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第3章 契約と運命
第165話 荒地のオアシス
しおりを挟む「いいか、お前ら。耳垢取り除いてがっつり聞け!
この樹海には複数人の殺意を持った輩がいる。
俺らは既に三人倒したんだが、このうち二人にカエルの絵の契約印が見つかった。少々露骨だが、これが屋毒の傭兵と考える。
これはとある呪印を応用した特殊な契約印だ。…まあ、ぶっちゃけ、ほぼほぼ呪印だ。
この呪印の力はいくつかある。
一つ、同じ印を持つ者同士の正確な位置、健康状態、魔力量、感情、あらゆる情報が共有される。つまり、この印を持つやつは既に俺たちの戦闘方法をなんとなく知っている可能性がある。もちろん、頭の悪い奴にはこんな情報、意味ないだろうが…。
二つ、こいつらに屋毒の居場所を聞こうとしても無駄だ。聞いても、本当のことを話そうとした瞬間、呪力に呪われ、絶命する。
三つ、契約者との契約内容が確認できる。これはまあ、普通の契約印と同じだな。内容は、屋毒を追う契約管理機構《コード・レジスト》の従事者及びその仲間を倒す、捕獲、または行動不能にすること。…まあ、驚くことじゃねぇが、俺たちの命をとりに来ていることは確かだ。
気を引き締めていこう。
…おっと、俺としたことがいけねえ!
最後に、屋毒の手先以外の存在だが、恐らく無関係のやつらだ。通常の奴隷印しかなかったから、まあ、脱走奴隷だろう。こいつらが俺らを狙うかは不明だ」
「ありがとう、ポポンさん。それで、ターゲットの居場所は?それと、どこで合流する?」
「百合、私だ。ロコだ。ターゲットは時折移動しているが、概ね湖周辺にいる。合流は屋毒の居場所。うまく挟み撃ちできるように仕掛けたい。私たちは敵襲がなければ今日中に湖に着く。お前たちも同じような距離だろう。まずは、湖の見える位置に来い。具体的な作戦はそこからだ」
「じゃあ、そこでまた連絡だね!お互い気をつけよう!」
「ああ!」
「さて、ここからだな…。ところで、由紀子さん本当にこのまま一緒に行くの?」
「うん…。ここにいても仕方がないし。私はこんなところ早く出たい」
雪豹 由紀子、彼女は薄い青色の瞳をして、黒髪を肩まで揺らし、紅い唇がぽってりとした整った顔の女性だ。白い肌が美しく、どうやら北国育ちらしいが、奴隷として捕まったらしい。レイチェルたちが治療を受けていた時から椿とニヴィ、スキーと共にくっついてきたのだ。
「じゃあ、みんな!行くよ!逸れないようにね!」
樹海林は、荒れ果てた大地の裂け目に広がる、息をひそめた忌まわしき領域だ。天を突くように立ち尽くす巨木は、まるで世界を見下ろす監視者のようであり、その枝葉は空を押しつぶすように密集し、太陽の光すら届かぬほどに森を閉ざしている。時おり差し込む陽光は濁り、冷たい影のなかに染み込むように溶け、地表にはかすかな光斑がちらつく――まるで血を啜った眼が静かに瞬いているかのように。
濃密な影は、ゆるやかに蠢き、森そのものが巨大なひとつの生物かのような錯覚を誘う。苔に沈む岩と朽木の隙間か
らは、何かが覗いている気配がする。根は蛇のようにのたうち、足をとらえて引きずり込もうとし、空気には湿りきった死の香りが満ちる。青葉の香りに混じるのは、かつて迷い込んだ者たちの、かすかな残り香。そして、遠くから低く唸る咆哮――それは獣ではなく、森そのものの呻きかもしれない。
この森は脈打っている。巨木の幹に刻まれた傷は、人の言葉ではない何かを囁き、裂け目から滲む赤黒い樹液は、まるで永遠に癒えぬ傷口から流れる血のように脈動する。風はただの風ではない。さざめく木々の声に混じって、精霊とも亡者ともつかぬ囁きが聞こえる。眼光が木々の間で光る――それは待ち伏せする影豹か、木の皮に紛れた蛇竜か、あるいは形なき幻狼か。
落ち葉を踏む音さえ、森の鼓動に呑まれ、やがて消える。彼らは今、運命と名のつく死地へと足を踏み入れたのだ。
この樹海林を知る者たちはこう言う。
「この森は試練の場ではない。それは、逃れえぬ死の入口だ」
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