117 / 122
黒幕の内
117話 いざ天界へ
しおりを挟む
サトランが話した通り、この木は天界(屋上)へと通じる道だ。
六人分の願いを託された者だけがその先へと進める。
念のため、通信ケーブルを利用し屋上への別ルートを探したが、そもそもこの学校に屋上は存在しない。
おそらくマーダは別次元にいると考えても良いだろう。
「へへへ……マイト。残念ながら僕はもう五人分の願いを集めている。あと一人、あと一つの願いでマーダ様の下へと辿り着ける。羨ましいか? ん~~」
「いや、それほどでも……参考までに聞かせてくれ。人数分の願いであれば、誰の願いでも構わないのか?」
「あぁ、だよな? アマニ。おい……アマニ?」
サトランの呼びかけに答える者はいなかった。
それもそのはず。アマニ当人は、すでに原型を留めていなかった。
生きてはいるも人のカタチを失い地ベタに散らばる消し炭となっていた。
サトランの奴は、自分が優位に立っていると思いこんでいるが、実はそうではない。
ソーラーレイの照射を直に受けたのだ、その身は時間とともに少しづつ崩壊している。
「遅くなってゴメンね、サトル君? あれ? アナタは確か……Z世代の大名君」
タイミングが良いのか? 悪いのか? サトランに呼び出されていたササちゃんがここで登場。
どうやら、俺はクラスではなく世代分けされているらしい。
前世では、それよりも四世代後の俺がそう呼ばれるのは適切ではないと思うけど……サトランの前世では、Z世代ど真ん中だったということだろう。
「大名君、サトル君がどこにいるのか知っている? 私、彼にここに来るように呼ばれたんだけど……」
ササちゃんが不安気に周囲を見回す。
荒地と化したこの場所にあるのは、一本の木と二つの炭の塊だけだ。
「ササッちゃ! 僕はここだよぉ~」炭が叫んだ。
もはや、怪奇現象のレベルである……サトランのスキルブックの影響がなかったら、未知の生物が出現したと大騒ぎになっているはずだ。
「お――い、ササッちゃ―――ん!!」
枯れ枝のようになった腕を振るってみせるも、彼女は何も反応を示さなかった。
無視を決め込んでいるわけではなさそうだ。むしろ気づいていないのか?
その異変をサトラン自身も感じ取ったようだ。慌ててスキルブックを取り出すと奴はその場で絶叫した。
「ち、くしょうぉおおおおおおおおおお!!! めええぇぇぇ! 僕のファンタジアが半分、黒く変色しているじゃないかぁあああああああ。マイト! 貴様ぁ、何をしたんだ!?」
何でもかんでも他者のせいにするなよ? そんなのは決まっている。
サトランはスキルブックを酷使しすぎた。
半導体の一撃から自分たちを復活させようとして本に負荷をかけ過ぎた。
その結果、まともに作用しなくなってしまっただけだ。
「アイツなら、帰ったよ」
「えっ? まだ午前中なのに?」
「急に……田舎の味が恋しくなったらしい。電車が間に合わないって走っていったよ、ササちゃんにヨロシクだとさ」
「そっち! そうまでして帰りたかったんだ……お別れを言えなかったのは、残念だけど仕方ないよね」
「まぁ、いつかまた、どこかで会えるさ」
「そうね……そうだよね!」
それとなく、彼女の肩に手をおきながら、俺はサトランの方を振り向いた。
「ぁああああああああああああ! このおおおおお、腐れ野郎ぉおおおお―――――!! その汚い手をどけやがれぇぇええ! 僕の僕の僕のササちゃんに触れるなぁぁぁぁいやあおお――――あああ!!!」
これ見よがしに、ニヤケていると壮絶なる悲鳴が聞こえた。
まるで恋人をNTRされた奴のようだが……そもそも、このササちゃんはサトランとは何の関係もない。
俺のスキルブックによって投影されたグラビアに、魔王の魂が吹き込まれた存在だ。
本物の彼女は、俺がいた時代にはいなかったが、国民から愛される伝説のアイドルとしてずっと語り継がれてきた。
だから、俺も知識としては彼女のこと知っている。
未来の世界については、詳しく話す気にはなれないが……新しい物が生まれない世界だと言っておこう。
俺たちは過去を追体験することで、それを娯楽としていた。
まぁ、一種の流行りなのだが…………そのせいで、あの事故は起きた――――――
「大名君? サトル君のことが心配なの?」
「あっ、すまん。少し考えごとをしていたよ。ササちゃん、いや……ササブリ、聞いていただろう? マーダのもとに行くのには、皆の願いの力が必要だ」
「大名……君? 何を……うっ、頭が!! 割れ――――フフッ……フフフッ! ッハハハアアア!!」
ファンタジアの力の弱まったことにより、デスブリンガーは自力で制限を解除し目覚めた。
姿は、以前そのままだが、身体からにじみ出ている紫のオーラは間違いなく、相棒のモノだ。
「待たせたな、マイト! 我、再臨したぞ!!」
六人分の願いを託された者だけがその先へと進める。
念のため、通信ケーブルを利用し屋上への別ルートを探したが、そもそもこの学校に屋上は存在しない。
おそらくマーダは別次元にいると考えても良いだろう。
「へへへ……マイト。残念ながら僕はもう五人分の願いを集めている。あと一人、あと一つの願いでマーダ様の下へと辿り着ける。羨ましいか? ん~~」
「いや、それほどでも……参考までに聞かせてくれ。人数分の願いであれば、誰の願いでも構わないのか?」
「あぁ、だよな? アマニ。おい……アマニ?」
サトランの呼びかけに答える者はいなかった。
それもそのはず。アマニ当人は、すでに原型を留めていなかった。
生きてはいるも人のカタチを失い地ベタに散らばる消し炭となっていた。
サトランの奴は、自分が優位に立っていると思いこんでいるが、実はそうではない。
ソーラーレイの照射を直に受けたのだ、その身は時間とともに少しづつ崩壊している。
「遅くなってゴメンね、サトル君? あれ? アナタは確か……Z世代の大名君」
タイミングが良いのか? 悪いのか? サトランに呼び出されていたササちゃんがここで登場。
どうやら、俺はクラスではなく世代分けされているらしい。
前世では、それよりも四世代後の俺がそう呼ばれるのは適切ではないと思うけど……サトランの前世では、Z世代ど真ん中だったということだろう。
「大名君、サトル君がどこにいるのか知っている? 私、彼にここに来るように呼ばれたんだけど……」
ササちゃんが不安気に周囲を見回す。
荒地と化したこの場所にあるのは、一本の木と二つの炭の塊だけだ。
「ササッちゃ! 僕はここだよぉ~」炭が叫んだ。
もはや、怪奇現象のレベルである……サトランのスキルブックの影響がなかったら、未知の生物が出現したと大騒ぎになっているはずだ。
「お――い、ササッちゃ―――ん!!」
枯れ枝のようになった腕を振るってみせるも、彼女は何も反応を示さなかった。
無視を決め込んでいるわけではなさそうだ。むしろ気づいていないのか?
その異変をサトラン自身も感じ取ったようだ。慌ててスキルブックを取り出すと奴はその場で絶叫した。
「ち、くしょうぉおおおおおおおおおお!!! めええぇぇぇ! 僕のファンタジアが半分、黒く変色しているじゃないかぁあああああああ。マイト! 貴様ぁ、何をしたんだ!?」
何でもかんでも他者のせいにするなよ? そんなのは決まっている。
サトランはスキルブックを酷使しすぎた。
半導体の一撃から自分たちを復活させようとして本に負荷をかけ過ぎた。
その結果、まともに作用しなくなってしまっただけだ。
「アイツなら、帰ったよ」
「えっ? まだ午前中なのに?」
「急に……田舎の味が恋しくなったらしい。電車が間に合わないって走っていったよ、ササちゃんにヨロシクだとさ」
「そっち! そうまでして帰りたかったんだ……お別れを言えなかったのは、残念だけど仕方ないよね」
「まぁ、いつかまた、どこかで会えるさ」
「そうね……そうだよね!」
それとなく、彼女の肩に手をおきながら、俺はサトランの方を振り向いた。
「ぁああああああああああああ! このおおおおお、腐れ野郎ぉおおおお―――――!! その汚い手をどけやがれぇぇええ! 僕の僕の僕のササちゃんに触れるなぁぁぁぁいやあおお――――あああ!!!」
これ見よがしに、ニヤケていると壮絶なる悲鳴が聞こえた。
まるで恋人をNTRされた奴のようだが……そもそも、このササちゃんはサトランとは何の関係もない。
俺のスキルブックによって投影されたグラビアに、魔王の魂が吹き込まれた存在だ。
本物の彼女は、俺がいた時代にはいなかったが、国民から愛される伝説のアイドルとしてずっと語り継がれてきた。
だから、俺も知識としては彼女のこと知っている。
未来の世界については、詳しく話す気にはなれないが……新しい物が生まれない世界だと言っておこう。
俺たちは過去を追体験することで、それを娯楽としていた。
まぁ、一種の流行りなのだが…………そのせいで、あの事故は起きた――――――
「大名君? サトル君のことが心配なの?」
「あっ、すまん。少し考えごとをしていたよ。ササちゃん、いや……ササブリ、聞いていただろう? マーダのもとに行くのには、皆の願いの力が必要だ」
「大名……君? 何を……うっ、頭が!! 割れ――――フフッ……フフフッ! ッハハハアアア!!」
ファンタジアの力の弱まったことにより、デスブリンガーは自力で制限を解除し目覚めた。
姿は、以前そのままだが、身体からにじみ出ている紫のオーラは間違いなく、相棒のモノだ。
「待たせたな、マイト! 我、再臨したぞ!!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様
あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。
死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。
「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」
だが、その世界はダークファンタジーばりばり。
人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。
こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。
あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。
ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。
死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ!
タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。
様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。
世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。
地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる