問答無用!でランキングブレイカー!! ースキル、グラビアこそ最強最高ですー

心絵マシテ

文字の大きさ
118 / 122
黒幕の内

118話 六つの願い

しおりを挟む
 復活した魔王は、出だしからアクセル全開だった。

「我に任せよ。願いなんぞ、すぐに集めて見せるわ! 主らもそう思っているんじゃろう、のぅ」

 保健室の方にササブリが視線を落とすと、リンとシャルターナがガラスのない窓から飛び出てきた。

「別にアタイは……どうでも……」

「あらあら? リンさん。さきほどは、マイトさんがどこにいるのか? 叫んでいたではありませんか?」

「ちょ……ちょっと、シャル! 余計なこと言わないでよ。とにかく、事情はそこのサトランモドキの話を聞いていたから何となく分かったわ! そもそも、この恰好なんなの? サトランの奴の趣味?」

「んー、私は結構、気に入ってますけど……あっ、裏切り者のサトランさんのことじゃないですから。ホント、そこにいる炭化生物が実物ではないのが残念ですぅー」

 元デュアル・ゴースティングのメンバーである女子二人が合流した。
 相も変わらずの調子だけど、非常に心強い応援だ。
 これで半分の願いを得ることができる。

「ふぅー、私のことも忘れてもらって困るわね。それだけじゃ、人数が足りないでしょ」

 保健室から出てきたのは彼女たちだけではなかった。
 よく分からないが、保健の養護教諭であるK子先生も俺たちの輪に加わってくれるようだ。

「あと、二人は貴様らじゃ! 遺言代わりに願いを寄こせ!」

「ふん、悪いがそれはできねぇー相談だな。だよな、サトラン?」

 腰に両手を当てながら、ササブリは男たちにも手を貸すように促していた。
 グゼンはその場で拒否したが、どうもサトランの様子がおかしい。

「僕の願いは、すべてのアイドルと仲良くなりたいことだよ!!」

 敵であろうはずの男は、いの一番に己の願望をさらけ出した。
 自分の押しに聞かれれば無条件に答えてしまう、ドルオタの性である。
 義理を通そうとしたグゼンからすれば、たまったモノではない。

「おめぇー! 寝返りやがって!! この、どぐされ野郎がぁ――――!!」
 絶叫する小学生のように、暴言を吐き出す。

 いままでサトランのご機嫌取りばかりやっていたグゼンだが、とうとう臨界点を突破してしまったらしい。
 泣き叫びながら、放屁を連発していた。
 しかし、悲しいかな。グゼンはどこまで行ってもグゼンのままである。
 同調圧力に弱い彼は、コンビニでも行くようなノリで「先生ぇ……バスケがしたいです」と一言、漏らした。

「グゼンよ、本当にそれがアンタの願いなのか?」
 彼らしからぬ、解に俺はどうしても納得できなかった。

「仕方ねぇーだろ! 願いを一つだけにしろなんて無理ゲーすぎるだろう。俺にはやりたいことがたくさんある。まず、美女をはべらせながらワイン片手に札束が敷き詰められた風呂につかり、金のニップレスを売る。それから――――」

「よし、それ採用!」

 ニップレスの件がよく分からんが、それ以上は聞いていると苦痛になるので強制終了させた。
 残るは女性陣だ。ササブリが含めて話あっているが、その相談は必要なのか?
 俺としてはさっさと打ち明けて欲しいと思ってしまうがソイツは無粋という奴なのだろう。

「マイト、準備できたか? 我らも何を願うのか決めたぞ」

 女性陣を見ると誰もが、快くうなづいていた。
 瞳を閉じながら、俺も決意をあらわにする。

「分かった。なら、俺は皆の想いを一身に受けとめられる大人となり、自分が何者なのか見極めてみせる」

「俺は皆の想いを抱えられるほどの大人にはなれそうにない。だから、俺の代わりに天界へと向かってくれ! マイト」

「なんで、アンタが取り仕切るんだよ……!?」

「そうよ、グゼン。アンタの願いって最低よね!」

「はぁ? なら、リン。おめぇーはどうなんだよ? 大層な願いでもあるのか?」

「少なくとも、アンタよりはまともだわ!」

 口を開けば、言い争いになる。
 グゼンの女子からの嫌われっぷりは、筋金でも入っているんじゃないのか?

「まぁまぁ、お二方とも今は喧嘩している場合ではないですよ。私の願いは愛犬だったロビー君に、もう一度会って謝罪がしたい……ですかね。とても叶えられるモノではないのですが、それでも願ってやまないのです」

 シャルがそう告げるとリンたちも騒ぐのを止めた。
 それから一人一人が自分の想いを俺に告白してくれた。

「そうね……願いといえば、燃えるよな恋がしたい……かしら」
 K子先生の願いは、さもありがちなモノだが……なぜか、含みがあるように聞こえてくる。
 実のところ、ワカモトさんでないのかと疑ってアナライズしてみたが生物学的に違うらしい。
 彼女が何者なのかは、依然として不明である。

「アタイは……動物――――たい」

 珍しくリンが照れ臭そうにモジモジとしていた。
 そこまで恥ずかしい願いなのか? なかなか、言おうとしない。

「ハッキリしろや! あっ……」

 彼女の態度に業を煮やして挑発するグゼン。途端、その身体が崩れてゆく。
 ある意味、ハッキリさせてしまったのは彼の方だった。

「マイト、笑わないでくれる?」
 彼女の急な上目づかいに、半導体でありがらも俺の胸はドキッとした。
 考えてみれば俺がこの姿でいるのも、この仮想空間だけだ。

「笑わないさ、だから教えてくないか? リンの願いを」

「動物がたくさんいる場所に行きたい。それが、アタイの……願いだよ。昔から、動物が好きなの。なんでか分からないけどね……」

「いいんじゃ「いよーし!! これで願いは揃った我の願いは……マイトよ。言わずとも分かるよな?」

「ったく、お前は……」

 俺がリンと話しているのを、見て割って入ってくる魔王。
 コイツの願いは【最強、最高の魔王】などではない…………。
 デスブリンガーはずっと独りで待っていた。
 誰かが自分の声に耳を傾けてくれることを……自分という存在に気づいてくれるのを長い時間、ひたすら待ち続けていた。
 一度はマーダに敗れ、封印されたコイツの魂に俺のスキルブックが反応した。
 互いのスキルブックを融合させることは、この魔王にとって偶然の幸運がもたらしたチャンスだった。

 出会った時からデスブリンガーは願い続けていた。
 幼いその身を震わせながら祈っていた……もう、独りになるのは嫌だと。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...