん中に大きな黒壁を発見した。
 一番、最初に気づいたのはやはり、盗賊職のリンだった。
 彼女が「見て!」と促す、その壁の上には黄金に輝く宮殿がある。
 壁であるそれは、塔の一部だった。
 あまりにも広範囲に拡がっている塔なので、全体を把握するのに時間がかかってしまった。

「こんな壁、どうやって登ればいいんだ?」
 当然ながら、浮かぶ疑問。
 それ答えるササブリは「簡単ではないか! よじ登ればいい」すっごく分かりやすい原始的な方法を提示してくる。

「馬鹿じゃないの? こんなに高い壁をよじ登れるのはアンタか、ゴリラ系のモンスターだけよ」

「誰がゴリじゃ……!」

 早速、始まった……言葉を交わせば、睨み合う。
 もはや、天敵とみなした方がいいほど、二人の間には険悪なムードが漂う。
 俺の方に成否を聞いてこない分、いくらかマシだが、ちっとは控えて欲しい。
 君たちが言い争う度に、俺の胃がキリキリと悲鳴をあげてくるのだよ。

「ん? 壁の一部が門になってないか?」

 遠目からではよく分からなかったが、この通路の先に大門がある。
 大門と言っても用途に合わせ装いは異なる。
 城塞のように外敵の侵入を塞ぐ堅固なモノから、都の顔として建てられた豪華絢爛、雅やかなモノ。
 果ては、門という概念に捕らわれず全面ガラス張りのモノまである。

 それらと比較して黒壁の大門を見ると実に簡素だ。
 開く壁とでも言おうか……門である意味を成していないような状態だ。
 壁と一体化して見つけにくいし、厳重に戸締りしているわけでもない。
 ここから読み取るのは……ただ、なんとなくあった方がいいという曖昧な主張だけだ。

 実際、ここの門を取り付けた者が、何を考えどう意図したのか? 俺には知らん。
 取っ手となる窪みを引っ張っただけで軽々と開いてしまう。
 砂風を避けるにしても頼りなさするぎる。

「アンタ、門マニアなの? さっきからジッと見ているけど……」
 リンが不可解そうな顔で俺の方を見ていた。
 それもそうだ。普通の奴なら、門などさして気にもせず通過していくだろう。
 このまま黙っていても、門マニアのレッテルを貼られそうだ。
 やむなしと俺は自身の疑念を打ち明けた。

「そうじゃない……門を見れば、この場所の正体が分かるかもしれない。そう思ってさ」

「正体? 古拙の聖殿でしょ?」とやっぱり、難色を示している。

 こういうモノは伝え方が難しい。名はそのものを表すというが、必ずしもではない。
 その特性を利用すれば、本質を隠すことだってできる。

「聖殿、ということはだ……神殿ということになる。何かしらの神が祀ってあるはずだ。けれど、俺はここまで一度も祝福の存在ザインを感じ取っていない」

「相変わらず、小難しいわねぇー。要は、神様を祀っていないんじゃないかって疑っているわけ?」

「おおっ! さすが、リン。理解が早くて助かるわ」

「ふん、おだてても何も変わらないわよ。それより、先に行くわよ。こんなところで長居はしてられないわ」

 扉を開いた瞬間、金属の箱が物凄い勢いで飛び上がってきた。
 電車が駅を通過した時のような風圧が全身に押し寄せてくる。
 懐かしくもあるが、危険すぎる。
 入るタイミングが少しでもズレていたら、箱に衝突していた。
 あの形状、サイズ、移動する動き、どこを取ってみても、エレベーターにしか思えない……。
 だとすれば……アレがあるはずだ。

「ササブリ、この辺に……ってお前! 何やってんだ!!」

 つい先ほどまで、隣にいたはずの魔王が忽然と姿を消していた。
 どこに居ようが、俺のスキルで彼女は発現している。
 見つけること自体は、造作もない。
 空を見上げるとボルダリングしている馬鹿が一匹いる。
 間違いない、うちの娘ですわ、アレ……。

 余裕だと豪語していただけはある、猿のようにスイスイと壁を伝って登ってゆく。
 彼女のスカートの中が見えてしまわないかと、俺は終始ソワソワしていた。
 隣から殺気のような気配を感じるが、男の本能なのだから仕方ない。
 見えるか? 見えないか? その瀬戸際で俺は戦っていた。

 ササブリの動きがピタッと止まった。
 壁に貼りついたまま、微動だにしない。
 これは、ただ事ではない、慌てて真下から声をかけた。

「大丈夫か!? ササブリ、無理そうなら降りてこい!」

「ぬ、主よ! ここまで上がって来られぬか!? 我は稼動範囲ギリギリじゃあ!! 主が近づかないと身動き一つとれんわ!」

「だから! 下に降りててこいって!!」

「イヤじゃあぁぁあ!! 我はここから降りはせぬぞ! この壁を自力で制覇するんじゃあ―――」

「ええええっ!!」

 何がアイツを、熱くさせるのか? まったく飲み込めない。
 だが、ああなると梃子てこでも動かせない感じだ。
 俺は天を仰ぎながら嘆息した。
 その手にスキルブックをたずさえて……。
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