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(1) OCD持ちなのに異世界に召喚されました
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「あーもう、またこれさわっちゃった。手洗わなきゃ。」
わたしは強迫性障害、OCD(Obsessive compulsive disorder)持ちだ。特に、衛生面や安全面について強い不安に襲われ、それを避けようとするための行為を簡単には止められない。
たとえば、自分が汚いと思うものにさわったら、強いストレスを感じ、手を洗わざるにはいられない。あるいは、家を出るとき、鍵や火元を何度も確認しないと安心して出発できず、予定に遅れそうになることもある。
自分でも、ほかの人に比べて過剰になりすぎていると頭では理解はしているのだが、感情が理性を凌駕してしまうのだ。これまでのところ日常生活はなんとかこなし、周囲の目をごまかしながら、大学を卒業して社会人4年目になる。
「冬のせいか、余計に手が乾燥するなあ。ひび割れひどっ。」
と言いつつ、洗った手をタオルで拭いて、保湿クリームを塗ろうとしたとき、突然目の前が真っ暗になった。
(えっ?なにこれ?もしや失神するの?どうしよう、コンロの火消してあったっけ。)
などと、自分の身に起きていることと同時に、周りの安全確認を気にしてしまうのだが、なぜか意識が遠のく感じはせず、単に周りが一気に暗くなったという感覚である。
(どうしよう、何も見えない・・・。)
困惑して20秒ほどたった頃か、徐々に周りが明るくなってきた。と同時に、なんとも言えない不安感がお腹のあたりから込み上げてきた。
「え、ここどこ・・・?」
うっすらと見えてきた中で分かったのは、日本では馴染みのない、堅牢な石造りの壁が見えるということ。当然、さっきまでいた自宅ではない。
「英雄様、よくぞお出でくださいました。」
と、耳慣れない声が聞こえてきた。
「おお、英雄様!」
「英雄様っ!」
複数人の知らない声が聞こえる。思わず私は、
「はっ?」
と口にした。と同時に、知らない人に囲まれているという事実を消化したためか、むちゃくちゃ不安が膨れ上がってきた。
(やばいやばいやばい、これはやばい、私の人生の今後どうなるの、老後どうなるの、年金どうなるの、あばばばば)
と、なぜか将来や老後にまで不安を募らせている自分がまた、危機感があるのかないのかよく分からないのだが、やっと周囲がしっかり確認できるまで視界が戻ったので、とりあえず周りを見渡してみた。
なにやら中世ヨーロッパっぽい内装(といっても私の偏見だが)の建物の中で、周りにはローブを着た人が五人いた。二人が男性、三人が女性のようだ。一人の女性を除いて、みな白いローブを身に着けている。一人ローブの色が違う、赤いローブを来た女性の人が近づいてきた。
「突然のことで驚いていらっしゃるかと存じます。手短に申し上げますと、私どもは英雄召喚という儀式を行い、その結果としてあなた様が召喚されたのです。」
(なにを言っているんだこの人は?)
というふうにまずは頭で思ったのだが、周りがみな真剣かつ希望にも満ちた顔をしているせいで、突っ込みを入れる雰囲気でもないなと、空気を読んでしまう。
「えーと、英雄召喚というのは?」と私は尋ねた。
「英雄召喚とは、世界が滅亡の危機に瀕したとき、それを打破する希望としての英雄を召喚する儀式でございます。」と赤いローブの人は言った。
(やばい、これ、いわゆる異世界召喚ってやつだ。いや、でもそれフィクションでしょ。じゃ今のこれはなに?わたし気を失って、夢でも見てるの?)
「ちなみにここはどこですか?」とりあえず現状確認ということで、場所の名前を聞いてみる。
「ここはミク王国の王宮地下にある聖堂でございます。」また赤いローブの人が答えた。
「申し遅れましたが、わたくし宮廷魔導士長のセリヌと申します。」
「あ、ご丁寧に。わたくし三奈(みな)と申します。」
とりあえずお互い自己紹介してみる。
「えっと、セリヌさん、わたし日本っていう国に住んでるんですけど、この、ミク王国でしたっけ、に召喚されたってことは、ここは地球ではないんですか?」
とりあえず現状確認を続けてみる。
「日本・・・地球・・・聞きなれない名前でございます。英雄召喚については、正直なところ私どもも詳しい内容や召喚過程は存じ上げておりません。ただ、危機に瀕した際に、使われるべきものとだけ。ですので、なぜ三奈様が召喚されたことすらも、正直説明できないのです。」
(いやいやいや、よく分からないものを使っちゃダメでしょっ!・・・まあそれぐらい切羽詰まってるということなんでしょうけど。)
「ただ、召喚されたことそれ自体が、三奈様が英雄である証左であると私どもは考えております。ここでの立ち話もなんですので、もしよろしければ応接間にご案内いたします。」
(うーん、まあとりあえず話を聞いて状況を把握しないと。そもそも夢か現実かすらも、自分でも分からないし。)
と思ったところで気づいたのだ、重大な事実に。
私は召喚されるまで家にいた。今は別の場所、聖堂というところ。で、皆さん靴を履いてらっしゃる。私は素足(自宅の床暖房ばんざい)。
(・・・応接間に足洗える場所あるかな)
異世界召喚されてしまったOCDの私、そうそうに危機に直面だ。
わたしは強迫性障害、OCD(Obsessive compulsive disorder)持ちだ。特に、衛生面や安全面について強い不安に襲われ、それを避けようとするための行為を簡単には止められない。
たとえば、自分が汚いと思うものにさわったら、強いストレスを感じ、手を洗わざるにはいられない。あるいは、家を出るとき、鍵や火元を何度も確認しないと安心して出発できず、予定に遅れそうになることもある。
自分でも、ほかの人に比べて過剰になりすぎていると頭では理解はしているのだが、感情が理性を凌駕してしまうのだ。これまでのところ日常生活はなんとかこなし、周囲の目をごまかしながら、大学を卒業して社会人4年目になる。
「冬のせいか、余計に手が乾燥するなあ。ひび割れひどっ。」
と言いつつ、洗った手をタオルで拭いて、保湿クリームを塗ろうとしたとき、突然目の前が真っ暗になった。
(えっ?なにこれ?もしや失神するの?どうしよう、コンロの火消してあったっけ。)
などと、自分の身に起きていることと同時に、周りの安全確認を気にしてしまうのだが、なぜか意識が遠のく感じはせず、単に周りが一気に暗くなったという感覚である。
(どうしよう、何も見えない・・・。)
困惑して20秒ほどたった頃か、徐々に周りが明るくなってきた。と同時に、なんとも言えない不安感がお腹のあたりから込み上げてきた。
「え、ここどこ・・・?」
うっすらと見えてきた中で分かったのは、日本では馴染みのない、堅牢な石造りの壁が見えるということ。当然、さっきまでいた自宅ではない。
「英雄様、よくぞお出でくださいました。」
と、耳慣れない声が聞こえてきた。
「おお、英雄様!」
「英雄様っ!」
複数人の知らない声が聞こえる。思わず私は、
「はっ?」
と口にした。と同時に、知らない人に囲まれているという事実を消化したためか、むちゃくちゃ不安が膨れ上がってきた。
(やばいやばいやばい、これはやばい、私の人生の今後どうなるの、老後どうなるの、年金どうなるの、あばばばば)
と、なぜか将来や老後にまで不安を募らせている自分がまた、危機感があるのかないのかよく分からないのだが、やっと周囲がしっかり確認できるまで視界が戻ったので、とりあえず周りを見渡してみた。
なにやら中世ヨーロッパっぽい内装(といっても私の偏見だが)の建物の中で、周りにはローブを着た人が五人いた。二人が男性、三人が女性のようだ。一人の女性を除いて、みな白いローブを身に着けている。一人ローブの色が違う、赤いローブを来た女性の人が近づいてきた。
「突然のことで驚いていらっしゃるかと存じます。手短に申し上げますと、私どもは英雄召喚という儀式を行い、その結果としてあなた様が召喚されたのです。」
(なにを言っているんだこの人は?)
というふうにまずは頭で思ったのだが、周りがみな真剣かつ希望にも満ちた顔をしているせいで、突っ込みを入れる雰囲気でもないなと、空気を読んでしまう。
「えーと、英雄召喚というのは?」と私は尋ねた。
「英雄召喚とは、世界が滅亡の危機に瀕したとき、それを打破する希望としての英雄を召喚する儀式でございます。」と赤いローブの人は言った。
(やばい、これ、いわゆる異世界召喚ってやつだ。いや、でもそれフィクションでしょ。じゃ今のこれはなに?わたし気を失って、夢でも見てるの?)
「ちなみにここはどこですか?」とりあえず現状確認ということで、場所の名前を聞いてみる。
「ここはミク王国の王宮地下にある聖堂でございます。」また赤いローブの人が答えた。
「申し遅れましたが、わたくし宮廷魔導士長のセリヌと申します。」
「あ、ご丁寧に。わたくし三奈(みな)と申します。」
とりあえずお互い自己紹介してみる。
「えっと、セリヌさん、わたし日本っていう国に住んでるんですけど、この、ミク王国でしたっけ、に召喚されたってことは、ここは地球ではないんですか?」
とりあえず現状確認を続けてみる。
「日本・・・地球・・・聞きなれない名前でございます。英雄召喚については、正直なところ私どもも詳しい内容や召喚過程は存じ上げておりません。ただ、危機に瀕した際に、使われるべきものとだけ。ですので、なぜ三奈様が召喚されたことすらも、正直説明できないのです。」
(いやいやいや、よく分からないものを使っちゃダメでしょっ!・・・まあそれぐらい切羽詰まってるということなんでしょうけど。)
「ただ、召喚されたことそれ自体が、三奈様が英雄である証左であると私どもは考えております。ここでの立ち話もなんですので、もしよろしければ応接間にご案内いたします。」
(うーん、まあとりあえず話を聞いて状況を把握しないと。そもそも夢か現実かすらも、自分でも分からないし。)
と思ったところで気づいたのだ、重大な事実に。
私は召喚されるまで家にいた。今は別の場所、聖堂というところ。で、皆さん靴を履いてらっしゃる。私は素足(自宅の床暖房ばんざい)。
(・・・応接間に足洗える場所あるかな)
異世界召喚されてしまったOCDの私、そうそうに危機に直面だ。
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