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黒幕の内
115話 価値のない涙
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突如、発見された古代遺産に俺は息を飲んだ。
ミイラのようでミイラではない。保存はしているが意味がない。
「バ、ババア……どうしてここに。貴様など招待していないはずだぞ」
霜を履みて堅氷至る。
霜降り状態のサトランが喚き散らしていた。
話を聞く限り、ワカモトさんが出てこないように設定しておいたようだが……考えが甘い。
なんせ、相手はサトランを盛大に裏切った張本人だ。
いくら否定しても、あの時の衝撃が心の奥底にインプリンティングされている。
分かり易く言えば、金太郎飴。
どこをどう切ろうがワカモトさんは出てくる。
そこにいるワカモトさんはサトランの無自覚な恐怖心が生み出した。
校長の座を得るために並み居る教頭たちを圧倒し、この学校のトップの座に君臨した枯れた彗星だ。
「待て! サトル。校長の奴……息してないんじゃないか?」
縁起でもないことを指摘するグゼン。
独りで、砕けた氷塊の中から特大サイズのモノサシを引きぬこうとしている。
まさかと思うが……それを剣代わりに凍結剣を放っていたのか? つくづく、無駄に器用なやつだ。
「こりゃ、荼毘に臥さないといけないなぁ~」
いかにも、わざとらしい言い方でサトランはグゼンの言葉に同意した。
ワカモトさんの額を拳でコツコツと叩きながら、音の違う所を探している。
どう見ても未だ解凍されきっていない……たんに仮死状態ではないのか?
その可能性が捨てきれないのにもかかわらず、サトランたちは嬉々として老婆を亡き者にしようとしている。
まったく持って、コイツらの意地の悪さには虫唾が走る。
「お前ら……その前に生きているか確認するべきだろう。K子先生に診てもらえばいい」
「ぷっ……ぎゃああははははっ!! マイト、真面目か! 所詮、ここは架空の世界さ。このババアだって残留思念にすぎない。本体は、星団船のどこかでヨロシクしているだろう」
「それは、そうかもしれん。けれど、意識は本物だろう! ここが何処だろうが、関係ない……肉体があろうが、なかろうが、他者の心を傷つけてもいい理由にはならないぞ」
「笑わせるなぁ! お前が一番、他人の心をもてあそんでいるんだろうがぁ」
「とんだ、言いがかりだな。お前たちがどれだけ俺を好き勝手に使っていたのかを、もう忘れたのか!?」
「嗚呼ああああ――――嫌だ、イヤだ、いあやだ、いやあだ!! 害虫め、クズゴミが! 汚物野郎がぁぁあ、お前みたいなのが世に蔓延っているから、僕たちも同類と見なされてしまうんだぁああ!! 僕はただ彼女たちの笑顔が見れれば……それだけで満足なんだ。何もいらないし、必要とされなくてもいい。でも、気づいてしまった……その笑顔さえも僕らに向けられたものではない偽りなんだと! どうしてこうなった!! 何故、こうも歪んでいる?」
正論をかますつもりはなかったが、サトランは余程、追い詰められていたみたいだ。
当然、逆上し俺に対する罵詈雑言を浴びせてくるが、やはりスキル【キンモヂイイ】が自然発動しダメージを通さない。
奴の一言一言は、もはや未成年の悲痛な叫びでしかない。
せめて、安らかに眠れようにレクイエムを贈ろう。
「何とか言えよ、マイトぉぉぉ!! お前、なんでだよ? どうして、今までササちゃんを喚べることを黙っていたんだ……? 内心では僕のことを馬鹿にしてたんだろう? 僕が羨ましがると思っていたんだろう? そうだよ!! オマエの息の根を止めてでも、そのスキルブックが欲しいんだ。欲しくて、欲しくてたまらない……」
「一つ、カン違いをしているようだな……サトラン」
「何ぃ!」
「俺は、利己的主義で他者の痛みを知ろうとしない、お前のことなど出会った時から盛大に馬鹿にしている。隠れてコソコソしていた覚えはない。気持ちが悪いから、号泣するのは止めろ! きたねぇ面がもっと汚く見える。お前は自分のためにしか泣けないのか!? ならば、その涙に価値などない! これ以上、醜態をさらす前に引導を渡してやる、食らえ!! ソーラ――――」
「ちょいま!! やっちゃう? やっちゃうの? それってクールじゃないよね?」
「誰だ!? 人がトドメを刺そうして最中に呼び止める奴は!」
外野の方から声が聞こえた。
水を注された俺が目を向けると、紫色の髪をした知らない奴が突然、中庭に飛び込んできた。
垂れ目で甘いマスク……どこかで見たような気もしなくはないが気のせいだろう。
「よぉ、久しぶり!」謎の男子生徒が親し気に俺に手を振る。
今まで、こんなキャラクターいただろうか……思い出せ、思い出せ、どこで出てきたんだ? ん――――――思い出せ……ない。
「お前のことなど俺は知らん。悪いが他をあたってくれ」
ミイラのようでミイラではない。保存はしているが意味がない。
「バ、ババア……どうしてここに。貴様など招待していないはずだぞ」
霜を履みて堅氷至る。
霜降り状態のサトランが喚き散らしていた。
話を聞く限り、ワカモトさんが出てこないように設定しておいたようだが……考えが甘い。
なんせ、相手はサトランを盛大に裏切った張本人だ。
いくら否定しても、あの時の衝撃が心の奥底にインプリンティングされている。
分かり易く言えば、金太郎飴。
どこをどう切ろうがワカモトさんは出てくる。
そこにいるワカモトさんはサトランの無自覚な恐怖心が生み出した。
校長の座を得るために並み居る教頭たちを圧倒し、この学校のトップの座に君臨した枯れた彗星だ。
「待て! サトル。校長の奴……息してないんじゃないか?」
縁起でもないことを指摘するグゼン。
独りで、砕けた氷塊の中から特大サイズのモノサシを引きぬこうとしている。
まさかと思うが……それを剣代わりに凍結剣を放っていたのか? つくづく、無駄に器用なやつだ。
「こりゃ、荼毘に臥さないといけないなぁ~」
いかにも、わざとらしい言い方でサトランはグゼンの言葉に同意した。
ワカモトさんの額を拳でコツコツと叩きながら、音の違う所を探している。
どう見ても未だ解凍されきっていない……たんに仮死状態ではないのか?
その可能性が捨てきれないのにもかかわらず、サトランたちは嬉々として老婆を亡き者にしようとしている。
まったく持って、コイツらの意地の悪さには虫唾が走る。
「お前ら……その前に生きているか確認するべきだろう。K子先生に診てもらえばいい」
「ぷっ……ぎゃああははははっ!! マイト、真面目か! 所詮、ここは架空の世界さ。このババアだって残留思念にすぎない。本体は、星団船のどこかでヨロシクしているだろう」
「それは、そうかもしれん。けれど、意識は本物だろう! ここが何処だろうが、関係ない……肉体があろうが、なかろうが、他者の心を傷つけてもいい理由にはならないぞ」
「笑わせるなぁ! お前が一番、他人の心をもてあそんでいるんだろうがぁ」
「とんだ、言いがかりだな。お前たちがどれだけ俺を好き勝手に使っていたのかを、もう忘れたのか!?」
「嗚呼ああああ――――嫌だ、イヤだ、いあやだ、いやあだ!! 害虫め、クズゴミが! 汚物野郎がぁぁあ、お前みたいなのが世に蔓延っているから、僕たちも同類と見なされてしまうんだぁああ!! 僕はただ彼女たちの笑顔が見れれば……それだけで満足なんだ。何もいらないし、必要とされなくてもいい。でも、気づいてしまった……その笑顔さえも僕らに向けられたものではない偽りなんだと! どうしてこうなった!! 何故、こうも歪んでいる?」
正論をかますつもりはなかったが、サトランは余程、追い詰められていたみたいだ。
当然、逆上し俺に対する罵詈雑言を浴びせてくるが、やはりスキル【キンモヂイイ】が自然発動しダメージを通さない。
奴の一言一言は、もはや未成年の悲痛な叫びでしかない。
せめて、安らかに眠れようにレクイエムを贈ろう。
「何とか言えよ、マイトぉぉぉ!! お前、なんでだよ? どうして、今までササちゃんを喚べることを黙っていたんだ……? 内心では僕のことを馬鹿にしてたんだろう? 僕が羨ましがると思っていたんだろう? そうだよ!! オマエの息の根を止めてでも、そのスキルブックが欲しいんだ。欲しくて、欲しくてたまらない……」
「一つ、カン違いをしているようだな……サトラン」
「何ぃ!」
「俺は、利己的主義で他者の痛みを知ろうとしない、お前のことなど出会った時から盛大に馬鹿にしている。隠れてコソコソしていた覚えはない。気持ちが悪いから、号泣するのは止めろ! きたねぇ面がもっと汚く見える。お前は自分のためにしか泣けないのか!? ならば、その涙に価値などない! これ以上、醜態をさらす前に引導を渡してやる、食らえ!! ソーラ――――」
「ちょいま!! やっちゃう? やっちゃうの? それってクールじゃないよね?」
「誰だ!? 人がトドメを刺そうして最中に呼び止める奴は!」
外野の方から声が聞こえた。
水を注された俺が目を向けると、紫色の髪をした知らない奴が突然、中庭に飛び込んできた。
垂れ目で甘いマスク……どこかで見たような気もしなくはないが気のせいだろう。
「よぉ、久しぶり!」謎の男子生徒が親し気に俺に手を振る。
今まで、こんなキャラクターいただろうか……思い出せ、思い出せ、どこで出てきたんだ? ん――――――思い出せ……ない。
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