OCDの私が異世界でやっていけるのでしょうか

夢野はと

文字の大きさ
10 / 12

(10) 夕食そして就寝

しおりを挟む
魔法について学ぶことを一つの目標としたところで、あとはソファに体を沈めて、ただ太陽が徐々に沈んでいくのを眺めていた。

時折、この異世界のことを、自分のOCDの視点から考えた。

(OCDを治す魔法みたいな都合の良いものはないかなあ。というかOCDという概念そのものがこの世界にはあるのかな。)

以前調べたところでは、少なくても地球上ではOCDは文化や国を超えて起こりうる病気ということは知っていたが、まったくの異世界であるここでもありうるのかは、分からなかった。

(もしこの世界で生きていかなきゃいけないのなら、OCDとどう向き合うかも含めて、どうやってこの世界の生活リズムに合うか考えなきゃな・・・。)

ルーチンに沿って生活することが、私にとっては安心につながり、一方そこから外れると、いろいろと不安を感じることが多い。なので、魔法の勉強が自分の好奇心を満たす目標であるなら、生活に慣れることが自分の安心感を得るための目標であるということだ。

(以前、スコットランドの田舎に大学の交換留学で行ったときみたいに、なんとかなるかな。)

5、6年ほど前の話だが、大学生の頃は、OCD持ちにもかかわらず、それを凌駕するだけのエネルギーがあったのか、留学を無事終えることができた。今回は、そのハードモードぐらいに考えるほうが、気楽かもしれないと、自分に言い聞かせた。

考えるのをやめて、またしばらくぼーっとしていると、ドアをノックする音が聞こえた。

「三奈様、カリーナでございます。夕食をお持ちいたしました。」

ドア越しからカリーナの声が聞こえた。

「あ、ありがとうございます!今ドア開けますね。」

というと、私は立ち上がって小走りで入口のほうに向かい、ドアを開けた。

「失礼いたします。」というと、カリーナは銀色のカートを押して入ってきた。カートの上には、料理が乗っているであろうお皿が四つあり、その上には銀色の蓋がしてあった。

「外が暗くなってきましたので、明かりをおつけいたしますね。」

カリーナは部屋の中にある、ガスライトのようなもののノブを回し、するとそれが光った。

「これも魔道具ですか?」と私は尋ねた。

「左様でございます。光を発生させる魔法が組み込まれております。」

魔道具は、地球にあった技術を代用するものばかりで、興味深かった。

「本日の夕食は、イノシシ肉の香草焼き、煮込み野菜のスープ、チーズ入りお米、そしてデザートのアップルタルトでございます。」

カリーナが各料理を説明してくれた。

(おおー、どれもおいしそうな響き、しかも具材がすべて知っているものなのは、偶然か、それとも通訳機能の魔法が私が知っているものの中でもっとも近いものに自動的に翻訳したのかな。)

と思ったところで、お米があることに気づき、思わず「えっ、お米っ!?」と言ってしまった。

少しきょとんとした表情で、カリーナは「はい、お米でございますが、お好きではございませんでしたでしょうか?」と尋ねた。

「いえいえ、お米は大好きなんですが、まさかお米があると思っていなかったので、つい。」

これまでずっと中世ヨーロッパっぽい世界だと思っていたので、お米が一つの料理として出てきたことは、うれしい誤算だったのだ。

「お口に合えば幸いでございます。」

笑顔でそう言うと、カリーナは部屋を後にした。

料理はどれもとてもおいしかった。お米は、日本米とは少し違った感じだったが、イノシシ肉によく合った。全部食べ切れるかと最初は思ったが、なんなく食べきってしまった。

(あーおいしかったっ!おいしいご飯は幸せの元だよね。)

と一人納得し、ふと窓に目をやると、外はすっかり暗くなっていた。

月か星は見えるかと思い、窓に近づくと、街の明かりが見えた。蛍光灯が多い日本のそれとは違って、オレンジ色の光がいくつも灯っていた。

(きれいだなー、街並みはそこまでよく見えないけど、やっぱり中世ヨーロッパっぽい。)

そう思いながら空を見上げると、満月には7割ぐらいの月に加え、たくさんの星が見え、幻想的だった。

(おいしいご飯に良い景色、豪勢な旅行ってこんな感じなのかな。)

しばらく外を眺めた後、疲れと眠気が強くなってきたので、シャワーを浴びて寝ることにした。

疲れていたが、バスタブとシャワーの周りの清潔度のチェックは欠かさなかった。

もらった石鹸の良い香りが、リラックス効果抜群で、ベッドに入るとあっという間に寝入ってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...